妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

第23 会話の意味が分かりません ２

『少しでも良い相手を』というのは婚姻の相手のことかもしれない。

兄弟のように育ってきて、そうやって心配してくれて、何でも言い合えるような相手がいることは素敵だと思う。

１番近い双子なはずなのに、遠く、分かり合える日々なんてこない私とエレンとは大違いだった。もしも双子なんかじゃなければ、私もこうやって話し合えたりしたのだろうか。

でも日頃、私のことを冷たく見ながら『予備として置いてやってるんだから』と言うエレンとのそんな世界は想像でも難しくて、乾いた笑いが思わず漏れてしまった。

「レナ、どうした…？」

「いえ、仲があまりによろしいので、思わず私にもこうやって何でも言い合える姉妹でもいたら…と思ってしまいました」

世間的にはブランシャール家は一人娘ということになっている。だからこのセリフはリオネル様にとっても何も違和感がないはずだ。

だけどなぜかリオネル様もクラウス様も黙り込んでいた。

「どうしましたか？」

「いや、何でもない。そうだな、ではレナは私に何でも言うと良い」

「えっ、リオネル様へですか？」

「あぁ、何でも言ってくれていいぞ。私もレナとは色々話したいからな」

「…リオネル様は私に何かご不満が？」

「いや、違う！」

「それでは私ともいまのような口論をされたいと？」

「何でそうなったんだ？」

「リオネル様にそこまで仰って頂く理由がございません」

「そうしたい、と思うのでは理由にはならないだろうか？」

「……ふぅ」

どうしてこうもサラッと女性を口説くようなことを言ってしまうのだろう。私は思わず盛大な溜息を吐いてしまう。

「えっ、なぜ溜息を吐かれたんだ？」

なぜ、と思うところが問題だと分かって欲しい。

「失礼しました。ですが先ほども申し上げたと思いますが、こんなことばかり仰ってると本命ができた時にお困りになりますよ」

きっとリオネル様は深い意味がないため、サラッとそんな事を言ってしまえるのだろう。でもリオネル様を本当に好きなうえに、エレンとしてその言葉を受け止める私にとっては、リオネル様の言葉ひとつですごく心が乱れてしまうのだ。

もう、と思わずにらみ付けてしまう私の前でガクッと肩を落とすリオネル様をクラウス様が何とも言えない表情で見ていた。

「なんか、お前が可哀想になってきたわ」

その言葉に私はあっ、と我に返った。リオネル様の気安さなどでこんなことを言ってしまっているが、あまりに失礼すぎた態度だった。

こんな扱いをされているリオネル様を見て、哀れんだのだろう。

「失礼なことを申し上げました。申し訳ございません」

慌てて頭を下げた私にリオネル様は「いや…」と力なく首を振った。

「クラウス、とりあえずそう思うなら１日でも早く見つけてきてくれ…」

「あぁ…」

クラウス様がポンポンとリオネル様の肩を慰めるように叩いていた。

落ち込んでしまった様子のリオネル様に私もだんだん罪悪感が強くなる。さっきから何度も好意をはねのけてしまっているような状況なのだ。

どうしよう。そんな風に悩みながらリオネル様の方をうかがい見る。そうすると同じように視線を向けてきたリオネル様と目が合った。

「あの…」

「うん？」

「それでしたら少しだけ、お話しをしても良いでしょうか…？」

リオネル様がまだ聞いてくれるというのなら、気にかかっていた『オルスクレーム』の件を打ち明けるのも良いかもしれない。