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第1話
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「どうしてこんな簡単なこともできないのか…。これじゃあ婚約者として君を迎え入れた意味が全くないじゃないか…。聞いているのかイザベラ」
「ご、ごめんなさい、アレス様…」
私の言動に腹を立てながらその口をとがらせているのは、このアルバレス王国の第一王子であるアレス様。
私はそんな彼に一目ぼれをされ、こうして婚約者としてこの王宮に入ることとなったのだけれど、その毎日は私が思っていた以上に苦しいものだった。
「食事会では僕以外の男と目を合わせてはいけないと何度も言っているよな?それがどうして守れない?」
「ごめんなさい…」
というのも、このアレス様は私の想像していた以上に束縛が激しい性格をしており、私が少し他の男性と絡んだというだけで毎回こうして叱責されていた。
「僕にとって君がそういう行為をしてくるというのは、裏切り行為でしかないんだよ。君は僕が婚約者として君の事を受け入れた思いが理解できていないのかい?」
「い、いえ…」
「第一王子である僕と君とでは、はっきり言ってその存在価値に大きな違いがある。君はこの僕の言うことをすべて聞かなければ、その埋め合わせをすることはできないんだ。だというのに、そこで自分のわがままを出すような女を、愛せるはずがないだろう?」
あくまで私は彼の所有物だから、命令されたとおりに従えという立場を崩さない…。
私だってできる限り彼の期待に応えようと頑張っているけれど、ここまで強引なやり方をされてしまってはできるものもできない…。
すると、そんな考えを持っていた私の事をアレス様は察したのか、ややその表情を険しいものにしながらこう言葉を発した。
「…なんだ?まさか僕の考えに意見でもしたいのか?」
「そ、そんなつもりは…」
「別にいいんだぞ?言いたいことがあるなら言えばいいじゃないか」
私にはわかる。
口でこそそう言っているけれど、本当にここで私がなにか言葉を返したら今以上に良くない結果になるであろうことを…。
だから私は何も言葉を返さなかったのだけれど、それはそれでよくない結果にたどり着くこととなり…。
「思うところがあるなら好きにすればいいじゃないか。この婚約関係とて、別に強制しているというわけじゃないんだ。君が僕に反旗を翻したいというのなら、僕はそれを止めたりしないとも。出ていきたいのならいつでも出ていくといい」
そう言葉を発するアレス様の表情には、誰の目にもわかるほどの余裕が感じられる。
私がここから出ていくことなどないと確信しているからこそ、そんな表情を見せる事ができるのだろう。
第一王子である自分との婚約関係など、世の女性の全員がその心の中に望むもの。
それを手にしている私が自らそれを捨てるようなことは、絶対にできないと確信している様子。
「僕には君以外にも婚約を望む声はいくらでもあるんだ。今更君以外の相手になったとしても全く影響などない。しかし君の方はどうだ?僕から捨てられてしまったなら、それこそ二度と誰かと結ばれることはないんじゃないのか?そこまできちんと考えているのか?自分ならいくらでも相手が見つかるなどと考えているのなら、それは気持ちの悪い自意識過剰であると言わざるを得ないな」
「……」
私が静かにしていることをいいことに、好き勝手なことを言ってくれるアレス様…。
私は別にここから出ていこうなんて思ってもいなかったけれど、そこまで挑発されたらいっそ本当にそうしてみることの方がいいんじゃないだろうかと思い始める…。
「まぁ、出ていくなんて無理だろうがな。だから君は僕の言うことを聞くしかないんだよ。第一王子との婚約を捨てるだけの勇気が、出せるわけがないのだから」
…アレス様は言いたいことをすべて言ったのか、そのまま私に対して背を向けた後、ゆっくりと私の前から姿を消していった。
部屋の中には叱責を受けた私一人のみが残され、居心地の悪い沈黙が私の体を包み込む。
「(…そこまで言われるのなら、いっそ本当に家出してみてあげようかしら…。あんな余裕そうな表情を浮かべていたアレス様がいったいどんなリアクションを見せてくれるのか、気になって仕方がないもの)」
本当にそこまで想っているのなら、私の家出というのは彼にとって大きな想定外の事となるはず。
絶対に私は自分の元からいなくなることはないと確信しているのだから、そんな私がいなくなるということは相当彼のメンタルにダメージを与える事には違いない。
「(アレス様、それじゃあ私は本当にあなたの前からいなくなってあげましょう…。それでもあなたはいいと言いましたものね?好きにしろと言いましたものね?私はあなたに言われたとおりのことをするだけなので)」
それが後に、私たちの運命を大きく変える一歩になろうとは、この時はまだ想像だにしていなかった。
「ご、ごめんなさい、アレス様…」
私の言動に腹を立てながらその口をとがらせているのは、このアルバレス王国の第一王子であるアレス様。
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「ごめんなさい…」
というのも、このアレス様は私の想像していた以上に束縛が激しい性格をしており、私が少し他の男性と絡んだというだけで毎回こうして叱責されていた。
「僕にとって君がそういう行為をしてくるというのは、裏切り行為でしかないんだよ。君は僕が婚約者として君の事を受け入れた思いが理解できていないのかい?」
「い、いえ…」
「第一王子である僕と君とでは、はっきり言ってその存在価値に大きな違いがある。君はこの僕の言うことをすべて聞かなければ、その埋め合わせをすることはできないんだ。だというのに、そこで自分のわがままを出すような女を、愛せるはずがないだろう?」
あくまで私は彼の所有物だから、命令されたとおりに従えという立場を崩さない…。
私だってできる限り彼の期待に応えようと頑張っているけれど、ここまで強引なやり方をされてしまってはできるものもできない…。
すると、そんな考えを持っていた私の事をアレス様は察したのか、ややその表情を険しいものにしながらこう言葉を発した。
「…なんだ?まさか僕の考えに意見でもしたいのか?」
「そ、そんなつもりは…」
「別にいいんだぞ?言いたいことがあるなら言えばいいじゃないか」
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だから私は何も言葉を返さなかったのだけれど、それはそれでよくない結果にたどり着くこととなり…。
「思うところがあるなら好きにすればいいじゃないか。この婚約関係とて、別に強制しているというわけじゃないんだ。君が僕に反旗を翻したいというのなら、僕はそれを止めたりしないとも。出ていきたいのならいつでも出ていくといい」
そう言葉を発するアレス様の表情には、誰の目にもわかるほどの余裕が感じられる。
私がここから出ていくことなどないと確信しているからこそ、そんな表情を見せる事ができるのだろう。
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「僕には君以外にも婚約を望む声はいくらでもあるんだ。今更君以外の相手になったとしても全く影響などない。しかし君の方はどうだ?僕から捨てられてしまったなら、それこそ二度と誰かと結ばれることはないんじゃないのか?そこまできちんと考えているのか?自分ならいくらでも相手が見つかるなどと考えているのなら、それは気持ちの悪い自意識過剰であると言わざるを得ないな」
「……」
私が静かにしていることをいいことに、好き勝手なことを言ってくれるアレス様…。
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「まぁ、出ていくなんて無理だろうがな。だから君は僕の言うことを聞くしかないんだよ。第一王子との婚約を捨てるだけの勇気が、出せるわけがないのだから」
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