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第一章
残花、その名残を 《十一》
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すみません、時間の都合で後書きの“聞きなれない言葉の説明”が書けていません。(>_<)
明日中には終わらせますので、気になる方は明日以降に見ていただけると助かります。m(__)m
今回も、残酷な場面があります。
次回の投稿は9日か10日が目標です。
※11/5 後書きを書きました。
********
地面に落ちた焔魂が、炎のような氣を放つ。だが、すぐに焔魂の中から白百合色の氣が溢れ出て、赤い蓮の花のような焔魂と交ざり合う。
水晶でできたような蓮の花の中で赤色と白百合色がぐるぐると鬩ぎ合い、我こそがこの華魂の主であると主張する。身体をなくした今となっては、花韮と焔魂が如何にして闘っているのかわからない。
「いったい、どうなってる」
悟浄や父親は、地面に転がった焔魂を見ることしかできない。だが、焔魂の中では奪い取られる者と奪い取るモノとの激しい闘いが繰り広げられている。それは、沙麼蘿の睛眸にはとてもよく見えた。
「一度だけだ。半神のお前には、それしか耐えられまい。ナウマク・サマンダ・ボダナン・ガララヤン・ソワカ」
鬼神を父に持ち、尚且つ焔魂と言う敵に立ち向かう花韮に与えられる力は、鬼神であった阿修羅の力のみ。如何なる人や神であろうと、その広い慈愛の心で優しく救いの手を差しのべる愛染明王の力ではない。
阿修羅の力は強大だ。半神の花韮の身には、例えそれが花韮に力を与えるものであったとしても、耐え難い苦しみとなるだろう。“望むものが欲しければ、もがき苦しもうと闘いぬけ”、沙麼蘿は自らの胸の前で素早く印を結び真言を唱えると、その右手の掌を焔魂に向けた。
沙麼蘿の掌から紅色の光が溢れ出て、地面に転がる焔魂に注ぎ込まれる。直接、その強大な阿修羅の力を受ける焔魂は、たまったものではない。悟浄に傷をつけられた場所から、さらにひびが入って行く。だが、それでも、ここまで大きくなった華魂は割れはしない。
焔魂の中から二人分の悲鳴が聞こえ、ガタガタと焔魂が動く。そして、うっすらと二つの人形が空中に浮かび上がる。顔すらわからぬその人形に、悟浄と父親は花韮を見いだしその手を伸ばす。
『割れる! 割れる! この焔魂が割れてしまう!! 』
『人の命を奪い尽くすくらいなら、粉々に割れてしまえ!!』
『やめろーー!』
割れるはずのない焔魂に、割れてしまうのではないかと思わせる気迫が花韮にはあった。二つの人形が、争いを繰り返す。その一つの人形の手には短剣のようなものが握られ、その短剣がもう一つの人形の胸を貫いた。その瞬間、短剣で貫かれた方の胸元だけではなく、貫いた方の胸元からも赤い花びらが飛び散る。
『私は…! 私…は! 人の命を奪い尽くすようなモノになんか…ならない!! 焔魂を消滅させて…、私は…、ナニカを守るための…そんなモノになる! たった一人残る弟を守るため…、その弟が守るモノを守れる…、そんな華魂に…なる!! そのためなら…、命あるモノを殺めることも…厭わない! 私は…、家族を…、弟を守るための…モノになる!! 散れーーー!!』
その時、胸元を貫いていた短剣が立派な剣になり、人形が粉々に砕け散った。焔魂から炎のような氣が消えさり、透明な美しい水晶の蓮の花が姿を表す。
「姉貴!」
『聞い…て、悟浄…。貴方は…この…華魂を…、自分のため…に、使いな…さ…い…。この華…魂で…、自分…を守…り、大…切な人…を守る…ための…武器を…作る…の。私…が、悟浄…のこと…も、悟…浄の…大切なモ…ノも…、すべ…て…守…るか…ら…。悟…浄…、幸…せ…に、なり…な…さい…』
最後の力を振り絞るように、華魂の上に現れた人形が花韮の姿を映し出す。血だらけの切り裂かれた身体で、胸元は抉れていた。片手に持つ剣がちりになって行く。だがそれは、剣だけではなかった。花韮の足元から身体が消えていく。
「姉貴!!」
すべてがちりになって消え去った時、花韮は永久にただの石になりはてる。華魂と言う名の意思すらもない、輪廻の輪から外れた、自分と言う存在は何も残らない石になる。
「花韮、一人で行かせはしない」
「父…さん…」
花韮の睛眸から、最後の泪がこぼれ落ちた。そして、花韮は消えた。永遠に、この世界から。
「姉貴ーーー!!」
今そこにあった花韮の気配が消え、透明だった水晶のような蓮の花が白百合色に変わる。そして華魂は、収縮するように小さくなった。それはまるで、あの人の魂を吸いつくした傍若無人の焔魂から、優しくて穏やかだった花韮の身の丈にあった大きさに変わったようだった。
悟浄は、泪に濡れるその睛眸で小さくなった華魂を見つめる。“姉貴” と手を伸ばしてみても、それは冷たいだけのただの石だった。それが、先程まで自分の目の前にいたたった一人の姉だとは。悟浄は、指先で華魂を優しく撫でた。
その時、すぐそばにいた父親が手に持っていた刀を振り上げた気がして、思わず悟浄は横を向く。その悟浄の睛眸に飛び込んできたのは、自らが持つ刀をその身体に突き刺した父親だった。
「親父!!」
「悟浄…。愚かな俺が、お前と花韮のためにしてやれることは、もうこれしかない」
「何で、何でだよ! 親父!!」
悟浄は知らない。父親もまた、姉の花韮と同じ運命にあることを。またもや残酷に、最後に残った家族である父親までも奪い取られることを。
********
鬩ぎ合う→お互いに争う。対立して争う
如何に→どのように。どんなふうに。どれほど。どんなに。なせ。どうして
尚且つ→その上さらに。その上また。それでもまだ。それでもやはり
慈愛→親が子供をいつくしみ、かわいがるような、深い愛情
見いだす→見つけだす。発見する。内側から外の方を見る。目を見はる
厭わない→嫌がらない。行動するのをためらわない
抉る→刃物などを深く差し入れ、回して穴をあける。くりぬく
傍若無人→人のことなどまるで気にかけず、遊び、騒いで勝手に振る舞うこと。また、そのさま
身の丈→無理をせず、力相応に対処すること。分相応。せいの高さ。身長
愚か→考えが足りないさま。ばかげているさま。未熟なさま
明日中には終わらせますので、気になる方は明日以降に見ていただけると助かります。m(__)m
今回も、残酷な場面があります。
次回の投稿は9日か10日が目標です。
※11/5 後書きを書きました。
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地面に落ちた焔魂が、炎のような氣を放つ。だが、すぐに焔魂の中から白百合色の氣が溢れ出て、赤い蓮の花のような焔魂と交ざり合う。
水晶でできたような蓮の花の中で赤色と白百合色がぐるぐると鬩ぎ合い、我こそがこの華魂の主であると主張する。身体をなくした今となっては、花韮と焔魂が如何にして闘っているのかわからない。
「いったい、どうなってる」
悟浄や父親は、地面に転がった焔魂を見ることしかできない。だが、焔魂の中では奪い取られる者と奪い取るモノとの激しい闘いが繰り広げられている。それは、沙麼蘿の睛眸にはとてもよく見えた。
「一度だけだ。半神のお前には、それしか耐えられまい。ナウマク・サマンダ・ボダナン・ガララヤン・ソワカ」
鬼神を父に持ち、尚且つ焔魂と言う敵に立ち向かう花韮に与えられる力は、鬼神であった阿修羅の力のみ。如何なる人や神であろうと、その広い慈愛の心で優しく救いの手を差しのべる愛染明王の力ではない。
阿修羅の力は強大だ。半神の花韮の身には、例えそれが花韮に力を与えるものであったとしても、耐え難い苦しみとなるだろう。“望むものが欲しければ、もがき苦しもうと闘いぬけ”、沙麼蘿は自らの胸の前で素早く印を結び真言を唱えると、その右手の掌を焔魂に向けた。
沙麼蘿の掌から紅色の光が溢れ出て、地面に転がる焔魂に注ぎ込まれる。直接、その強大な阿修羅の力を受ける焔魂は、たまったものではない。悟浄に傷をつけられた場所から、さらにひびが入って行く。だが、それでも、ここまで大きくなった華魂は割れはしない。
焔魂の中から二人分の悲鳴が聞こえ、ガタガタと焔魂が動く。そして、うっすらと二つの人形が空中に浮かび上がる。顔すらわからぬその人形に、悟浄と父親は花韮を見いだしその手を伸ばす。
『割れる! 割れる! この焔魂が割れてしまう!! 』
『人の命を奪い尽くすくらいなら、粉々に割れてしまえ!!』
『やめろーー!』
割れるはずのない焔魂に、割れてしまうのではないかと思わせる気迫が花韮にはあった。二つの人形が、争いを繰り返す。その一つの人形の手には短剣のようなものが握られ、その短剣がもう一つの人形の胸を貫いた。その瞬間、短剣で貫かれた方の胸元だけではなく、貫いた方の胸元からも赤い花びらが飛び散る。
『私は…! 私…は! 人の命を奪い尽くすようなモノになんか…ならない!! 焔魂を消滅させて…、私は…、ナニカを守るための…そんなモノになる! たった一人残る弟を守るため…、その弟が守るモノを守れる…、そんな華魂に…なる!! そのためなら…、命あるモノを殺めることも…厭わない! 私は…、家族を…、弟を守るための…モノになる!! 散れーーー!!』
その時、胸元を貫いていた短剣が立派な剣になり、人形が粉々に砕け散った。焔魂から炎のような氣が消えさり、透明な美しい水晶の蓮の花が姿を表す。
「姉貴!」
『聞い…て、悟浄…。貴方は…この…華魂を…、自分のため…に、使いな…さ…い…。この華…魂で…、自分…を守…り、大…切な人…を守る…ための…武器を…作る…の。私…が、悟浄…のこと…も、悟…浄の…大切なモ…ノも…、すべ…て…守…るか…ら…。悟…浄…、幸…せ…に、なり…な…さい…』
最後の力を振り絞るように、華魂の上に現れた人形が花韮の姿を映し出す。血だらけの切り裂かれた身体で、胸元は抉れていた。片手に持つ剣がちりになって行く。だがそれは、剣だけではなかった。花韮の足元から身体が消えていく。
「姉貴!!」
すべてがちりになって消え去った時、花韮は永久にただの石になりはてる。華魂と言う名の意思すらもない、輪廻の輪から外れた、自分と言う存在は何も残らない石になる。
「花韮、一人で行かせはしない」
「父…さん…」
花韮の睛眸から、最後の泪がこぼれ落ちた。そして、花韮は消えた。永遠に、この世界から。
「姉貴ーーー!!」
今そこにあった花韮の気配が消え、透明だった水晶のような蓮の花が白百合色に変わる。そして華魂は、収縮するように小さくなった。それはまるで、あの人の魂を吸いつくした傍若無人の焔魂から、優しくて穏やかだった花韮の身の丈にあった大きさに変わったようだった。
悟浄は、泪に濡れるその睛眸で小さくなった華魂を見つめる。“姉貴” と手を伸ばしてみても、それは冷たいだけのただの石だった。それが、先程まで自分の目の前にいたたった一人の姉だとは。悟浄は、指先で華魂を優しく撫でた。
その時、すぐそばにいた父親が手に持っていた刀を振り上げた気がして、思わず悟浄は横を向く。その悟浄の睛眸に飛び込んできたのは、自らが持つ刀をその身体に突き刺した父親だった。
「親父!!」
「悟浄…。愚かな俺が、お前と花韮のためにしてやれることは、もうこれしかない」
「何で、何でだよ! 親父!!」
悟浄は知らない。父親もまた、姉の花韮と同じ運命にあることを。またもや残酷に、最後に残った家族である父親までも奪い取られることを。
********
鬩ぎ合う→お互いに争う。対立して争う
如何に→どのように。どんなふうに。どれほど。どんなに。なせ。どうして
尚且つ→その上さらに。その上また。それでもまだ。それでもやはり
慈愛→親が子供をいつくしみ、かわいがるような、深い愛情
見いだす→見つけだす。発見する。内側から外の方を見る。目を見はる
厭わない→嫌がらない。行動するのをためらわない
抉る→刃物などを深く差し入れ、回して穴をあける。くりぬく
傍若無人→人のことなどまるで気にかけず、遊び、騒いで勝手に振る舞うこと。また、そのさま
身の丈→無理をせず、力相応に対処すること。分相応。せいの高さ。身長
愚か→考えが足りないさま。ばかげているさま。未熟なさま
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