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第4話
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――その頃、侯爵家では――
「まずいことになったまずいことになった…。まさかエリステルが自ら失踪するという選択をとってくるなどとは…」
それまで完全に勝ち誇った様子でいたノラン侯爵は、完全に裏を突かれて焦りの色を隠せなかった。
それもそのはず、自分の中に思い描いた計画ではエリステルは婚約破棄を申し出てくることとなっており、自分はそれを受け入れる形で二人の関係を終わらせるつもりであり、結果自分は相手に騙された被害者であったというていをとろうとしていたのだから。
「最近は自分でもわかるほど、周りの貴族家の連中が色めき立っている様子…。やはり貴族のスキャンダルは面白がられる運命か…」
婚約者に婚約前にみすみす失踪される貴族男性など、全く前例もない話であった。
婚約後それなりの時間が経過した後になって関係が破綻しただとか、それぞれの性格が合わなくなって別れることを選択する夫婦はよく聞く話であるものの、その段階に立つ前に相手に消えられる貴族など、一体どう理由を付ければそんなことになるのかが全く想像もできないためだ。
「な、なんとか手を打たなければ…。このまま僕の印象が悪化していってしまったら、それこそ僕は貴族家としての立場を失ってしまうことになるかもしれない…。それだけはなんとしても阻止しなければ…。エリステルのために立場を失ってしまうなど、こんなバカげた話はないのだから…」
少なくとも侯爵の心の中に最も大きく存在していた感情はそれでああった。
彼は自身が愛するユリアのために立場を失う事は何とも思っていなかったが、完全に下に見ていたエリステルのために立場を失う事は、とても受け入れられないでいたのだった。
するとその時、自室で考え込む侯爵の元にユリアが血相を変えた様子で駆けこんできた。
「失礼します!!!侯爵様、どういうことですか!!!」
「ユリア…。そんな気を荒げていったい何が…」
「なにがじゃないですよ!!」
まだ自分の置かれている状況の詳細をユリアに話してはいない侯爵。
そのため彼女が感情を荒げていることにやや驚きを感じながらも、冷静に彼女の言葉を引き出しにかかる。
「お、落ち着くんだ…。そんな急に言葉を荒げ荒れても、何のことだか…」
「私が外の街を出歩いたら、多くの人々から指をさされて笑われるようになってしまっているんです!!なんでも、私が侯爵様のスキャンダルの中心人物だとか言われて!!これはどういうことですか!!」
「そ、そんなバカな…!?」
自分が置かれている状況は決して良いものではない事を、侯爵は理解しているつもりだった。
しかし、どうやら自分が考えているよりも現実は相当悪いものであるという事を、ここに来てようやく察することができた様子…。
「(ま、まだエリステルの事を婚約破棄したという事しかバレていないはずだぞ…!?なのにどうしてユリアの話まで表になってしまっているんだ…!?)」
今はまだ貴族たちの間で、疑惑が広がっているに過ぎない、だからここからいくらでも巻き返すことが出来るはず、侯爵はそう考えていた。
しかし、事態は彼が思うほど悠長な事を言っていられる段階ではないという事を、ユリアが持ち込んだエピソードが物語っていた。
「このままじゃ私、完全に街の人々の笑いものじゃないですか!!これって話と全然違うでしょう!!侯爵様は私の事をこの世界で一番幸せにしてくれると言ったではありませんか!!なのに現実は全く反対で、誰からも馬鹿にされているような気がするんですけれど!!これでどうやって幸せを感じろとおっしゃるのですか!!」
「ちょ、ちょっと待ってほしいユリア!!僕は決して君に嘘を言ったりはしない!!これは何かの間違いに決まっているんだ!!でなければ急にこんなでたらめな話が広まることなどありえないのだから!」
ユリアをたしなめるためにそう言葉を発する侯爵ではあるものの、広まっている話の内容は決してでたらめなものではなく、きちんと現実に即したものであった。
それゆえにこの状況を好転させることはなかなか難しい事ではあるのだが、彼は思わずそう言わずにはいられなかった様子…。
「(す、少なくともまだなんとか逆転するだけの手が残されているはず…。このまま貴族家としての価値を失ってしまったりしたら、それこそ僕はユリアからも愛想を尽かされてしまってすべてを失うことになってしまいかねない…。エリステルに失踪を許しただけでまさかこんなことになってしまうなど全くの想定外だったが、このまま終わるわけにはいかないのだ…)」
あくまでまだあきらめてはいない侯爵であったものの、彼はまだ気づいていなかった。
この時すでに街の人々はエリステルに対する侯爵の行いのすべてを知っており、侯爵が貴族家としては全く相応しい男ではないということを理解し始めていたという事に…。
「まずいことになったまずいことになった…。まさかエリステルが自ら失踪するという選択をとってくるなどとは…」
それまで完全に勝ち誇った様子でいたノラン侯爵は、完全に裏を突かれて焦りの色を隠せなかった。
それもそのはず、自分の中に思い描いた計画ではエリステルは婚約破棄を申し出てくることとなっており、自分はそれを受け入れる形で二人の関係を終わらせるつもりであり、結果自分は相手に騙された被害者であったというていをとろうとしていたのだから。
「最近は自分でもわかるほど、周りの貴族家の連中が色めき立っている様子…。やはり貴族のスキャンダルは面白がられる運命か…」
婚約者に婚約前にみすみす失踪される貴族男性など、全く前例もない話であった。
婚約後それなりの時間が経過した後になって関係が破綻しただとか、それぞれの性格が合わなくなって別れることを選択する夫婦はよく聞く話であるものの、その段階に立つ前に相手に消えられる貴族など、一体どう理由を付ければそんなことになるのかが全く想像もできないためだ。
「な、なんとか手を打たなければ…。このまま僕の印象が悪化していってしまったら、それこそ僕は貴族家としての立場を失ってしまうことになるかもしれない…。それだけはなんとしても阻止しなければ…。エリステルのために立場を失ってしまうなど、こんなバカげた話はないのだから…」
少なくとも侯爵の心の中に最も大きく存在していた感情はそれでああった。
彼は自身が愛するユリアのために立場を失う事は何とも思っていなかったが、完全に下に見ていたエリステルのために立場を失う事は、とても受け入れられないでいたのだった。
するとその時、自室で考え込む侯爵の元にユリアが血相を変えた様子で駆けこんできた。
「失礼します!!!侯爵様、どういうことですか!!!」
「ユリア…。そんな気を荒げていったい何が…」
「なにがじゃないですよ!!」
まだ自分の置かれている状況の詳細をユリアに話してはいない侯爵。
そのため彼女が感情を荒げていることにやや驚きを感じながらも、冷静に彼女の言葉を引き出しにかかる。
「お、落ち着くんだ…。そんな急に言葉を荒げ荒れても、何のことだか…」
「私が外の街を出歩いたら、多くの人々から指をさされて笑われるようになってしまっているんです!!なんでも、私が侯爵様のスキャンダルの中心人物だとか言われて!!これはどういうことですか!!」
「そ、そんなバカな…!?」
自分が置かれている状況は決して良いものではない事を、侯爵は理解しているつもりだった。
しかし、どうやら自分が考えているよりも現実は相当悪いものであるという事を、ここに来てようやく察することができた様子…。
「(ま、まだエリステルの事を婚約破棄したという事しかバレていないはずだぞ…!?なのにどうしてユリアの話まで表になってしまっているんだ…!?)」
今はまだ貴族たちの間で、疑惑が広がっているに過ぎない、だからここからいくらでも巻き返すことが出来るはず、侯爵はそう考えていた。
しかし、事態は彼が思うほど悠長な事を言っていられる段階ではないという事を、ユリアが持ち込んだエピソードが物語っていた。
「このままじゃ私、完全に街の人々の笑いものじゃないですか!!これって話と全然違うでしょう!!侯爵様は私の事をこの世界で一番幸せにしてくれると言ったではありませんか!!なのに現実は全く反対で、誰からも馬鹿にされているような気がするんですけれど!!これでどうやって幸せを感じろとおっしゃるのですか!!」
「ちょ、ちょっと待ってほしいユリア!!僕は決して君に嘘を言ったりはしない!!これは何かの間違いに決まっているんだ!!でなければ急にこんなでたらめな話が広まることなどありえないのだから!」
ユリアをたしなめるためにそう言葉を発する侯爵ではあるものの、広まっている話の内容は決してでたらめなものではなく、きちんと現実に即したものであった。
それゆえにこの状況を好転させることはなかなか難しい事ではあるのだが、彼は思わずそう言わずにはいられなかった様子…。
「(す、少なくともまだなんとか逆転するだけの手が残されているはず…。このまま貴族家としての価値を失ってしまったりしたら、それこそ僕はユリアからも愛想を尽かされてしまってすべてを失うことになってしまいかねない…。エリステルに失踪を許しただけでまさかこんなことになってしまうなど全くの想定外だったが、このまま終わるわけにはいかないのだ…)」
あくまでまだあきらめてはいない侯爵であったものの、彼はまだ気づいていなかった。
この時すでに街の人々はエリステルに対する侯爵の行いのすべてを知っており、侯爵が貴族家としては全く相応しい男ではないということを理解し始めていたという事に…。
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