我が名は魔王豚ゴブリンなり! ~豚ゴブリンと蔑まされた少年はVRMMOイアンカムスで魔王となり最強プレイヤーを目指す~

ぱいん

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 由香、すまない。オレと関わり合いにさえならなければこんなことにはならなかったというのに。
 ほんの少しの時間しか過ごしていなかったが、オレの心は久しぶりに穏やかな気持ちで満たされた。他人から優しい言葉をかけられたのも随分久しぶりのことだった。彼女に対して警戒心を抱いていたが、本当はすぐにそんなものは消え去っていた。彼女に話しかけられて心の底では本当に嬉しかったし幸せな気持ちになれた。こんな醜いオレとフレンドになってくれてありがとう。彼女に対しては感謝の言葉しかない。それと同時に、彼女を救えなかった自分の不甲斐なさに怒りが込み上げて来た。
 
「由香、さようなら。神殿で復活したら、今度はちゃんとパーティーを組んで冒険に出てくれ。君ならオレなんかと違って、きっとすぐに素敵な仲間が出来るだろうからね」

 間もなく由香の身体は光の粒子となって消滅するだろう。そして近くの神殿にアバターが送られそこで復活する。
 そのはずだった。
 オレは由香の最後を御見送ろうと思っていたのだが、彼女の身体はいつまで経過しても粒子化しなかった。
 もしかして由香はまだ生きているのか? と思ったが、間違いなく由香のアバターは死亡判定を受けている。
 ならば何故、彼女の身体は消えずにこのまま残っているのだろうか? 
 などとオレが訝しんでいると、突然、由香の身体が真っ白になってしまった。比喩ではなく、アバターから装備品の何から何まで真っ白になってしまったのだ。

「何が起こっているんだ?」

 オレは思わず真っ白になった由香の腕に手を触れた。
 異変はその直後起こった。
 
『スキル『模倣』を解放致しました。対象者からコピー可能なスキルが検出されました。『死者蘇生』のスキルをコピー致しますか?』

 オレの目の前にメッセージ画面が表示される。

「死者蘇生だって⁉ 由香を生き返らせることが出来るのか⁉」

 オレは迷わず『YES』をタップする。

『死者蘇生のスキルをコピー致しました。死後5分以内のアバターを蘇生させることが出来ます。スキル発動後、使用者のレベルは1にリセットされます。使用致しますか?』

「レベルが1にリセットされる……」

 死者蘇生のスキルを使用すればオレのレベルは元の無職レベル1に戻ってしまうのか。ここまでレベルを上げることが出来たのは正直奇跡が起こったからだと思う。本当ならオレはとっくに死亡判定を食らって試験失格になっていただろう。
 どうせ由香はアバターが死んでもすぐに神殿で復活する。死者蘇生のスキルを使用したらレベルが1にリセットされてしまうだって? 冗談じゃない。出会って間もない相手にそこまでする義理はないだろう。オレにはプロゲーマーになる夢があるんだ。ここはごめんなさいして、由香には大人しく神殿で復活してもらおう。申し訳ないがここは試験を優先させてもらうとしようか。きっと由香も分かってくれるさ。こんなことでレベル100以上の経験値を失うわけにはいかないのだ。
 なんて、数時間前の自分ならそう思っていたに違いない。

「死者蘇生のスキルを実行する。由香を生き返らせてくれ」

 オレは迷わずそう呟いた。正直、ほんの一瞬だけ迷いはあった。初対面の人間にそこまでする必要はないんじゃないか、と。
 でも、オレに少しでも優しくしてくれた恩は返さなければならない。もしここで由香を見捨てたら、オレは一生後悔するだろう。罪悪感に苛まれてオレは生涯眠れぬ夜を過ごす羽目になるだろう。彼女に借りを返すことはオレの夢を実現させることなどよりも最優先事項だった。

『死者蘇生のスキルを発動致します。これにより使用者のレベルがリセットされます』

 死者蘇生のスキルが発動すると、眩い光が由香を包み込んだ。光が止むと、由香のアバターが元通りの色彩を取り戻した。
 オレのアバターが一瞬だけ激しい赤色の光を放った。恐る恐るステータス画面を確認すると、やはりレベルは1にリセットされていた。どうやら死者蘇生のスキルが正常に発動したみたいだ。倒れている由香のアバターから「ううん……」という声が洩れるのと同時に微かに首が横に動いたのを確認し、オレは思わず安堵の息を吐き洩らした。
 
「良かった。状態異常も回復しているみたいだし、ちゃんと生き返ったみたいだ」

 これで今日何回目の奇跡なんだろうか? こう何度も起きていては奇跡の安売りだ。二度とオレには奇跡は起こらないだろうと確信した。
 ところで由香をどうしたらいいんだろうか? このまま初心者の森に置いておいたら寝ているところをゴブリンに襲われかねない。抱きかかえて街の近くに連れて行きたくても、先程オレが彼女に触れただけでダメージ判定が通ってしまったのだ。指一本触れるわけにはいかなかった。

「由香が起きるまでここで待っているしかないのかな? でも……」

 かと言って、レベルがリセットされた今の状態では護衛もままならない。スキルを使用したとしてもゴブリン一匹にも苦戦を強いられることは間違いないだろう。そもそもレベル1で今まで解放されたスキルを使用できるとも限らない。さて、本当にどうしたものだろうか?
 などとオレが考えあぐねていると、今度はオレの身体が光り始めた。目の前にメッセージ画面が表示される。

『ログアウト可能になりました。先程リクエストされた命令を直ちに実行致します』

「いや、ちょっと待て! そのリクエストはキャンセル、キャンセルだ!」

 しかし、オレの叫びも空しく、ログアウトは実行され眩い光に包まれた。
 由香、お願いだから無事に目覚めてくれ。そして一刻も早く始まりの街アタホナムに戻り、仲間を探すんだ。
 幸運を祈る。それだけを願い、オレの意識は暗闇の世界に引きずり込まれた。

 気づくと、オレは神殿の中で佇んでいた。周囲の景色の色がセピア色に変色していて、一目でここがエレウスのいる女神神殿であることが分かった。
 オレは何故ここに呼び出されたんだ? それに、どうしていきなりログアウト出来るようになったというんだろうか?
 女神様の気紛れか? などと思った瞬間、ふつふつと怒りが胸の奥底から込み上げて来る。
 そんなことを考えていると、陽気な声が話しかけて来た。

「やあやあ、シュウト君、お疲れ様。試験の調子はどうだい? ボクが見込んだ君なら、そろそろレベル30くらいには到達しているんじゃないかな?」

 突然、オレの目の前に悪戯な笑みを浮かべたエレウスが現れた。
 オレは呆れたように小さく嘆息すると、ぶっきらぼうに答えた。正直、エレウスと真面目に問答するのは面倒くさいと思ってしまった。

「いいや、まだレベル1のままだ」

 オレはありのままの状況をエレウスに伝えた。

「何だって⁉ 半日使ってレベルが1のまま、だって? おいおい、流石にそれはやる気が無さすぎるんじゃないかね? いくら温厚なボクでもブチギレちゃうかもだよ?」

 エレウスはわざとらしく驚いて見せた後、身を屈め下からオレの顔を覗き込んできた。その顔がまるで笑いを堪えているかのようにプルプルと震えているのが目に入って来た。
 こいつ、全て分かっているのにオレをからかっているな? 

「最弱クラスの無職で初期装備も無し。街に入るのもNG。ソロプレイ強制は望むところだとしても、流石に理不尽が過ぎる。あんなんでどうやって試験をクリアしろってんだ?」

「簡単にクリア出来ちゃったら試練にはならないだろう? ボク的には生きるか死ぬかギリギリの線を攻めてみたんだ。それを君は見事に乗り越えて見せたじゃないか」

 エレウスめ、語るに落ちたな。それはずっとオレのプレイを見ていたと吐露しているようなものじゃないか。オレが一度レベル108になって試験クリアの水準に達したことも、その直後に由香を蘇生させるために全てのレベルを失ったことも。

「女神は乗り越えられない試練は与えない、だっけか? それにしてもやり過ぎだ。ゲーム開始直後に危うく死にかけたんだからな」

 思えば最初のゴブリンの戦闘が一番きつかったと思う。不意打ちに成功しても与えられたダメージが雀の涙で、相手はゲーム内最弱モンスターだったのだから、あれ以上の絶望感はなかなか味わえないだろう。
 
「でも君は生き延びた。そうだろう?」

 ふふん、とエレウスは勝ち誇ったようにほくそ笑んだ。

「それは結果論だ」

「そうだよ。ボクがシュウト君に求めているのは結果だけだ。結果を伴わない過程なんて犬にでも食わせちまいな。君も社会に出たら分かるよ、結果が全てだってことにね」

 あまりに正論過ぎてぐうの音も出ない。

「それで試験初日のボクの感想なんだけれどもね。シュウト君、君って奴は……!」

 そう言ってエレウスはがっくりとうなだれた後、ふううう、と呆れたように深く嘆息する。
 だが、すぐに上体を勢いよく起き上がらせると、満面に笑みを浮かべ右親指を立てて見せながら、バチンとウインクして来る。 

「まさか複数のスキルを覚醒させるだなんて君は最高にイカしているよ! ここまでボクの予想を覆すとは思いもしなかったぜ!」

 エレウスは嬉しそうにパチパチと拍手する。それには微塵も悪意が込められているような感じはしなかったことから、どうやら彼女は本心からオレを称賛してくれているみたいだ。

「でも、オレはまだレベル1のままだぞ? それなのにそこまで絶賛してくれるのか?」

「レベル100の目標はあくまで目安であって、試験の本当の目的はスキルを覚醒させることにあったんだ……って、おっと、うっかり試験の本当の目的を吐露しちゃったんだぜい。こいつはうっかりだ」

 エレウスはテヘペロすると、片目を瞑ってポカンと自分の頭を小突いて見せた。
 それに対するオレの感想は、わざとらしい、である。

「まあ、うっかり喋ってしまったから正直に言うけれども、ボクの計画では最初のバトルでシュウト君には死んでもらう予定だったんだよ」

 衝撃的なカミングアウトを前に、オレは絶句するより術が無かった。
 死んでもらう予定だっただって? それはどういう了見なんだ⁉ 思わず心の裡で怒りを爆発させてしまった。

「正確には瀕死の状況に追い込んで、さっさと『神域』のスキルを覚醒させる手はずだったんだよ。だからこその初期装備無しの徒手空拳でのゴブリンバトルだったってわけさ。下手に初期装備なんかあったら、君のことだから普通にゴブリンなんかやっつけちゃっていただろう? そうなると計画に遅れが生じるから一か八かの賭けに出たってわけさ」

「いくら何でも一か八かの賭けに出るには早すぎるんじゃないですかねぇ⁉」

 理不尽の正体がようやく分かったぞ。このクソ女神様は綿密な計画を立てているようで肝心なところで大雑把なのだ。そうでなければ初手で一か八かの賭けに出るなんて大ザルな計画を打ち立てるわけがないのだ。

「まあまあ、こうして生きているからいいじゃないか。それにしても、まさかスキル模倣で『死者蘇生』のスキルまでゲットするなんて、流石のボクも驚きを禁じ得なかったよ。ボクの計画にはないイレギュラーな出来事だったからね。それについては本当に驚いている」

  エレウスは真剣な眼差しで感心したようにそう呟いた。どうやら本当に予想外のイレギュラーなことが起こったのだろう。
 オレにしてみても何処から何処までが女神様の掌の上で踊らされたのか皆目見当がつかなかった。今日一日で何度視線を潜り抜けたか分からないのだから。

「何処までがエレウスのシナリオだったんだ?」

「神域のスキルを解放して魂食いでレベリング、までかな? 憤怒のスキル解放は予想の範囲内ってくらい」

「あまりに大雑把過ぎやしないか?」

「それは仕方ないだろう? まさか初手で死にかけるどころか狂戦士のスキルまで解放しちゃうし。君があまりに優秀過ぎるから、試練を追加しなきゃならなくなったんだからね」

「試練の追加?」

 オレは逡巡する。ダメだ、色々とあり過ぎて答えが見つからない。

「突然、ログアウト出来なくなっただろう? 君を追い詰めて極限状態にする為に急遽そうさせてもらったわけだ。ついでにあのキッズ達をそそのかして賞金首の登録を迅速に済ませたのもボクだし、君の居場所を賞金稼ぎをしているプレイヤーにリークしたのもボクだよ?」

「なん、だと⁉」

 開いた口が塞がらないとはこのことだ。まさか味方だと思っていた女神が黒幕だなんて話、今時の少年漫画でもベタ過ぎて使われない展開だぞ⁉

「シュウト君、悪ふざけが過ぎたのは謝るよ。でも、全ては君の為、君を成長させるために必要な試練だった。恨むならボクの予想に反して優秀過ぎる自分を恨むんだね。もう少し君がボクの思惑通りに動いてくれていたなら、あそこまで過酷な試練を課すこともなかったんだからさ」

 持ち上げたりどん底に叩き落したりと、怒っていいのか喜んでいいのか分からなくなってしまった。
 もしかしたら、こうして素直に全て白状しているのはエレウスなりの贖罪なのかもしれない。

「だから、お詫びと言ってはなんだけれども、君がレベルを犠牲にしてまで救ったお嬢さんはボクの方で保護しておいたよ」

「なんだって⁉ それを早く言え!」

 オレは思わず怒声を張り上げた後、激しい脱力感に見舞われ崩れ落ちてしまった。

「由香ちゃんだっけ? 君がログアウトした後、近くの街に転送しておいた。ついでに女神の加護を与えておいたから、当面はあの娘をPKすることは出来なくしておいたからね」

 エレウスは最後に「安心したかい?」と付け加えると、悪戯な笑みを浮かべた。

「それにしても妬けるねぇ。ボクみたいな可愛い女神がついていながら初対面の娘っ子にそこまで御執心するだなんて……さては惚れたな?」

 それはどうなんだろうか? オレが由香に抱いている感情は恩が大半を占めている。好意はあるがそれが恋愛感情に繋がっているかと言われれば判断に苦しむところだ。何しろ、オレは小学生の頃から女子達からこの見た目の為に忌み嫌われ続けてきたのだ。クラスの席替えは今でもトラウマになっている。くじ引きでオレの隣の席になった女子がたまたま気の弱い娘で、オレが隣になったことで号泣してしまったことがあった。それでオレは何故か他の女子達に詰め寄られ理不尽にも謝罪を要求された後、先生に言って席を他の男子と変わってもらえと強要された辛い過去があった。未だにそれが何に対しての謝罪だったのか意味不明だった。それ以来、オレは女子に対して好意を抱くことを心の底で封印していた。だから、オレには恋愛感情というものが何なのかいまいち理解出来ないのだ。
 オレがそんなことを考えていると、突然エレウスに肩を叩かれた。
 エレウスに視線を移すと、何故か彼女は大粒の涙を零していた。

「エレウス、どうしたんだ⁉」

 オレは慌ててエレウスに訊ねた。

「うう……辛い記憶を思い出させてずまない……それはあまりにもあんまりな出来事だったねぇ」

 オレは逡巡の後、エレウスがオレの心の声を聞きとれる設定を思い出す。

「ああ、オレの心の声を聞いたのか。そんなこと別にエレウスが気に病むことじゃないさ。オレにとって女子に存在を拒絶されるのは普通だっただけのこと。もう辛いなんて気持ちはとっくに通り越しているから大丈夫だよ」

 すると、エレウスはオレの話を聞いた後、ブルブルと身体を震わせ「君は何処まで不憫なんだい⁉」と泣き叫び始めてしまった。
 それこそオイオイとオレを心の底から哀れんでいるかのように号泣していた。
 オレって号泣されるくらい可哀そうな奴だったんだろうか? 実感はないが、何だかこっちまで泣きたくなってしまった。
 エレウスはひとしきり泣きじゃくった後、ようやく落ち着きを取り戻した。

「女神様なのにみっともない姿を見せてしまったね。ボクならもう大丈夫。取り乱してしまってすまなかった」

 そう言ってエレウスは鼻をすすった。

「脱線してしまったが、本題に入るとしようか」

「本題? それはなんだ?」

「別にボクは君とじゃれ合いたいが為に時の止まった女神神殿に呼び寄せたわけじゃないぜ? まあ、君と戯れるのは楽しいからそれはそれでいいんだけれどもね」

 エレウスは、ふう、と嘆息すると、瞳に残った涙を腕でゴシゴシ拭った。

「今回シュウト君を女神神殿にお招きしたのは一つ提案をしようかと思ってね」

 エレウスはいつもの調子に戻ったらしく、芝居がかった台詞でオレに話しかけて来た。

「このままシュウト君がゲームに戻っても、後二日半は賞金首のままだ。そうなると、賞金目当てのプレイヤーに命を狙われてレベル上げもままならない。それで間違いない?」

「ああ、誰かさんのおかげでな」

「おいおい、そこまで褒めるなよ。照れるじゃないか」

 全く褒めてない、と心の裡ですかさず突っ込みを入れる。

「そこで提案だ。シュウト君には是非とも『ソウルリンク』を受け入れてもらいたいんだ」

「ソウルリンク? 初耳だけれども、それは何なんだ?」

「我が社が開発したソウルリンクシステムとはプレイヤーの魂をアバターと融合させるシステムのことだ」

 うん? 話を聞いても全く理解できないぞ?

「難しい話は置いておいて、仮に君がソウルリンクを受け入れた際の旨味とリスクを教えておこうか」

 すると、エレウスは顔から笑みを消すと真剣な表情でオレに話し始めた。

「まず一つ目に旨味の話だ。ソウルリンクを受け入れた場合、君の経験値取得率は100倍に増える」

「100倍だって⁉」

 オレは思わず唾を飲み込んでエレウスを見た。もしそんな恩恵を得られるなら、オレは間違いなくイアンカムス最強のプレイヤーになることが出来るだろう。世界ランク1位すら簡単に射程圏内になるのは間違いない。

「二つ目にリスクの話だ。ソウルリンクとはプレイヤーの魂をアバターと融合させることだって説明したと思う。これは言葉通りの意味だ。魂を融合させるというのは感覚や命の共有をするということ」

 その瞬間、オレはエレウスが言わんとしていることを理解する。

「つまり、ゲーム世界で受けた痛みは共有感覚の影響で現実世界と同じ苦痛を伴うのと同時に、アバターが死亡した場合は現実世界の君自身も死んでしまうということだ」

 それは悪魔の契約。栄光を得る代わりに相応の対価を支払わなければならないということ。文字通り命を懸けるということだとオレは理解する。

「さあ、どうする? 命を懸けて栄光を掴むか、命を惜しんで元の惨めな生活に戻るのか。ボクは賢明な判断を望んでいるよ」

 その時、エレウスは口の両端を吊り上げて歪な笑みを浮かべた。
 彼女の背後に立ち上った黒い影が、オレには悪魔の姿に見えるのだった。
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