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第27 あの日に出会った貴女がいない 3
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まず俺が望みをかけたのが何か理由があって彼女が報告書にあるような、エレン嬢を演じているということだった。
だけどその望みはもう1度お茶会で本物のエレン=ブランシャールを見ただけであっけなく消えてしまったのだ。
誰に話しかけられても曖昧な笑みと答えを返す姿は、自信のなさを現しているようだった。それでも何か気に入らないことがあればハッキリと表情には出ているのだから、立ち回り方としても上手くはない。
後で何度か見かけた舞踏会での姿も、彼女は気がつけば壁の花となっていることが多かった。
あの日に会った彼女から感じた聡明さや、機転の利いた会話はどこにもない。1度だけ声を掛けた時もせいぜい『はじめまして…』といった会話ぐらいだったのだ。
なぜあの日の彼女がエレン=ブランシャールと名乗ったのか。
そもそもあのパーティー自体が招待状を持つ者しか入れないはずなのに、どこからそれを入手したのか。
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
姉妹や従姉妹といった可能性がないか、それも合わせて調べさせた。でも出てきた結果は俺を落ち込ませるものばかりだった。
何度もブランシャール男爵家の周りや運営する商会の周り、繋がりのあるギルドを探って見て回った。
たぶん始めの報告を受けた俺の必死な様子もあったせいかもしれない。
手広く商会を運営する男爵家のつながりを追うだけでもかなりの時間を必要としたが、視察をかねてと言えば父も母もとがめはしなかった。
だから空いた時間は全て愛馬で駆け回っていた。馬車で悠長になんてしている時間は俺にはなかった。
それでも2年以上も空振り続きの俺に焦れたのは両親よりも従兄弟のクラウスだった。
『だから言ってるだろ。ただのお前の勘違いだって。取り繕われただけなんだよ』
もういい加減諦めろ、と言ってくるクラウスを俺がその度に睨みつける。そんなことを何度も繰り返すはめになっていた。
『あの1回きりだけ、あんなに完璧に取り繕えるわけがないだろう。だから彼女とあのエレン嬢は別人だ!』
『だけど、その肝心な彼女はどこにいる? ずっと見つかっていないだろ! もとからいないんだから見つかるわけがないだろ!』
だけどいつものようにそんなことを言い合って俺とにらみ合っていたクラウスが。
『頼むから、もう他にも目を向けてくれ。そんな幻みたいな女性じゃなくて、実際にお前のそばにいてくれるような女性を選んでくれ』
そう言って顔を歪めるのを見て、俺は何も言葉を返せなかった。
あの日の想いは俺の間違いで、もうこれ以上は諦めるしかないのか。
こんなことを続けても周りを苦しめるだけなのか。
俺自身も悩んでいた時だった。
商会の建物からブランシャール卿と一緒に出てきたエレン嬢に目が止まった。
見慣れたような光景だった。でもそこにいたエレン嬢は、いつもの彼女とは違っていた。
どこがとか、何がなんてハッキリと言うことはむずかしい。
でもずっと見てきた俺には分かるような、いつもと違う彼女がいた。
だけどその望みはもう1度お茶会で本物のエレン=ブランシャールを見ただけであっけなく消えてしまったのだ。
誰に話しかけられても曖昧な笑みと答えを返す姿は、自信のなさを現しているようだった。それでも何か気に入らないことがあればハッキリと表情には出ているのだから、立ち回り方としても上手くはない。
後で何度か見かけた舞踏会での姿も、彼女は気がつけば壁の花となっていることが多かった。
あの日に会った彼女から感じた聡明さや、機転の利いた会話はどこにもない。1度だけ声を掛けた時もせいぜい『はじめまして…』といった会話ぐらいだったのだ。
なぜあの日の彼女がエレン=ブランシャールと名乗ったのか。
そもそもあのパーティー自体が招待状を持つ者しか入れないはずなのに、どこからそれを入手したのか。
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
姉妹や従姉妹といった可能性がないか、それも合わせて調べさせた。でも出てきた結果は俺を落ち込ませるものばかりだった。
何度もブランシャール男爵家の周りや運営する商会の周り、繋がりのあるギルドを探って見て回った。
たぶん始めの報告を受けた俺の必死な様子もあったせいかもしれない。
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だから空いた時間は全て愛馬で駆け回っていた。馬車で悠長になんてしている時間は俺にはなかった。
それでも2年以上も空振り続きの俺に焦れたのは両親よりも従兄弟のクラウスだった。
『だから言ってるだろ。ただのお前の勘違いだって。取り繕われただけなんだよ』
もういい加減諦めろ、と言ってくるクラウスを俺がその度に睨みつける。そんなことを何度も繰り返すはめになっていた。
『あの1回きりだけ、あんなに完璧に取り繕えるわけがないだろう。だから彼女とあのエレン嬢は別人だ!』
『だけど、その肝心な彼女はどこにいる? ずっと見つかっていないだろ! もとからいないんだから見つかるわけがないだろ!』
だけどいつものようにそんなことを言い合って俺とにらみ合っていたクラウスが。
『頼むから、もう他にも目を向けてくれ。そんな幻みたいな女性じゃなくて、実際にお前のそばにいてくれるような女性を選んでくれ』
そう言って顔を歪めるのを見て、俺は何も言葉を返せなかった。
あの日の想いは俺の間違いで、もうこれ以上は諦めるしかないのか。
こんなことを続けても周りを苦しめるだけなのか。
俺自身も悩んでいた時だった。
商会の建物からブランシャール卿と一緒に出てきたエレン嬢に目が止まった。
見慣れたような光景だった。でもそこにいたエレン嬢は、いつもの彼女とは違っていた。
どこがとか、何がなんてハッキリと言うことはむずかしい。
でもずっと見てきた俺には分かるような、いつもと違う彼女がいた。
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