妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)

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第40 さよなら、恋の期間 4

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「あぁ、そうするよ……」

そう言って笑ったリオネル様の笑顔はなぜだか少し切なく見えた。

「どうしたーーー」

どうしたんですか? そう私が質問しようとした瞬間だった。私の頭がキュッと柔らかく包まれる。

「……マエリス様?」

いつの間にそばに立たれたのだろう。その柔らかな感触が、マエリス様に抱き締められた感触なのだと気が付いて、私は戸惑ってしまっていた。

「レナは良い子ね」

突然どうしてしまったのだろう。でもそう言ったマエリス様の表情がすごく柔らかくて、悲しくもないのになぜか泣きたくなっていた。

「いいえ、私はそんなことはありません。そう言って頂けて嬉しいのですが、買い被りすぎかと存じます」

そんな気持ちを笑顔で押しやりつつ、マエリス様の言葉を否定する。

だって、私は嘘をついて騙しているのだ。そうじゃなくても、リオネル様がエレンを求めていると知っているのに、こうやって交代できない状況を喜んでいる。本当に良い子ならそんな気持ちは持たないだろう。だから。

「そう見えるのでしたら、皆様がお優しいからですわ」

私はただ与えてもらえたモノを返しただけなのだから。

返ってきたモノが素晴らしいと言うのなら、与えてくれたモノが素晴らしかったというだけだろう。

「ふふふ、私はやっぱり良い子だと思いますよ。だから貴女にはいっぱい笑っていて欲しいわ」

そう言ったマエリス様の笑顔はやっぱり柔らかくて、目の奥が熱くなって私は慌てて俯いた。

「ありがとう、ございます……」

目をパチパチと瞬かせて涙をこらえても、声は少し涙声になっている。きっと誤魔化せていないだろう。

リオネル様が私を心配してくれたことも、マエリス様が私の幸せを祈ってくれたことも、私は絶対に忘れない。

「さぁ、今日は色々と慌ただしい一日になりますわ。リオネルもさっさとなさい」

きっと気が付いたはずなのにマエリス様は何も聞かないでいてくれた。少し不思議に思いながらもマエリス様の言葉をきっかけに雰囲気が変わったことにホッとする。

「いや、あの、タイミングというものもあると思うのですが……」

だけど反対にリオネル様はそんなマエリス様の言葉に慌てているようだった。

「何年もかけて作った状況にタイミングも何もありますか。私にも色々と予定がありますのよ」

「予定ですか?」

「えぇ、お茶会にショッピング、ドレスもいくつか見立てたいですからね」

「あの、それは別に私の動きを待たなくても良いと思うのですが……。母上のドレスなんですから、母上のタイミングで行かれて良いのではないでしょうか?」

その言葉にマエリス様が「はぁーっ」と大きく溜息を吐きだして、何を言ってるのかしら、とでも言うような目をリオネル様へ向けていた。

「このタイミングで私の物のわけがないでしょう。全く世間はこの子のどこを見て聡明だと言うのかしら」

「あぁ、ダメですよマエリス様。リオネルはこの後のことでいっぱいいっぱいですから、頭の動きはいつもの5割減だと思って下さい」

「……必死なのね」

「いや、そこで哀れんだ目を向けるのは止めて下さい……。でも急ぐ必要があることは分かっています。状況は動き出していますから」

「なら良いですわ。それでは、私は王太后様とのお茶会の件を詰めておきましょう」

大きく溜息を吐いたリオネル様が席を立ち上がる。

「では行こう、レナ」

さんざん何かにダメ出しをされていたリオネル様が疲れたような表情で、私の方を促してきた。
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