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第4話
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――レーベット侯爵視点――
「聞きましたよ侯爵様!!ノラン様から直々にお手紙を頂いたのですって!」
「相変わらず君の情報網はすごいな…。一体どこでその話を聞きつけたんだ…」
リナリーは興味津々と言った様子で僕に向かってそう言葉を発する。
僕はつとめて冷静に彼女の言葉を受け止めながら、その思いにこう言葉を返した。
「ノラン様から手紙が来たのは本当だとも。ただ、僕は今日の仕事が終わってからその内容を見ようと思っていたから、まだ何と書かれているのかは見ていなくて…」
「そんなもの、見なくてもわかるではありませんか!私たちの婚約関係をお祝いしてくれるものに決まっています!ノラン様には侯爵様とミリアの破局をお伝えしたのでしょう?だからこそ私たちの新たな関係に興味を持ってくださっているに決まっています!」
うきうきとした様子でそう言葉を発するリナリー。
それに関しては、僕も全く同じ感情を抱いていた。
「あぁ、それは間違いないことと思うよ。ノラン様から手紙が来ること自体珍しいのだから、わざわざこのタイミングで来るという事はそれはもう僕たちの関係に関することであることは間違いない。そうでなければこのタイミングを選ぶ理由がないのだから」
「さあさあ、ノラン様は一体どのようなお言葉をくださるのでしょう??婚約式典にあたっては王宮を式場として貸し出してくださるとでも書いてあるのでしょうか??早く見たくて仕方がないです!!!」
「そう焦る必要はないとも、リナリー。おいしいものは最後に、というだろう?見ないからこその楽しみもあるというものさ♪」
ノラン様にはすでに、ミリアの性格の悪さと身勝手さは報告してある。
だからこそ、僕がリナリーと新たな関係を築くことに関してなにも文句はいってこないはずなのである。
であるなら、この手紙に書かれている事はお祝いの言葉であることはもう確定している。
その状況で内容を想像するこの時間こそ、最も至福ともいえる時間なのだから。
「もう、侯爵様はもったいぶるんですから…。お楽しみの時間はもう十分ですから、はやくノラン様からのありがたいお言葉を頂きましょう?私もう我慢できませんわ♪」
甘々しい口調でそう言葉を発するミリアの姿に、頭の中をとろけさせていく僕。
その快感はしばらく味わっておきたいものではあったものの、残念ながらそうもいかない。
きわめて名残惜しい思いを抱きながらも、僕はリナリーの期待に応えてノラン様からの手紙の内容を改めることとした。
「仕方ない、リナリーがそこまで言うなら開封しようか。まぁ、中身はすでに分かっているも同然なわけだ…が…」
手紙には封が施されているため、まず僕はその封を解いて中にある紙を取り出す。
するとそこに書かれた文字列が自然と目に入ってくるわけだが、なんだかその内容が僕たちの予想していたものとは違っている様子で…。
「…な、なんだ…?この内容は…」
「こ、侯爵様?」
そんな僕の様子を不自然に思ったのか、リナリーは僕の隣から身を乗り出して手紙の内容に視線を移す。
…するとそこには、明らかに僕たちの期待していたものとは正反対の言葉が書かれていた…。
「ミリアとの婚約を破棄したこと、非常に残念に思っている。侯爵においてはこれまでも身勝手な行動が目についてはいたが、めでたい婚約の場においてこれまでの無礼な態度をすべて免除してやろうと思っていた。だからこそ私は王宮を代表し、ミリアと侯爵との婚約にお祝いのメッセージを届けたのだ。しかし、その婚約関係は侯爵の一方的な理由により破棄されてしまったという。これでは、王宮の思いは完全に裏切られてしまったといっても過言ではない。さらに侯爵はそれに続き、リナリーなる女性との関係を企てているというではないか。これはもう、王宮としては見逃すことのできない段階にあると考えている。今回、侯爵の今後を正式について我々できちんと話し合いをしようと思う。それに伴い侯爵には、以下の日時に王宮を訪れてもらいたい。不参加の場合はそれなりに対処をさせてもらう。以上」
「……」
「……」
…ついさきほどまでの僕たちの感情はどこへやら、一気に地獄の底に叩き落される。
ミリアの事を悪者にして自分たちの事を認めてもらうはずが、全く正反対に作用してしまっているではないか。
いやそれどころか、このまま放っておけば僕は侯爵としての立場さえ危うくなってしまいかねない。
…たった一人の女を婚約破棄しただけでここまで形勢が変わってしまうなど、全くの想定外であった…。
「…どうされるのですか侯爵様?私こんなことになるなんて全く聞いていないのですけれど…」
「し、心配はいらないとも…。ノラン様はおそらく、表面上だけを見てそう感想を抱いているに過ぎない…。僕の話を最後まで聞いてもらったなら、必ずミリアにこそ問題があるのだという事を理解してくれるはずだ…」
「…もしもそうならなかったら?」
「……」
リナリーがレーベットに対する思いを冷ましていったのは、間違いなくこの時が一番のきっかけであっただろう。
そしてそのとどめをとうのミリアに決められることになることを、この時の二人はまだ全く理解していなかった…。
「聞きましたよ侯爵様!!ノラン様から直々にお手紙を頂いたのですって!」
「相変わらず君の情報網はすごいな…。一体どこでその話を聞きつけたんだ…」
リナリーは興味津々と言った様子で僕に向かってそう言葉を発する。
僕はつとめて冷静に彼女の言葉を受け止めながら、その思いにこう言葉を返した。
「ノラン様から手紙が来たのは本当だとも。ただ、僕は今日の仕事が終わってからその内容を見ようと思っていたから、まだ何と書かれているのかは見ていなくて…」
「そんなもの、見なくてもわかるではありませんか!私たちの婚約関係をお祝いしてくれるものに決まっています!ノラン様には侯爵様とミリアの破局をお伝えしたのでしょう?だからこそ私たちの新たな関係に興味を持ってくださっているに決まっています!」
うきうきとした様子でそう言葉を発するリナリー。
それに関しては、僕も全く同じ感情を抱いていた。
「あぁ、それは間違いないことと思うよ。ノラン様から手紙が来ること自体珍しいのだから、わざわざこのタイミングで来るという事はそれはもう僕たちの関係に関することであることは間違いない。そうでなければこのタイミングを選ぶ理由がないのだから」
「さあさあ、ノラン様は一体どのようなお言葉をくださるのでしょう??婚約式典にあたっては王宮を式場として貸し出してくださるとでも書いてあるのでしょうか??早く見たくて仕方がないです!!!」
「そう焦る必要はないとも、リナリー。おいしいものは最後に、というだろう?見ないからこその楽しみもあるというものさ♪」
ノラン様にはすでに、ミリアの性格の悪さと身勝手さは報告してある。
だからこそ、僕がリナリーと新たな関係を築くことに関してなにも文句はいってこないはずなのである。
であるなら、この手紙に書かれている事はお祝いの言葉であることはもう確定している。
その状況で内容を想像するこの時間こそ、最も至福ともいえる時間なのだから。
「もう、侯爵様はもったいぶるんですから…。お楽しみの時間はもう十分ですから、はやくノラン様からのありがたいお言葉を頂きましょう?私もう我慢できませんわ♪」
甘々しい口調でそう言葉を発するミリアの姿に、頭の中をとろけさせていく僕。
その快感はしばらく味わっておきたいものではあったものの、残念ながらそうもいかない。
きわめて名残惜しい思いを抱きながらも、僕はリナリーの期待に応えてノラン様からの手紙の内容を改めることとした。
「仕方ない、リナリーがそこまで言うなら開封しようか。まぁ、中身はすでに分かっているも同然なわけだ…が…」
手紙には封が施されているため、まず僕はその封を解いて中にある紙を取り出す。
するとそこに書かれた文字列が自然と目に入ってくるわけだが、なんだかその内容が僕たちの予想していたものとは違っている様子で…。
「…な、なんだ…?この内容は…」
「こ、侯爵様?」
そんな僕の様子を不自然に思ったのか、リナリーは僕の隣から身を乗り出して手紙の内容に視線を移す。
…するとそこには、明らかに僕たちの期待していたものとは正反対の言葉が書かれていた…。
「ミリアとの婚約を破棄したこと、非常に残念に思っている。侯爵においてはこれまでも身勝手な行動が目についてはいたが、めでたい婚約の場においてこれまでの無礼な態度をすべて免除してやろうと思っていた。だからこそ私は王宮を代表し、ミリアと侯爵との婚約にお祝いのメッセージを届けたのだ。しかし、その婚約関係は侯爵の一方的な理由により破棄されてしまったという。これでは、王宮の思いは完全に裏切られてしまったといっても過言ではない。さらに侯爵はそれに続き、リナリーなる女性との関係を企てているというではないか。これはもう、王宮としては見逃すことのできない段階にあると考えている。今回、侯爵の今後を正式について我々できちんと話し合いをしようと思う。それに伴い侯爵には、以下の日時に王宮を訪れてもらいたい。不参加の場合はそれなりに対処をさせてもらう。以上」
「……」
「……」
…ついさきほどまでの僕たちの感情はどこへやら、一気に地獄の底に叩き落される。
ミリアの事を悪者にして自分たちの事を認めてもらうはずが、全く正反対に作用してしまっているではないか。
いやそれどころか、このまま放っておけば僕は侯爵としての立場さえ危うくなってしまいかねない。
…たった一人の女を婚約破棄しただけでここまで形勢が変わってしまうなど、全くの想定外であった…。
「…どうされるのですか侯爵様?私こんなことになるなんて全く聞いていないのですけれど…」
「し、心配はいらないとも…。ノラン様はおそらく、表面上だけを見てそう感想を抱いているに過ぎない…。僕の話を最後まで聞いてもらったなら、必ずミリアにこそ問題があるのだという事を理解してくれるはずだ…」
「…もしもそうならなかったら?」
「……」
リナリーがレーベットに対する思いを冷ましていったのは、間違いなくこの時が一番のきっかけであっただろう。
そしてそのとどめをとうのミリアに決められることになることを、この時の二人はまだ全く理解していなかった…。
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