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第一章
出会い、そして西へ 《七》
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八戒の右手から放たれた三本の箭は、真っ直ぐに暗闇とかした空に向かい、空中で音をたてて爆発した。するとそこから、粉雪が舞い散るよに白銀が踊り出す。空を飛んでいた妖怪達の上に白銀が落ちていく様は、どこか美しくひと事に思えた。そしてその白銀が妖怪達に触れるやいなや、凄まじい音をたて爆発を繰り返す。悲鳴ともうめき声ともつかぬ声が、白銀と共に消えた。
その次の瞬間、こんどは女が右足を一歩引き右手に構えていた剣を後ろから前方に振り下ろす。すると、剣から紅色の氣が一条の光となって現れ、その光は空中で大きな鋭い剣先となり、一気に空に浮かぶ者達を二つに切り裂く。空中にいた一部の者達は、声をあげる間もなく消えさった。
「えげつねぇ。」
呟く悟浄の前に、空から落ちてなを此方に向かって来ようとする妖怪達が、まるで蠢くように近づいてくる。
「悪いな、此処から先に通すわけにはいかないんだよ。」
ふん、と鼻で笑うような態度を見せながら、悟浄は直立して身体を左側にひねり右手で棍を持ち、前方で水平に回した。三節棍の動きは機敏で変化に富む。用法によって長くも短くも使え、それはあたかも伸縮自在な生き物のようだ。傷ついた者が敵う相手ではない。
前方の二人が圧倒的な力で数を減らし、生き延びた者が悟浄の手で滅せられる。それでも数の多さに物を言わせ、無傷で空から宿屋へと抜け出る者がいる。
「オレの横をとおり抜けられると思うなよ! 伸びろー、如意金箍棒!!」
悟空の声に答えるように、如意金箍棒は凄い速さで横に伸びていく。そしてそれを、悟空はいとも簡単に扱う。キン斗雲に乗り右に左に、時に上に時に下に、妖怪達の行くてを素早く遮り叩き落とす。それはどこか楽しげで、遊んでいるようにも見えた。
落とされた妖怪達は、封印の玉に引き寄せられるように宿屋の前に向かう。立ち向かう丁香は、足を開き腰を落として槍を構えた。槍は突くことに特化した武器だ。切る必要はない。槍頭は短く軽い、だから槍全体の長さの割りに扱いやすい。しかも、槍は刺すだけでなく、長さを利用し打撃することも槍先で切り裂くこともできる。だから丁香は、槍を好んで使う。構えた槍を前方に突き出し敵を刺し、槍を上方から振り下ろし打ち付ける。
そんな中、玄奘は静に己の帯革の尾錠の前で両手を交差させた。そしてその両手の掌を開くと、そこにすっと双剣が現れる。玄奘は現れた二つの剣を両手で掴み取ると、まるで剣舞を披露するように、軽やかに妖怪達を斬り倒していく。左右両方の剣は、攻撃にも防御にもなる。玄奘は剣を寺で、刀を道観で教えられた。両方のよいところを自分なりに取り入れ、それを身を守り人々を救うために使うと決めた。故に、自ら血に染まることを厭わない。だが、その様は僧侶とは信じがたい。この血に染まる姿が三蔵とは。
その時、“キャー” と宿屋から叫び声が聞こえた。中庭の上に、翼を持った妖怪が現れたのだ。恐ろしい顔をして、つり上がった目に口元には牙もあった。鋭く光った指の爪が、まるで獲物を狙うように此方に向けられる。
「ハ、ハムちゃん……」
鈴麗は恐怖に震える声で、自らの掌に乗る玉龍の名前を呼んだ。小さなハムスターは、恐ろしく鋭い瞳で頭上の妖怪を見た。“使いどころを見誤るな”、そう言われた。まだだ、まだ。
「構えろ!」
丁香の弟子達が声を上げ武器を構えたとき、妖怪が中庭に向け急降下してきた。そのとき
「びゅ!」
とハムスターの鳴き声がして、宿屋の周りを赤い何かが包み込んだ。女の、絶対的な力により創られた結界だった。急降下してきた妖怪がその結界に触れると、断末魔の叫び声を上げ消滅していく。三十分しか持ちこたえられない、けれど絶対的な守り。
外にいる六人は息つく間もなく、闘いを続ける。その時、大神の遠吠えが聞こえ、琉格泉が戻ってきた。すると、その琉格泉のあとを追うように、月から鬼のような顔をした翼を持つ者達が舞い出て近づいてくる。その中のもっとも大きな個体が女に近づき、その前に跪き頭を垂れる。しかしすぐさま反転すると、仲間を連れて妖怪達に襲いかかって行った。
宿屋の結界が発動して、もうすぐ三十分がたつ。圧倒的な数だった妖怪達が、月からの加勢で数を減らす。だが、終結はまだ見えない。
「びゅ」
“どうする” と、ハムスターは考える。もうすぐ結界が消える。考えていた小さなハムスターの耳に、遠くから何かの音が聞こえてきた。これは……、これは……! 神の降臨を示す先触れの音だ。先触れが出るほどの神が、降臨しようとしているのだ。先触れの音は、神によって違う。この音は、ナタ太子だ。ハムスターは、音のする方を見つめた。
その時、女も音のする方を見つめていた。
「働け!」
いつ終わるともしれない闘いを繰り返していた玄奘は、じっと一方向を見つめている女に声をかけた。
「ナタが、降りる」
その言葉に、こんな場所であるにも関わらず、一瞬すべての時が止まった。
********
闘いの場面は難しいです(>_<) 詳しく書こうとすると武術用語が満載に。わかるようにと思うと、何がなんだかわからない文面に(T_T)
その次の瞬間、こんどは女が右足を一歩引き右手に構えていた剣を後ろから前方に振り下ろす。すると、剣から紅色の氣が一条の光となって現れ、その光は空中で大きな鋭い剣先となり、一気に空に浮かぶ者達を二つに切り裂く。空中にいた一部の者達は、声をあげる間もなく消えさった。
「えげつねぇ。」
呟く悟浄の前に、空から落ちてなを此方に向かって来ようとする妖怪達が、まるで蠢くように近づいてくる。
「悪いな、此処から先に通すわけにはいかないんだよ。」
ふん、と鼻で笑うような態度を見せながら、悟浄は直立して身体を左側にひねり右手で棍を持ち、前方で水平に回した。三節棍の動きは機敏で変化に富む。用法によって長くも短くも使え、それはあたかも伸縮自在な生き物のようだ。傷ついた者が敵う相手ではない。
前方の二人が圧倒的な力で数を減らし、生き延びた者が悟浄の手で滅せられる。それでも数の多さに物を言わせ、無傷で空から宿屋へと抜け出る者がいる。
「オレの横をとおり抜けられると思うなよ! 伸びろー、如意金箍棒!!」
悟空の声に答えるように、如意金箍棒は凄い速さで横に伸びていく。そしてそれを、悟空はいとも簡単に扱う。キン斗雲に乗り右に左に、時に上に時に下に、妖怪達の行くてを素早く遮り叩き落とす。それはどこか楽しげで、遊んでいるようにも見えた。
落とされた妖怪達は、封印の玉に引き寄せられるように宿屋の前に向かう。立ち向かう丁香は、足を開き腰を落として槍を構えた。槍は突くことに特化した武器だ。切る必要はない。槍頭は短く軽い、だから槍全体の長さの割りに扱いやすい。しかも、槍は刺すだけでなく、長さを利用し打撃することも槍先で切り裂くこともできる。だから丁香は、槍を好んで使う。構えた槍を前方に突き出し敵を刺し、槍を上方から振り下ろし打ち付ける。
そんな中、玄奘は静に己の帯革の尾錠の前で両手を交差させた。そしてその両手の掌を開くと、そこにすっと双剣が現れる。玄奘は現れた二つの剣を両手で掴み取ると、まるで剣舞を披露するように、軽やかに妖怪達を斬り倒していく。左右両方の剣は、攻撃にも防御にもなる。玄奘は剣を寺で、刀を道観で教えられた。両方のよいところを自分なりに取り入れ、それを身を守り人々を救うために使うと決めた。故に、自ら血に染まることを厭わない。だが、その様は僧侶とは信じがたい。この血に染まる姿が三蔵とは。
その時、“キャー” と宿屋から叫び声が聞こえた。中庭の上に、翼を持った妖怪が現れたのだ。恐ろしい顔をして、つり上がった目に口元には牙もあった。鋭く光った指の爪が、まるで獲物を狙うように此方に向けられる。
「ハ、ハムちゃん……」
鈴麗は恐怖に震える声で、自らの掌に乗る玉龍の名前を呼んだ。小さなハムスターは、恐ろしく鋭い瞳で頭上の妖怪を見た。“使いどころを見誤るな”、そう言われた。まだだ、まだ。
「構えろ!」
丁香の弟子達が声を上げ武器を構えたとき、妖怪が中庭に向け急降下してきた。そのとき
「びゅ!」
とハムスターの鳴き声がして、宿屋の周りを赤い何かが包み込んだ。女の、絶対的な力により創られた結界だった。急降下してきた妖怪がその結界に触れると、断末魔の叫び声を上げ消滅していく。三十分しか持ちこたえられない、けれど絶対的な守り。
外にいる六人は息つく間もなく、闘いを続ける。その時、大神の遠吠えが聞こえ、琉格泉が戻ってきた。すると、その琉格泉のあとを追うように、月から鬼のような顔をした翼を持つ者達が舞い出て近づいてくる。その中のもっとも大きな個体が女に近づき、その前に跪き頭を垂れる。しかしすぐさま反転すると、仲間を連れて妖怪達に襲いかかって行った。
宿屋の結界が発動して、もうすぐ三十分がたつ。圧倒的な数だった妖怪達が、月からの加勢で数を減らす。だが、終結はまだ見えない。
「びゅ」
“どうする” と、ハムスターは考える。もうすぐ結界が消える。考えていた小さなハムスターの耳に、遠くから何かの音が聞こえてきた。これは……、これは……! 神の降臨を示す先触れの音だ。先触れが出るほどの神が、降臨しようとしているのだ。先触れの音は、神によって違う。この音は、ナタ太子だ。ハムスターは、音のする方を見つめた。
その時、女も音のする方を見つめていた。
「働け!」
いつ終わるともしれない闘いを繰り返していた玄奘は、じっと一方向を見つめている女に声をかけた。
「ナタが、降りる」
その言葉に、こんな場所であるにも関わらず、一瞬すべての時が止まった。
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