義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので家出してあげたら、大変なことになったようです

睡蓮

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第1話

「リリア、僕の誘いを受けてくれたこと、本当にうれしく思っているよ」
「フューエル伯爵様…。私も、こうして伯爵様の婚約者となることが出来たことを、本当にうれしく思っています」
「もう君がここに来てくれて、2か月ほどになるだろうか…。幸せな時間というのは、過ぎるのが一瞬で困ったものだ…」

伯爵様はそう言葉をもらしながら、机の上に置かれていたティーカップをそっと口に運び、一息をつかれる。
その振る舞いのすべてが、伯爵位にある貴族男性としてふさわしいもので、私の目にはまぶしく映っていた。
だからこそ私は、伯爵様にふさわしい婚約者とならなければならないのだった…。

――リリアの記憶――

「ほ、ほんとに私なんかが伯爵様の婚約者に…?」
「ああ。僕はぜひ君に受け入れてもらいたいと思っているんだ。リリア、食事会の場で君に会ってからというもの、僕の心の中で君の事が忘れられないんだ。貴族としての仕事に集中しなければならない時も、君の顔が頭の中に浮かんでならない…」

それが、最初に私にアプローチをかけてくださったときの伯爵様の言葉。
そんなことを言われたことが今まで一度もなかった私には、伯爵様の言葉は麻薬のように頭の中に心地よさを広げていった。

「で、でも私なんか…。伯爵様にふさわしい相手かどうか分かりません…。生まれだって特別なものは何もありませんし、政治的な能力にたけるわけでもありませんし…。伯爵様に一体どんなメリットをもたらすことができるか…」
「そんなものは関係ないよ。僕はただただ君の事が欲しいんだ。僕の隣にいてほしいとねがっているんだ。…もちろん、君が嫌でなければの話だけれど…」
「そ、そんな!嫌だなんて!」

嫌であるはずがない。
伯爵様からここまで積極的に声をかけられて、いやだと感じる女はここにはいないだろう。
それほどに魅力ある言葉を、私はかけられたのだから。

「わ、私でよければ、伯爵様のお側にいさせていただきたいと思っています
…!」
「ほ、本当かい!?いいのかい!?」
「はい…!」
「それはよかった…!ありがとう、なんと感謝の言葉を告げればいいか…!」

私がそう返事を伝えた時の伯爵様は、本当に心の底から嬉しそうな表情を浮かべておられました。
それを見て私自身も、一段とうれしさがこみあげてきたのを覚えています。

「リリア、君の事はこの僕が必ず幸せにして見せる。いや、見せるではだめだな。約束しよう、幸せにすると」
「伯爵様……」

そのお側にいられるだけでも、私にとっては過ぎるほどの幸せだというのに、こんな言葉までかけていただいて、私はどう伯爵様に思いをお返しすればいいのか…。

「さて、それじゃあこれから忙しくなるな…!僕と君の関係が確かなものであると、周りの貴族たちに見せつけてやらないと…!」
「そ、そんな大げさな…。私は伯爵様から思いを頂けるだけで、他に何もいりはしないのですよ?」
「そこまで謙遜する必要はないとも。リリア、僕たちの思いの強さを他の者たちに見せて回ってやろうではないか。それこそ、もう十分ですと嫌がられるくらいにね♪」
「は、恥ずかしいですね…」

損なやり取りから始まった私と伯爵様との関係。
その関係は、たぶん周りの貴族家の人たちからも受け入れられていたものだったと思う。
お祝いの言葉もたくさんかけていただいたし、お祝いの場を設けてくださったこともあった。
私はその度にかわいがっていただいたし、中には伯爵様の事をよろしくねと言葉をかけられることもあった。
だから、私たちの関係はこの上ないほどに順調なものである、と言い切れるはずだった。
…でも、私の事を絶対に受け入れられない人たちが、一定数存在していたのです。
…それも、私たちのすぐ近くに…。

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