妹の方が大事だとおっしゃる旦那様。なら妹と婚約すればいいのでは??

睡蓮

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第3話

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――ロンベル伯爵と妹たちの会話――

「リリア、君のおかげでセレシアの腹黒さがよく分かった。僕たちの家族愛が壊されてしまう前にセレシアの事を婚約破棄して、ここから追い出すことが叶ったよ。本当にありがとう」
「とんでもないですお兄様。私はただただ、自分が受けた言葉や思いをそのままお兄様にお伝えしただけなのですから」
「それが難しい事なんだよ。セレシアからひどいことをされたとしても、なかなかそれを誰かに伝えることは難しい。勇気がないとできないからね」
「お兄様…!!!」

リリアは心からうれしそうな表情を浮かべると、その感情のままにロンベルの胸元を目指して飛び込んでいく。
ロンベルもまたそんなリリアの体をうれしそうな表情を浮かべながら受けとめ、そっとリリアの事を抱きしめる。

「お兄様はずっと私のお兄様です。もうどこにもいかないでくださいね?」
「あぁ、もちろんだとも」

その状況だけを見たなら、二人は非常に理想的な兄妹関係にあるものに見えることだろう。
しかし、実際にその裏にある思いは現実のものとは正反対だった…。

「(ちょろいお兄様…。私が言った被害は全部でっち上げたものだというのに、それに一切気づかないだなんて…。そもそも、私がセレシアなんかにいじめられるわけがないでしょう?だって現実は私の方が向こうをいじめていたのだから)」

リリアはすべてが自分の思い通りに進んでいることが楽しくてたまらないのか、心の中に余裕そうな雰囲気でそう言葉をつぶやく。

「(途中で私の嘘が気づかれた時のために、いろいろと言い訳の言葉まで準備していたっていうのに、まさかそれを遣わずに終わっちゃうなんてね。まさかお兄様がここまで短絡的だとは思いもしなかったわ)」

もちろんリリアは、自分の兄であるロンベルが自分の事を溺愛しているということを良く理解している。
だからこそのこの行動であるわけだが、そんな彼女から見ても今回のロンベルの察しの悪さは予想外の者だった様子。

「お兄様、ここでお兄様に改めて感謝の言葉をお伝えさせていただきますね。セレシアからいびられていた私は、かなり心に傷を負っていました…。もうここでやっていくのは無理かもしれないなんて思った日もあって、涙が止まらない日もありました…。もしも、もしもお兄さまが私の味方をしてくださらなかったらどうしようと考えた日もありました…。でも、お兄様は私の言葉を聞いてすぐに私の味方になってくれて、私が願った通りにセレシアの事を追い出してくださいました。私はその事を本当に感謝しています」
「リリア……」

計算された表情でそう言葉を発していくリリア。
彼女の事を溺愛しているロンベルが、彼女からそんなあまあましい言葉をかけられたならどうなるか、誰の目にも明らかである。

…そしてそんな二人の雰囲気を、ドア越しに注目する人物が二人、いた。

「リリアのやつ、まさかとは思うけど…」
「いや、間違いないわ…。この機に乗じて、お兄様の心を自分だけのものにしようとしているのよ…」
「最悪…。自分だけが愛されればいいとでも思っているのかしら?相手の気持ちを考えるってことがあの子にはできないのかしら?」

そこにいたのは他でもない、リリアにとっては姉であるセレーナとミレアであった。
二人はここ最近のリリアの雰囲気に嫌な予感を抱き、こうして部屋の外に集まり、中の様子に聞き耳を立てていたのだった。

「お兄様もお兄様だわ…。リリアがちょっと甘い声を出しているからって、ここまでぞっこんになってしまうなんて…」
「…もしかしたらリリア、セレシアを追い出した後は私たちの事まで追放してやろうなんて思っているんじゃないの??だからここまで急にお兄様の心を掴みにかかっているんじゃないの??」
「……!?」

もともと、彼女たち3人の関係は決して良好というものではなかった。
ロンベルは等しく3人ともを溺愛してはいたものの、3人それぞれは互いを出し抜く行動をとることが以前からあり、今回もまたその火ぶたが切って落とされただけの事だった。
しかし今回がこれまでと違っていたのは、セレシアというロンベルの婚約相手を3人が共闘して追い出した後だということだ。
それまで協力することなどまぁなかった3人が互いの立場を脅かす存在であるセレシアに危機感を抱き、一刻も早くその存在を追い出すべくそれぞれが理想的な動きを見せ、結果的に思い通りセレシアの事を追い出すことに成功した3人。
だからこそ今回は、その経験が活きて少しは仲直りをするのかと思っていた矢先、このような事態が繰り広げられていたのだった。

「…リリア、あなたがその気ならこっちにだって考えがあるんだから…」
「あまり調子に乗らない方がいいってことを教えてあげるわ…」

一難去ってまた一難。
しかし当のロンベルはそのことに全く気付いておらず、彼らがそろって破滅を迎えるタイミングは刻一刻と迫っているのであった…。
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