ごめんね、第一王子様が選んだのはあなたじゃなく私だったみたい

睡蓮

文字の大きさ
2 / 6

第2話

しおりを挟む
――王宮での会話――

「フォード様、舞踏会への招待状にネイ様とロミア様を招待されたそうですね?一体どのような風の吹き回しでしょう?」
「なんだ、探りにでも来たのか?」

仕事を終え、自室で紅茶を口にしながらくつろぐフォードの元に、彼の臣下の一人であるブレンスが訪れ、そう言葉を発した。
その様子はどこかフォードの様子をうかがっているような雰囲気であり、フォードの方もそんなブレンスの雰囲気を察している。

「なにか特別なお考えがおありなのですか?もしも、もしもフォード様が一人の女性をその隣に置くことに決めたのでしたら、人々が抱く関心はそれはそれは大きなものになることともいますが…」
「言いすぎだよブレンス。僕はただ試したいだけだからな」
「試したい…?」

予想とは違った言葉を返されたためか、ブレンスはやや意外そうな表情を浮かべる。
フォードが試したいこととは一体何なのか、その答えを知るべくブレンスはこう質問を投げかけた。

「お二人の姉妹のうち、フォード様が気になっておられる方がいらっしゃるという事でしょうか?」
「だとしたらどうだ?」
「……」

このやり取りを楽しんでいるかのような口ぶりのフォードに対し、ブレンスは真面目な雰囲気を変えない。
そして一瞬だけ何かを考えるようなそぶりを見せた後、こう言葉を返した。

「もうお決めになられているのですか?お二人のうちのどちらをこの王宮に招き入れるのかを…?」
「ブレンス、まずお前に聞いておくべきだったな。二人の姉妹は姉のロミア、妹のネイである。僕が興味を持ったのはそのどちらであるか、分かるか?」
「それは…」

そんなもの誰だって分かる、と言った様子でブレンスは言葉を続ける。

「ネイ様は誰からも愛される可愛らしい女性であるともっぱらの噂です。その魅力はきっと王宮の中に入っても維持されるものであり、彼女の存在をめぐってはいろいろな男性たちが水面下で交渉を行い続けているとのこと。それくらいに人気と実力を兼ね備えた女性であるといえます」
「ほう」
「その一方、ロミア様に関してはほとんど良い話を聞きません。ネイ様が相当に魅力にあふれる女性なわけですから、どうしても彼女と比べられてしまいます。その結果彼女に好意を示す男性はほとんどおらず、しかもその事をすべて妹であるネイ様のせいにされているという噂。なかなかひどい性格をされているそうですが…」
「らしいな。僕の所にもそう言った話が入ってきた」
「なら、やはりどちらに興味をお持ちなのかは明確かと思うのですが…」

最初からわかりきっていたこと、とでも言わんばかりの様子でそう進言を行うブレンス。
しかしそれに対してフォードは、全く逆の思いを抱いている様子だった。

「しかしそれは、初めからロミアが作り上げた架空のストーリーである可能性がある。だとしたらこれはゆゆしきじたいだ。この王宮に住まうお前のような者までが、ネイの作り上げた話に踊らされているという事になるのだからな」
「そ、それは確かにそうですが…。しかしネイとロミアの関係が良いものではないという事は、もう明らかな事であるようですし…」
「そこだよ、僕が彼女たち家族の全員を招待した理由は」
「…?」

フォードの意図がまだ見えてこないブレンスは、その身を乗り出してフォードの話を聞こうと試みる。

「ロミアがただただ被害者であるなら、それはネイだけでなく家族ぐるみで攻撃されている可能性が高い。周囲に漏れ出るロミアの評判は、家族のいう事が物を言うからな。そしてその黒幕がネイであるなら、今頃僕からもたらされた招待状を飛んで喜んでいるはず」
「はい、恐らくそうだとは思います。ネイ様はユーク様との関係をずっと望まれている様子ですから」
「それは僕も気づいている。だからこそ彼女とは過去にも話をしたことがあるわけだが、彼女はその度にロミアの事を下に下げる発言ばかりしてくるんだよ。これは何かあると思わずにはいられないだろう?」
「確かに、なんだかわざとらしく見えてきますね…。一方を下げることで相対的に自分を高く見せようとするやり方は、相手に付け入るうえでの常套手段ではあるわけですから」

だんだんとフォードの狙いを理解してきた様子のブレンスは、その息をフォードに合わせていく。

「ロミア様とネイ様、その関係が噂に聞くものと全く異なっていたのなら、これは王宮を巻き込む大問題となることでしょう。もしもフォード様がお考えの事が本当であったなら、少なくともネイ様はこれまで通り自由に動くことはできなくなると思われますね」
「一方でロミアには、これまで我慢に我慢を重ねてきたことに対する褒美を与えてもいいかもしれない。これほど冷遇を続けられてなおあの家族に対して反抗していなかったなら、彼女は相当に我慢強い性格の持ち主だという事になる。それは間違いなく、この王宮でやっていくうえで必要な力となろう」
「…フォード様、もしやあなたは…?」

ブレンスはそこまで言葉を発したものの、そこから先はあえて口にしなかった。
一方のフォードもまたブレンスの質問に言葉を返すことはなく、独特のムードが二人を包み込む中でその会話は終わりを迎えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。

テンテン
恋愛
男爵令嬢エミリアは、パーティー会場でレイブンから婚約破棄を宣言された。どうやら彼の妹のミラを、エミリアがいじめたことになっているらしい。エミリアはそのまま断罪されるかと思われたが、彼女の親友であるアリアが声を上げ……

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。 しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。 ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。 セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。

(完結)婚約を破棄すると言われましても、そもそも貴方の家は先日お取り潰しになっていましたよね?

にがりの少なかった豆腐
恋愛
同じ学園に通う婚約者に婚約破棄を言い渡される しかし、その相手は既に貴族ではなくなっていた。それに学園に居る事自体おかしいはずなのに とっくに婚約は破棄されているのに、それに気づいていないのかしら? ※この作品は、旧題:婚約破棄? いえ、そもそも貴方の家は先日お取り潰しになっていますよ? を加筆修正した作品となります。

処理中です...