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第2話
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――王宮での会話――
「フォード様、舞踏会への招待状にネイ様とロミア様を招待されたそうですね?一体どのような風の吹き回しでしょう?」
「なんだ、探りにでも来たのか?」
仕事を終え、自室で紅茶を口にしながらくつろぐフォードの元に、彼の臣下の一人であるブレンスが訪れ、そう言葉を発した。
その様子はどこかフォードの様子をうかがっているような雰囲気であり、フォードの方もそんなブレンスの雰囲気を察している。
「なにか特別なお考えがおありなのですか?もしも、もしもフォード様が一人の女性をその隣に置くことに決めたのでしたら、人々が抱く関心はそれはそれは大きなものになることともいますが…」
「言いすぎだよブレンス。僕はただ試したいだけだからな」
「試したい…?」
予想とは違った言葉を返されたためか、ブレンスはやや意外そうな表情を浮かべる。
フォードが試したいこととは一体何なのか、その答えを知るべくブレンスはこう質問を投げかけた。
「お二人の姉妹のうち、フォード様が気になっておられる方がいらっしゃるという事でしょうか?」
「だとしたらどうだ?」
「……」
このやり取りを楽しんでいるかのような口ぶりのフォードに対し、ブレンスは真面目な雰囲気を変えない。
そして一瞬だけ何かを考えるようなそぶりを見せた後、こう言葉を返した。
「もうお決めになられているのですか?お二人のうちのどちらをこの王宮に招き入れるのかを…?」
「ブレンス、まずお前に聞いておくべきだったな。二人の姉妹は姉のロミア、妹のネイである。僕が興味を持ったのはそのどちらであるか、分かるか?」
「それは…」
そんなもの誰だって分かる、と言った様子でブレンスは言葉を続ける。
「ネイ様は誰からも愛される可愛らしい女性であるともっぱらの噂です。その魅力はきっと王宮の中に入っても維持されるものであり、彼女の存在をめぐってはいろいろな男性たちが水面下で交渉を行い続けているとのこと。それくらいに人気と実力を兼ね備えた女性であるといえます」
「ほう」
「その一方、ロミア様に関してはほとんど良い話を聞きません。ネイ様が相当に魅力にあふれる女性なわけですから、どうしても彼女と比べられてしまいます。その結果彼女に好意を示す男性はほとんどおらず、しかもその事をすべて妹であるネイ様のせいにされているという噂。なかなかひどい性格をされているそうですが…」
「らしいな。僕の所にもそう言った話が入ってきた」
「なら、やはりどちらに興味をお持ちなのかは明確かと思うのですが…」
最初からわかりきっていたこと、とでも言わんばかりの様子でそう進言を行うブレンス。
しかしそれに対してフォードは、全く逆の思いを抱いている様子だった。
「しかしそれは、初めからロミアが作り上げた架空のストーリーである可能性がある。だとしたらこれはゆゆしきじたいだ。この王宮に住まうお前のような者までが、ネイの作り上げた話に踊らされているという事になるのだからな」
「そ、それは確かにそうですが…。しかしネイとロミアの関係が良いものではないという事は、もう明らかな事であるようですし…」
「そこだよ、僕が彼女たち家族の全員を招待した理由は」
「…?」
フォードの意図がまだ見えてこないブレンスは、その身を乗り出してフォードの話を聞こうと試みる。
「ロミアがただただ被害者であるなら、それはネイだけでなく家族ぐるみで攻撃されている可能性が高い。周囲に漏れ出るロミアの評判は、家族のいう事が物を言うからな。そしてその黒幕がネイであるなら、今頃僕からもたらされた招待状を飛んで喜んでいるはず」
「はい、恐らくそうだとは思います。ネイ様はユーク様との関係をずっと望まれている様子ですから」
「それは僕も気づいている。だからこそ彼女とは過去にも話をしたことがあるわけだが、彼女はその度にロミアの事を下に下げる発言ばかりしてくるんだよ。これは何かあると思わずにはいられないだろう?」
「確かに、なんだかわざとらしく見えてきますね…。一方を下げることで相対的に自分を高く見せようとするやり方は、相手に付け入るうえでの常套手段ではあるわけですから」
だんだんとフォードの狙いを理解してきた様子のブレンスは、その息をフォードに合わせていく。
「ロミア様とネイ様、その関係が噂に聞くものと全く異なっていたのなら、これは王宮を巻き込む大問題となることでしょう。もしもフォード様がお考えの事が本当であったなら、少なくともネイ様はこれまで通り自由に動くことはできなくなると思われますね」
「一方でロミアには、これまで我慢に我慢を重ねてきたことに対する褒美を与えてもいいかもしれない。これほど冷遇を続けられてなおあの家族に対して反抗していなかったなら、彼女は相当に我慢強い性格の持ち主だという事になる。それは間違いなく、この王宮でやっていくうえで必要な力となろう」
「…フォード様、もしやあなたは…?」
ブレンスはそこまで言葉を発したものの、そこから先はあえて口にしなかった。
一方のフォードもまたブレンスの質問に言葉を返すことはなく、独特のムードが二人を包み込む中でその会話は終わりを迎えた。
「フォード様、舞踏会への招待状にネイ様とロミア様を招待されたそうですね?一体どのような風の吹き回しでしょう?」
「なんだ、探りにでも来たのか?」
仕事を終え、自室で紅茶を口にしながらくつろぐフォードの元に、彼の臣下の一人であるブレンスが訪れ、そう言葉を発した。
その様子はどこかフォードの様子をうかがっているような雰囲気であり、フォードの方もそんなブレンスの雰囲気を察している。
「なにか特別なお考えがおありなのですか?もしも、もしもフォード様が一人の女性をその隣に置くことに決めたのでしたら、人々が抱く関心はそれはそれは大きなものになることともいますが…」
「言いすぎだよブレンス。僕はただ試したいだけだからな」
「試したい…?」
予想とは違った言葉を返されたためか、ブレンスはやや意外そうな表情を浮かべる。
フォードが試したいこととは一体何なのか、その答えを知るべくブレンスはこう質問を投げかけた。
「お二人の姉妹のうち、フォード様が気になっておられる方がいらっしゃるという事でしょうか?」
「だとしたらどうだ?」
「……」
このやり取りを楽しんでいるかのような口ぶりのフォードに対し、ブレンスは真面目な雰囲気を変えない。
そして一瞬だけ何かを考えるようなそぶりを見せた後、こう言葉を返した。
「もうお決めになられているのですか?お二人のうちのどちらをこの王宮に招き入れるのかを…?」
「ブレンス、まずお前に聞いておくべきだったな。二人の姉妹は姉のロミア、妹のネイである。僕が興味を持ったのはそのどちらであるか、分かるか?」
「それは…」
そんなもの誰だって分かる、と言った様子でブレンスは言葉を続ける。
「ネイ様は誰からも愛される可愛らしい女性であるともっぱらの噂です。その魅力はきっと王宮の中に入っても維持されるものであり、彼女の存在をめぐってはいろいろな男性たちが水面下で交渉を行い続けているとのこと。それくらいに人気と実力を兼ね備えた女性であるといえます」
「ほう」
「その一方、ロミア様に関してはほとんど良い話を聞きません。ネイ様が相当に魅力にあふれる女性なわけですから、どうしても彼女と比べられてしまいます。その結果彼女に好意を示す男性はほとんどおらず、しかもその事をすべて妹であるネイ様のせいにされているという噂。なかなかひどい性格をされているそうですが…」
「らしいな。僕の所にもそう言った話が入ってきた」
「なら、やはりどちらに興味をお持ちなのかは明確かと思うのですが…」
最初からわかりきっていたこと、とでも言わんばかりの様子でそう進言を行うブレンス。
しかしそれに対してフォードは、全く逆の思いを抱いている様子だった。
「しかしそれは、初めからロミアが作り上げた架空のストーリーである可能性がある。だとしたらこれはゆゆしきじたいだ。この王宮に住まうお前のような者までが、ネイの作り上げた話に踊らされているという事になるのだからな」
「そ、それは確かにそうですが…。しかしネイとロミアの関係が良いものではないという事は、もう明らかな事であるようですし…」
「そこだよ、僕が彼女たち家族の全員を招待した理由は」
「…?」
フォードの意図がまだ見えてこないブレンスは、その身を乗り出してフォードの話を聞こうと試みる。
「ロミアがただただ被害者であるなら、それはネイだけでなく家族ぐるみで攻撃されている可能性が高い。周囲に漏れ出るロミアの評判は、家族のいう事が物を言うからな。そしてその黒幕がネイであるなら、今頃僕からもたらされた招待状を飛んで喜んでいるはず」
「はい、恐らくそうだとは思います。ネイ様はユーク様との関係をずっと望まれている様子ですから」
「それは僕も気づいている。だからこそ彼女とは過去にも話をしたことがあるわけだが、彼女はその度にロミアの事を下に下げる発言ばかりしてくるんだよ。これは何かあると思わずにはいられないだろう?」
「確かに、なんだかわざとらしく見えてきますね…。一方を下げることで相対的に自分を高く見せようとするやり方は、相手に付け入るうえでの常套手段ではあるわけですから」
だんだんとフォードの狙いを理解してきた様子のブレンスは、その息をフォードに合わせていく。
「ロミア様とネイ様、その関係が噂に聞くものと全く異なっていたのなら、これは王宮を巻き込む大問題となることでしょう。もしもフォード様がお考えの事が本当であったなら、少なくともネイ様はこれまで通り自由に動くことはできなくなると思われますね」
「一方でロミアには、これまで我慢に我慢を重ねてきたことに対する褒美を与えてもいいかもしれない。これほど冷遇を続けられてなおあの家族に対して反抗していなかったなら、彼女は相当に我慢強い性格の持ち主だという事になる。それは間違いなく、この王宮でやっていくうえで必要な力となろう」
「…フォード様、もしやあなたは…?」
ブレンスはそこまで言葉を発したものの、そこから先はあえて口にしなかった。
一方のフォードもまたブレンスの質問に言葉を返すことはなく、独特のムードが二人を包み込む中でその会話は終わりを迎えた。
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