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第41 さよなら、恋の期間 5
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さっきから動きが止まっているリオネル様を、私はこっそりと伺い見た。
クラウス様が言っていた『いっぱいいっぱい』な状態なのかもしれない。
リオネル様はいつものような集中力がないまま、どこかソワソワとしているようにも見えていた。
手元の資料だってさっきから同じ所を行ったり来たりしていて一向に進むような様子はない。
「リオネル様、少しお休みを取られませんか?」
私はそんなリオネル様に恐る恐る声をかけた。
「ッ!! あ、あぁ」
リオネル様の様子はやっぱりおかしかった。
心ここにあらず、とでも言うのだろうか。
ずっとそばにいた私にさえ、リオネル様はひどく驚いたような表情を向けてくる。何か気にかかることでもあるのだろう。
少しでも気が晴れてくれれば良い。私はそう思ってリラックス効果の高いハーブティーを差し出してみる。
「良い匂いのお茶だな」
「お疲れの様子だったので、少しリラックス効果のある茶葉を選んでみました……」
「そんな物が我が家にあったんだな」
やっぱり少しお疲れだったのか、そのお茶を一口飲んだリオネル様がホッと身体の力を抜いて香りに顔をほころばせた。
「前にマエリス様とお話をした時に取り寄せておりまして、今回はそれを出して頂きました」
「そうか、レナは母とも仲が良いからな」
「はい、マエリス様にはとても良くして頂いております」
一緒に過ごすお茶の時間もとても穏やかで、楽しかった。お母様に抱きしめられるのは、こんな感じなのかもしれない。そう思ってしまうような温もりも何度か与えてもらっている。
思い出してニコッと笑った私へリオネル様が何かを言いかけて、何度か言葉を飲み込むような様子を見せていた。
「あの、大丈夫ですか?」
そこまでリオネル様を困らせるような事態が何か起きているのだろうか。躊躇った姿を見ている内に、私の中へも心配がどんどん積もっていく。
そんな時間が過ぎたあと、ついにリオネル様が覚悟を決めたような目を真っ直ぐに向けてきた。
「レナ、これからもずっとそばに居てくれないか?」
「えっ…」
そのとたん、私の周りからは音が消えていくようだった。
「1年間だけではなく、私の伴侶として人生を共に歩いて欲しいんだ」
だけどリオネル様の言葉は真っ直ぐ私の心に突き刺さる。
そして私はついに恐れていた日が来てしまったことが理解できたのだ。そうか、プロポーズをするタイミングを考えていたから、リオネル様はずっと上の空だったのか。
今も緊張した顔でこちらを見ているリオネル様に私の心はツキリと痛んだ。でももともと分かっていたことなのだ。
「はい、ずっとおそばに置いて下さい」
私がこの舞台から退場する日はいつだろう。
「嬉しいよ。必ずレナを大切にする」
分からないまま、嬉しそうに微笑んだリオネル様へ私もフワッと微笑み返す。そのまま抱きしめられそうになった腕をスルッとかわして、その掌に頬をそっと押し当てた。
「レナのペースでいけばいい」
恥ずかしくて避けてしまったと思っているのだろう。そんな私へもう1度優しく笑ってくれたリオネル様に私は泣いてしまいたかった。
「私にはもったいないぐらいのご配慮を、ありがとうございます」
「レナに優しくしないで、誰に優しくするって言うんだ」
そしてこの言葉を受け取る権利を持ったエレンが私は羨ましかった。
「それにずっとレナを何年も探し続けていたんだ。いまさらちょっとぐらい待つのなんて、何とも思わない」
「…えっ? 何年も探していた? 誰をですか?」
「……えっ? だからレナをずっと探していて…」
そこまで言葉を告げたリオネル様の顔が一気に青ざめる。
「ど、どうしたんですか?」
さすがにこの顔色を見ていれば、悲しいとか言っているような状況ではなかった。
「ちょっと、待っていてください!」
「えっ!? レナ?」
私は慌てて廊下へ飛び出した。近くにいる使用人を誰か捕まえたかった。
「すみません! どなたかいらっしゃいませんか?」
私の大声に反応して、駆け足で近寄る足音が聞こえてくる。
「すみません! リオネル様の体調が悪いようで、お医者様をお願いできませんでしょうか?」
「だ、大丈夫だ。エレナ! 体調が悪いわけじゃない!」
「……えっ……?」
だけどそれを制止するリオネル様の言葉に、私は思わず固まっていた。
たったいま、リオネル様は何と言っただろう。
はっきりと言葉は聞こえていたはずだった。でも私には、その言葉を信じることができなかった。そんな気持ちのまま、私は呆然とリオネル様の方へと振り返った。
クラウス様が言っていた『いっぱいいっぱい』な状態なのかもしれない。
リオネル様はいつものような集中力がないまま、どこかソワソワとしているようにも見えていた。
手元の資料だってさっきから同じ所を行ったり来たりしていて一向に進むような様子はない。
「リオネル様、少しお休みを取られませんか?」
私はそんなリオネル様に恐る恐る声をかけた。
「ッ!! あ、あぁ」
リオネル様の様子はやっぱりおかしかった。
心ここにあらず、とでも言うのだろうか。
ずっとそばにいた私にさえ、リオネル様はひどく驚いたような表情を向けてくる。何か気にかかることでもあるのだろう。
少しでも気が晴れてくれれば良い。私はそう思ってリラックス効果の高いハーブティーを差し出してみる。
「良い匂いのお茶だな」
「お疲れの様子だったので、少しリラックス効果のある茶葉を選んでみました……」
「そんな物が我が家にあったんだな」
やっぱり少しお疲れだったのか、そのお茶を一口飲んだリオネル様がホッと身体の力を抜いて香りに顔をほころばせた。
「前にマエリス様とお話をした時に取り寄せておりまして、今回はそれを出して頂きました」
「そうか、レナは母とも仲が良いからな」
「はい、マエリス様にはとても良くして頂いております」
一緒に過ごすお茶の時間もとても穏やかで、楽しかった。お母様に抱きしめられるのは、こんな感じなのかもしれない。そう思ってしまうような温もりも何度か与えてもらっている。
思い出してニコッと笑った私へリオネル様が何かを言いかけて、何度か言葉を飲み込むような様子を見せていた。
「あの、大丈夫ですか?」
そこまでリオネル様を困らせるような事態が何か起きているのだろうか。躊躇った姿を見ている内に、私の中へも心配がどんどん積もっていく。
そんな時間が過ぎたあと、ついにリオネル様が覚悟を決めたような目を真っ直ぐに向けてきた。
「レナ、これからもずっとそばに居てくれないか?」
「えっ…」
そのとたん、私の周りからは音が消えていくようだった。
「1年間だけではなく、私の伴侶として人生を共に歩いて欲しいんだ」
だけどリオネル様の言葉は真っ直ぐ私の心に突き刺さる。
そして私はついに恐れていた日が来てしまったことが理解できたのだ。そうか、プロポーズをするタイミングを考えていたから、リオネル様はずっと上の空だったのか。
今も緊張した顔でこちらを見ているリオネル様に私の心はツキリと痛んだ。でももともと分かっていたことなのだ。
「はい、ずっとおそばに置いて下さい」
私がこの舞台から退場する日はいつだろう。
「嬉しいよ。必ずレナを大切にする」
分からないまま、嬉しそうに微笑んだリオネル様へ私もフワッと微笑み返す。そのまま抱きしめられそうになった腕をスルッとかわして、その掌に頬をそっと押し当てた。
「レナのペースでいけばいい」
恥ずかしくて避けてしまったと思っているのだろう。そんな私へもう1度優しく笑ってくれたリオネル様に私は泣いてしまいたかった。
「私にはもったいないぐらいのご配慮を、ありがとうございます」
「レナに優しくしないで、誰に優しくするって言うんだ」
そしてこの言葉を受け取る権利を持ったエレンが私は羨ましかった。
「それにずっとレナを何年も探し続けていたんだ。いまさらちょっとぐらい待つのなんて、何とも思わない」
「…えっ? 何年も探していた? 誰をですか?」
「……えっ? だからレナをずっと探していて…」
そこまで言葉を告げたリオネル様の顔が一気に青ざめる。
「ど、どうしたんですか?」
さすがにこの顔色を見ていれば、悲しいとか言っているような状況ではなかった。
「ちょっと、待っていてください!」
「えっ!? レナ?」
私は慌てて廊下へ飛び出した。近くにいる使用人を誰か捕まえたかった。
「すみません! どなたかいらっしゃいませんか?」
私の大声に反応して、駆け足で近寄る足音が聞こえてくる。
「すみません! リオネル様の体調が悪いようで、お医者様をお願いできませんでしょうか?」
「だ、大丈夫だ。エレナ! 体調が悪いわけじゃない!」
「……えっ……?」
だけどそれを制止するリオネル様の言葉に、私は思わず固まっていた。
たったいま、リオネル様は何と言っただろう。
はっきりと言葉は聞こえていたはずだった。でも私には、その言葉を信じることができなかった。そんな気持ちのまま、私は呆然とリオネル様の方へと振り返った。
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