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第8 堅実な生き方って? 1
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「ほらレナ、これなんかはどうだろう?」
いろいろ差し出してくるリオネル様へ向けた私の笑顔はきっと困った顔になっている。
「必要最低限のものだけで本当にかまいません」
あれもこれもと差し出されてしまう状況に加えて、驚いてしまうぐらいに私の好みに合った物ばかりを差し出してくるのだ。ついさっきエレンとして振る舞わないと、と反省したばかりなのに連続でお断りをし続けている状況に心が痛くなってくる。
「そうか…それならこのドレスはどうだろう?」
指の先には薄い青色のドレスがあった。私の好みには合っていて、エレンの好みからは外れているドレスだった。正直なところ着てみたい。それでも私はゆるく首を振るしかなかった。
ここにいる間の私はエレンであって、エレナではないのだから、エレナとして振る舞うことは許されていない。いまはこうやって良くしてくれているリオネル様だって騙されたと知ってしまえば、私をきっと軽蔑するだろう。
だから私は私を殺していかなければいけなかった。
でも生まれてから今まで誰からも求められないまま、存在さえもあやふやだった私を支えたのは私自身だけだったのだ。それなのに、そんな自分さえも自分を否定する状況は思ったよりも辛かった。
「…申し訳ございません。せっかく選んで頂いたのですが、あちらのピンク色のドレスでもよろしいでしょうか?」
あれはちゃんとエレンの好みに沿ったドレスだ。もし私とエレンが交代する日が万が一にでも来たら、エレンの持ち物や選択に違和感なく馴染めると思う。
「ピンクか…もちろんレナが望むのならかまわない。ただ、このブルーの服も似合うと思うから、ぜひ贈らせてくれ」
「えっ、でも…」
「せっかく綺麗なレナがそばに居てくれるんだ。ワガママで申し訳ないけど、ぜひ受け取ってくれないだろうか?」
「…リオネル様はお上手ですね。こんなに女性の扱いに長けていらっしゃるとは思いませんでした」
考えてみれば辺境伯令息なのだ。お誘いなんて山ほどあるはずだ。いままでも噂に上らなかっただけで、きっとそれなりの女性とのお付き合いだってあっただろう。
「いや、違う!誤解だ!」
「大丈夫ですよ、決して口外は致しませんから」
奉公人でニセモノで。むしろ生きているのかいないのか、存在すらもあやしいような私がリオネル様に何も言えるはずがないのだ。
でもそんなことを知りようもないリオネル様は焦っているようだった。
「いや、本当にこんな風に女性に物を贈った事はないんだ。むしろ、初めてのせいで勝手が分からない」
気まずそうな顔でそう言ったリオネル様の言葉が、どこまで本当なのかは分からない。それでも嘘を言っているようにも見えなかった。
「それでしたら他の女性の方に申し訳ないです。リオネル様のはじめての贈り物をこんな形で私が受け取ってしまって」
いまこうやって贈られる私だって、エレナではなくエレンとして受け取るのだ。贈られているのも綺麗だと褒められたのも、私に向けられているようで何一つ私のものではなかった。
いろいろ差し出してくるリオネル様へ向けた私の笑顔はきっと困った顔になっている。
「必要最低限のものだけで本当にかまいません」
あれもこれもと差し出されてしまう状況に加えて、驚いてしまうぐらいに私の好みに合った物ばかりを差し出してくるのだ。ついさっきエレンとして振る舞わないと、と反省したばかりなのに連続でお断りをし続けている状況に心が痛くなってくる。
「そうか…それならこのドレスはどうだろう?」
指の先には薄い青色のドレスがあった。私の好みには合っていて、エレンの好みからは外れているドレスだった。正直なところ着てみたい。それでも私はゆるく首を振るしかなかった。
ここにいる間の私はエレンであって、エレナではないのだから、エレナとして振る舞うことは許されていない。いまはこうやって良くしてくれているリオネル様だって騙されたと知ってしまえば、私をきっと軽蔑するだろう。
だから私は私を殺していかなければいけなかった。
でも生まれてから今まで誰からも求められないまま、存在さえもあやふやだった私を支えたのは私自身だけだったのだ。それなのに、そんな自分さえも自分を否定する状況は思ったよりも辛かった。
「…申し訳ございません。せっかく選んで頂いたのですが、あちらのピンク色のドレスでもよろしいでしょうか?」
あれはちゃんとエレンの好みに沿ったドレスだ。もし私とエレンが交代する日が万が一にでも来たら、エレンの持ち物や選択に違和感なく馴染めると思う。
「ピンクか…もちろんレナが望むのならかまわない。ただ、このブルーの服も似合うと思うから、ぜひ贈らせてくれ」
「えっ、でも…」
「せっかく綺麗なレナがそばに居てくれるんだ。ワガママで申し訳ないけど、ぜひ受け取ってくれないだろうか?」
「…リオネル様はお上手ですね。こんなに女性の扱いに長けていらっしゃるとは思いませんでした」
考えてみれば辺境伯令息なのだ。お誘いなんて山ほどあるはずだ。いままでも噂に上らなかっただけで、きっとそれなりの女性とのお付き合いだってあっただろう。
「いや、違う!誤解だ!」
「大丈夫ですよ、決して口外は致しませんから」
奉公人でニセモノで。むしろ生きているのかいないのか、存在すらもあやしいような私がリオネル様に何も言えるはずがないのだ。
でもそんなことを知りようもないリオネル様は焦っているようだった。
「いや、本当にこんな風に女性に物を贈った事はないんだ。むしろ、初めてのせいで勝手が分からない」
気まずそうな顔でそう言ったリオネル様の言葉が、どこまで本当なのかは分からない。それでも嘘を言っているようにも見えなかった。
「それでしたら他の女性の方に申し訳ないです。リオネル様のはじめての贈り物をこんな形で私が受け取ってしまって」
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