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第一章
川辺の水落鬼 《六》
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登場シーンだけで終わってしまった。
!!(゜ロ゜ノ)ノ
小難しい文面が多々あるかも知れません。
m(__)m
********
冷たい雨を身体に受け、朦朧とする意識の中、玄奘は感じとっていた。何かが生まれるのを……。
朝から気づいていた。いや、もっと前から感じていた、その存在を……。
いつの頃からか、何かが生まれるのを、ハッキリと意識していたんだ。
降り続く雨は何処までも冷たく、身体の奥深く人間の命までも奪い取る一つの道具のよう。
辺りに呼吸する人間は八戒と悟浄しかおらず、今ならばわかる。最初から、水落鬼は呼吸などしていなかった。何処かで、“ぐわぁぁぁ” と、水落鬼の鳴き声が聞こえたような気がした。
その時、近くの木の側で、雨水に流され混じりあった玄奘、八戒、悟浄の血だまりから、一筋の氣が昇り始めた。それはユラユラと次第に数を増し、立ち上る蒸気のように血だまりからあふれ出していく。
濡れた細い氣は独りでに渦をまき、狂ったように動き回り一つに結集しはじめる。そしてソレは生き物のように怪しく変化し、玄奘がやっとの思いで顔を上げた時には、すでにうっすらと人の形をかたどっていた。
「やはり……、そうか……」
うっすらと渦を巻いていた氣が揺れる。怪しげに漂うように、流れる川のように。
氣は自然に人型を形どり、夜の闇に同化するような長い黒髪が見えた。風に調和する流れる黒髪、それは何もかもを覆い尽くす無限の暗幕。
そんな中、姿を現す細く長い指先。美しい指先が夜の闇に舞い、赤い蝋燭の灯火のような衣が姿を現す。現れたばかりの足元に揺らめく赤い衣は、優しい音を奏でそこに吹く風と同化する。そこだけ、無礼な雨と風が消えたように……。
長く靡く赤い袖も風に乗り、やがて真っ赤な襦裙が見えた。ゆったりと組み合わされた襟元からは白い肌が見え隠れし、美しく整った顔立ちが浮かびあがる。
紅色の口元に、形のよい鼻。綴じられた睛眸を開かずとも、その美しさに非の打ち所はない。
まるで、物語な中にのみ存在する神か、この地上で唯一の彫刻家がその命を注いで作った最高傑作の美しい作り物のように、生気すら感じさせることもなく、その美しい生き物は漂い始めている。
紫黒色の髪は流れる千条、万条の絹糸のように、面にかかっては離れ、まるで生き物のように動いていく。
おそらく、後ろ髪と同じ長さまで伸ばされた前髪は、すべて後ろに流されている。先ほどから見えていた黒髪は、この美しい紫黒色の毛先だった。
「チッ……!」
玄奘は、意識も朦朧としたその状態で、舌打ちした。それが、この世にあってはならぬ者、その存在を否定されるべき者、見せかけだけの美しさをした、何よりもおぞましい、人の形をした化け物だと確信したからだ。
風に漂うように揺れていた身体が姿形を持ち、初めてその女が睛眸を開いたとき、玄奘の意識は覚醒し、女の姿を見つけ驚愕すらし、凍りついたように双眸を見開いた。
開かれた女の睛眸は赤みがかった黒、黒檀色だったが、その睛眸はまるで冷たい氷で作られた物のように何の彩りもなく、何も映していなかったからだ。
玄奘とその女の睛眸が重なりあった瞬間、玄奘の生易しい感情は遮断された。此処に存在する女の氷のごとぎ冷たさと、凶器のごとぎ冷血さに。
女は何処までも冷たく冷徹な眼差しで、僅かに口角を上げ、狂気のごとき笑みを浮かべ玄奘を見た。
玄奘は、この冷血極まりない狂気の笑みを浮かべる女を見て、すべては終わったのだと覚悟した。
激しい雷雨の中、覚醒した沙麼蘿は辺りを見回す。近くには、水落鬼と倒れた三人の男。その三人の男を見た瞬間、“あぁ、そうか” と思う。
まるで、昨日のことのように思い出す、あの日あの時。蒼穹に見えた桜の大木に指先を伸ばし
『あぁ……、おね…がい……。どう……か、皇を……まも…って……。天……上の……さく……ら……よ……』
そう願ったあの時、力なく伸ばした指先が地面に落ち暗闇に自らが沈んだあの時、確かに自分の身体から流れ出た赤紅と、近くにあった天蓬、捲簾、金蝉子の赤紅が混ざりあったではないか。それが、こんなことになろうとは。
あの時、自分の赤紅と混ざりあった者達が長い時をかけて生まれ変わり、そしてまたあの時のようにその者達の血が混ざりあい、自分が生まれ出たのだ。何と言う巡り合わせだろうか。
だが、今の自分の姿は仏神ではない。人間と半神の血では、それも仕方のないことか。
しかし、沙麼蘿は感じとっていた。自分の心に、僅かばかりの彩りがあることを。
沙麼蘿は、力なく起き上がろうとしている玄奘の前まで歩み寄ると、その頤に右手の指先をそえ持ち上げた。
「……っ!!」
玄奘の睛眸を沙麼蘿の睛眸が捉え、まるで今まで玄奘が生きてきた時のすべてを探るように見つめる。思わず顔を背けたくなる衝動に耐えながら、玄奘は僅かに顔を歪めた。
その時、激しい稲光が鳴り響き、近くの木が音をたて二つにわれる。沙麼蘿の後方に水落鬼の姿があり、自分達に近づいてくるのがわかった。
玄奘の噛み締められた唇を見て、沙麼蘿の指先が頤から離れる。そして、ニヤリと笑った沙麼蘿が後ろを振り返った。
近づいてきた水落鬼がその拳を上げ、雷の音と共に玄奘と沙麼蘿に向け、上げた拳を振り下ろす。
********
朦朧→意識が確かでないさま
氣→気
暗幕→室内を暗くするために、窓や壁にはりめぐらす黒い幕
灯火→ともした明かり
衣→衣服・着物
襦裙→上は襦、下はスカート(裙)という装束
傑作→作品が非常にすぐれたできばえであること。たま、その作品
紫黒→紫がかった黒
千条・万条→条は細長いものを数えるのに用いる
面→顔
覚醒→目を覚ますこと、目が覚めること
双眸→両方のひとみ
驚愕→ひどく驚くこと
頤→あごの先、下あご
拳→手を握り固めたもの
!!(゜ロ゜ノ)ノ
小難しい文面が多々あるかも知れません。
m(__)m
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冷たい雨を身体に受け、朦朧とする意識の中、玄奘は感じとっていた。何かが生まれるのを……。
朝から気づいていた。いや、もっと前から感じていた、その存在を……。
いつの頃からか、何かが生まれるのを、ハッキリと意識していたんだ。
降り続く雨は何処までも冷たく、身体の奥深く人間の命までも奪い取る一つの道具のよう。
辺りに呼吸する人間は八戒と悟浄しかおらず、今ならばわかる。最初から、水落鬼は呼吸などしていなかった。何処かで、“ぐわぁぁぁ” と、水落鬼の鳴き声が聞こえたような気がした。
その時、近くの木の側で、雨水に流され混じりあった玄奘、八戒、悟浄の血だまりから、一筋の氣が昇り始めた。それはユラユラと次第に数を増し、立ち上る蒸気のように血だまりからあふれ出していく。
濡れた細い氣は独りでに渦をまき、狂ったように動き回り一つに結集しはじめる。そしてソレは生き物のように怪しく変化し、玄奘がやっとの思いで顔を上げた時には、すでにうっすらと人の形をかたどっていた。
「やはり……、そうか……」
うっすらと渦を巻いていた氣が揺れる。怪しげに漂うように、流れる川のように。
氣は自然に人型を形どり、夜の闇に同化するような長い黒髪が見えた。風に調和する流れる黒髪、それは何もかもを覆い尽くす無限の暗幕。
そんな中、姿を現す細く長い指先。美しい指先が夜の闇に舞い、赤い蝋燭の灯火のような衣が姿を現す。現れたばかりの足元に揺らめく赤い衣は、優しい音を奏でそこに吹く風と同化する。そこだけ、無礼な雨と風が消えたように……。
長く靡く赤い袖も風に乗り、やがて真っ赤な襦裙が見えた。ゆったりと組み合わされた襟元からは白い肌が見え隠れし、美しく整った顔立ちが浮かびあがる。
紅色の口元に、形のよい鼻。綴じられた睛眸を開かずとも、その美しさに非の打ち所はない。
まるで、物語な中にのみ存在する神か、この地上で唯一の彫刻家がその命を注いで作った最高傑作の美しい作り物のように、生気すら感じさせることもなく、その美しい生き物は漂い始めている。
紫黒色の髪は流れる千条、万条の絹糸のように、面にかかっては離れ、まるで生き物のように動いていく。
おそらく、後ろ髪と同じ長さまで伸ばされた前髪は、すべて後ろに流されている。先ほどから見えていた黒髪は、この美しい紫黒色の毛先だった。
「チッ……!」
玄奘は、意識も朦朧としたその状態で、舌打ちした。それが、この世にあってはならぬ者、その存在を否定されるべき者、見せかけだけの美しさをした、何よりもおぞましい、人の形をした化け物だと確信したからだ。
風に漂うように揺れていた身体が姿形を持ち、初めてその女が睛眸を開いたとき、玄奘の意識は覚醒し、女の姿を見つけ驚愕すらし、凍りついたように双眸を見開いた。
開かれた女の睛眸は赤みがかった黒、黒檀色だったが、その睛眸はまるで冷たい氷で作られた物のように何の彩りもなく、何も映していなかったからだ。
玄奘とその女の睛眸が重なりあった瞬間、玄奘の生易しい感情は遮断された。此処に存在する女の氷のごとぎ冷たさと、凶器のごとぎ冷血さに。
女は何処までも冷たく冷徹な眼差しで、僅かに口角を上げ、狂気のごとき笑みを浮かべ玄奘を見た。
玄奘は、この冷血極まりない狂気の笑みを浮かべる女を見て、すべては終わったのだと覚悟した。
激しい雷雨の中、覚醒した沙麼蘿は辺りを見回す。近くには、水落鬼と倒れた三人の男。その三人の男を見た瞬間、“あぁ、そうか” と思う。
まるで、昨日のことのように思い出す、あの日あの時。蒼穹に見えた桜の大木に指先を伸ばし
『あぁ……、おね…がい……。どう……か、皇を……まも…って……。天……上の……さく……ら……よ……』
そう願ったあの時、力なく伸ばした指先が地面に落ち暗闇に自らが沈んだあの時、確かに自分の身体から流れ出た赤紅と、近くにあった天蓬、捲簾、金蝉子の赤紅が混ざりあったではないか。それが、こんなことになろうとは。
あの時、自分の赤紅と混ざりあった者達が長い時をかけて生まれ変わり、そしてまたあの時のようにその者達の血が混ざりあい、自分が生まれ出たのだ。何と言う巡り合わせだろうか。
だが、今の自分の姿は仏神ではない。人間と半神の血では、それも仕方のないことか。
しかし、沙麼蘿は感じとっていた。自分の心に、僅かばかりの彩りがあることを。
沙麼蘿は、力なく起き上がろうとしている玄奘の前まで歩み寄ると、その頤に右手の指先をそえ持ち上げた。
「……っ!!」
玄奘の睛眸を沙麼蘿の睛眸が捉え、まるで今まで玄奘が生きてきた時のすべてを探るように見つめる。思わず顔を背けたくなる衝動に耐えながら、玄奘は僅かに顔を歪めた。
その時、激しい稲光が鳴り響き、近くの木が音をたて二つにわれる。沙麼蘿の後方に水落鬼の姿があり、自分達に近づいてくるのがわかった。
玄奘の噛み締められた唇を見て、沙麼蘿の指先が頤から離れる。そして、ニヤリと笑った沙麼蘿が後ろを振り返った。
近づいてきた水落鬼がその拳を上げ、雷の音と共に玄奘と沙麼蘿に向け、上げた拳を振り下ろす。
********
朦朧→意識が確かでないさま
氣→気
暗幕→室内を暗くするために、窓や壁にはりめぐらす黒い幕
灯火→ともした明かり
衣→衣服・着物
襦裙→上は襦、下はスカート(裙)という装束
傑作→作品が非常にすぐれたできばえであること。たま、その作品
紫黒→紫がかった黒
千条・万条→条は細長いものを数えるのに用いる
面→顔
覚醒→目を覚ますこと、目が覚めること
双眸→両方のひとみ
驚愕→ひどく驚くこと
頤→あごの先、下あご
拳→手を握り固めたもの
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