天上の桜

乃平 悠鼓

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第一章

真夜中の産鬼 《一》

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幕間ぽい話でスルッと終わります。多分…。(^^;





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 大きな街を出て数日、玄奘一行は山道を歩いていた。街を出てからはこれと言ったもめ事もなく、何もない山道を珍しくのんびりと進む旅だった。
 これから先は、しばらく小さな村が続く。たいした出来事など、何も起こらないはずだ。そんな山道で一人の女性がうずくまり、苦し気に息をしていた。それを最初に見つけたのは悟空。

「大丈夫か? どっか痛いのか?」

 悟空が走りより声をかければ、振り返ったのは二十代くらいの女性で、お腹の大きな妊婦だった。

「大丈夫…です。少し、気分が悪くて……。」

 そう言う女性に悟空が手をかし、近くの木陰に移動させる。女性は “ふぅ…” と息をはいて、大きくなったお腹を撫でると

「ありがとう…ございます……。」

 と悟空に言って、ニッコリと笑った。この女性は美友ビユウと言い、近くの村にある小さな宿屋の娘で、今日は宿屋のお客様に夕食として出す山菜を採りに山に入ったが、急に気分が悪くなり蹲っていたと言う。
 玄奘一行はちょうどその村に泊まる予定で歩みを進めていたため、美友に案内してもらいながら村まで行くことになった。

「すみません、荷物まで持っていただいて」
「いいって。これ、オレ達の夕食になるんだろう」

 妊婦の美友を気遣って、悟空が美友の持っていた山菜が入った籠を持ち、ゆっくりと歩く。この季節は山の恵みが多く、美味しい山菜がたくさん採れるのだそうだ。悟空が、自分達は色々な場所を旅しながら西へ向かっているんだと話せば

「そうですか、西へ行かれる旅の途中なのですね。私はこの村から出たことはありませんが、よその地には色々なものがあるんでしょうね。想像もつきませんけど。あっ、此処ここがうちの宿屋になります。どうぞ」

 と、村に入り案内してくれた。そこは、小さな村の美友の両親が営む小さな宿屋。それが今日の玄奘一行の寝床となる。玄奘一行以外には二組の旅人しかおらず、宿屋の主人達は大神オオカミを連れた一行を大歓迎してくれた。
 こじんまりとした宿屋の中で、一番大きな部屋は何時いつものごとく大神と沙麼蘿の部屋となり、その横の小さめの部屋二つが玄奘と悟空、悟浄と八戒に宛がわれる。

沙麼蘿さばら
「わかっている」

 琉格泉るうのの言葉に、沙麼蘿は答えた。その時、琉格泉の頭の上にいた玉龍ハムスター

「ぴゅー」

 “此処、何かいるよねー” と、呑気のんきに鳴いた。こんな山奥の小さな村に、いったい何がいると言うのか。たいして人も多くはなく、たいした産業があるとは思えない小さい村。
 でも、この村に入った時から感じる何者かの気配。それは、宿屋に近づくたびに強くなった。この宿屋に何かいるのは間違いだろう。そしてこの村に入る時に見た、小さいお墓の多さ。
 確かに、山奥の村では医者もおらず子供が育たぬこともある。だがこの小さな村では、それが多すぎる気がするのだ。“さて、どうするか?” まぁ、しばらくは沙麼蘿は様子見だ。玄奘達がなんとかするだろう。








「うわ~、うまそう!」

 悟空の前に出されたのはこの村のジビエ料理と、今日美友ビユウが山で採ってきた山菜の料理だった。いかにも山奥の小さな村の地産地消の料理。その素朴な料理に舌鼓を打ちつつ

「この村に入る時、お墓がたくさんありましたよね。気になって聞いてみたんですが、この村では出産時に亡くなる女性が多いらしく、女性とその赤ちゃんのお墓らしいですよ」
「まぁ。田舎じゃあるちゃ、あることだな」
「でも、多すぎると思いませんか悟浄」

 八戒と悟浄がに気が付き、話をしている。その話を聞いていた玄奘は

「お前達、産鬼さんきを知っているか」

 と、言った。産鬼とは、元は人間であった女のなれの果て。難産で死んだ女が “産鬼” と言う妖怪になってしまうのだ。“産鬼”は、生きている妊婦にとりついて出産を妨げる。
 “産鬼”はふつう、人間の女性と見分けがつかない。ただ一つ違うのは、喉のところに血餌けつじと呼ばれる紅い一筋の線があり、これにすがって妊婦の腹に入り込む。そして、この血餌を胎胞たいほうに結びつけて、出産できないようにしてしまうのだ。
 また、これを何度も引っ張って激痛を与える。どんなに丈夫な女性でも、三度、四度と引っ張られると、必ず死んでしまうのだ。  

「産鬼がいる村は、難産で死ぬ妊婦と赤ん坊が多い」
「では、この村には産鬼がいると」

 玄奘の話に八戒が聞けば “さぁな” と言葉をにごしつつ美友を見た。美友のお腹も大きい。

「それって、あの姉ちゃんが危ないんじゃ」

 そう、悟空の言う通り、美友はまもなく出産予定日なのだ。その “産鬼” がいれば、美友はどうなるのか。

「ぴゅ」

 “そうだよー、あのお姉さんあぶないよね” と玉龍が鳴く。やっぱり危ないのかと、八戒と悟浄が顔を見合せた。

「どうしたものでしょうか」

 と呟く八戒に、

「産鬼ならば、その時にならなければ何もできることはない」

 と、玄奘は言いきった。そう、“産鬼” とは、出産の時にしか人間の前には姿を表さないのだ。その時にならなければ、日常に何の危険も支障もない。
 の気配を感じなから、玄奘一行の夜は更けて行った。





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次回投稿は13日か14日が目標です。
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