妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)

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第45 初めまして、愛される日々 2

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「これは…」

指先にキスを落とされた手に小さな箱を握らされる。
これはいったい何なのだろう。ビロードが張られた小箱はそれだけでも高そうだった。

「開けてくれないか」

箱の中にあったのは、見覚えのあるネックレスとそろいの石で誂えられたイヤリングのセットだった。

この1年の始まりの日。

いま着ているドレスと一緒に、カナトス家の応接室で見かけたそのネックレスを、こうやって改めて目にする日がくるなんて。あの日の私は思わなかった。

「リオネル様…散財してしまっては領地が痩せてしまいますよ……」

あの日も何度も贈ろうとしてくれていたことを覚えている。でもそれは奉公に来た私が受け取るには高価すぎる物だった。

それにシンプルな作りのこのアクセサリーは、エレンの趣味からもだいぶ外れてしまっている。奉公人でなかったとしても、エレンとして振る舞う私が受け取るわけにはいかなかったのだ。

「これぐらいは大丈夫だ。好きな女性にアクセサリー1つも送れないような不甲斐ない男ではないからな」

奉公人ではなくてリオネル様の好きな人。どうしてこうもハッキリと言ってしまうことができるのだろう。私には恥ずかしくて仕方がなかった。

また顔が真っ赤になっているのかもしれない。少しだけ笑ったリオネル様が、箱から取り出したネックレスを着けてくれた。石の冷たさが火照った肌に心地良い。

「あぁ、やっぱり似合っている」

自分の見立てが間違っていなかったことが嬉しいのかもしれない。満足そうにそう言ったリオネル様はどこか誇らしそうにも見えていた。

私はソッと指先で胸元の石に触れてみた。

あの日に許されなかったネックレスが私の首を飾っている。私を思って贈られたプレゼント。それだけでエレンではなく、エレナとして生きることが許されたのだと実感できる状態だった。

「こんなにお高い物を…申し訳ございません…」

「どうしてレナが謝るんだ? レナには迷惑だっただろうか?」

「いいえ! 違います!決してそういうことではありません!」

「では嬉しい?」

「はい!」

「それなら、そう言って受け取って貰えると私も嬉しいな」

そう言って笑ったリオネル様に私は、あっ…と気が付いて申し訳なさでいっぱいになった。

「申し訳ございません…」

「謝らなくていい、むしろ謝るよりは、別な言葉が欲しい」

「別な言葉ですか……」

「そう」

リオネル様が柔らかく笑って私の頬を撫でてくる。

リオネル様が仰る別な言葉。この言葉が当たっているかは分からない。それでも喜んで欲しいと思ってしたことなら。

「…ありがとうございます……」

遠慮をする言葉よりは、そう言ってもらえた方が私もきっと嬉しくなる。

だから私はそう言って、箱を胸元に引き寄せた。そんな私にリオネル様は正解だというように微笑んでいた。

「レナはもう少しワガママになった方が良い。そしていっぱい甘えてくれれば私は嬉しい」

そう言ったリオネル様に。

「やっぱり不慣れだなんて嘘つきです…」

私は思わず顔を覆い隠した。
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