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第二章
夕景山の揺籃歌《八》
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書いても書いても終わらないパターンに入ってきた。全十話じゃ終わりそうにない…(T_T)
********
「違うな。お前達があの二人に渡した食べ物や薬に何の意味がある、意味などありはしない。それでも幼い二人が今まで生きてこられたのは、あの夕景山に住む飛天夜叉が自ら手折った果物や木ノ実、薬草を与えていたからだ。その量が幾ら少なかろうと、阿修羅の眷属である飛天夜叉は、仙域や神域に行きそこにある食べ物を持って来ることができるのだからな。仙域や神域にある食べ物を口にした者が、そうやすやすと命を落とすことなどない。ましてや、あの二人は邪神の血を引いている。悪神と言えど神の血を引く者に、何故あんな扱いができた」
そうだ、何故あんな扱いができたのだろうか。聖神であれば天上界の陽の氣を、悪神であれば修羅界の陰の氣を受けて過ごすことで、神として途方もない力を持つ。
だが、陽の氣と陰の氣が薄く同じように存在する地上では、そこに長くとどまればとどまるほど、神としての力は薄れ宝具に頼るようになる。生まれながらに地上で暮らし神の血を半分しか引かない者は、先祖返りと言われる者でもない限り普通の人間とあまり変わらない。
だが一度天上界や修羅界に行けば、例え半分しか神の血を引かずとも何らかの力を得る。何故この人間達は気が付かなかったのか。
明陽と桂英が生き続ければ、いつか膨大な力を手にする日が来るかも知れないことを。そうなった時、二人を虐げてきた自分達がどんな末路をむかえるのか。
姉の子だから、半分は自分達と同じ人間の血なのだからと思ったからか。それとも、今更自分達は親族なのだから、とでも言うつもりだったのか。どんなに幼くか弱く見えたとしても、あの二人は半分はあの悪神、邪神の血であると言うのに。
だからこそ、阿修羅の眷属である末端の飛天夜叉が持ってきた物で生き抜くことができた。末端に位置する飛天夜叉には、たいした戦闘能力はない。阿修羅の眷属として彼等が担う役目の多くは、伝達や運搬だけだ。
だがそれ故に、飛天夜叉は様々な領域を行き来できる。しかしその反面、力がない故に仙域や神域の奥に入ることはできない。
それでも、浅い場所であろうと仙や神の氣が満ちた場所にあった食べ物は、神の血を引く幼い二人にとっては栄養となったことだろう。
突然スッと現れた酷く冷たい女の物言いに、叔母は発する言葉さえ持たなかった。八戒達が外に出て行く姿すらもう見ることもなく、叔母夫婦はその場でただただうなだれていた。
「兄ちゃん、話は終わったのか」
「えぇ、明陽」
「俺、悟空兄ちゃん達に住んでた所を見せてたんだ」
叔母の家から出てきた八戒に、明陽は楽しそうに悟空と琉格泉達を見ながら言った。明陽にとって八戒が旅立ってからの日々は、桂英と二人だけの生活だったと言っていい。
いつも叔母一家の様子をうかがい、兄として桂英を守らなければと気を張る日々。そこには気が休まる時などなかった。でも、今日はいいことばかりだ。
飛天夜叉が持って来てくれた果物はとても美味しかったし、大好きな兄も帰って来てくれたし、友達だと言う人達も皆優しかった。一緒にいる大神もハムスターと言う見たこともない動物も、色々と親切にしてくれる。さっきハムスターとやった追いかけっこは、疲れたけど楽しかった。
桂英もずっとニコニコしているし、きっとこれからはいいことばかりが起こる。そんな風に明陽に感じさせるほどに。
「ピッタリだったな、ハムちゃん」
「ぴゅ」
近くで、悟空と玉龍が “よかったよかった” と呟き合う。この家に来て悟空と玉龍に課せられた使命は、弟妹達をできるだけ長い間納屋に引き止めておくことだった。
玉龍も ”まかせて“ とは言ったものの、向かった納屋はとにかく狭かった。思わず ”ぴゅ~う“ と言ってしまったのも仕方がない。
「ここでね、桂英とこの布にくるまって寝てたんだ」
その一言で、納屋の案内は終わりだった。すぐに ”兄ちゃんの所に行こう“ と言う明陽の言葉に、悟空と玉龍は焦って顔を見合わせる。
”どうする、ハムちゃん“ ”ぴゅ“ どうしようと顔を見合わせる二人をよそに、八戒の氣がブワッと広がってきて、家の中では大変なことになっているであろうことが想像できた玉龍は、”ぴ、ぴゅーう“ と言って納屋の柱を駆け上がり屋根の梁の上を走り狭い場所に入って行く。
「わー、ハムちゃん!」
棒読みで悟空が声を上げ、”頼む二人共、ハムちゃんを捕まえてくれ“ と明陽と桂英に頼み込み、二人と一匹は狭い納屋の中を右往左往して時間をつぶしたのだった。その様子を琉格泉は呆れた様子で見ていたが、しばらくすると『行くぞ』と悟空と玉龍に声をかけ歩き出す。
悟空と玉龍が、”終わったー“ と安堵のため息を吐いたのは言うまでもない。そんなこんなで家の入口についた時に、ちょうど玄奘達が出てきたのだった。
「俺達、結構頑張ったよな」
「ぴゅ、ぴゅ」
ニカッと笑う悟空と ”そう、ぼく頑張った“ と胸を張るハムスターをよそに、八戒と悟浄は弟妹達を抱き上げ叔母の家を玄奘に続いてあとにする。そして、全員が通り道に出た時のことだった
「お願い致します! どうか、どうか大神様!!」
と、幼い子の手を引いた女が玄奘達の前に走ってやってきて、眼前で額を地面にこすりつけようにして懇願してきた。
********
途方もない→とんでもない。道理に合わない。並々ではない
膨大→ふくれて大きくなること
虐げる→むごい扱いをして苦しめる。虐待する。いじめる
故に→前に述べた事を理由として、あとに結果が導かれることを表す
梁→家の棟をささえる横木
右往左往→あたふたと右へ行ったり左へ行ったりすること
安堵→気がかりなことが除かれ、安心すること
眼前→目の前。ごく身近なところ
懇願→ねんごろに願うこと。ひたすらお願いすること
次回投稿は7月6日か7日が目標です。
(もしかしたら、もう少し遅れるかもしれませんm(_ _)m)
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「違うな。お前達があの二人に渡した食べ物や薬に何の意味がある、意味などありはしない。それでも幼い二人が今まで生きてこられたのは、あの夕景山に住む飛天夜叉が自ら手折った果物や木ノ実、薬草を与えていたからだ。その量が幾ら少なかろうと、阿修羅の眷属である飛天夜叉は、仙域や神域に行きそこにある食べ物を持って来ることができるのだからな。仙域や神域にある食べ物を口にした者が、そうやすやすと命を落とすことなどない。ましてや、あの二人は邪神の血を引いている。悪神と言えど神の血を引く者に、何故あんな扱いができた」
そうだ、何故あんな扱いができたのだろうか。聖神であれば天上界の陽の氣を、悪神であれば修羅界の陰の氣を受けて過ごすことで、神として途方もない力を持つ。
だが、陽の氣と陰の氣が薄く同じように存在する地上では、そこに長くとどまればとどまるほど、神としての力は薄れ宝具に頼るようになる。生まれながらに地上で暮らし神の血を半分しか引かない者は、先祖返りと言われる者でもない限り普通の人間とあまり変わらない。
だが一度天上界や修羅界に行けば、例え半分しか神の血を引かずとも何らかの力を得る。何故この人間達は気が付かなかったのか。
明陽と桂英が生き続ければ、いつか膨大な力を手にする日が来るかも知れないことを。そうなった時、二人を虐げてきた自分達がどんな末路をむかえるのか。
姉の子だから、半分は自分達と同じ人間の血なのだからと思ったからか。それとも、今更自分達は親族なのだから、とでも言うつもりだったのか。どんなに幼くか弱く見えたとしても、あの二人は半分はあの悪神、邪神の血であると言うのに。
だからこそ、阿修羅の眷属である末端の飛天夜叉が持ってきた物で生き抜くことができた。末端に位置する飛天夜叉には、たいした戦闘能力はない。阿修羅の眷属として彼等が担う役目の多くは、伝達や運搬だけだ。
だがそれ故に、飛天夜叉は様々な領域を行き来できる。しかしその反面、力がない故に仙域や神域の奥に入ることはできない。
それでも、浅い場所であろうと仙や神の氣が満ちた場所にあった食べ物は、神の血を引く幼い二人にとっては栄養となったことだろう。
突然スッと現れた酷く冷たい女の物言いに、叔母は発する言葉さえ持たなかった。八戒達が外に出て行く姿すらもう見ることもなく、叔母夫婦はその場でただただうなだれていた。
「兄ちゃん、話は終わったのか」
「えぇ、明陽」
「俺、悟空兄ちゃん達に住んでた所を見せてたんだ」
叔母の家から出てきた八戒に、明陽は楽しそうに悟空と琉格泉達を見ながら言った。明陽にとって八戒が旅立ってからの日々は、桂英と二人だけの生活だったと言っていい。
いつも叔母一家の様子をうかがい、兄として桂英を守らなければと気を張る日々。そこには気が休まる時などなかった。でも、今日はいいことばかりだ。
飛天夜叉が持って来てくれた果物はとても美味しかったし、大好きな兄も帰って来てくれたし、友達だと言う人達も皆優しかった。一緒にいる大神もハムスターと言う見たこともない動物も、色々と親切にしてくれる。さっきハムスターとやった追いかけっこは、疲れたけど楽しかった。
桂英もずっとニコニコしているし、きっとこれからはいいことばかりが起こる。そんな風に明陽に感じさせるほどに。
「ピッタリだったな、ハムちゃん」
「ぴゅ」
近くで、悟空と玉龍が “よかったよかった” と呟き合う。この家に来て悟空と玉龍に課せられた使命は、弟妹達をできるだけ長い間納屋に引き止めておくことだった。
玉龍も ”まかせて“ とは言ったものの、向かった納屋はとにかく狭かった。思わず ”ぴゅ~う“ と言ってしまったのも仕方がない。
「ここでね、桂英とこの布にくるまって寝てたんだ」
その一言で、納屋の案内は終わりだった。すぐに ”兄ちゃんの所に行こう“ と言う明陽の言葉に、悟空と玉龍は焦って顔を見合わせる。
”どうする、ハムちゃん“ ”ぴゅ“ どうしようと顔を見合わせる二人をよそに、八戒の氣がブワッと広がってきて、家の中では大変なことになっているであろうことが想像できた玉龍は、”ぴ、ぴゅーう“ と言って納屋の柱を駆け上がり屋根の梁の上を走り狭い場所に入って行く。
「わー、ハムちゃん!」
棒読みで悟空が声を上げ、”頼む二人共、ハムちゃんを捕まえてくれ“ と明陽と桂英に頼み込み、二人と一匹は狭い納屋の中を右往左往して時間をつぶしたのだった。その様子を琉格泉は呆れた様子で見ていたが、しばらくすると『行くぞ』と悟空と玉龍に声をかけ歩き出す。
悟空と玉龍が、”終わったー“ と安堵のため息を吐いたのは言うまでもない。そんなこんなで家の入口についた時に、ちょうど玄奘達が出てきたのだった。
「俺達、結構頑張ったよな」
「ぴゅ、ぴゅ」
ニカッと笑う悟空と ”そう、ぼく頑張った“ と胸を張るハムスターをよそに、八戒と悟浄は弟妹達を抱き上げ叔母の家を玄奘に続いてあとにする。そして、全員が通り道に出た時のことだった
「お願い致します! どうか、どうか大神様!!」
と、幼い子の手を引いた女が玄奘達の前に走ってやってきて、眼前で額を地面にこすりつけようにして懇願してきた。
********
途方もない→とんでもない。道理に合わない。並々ではない
膨大→ふくれて大きくなること
虐げる→むごい扱いをして苦しめる。虐待する。いじめる
故に→前に述べた事を理由として、あとに結果が導かれることを表す
梁→家の棟をささえる横木
右往左往→あたふたと右へ行ったり左へ行ったりすること
安堵→気がかりなことが除かれ、安心すること
眼前→目の前。ごく身近なところ
懇願→ねんごろに願うこと。ひたすらお願いすること
次回投稿は7月6日か7日が目標です。
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