幼馴染を選んで婚約者を追放した旦那様。しかしその後大変なことになっているようです

睡蓮

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第5話

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――王宮における会話――

「さて、お前には事前に手紙を送って挨拶をさせてもらったわけだが…。なにか申し開きはあるか?」
「誤解ですノラン様!!僕はノラン様の思いを踏みにじったリなどしていません!!」

大きな声で弁明を始めるレーベット。
そこに全く余裕など感じられず、ただただノラン第一王子の怒りを収めることだけに終始している様子だった。

「ミリアとの婚約においてお祝いの言葉を頂いたこと、非常にうれしく思っております!これは本当です!しかし、そのお言葉を裏切ったのはミリアの方なのです!なぜなら婚約破棄はもともと、彼女の方から言い出してきたことなのですから!」
「ほぅ」

もうミリアがいなくなったことを良いことに、過去を自分の都合のいい方に塗り替えることとした侯爵。
検証されるべき人間がこの場にいないのなら、それも可能であろうと考えての事だった。

「ミリアは本当にろくでもない女でして…。侯爵夫人となったのを良いことに、毎日好き勝手な行動を見せ続けていたのです。そもそも僕は侯爵なのですよ?お世話になりっぱなしであるノラン様の面目をつぶすようなことをするはずがないではありませんか」
「なるほど、それがお前の中にある真実というわけか?」

ノランからかけられた言葉に、自身の首を強く縦に振って答えるレーベット。
そこには謎の自身の強さが伴っていたが、それは自分が裁かれることを恐れる思いからくる恐怖心でしかなかった。
そしてその恐怖心を、彼はこの後すぐに増幅させられることとなる。

「そうか。僕の元に集まっている情報によれば、お前は僕の祝ったミリアではなく幼馴染のリナリーの事を一方的に溺愛し、その女の言う事を無条件に信用していた一方、ミリアがどれだけ理論的で理にかなったことを言っていても全く聞き入れなかったという話があるのだが?この食い違いはどう説明するつもりだ?」
「そ、それは…。それは、おそらくその光景を目撃していた者たちが誤解しただけだと思いますよ…?もちろん幼馴染であるリナリーの事は素敵な人物であるとは思っておりますが、それでも婚約者には及びません。僕はリナリーの事よりもミリアの事の方が愛していたと断言できますし、周りの人物たちも心の中ではそう思っていたんじゃないかなぁ…」
「周り?それじゃあミリア自身はどうだったんだ?」
「そ、そこですよ!ノラン様はそこを誤解されているのですよ!そもそも僕とミリアは大変に良好な関係を築いていたのです!しかしいろんなことから食い違いやすれ違いが生じ、最後には婚約関係を改めることとなった話なのです。これは不幸な事故だったのですよ」
「なるほど」

ミリアはもういなくなっている、だから彼女の言い分が聞き入れられることはない。
心の中でそう確信しているレーベットは、そこに自分の助かる可能性を賭けていた。
…しかしその可能性は、この後すぐに打ち消されてしまうこととなる…。

「それじゃあ本人に聞いてみるか…。今この場には、ミリアを呼んでいる」
「な!?!?!?」
「ミリア、君は今の侯爵の話をどう思った?」
「ちょ!?!?!?」

…ミリアが王宮に呼ばれているなど想像もしていなかったレーベットは、その表情を完全に青白くさせてしまう…。
なんとかミリアとの話し合いから逃げ出そうと考えを巡らせるものの、もうすでに彼の力が及ぶ状況ではなかった。

「お久しぶりですね侯爵様。私にあれだけの事をしておきながら、よくもまぁそんな嘘がつけるものです」
「!?!?!?」
「私の言葉を、ノラン様は完全に信用してくださっています。まぁ当然ですよね、あんな一方的な婚約破棄を大々的にアピールするなんて、とてもまともな人間のやることじゃありませんから…。あなたはその事を何とも思っていなかったようですけれど」
「ち、ちがうんだミリア…。あれは愛情表現の一種として…」
「私たちが実はいい関係だったなんて、よくそんなことが言えますね。あなたはただただ幼馴染の事だけを溺愛して、私のことを冷遇し続けてきた。その事を追及されそうになると、あなたは決まって私の事を叱責されて…。最初こそ私は侯爵様に本当の事を訴えていましたが、最後にはそんなことをする気力もなくなってしまいました。あとはノラン様に全てお任せしようと思っていますので」
「だから待ってくれと!!!!」

…かつての婚約者の関係だった時ならば、レーベットはミリアの言葉を力で封じめることが出来たかもしれない。
しかし今この場には、ノラン第一王子がその目を光らせているのだ。
侯爵にここから逆転を行う目など、あるはずがなかった。

「侯爵、この私に嘘を重ねた罪は重い。何度も何度も考え直すようチャンスを与え続けていたというのに、その度にお前は私の思いを裏切ってきた。もう今度こそ、それも終わりだ。潔く罰を受け入れるといい」
「そ、そんな……」

リナリーとの明るい未来どころか、切り捨てたミリアによってその未来を切り捨て返されることとなったレーベット。
その瞳が再び笑う日が来るのは、いつの事となるのであろうか…?
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