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第46 初めまして、愛される日々 3
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こんな風に着飾ってショッピングをするのは始めてだった。
こうやって色々な物を惜しげもなく買って頂くのはとても気が引けてしまう。だけど今回ばかりは遠慮も難しい状態だった。
「王太后様はこの色がお好きなので、差し色に使いましょう」
そう言ってジェードグリーンの布を指差したマエリス様の言葉に私は今から緊張してしまう。
「王都も始めての私が、王太后様とお茶会なんて大丈夫でしょうか……?」
「大丈夫よ、王太后様からのご招待とは言っても公式なものではございませんもの」
日頃から懇意にされている王太后様へ久しぶりのご挨拶がメインだと聞いてはいた。あとはリオネル様との婚約の報告をかねるらしい。だから私も一緒に参加をするように言われている状況だった。
リオネル様からどうやって私の存在を知ったのか話を聞くまでは、人頭帳へ自分の存在が登録されているとは思っていなかった。
だからリオネル様にプロポーズをされた時も心配だった。私の存在はこの世に認められていないのだ。そんな幽霊のような私が結婚することが出来るのか不安だった。
だからこうやって、リオネル様の婚約者と紹介してもらえることは嬉しい。恥をかかせてしまわないように、精一杯頑張りたいとは思っている。でも、経験がどうしても足りない私には心配ごとが多かった。
「大丈夫よ、いつものレナでいなさい。きっと王太后様にも気に入られるわ」
そう言い切ってニッコリと微笑まれるマエリス様を見ていると、なんだか本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だった。
「少し疲れたわね。そろそろリオネルも来る頃でしょうから、サロンで休んで待っていましょう」
執務室で私にアクセサリーを贈った後に、リオネル様は大切な用があると言って出かけられたままなのだ。でもこの後にリオネル様の衣装も新しく誂えると言っていた。
私たちは近くにあったサロンの中でお茶を飲みながら、リオネル様を待つことにした。
「リオネルの衣装を誂えたら、私は他の手配の用がありますから先に屋敷へ戻りますわ。レナはリオネルと一緒に戻っていらっしゃい」
「はい、分かりました。でも本当にお手伝いは必要ありませんか?」
「大丈夫ですよ。それに私ばかりがレナを独り占めしてしまうと、あの子に怒られてしまいますからね。せっかくですから、リオネルと2人で街を散策してから帰ってらっしゃい」
その言葉に私はとっさに言葉が出なかった。
「ありがとう、ございます…」
顔が熱くなるのを感じながら、しどろもどろに私はお礼を言った。
「そのドレスもアクセサリーもよくレナの雰囲気に似合っているわ。あの子が見立てた贈り物ということにはビックリしましたけど」
「でも、マエリス様が仰るほど女性の方に疎いようには見えないのですが……」
「そうね、確かにそれは私の認識が間違っていたのかもしれないわね」
お茶を一口飲みながらマエリス様がフフッと柔らかく笑っていた。
「あの子は朴念仁というよりは、周りを見ていない感じかしら…?」
「リオネル様がですか?」
私はその言葉に驚いてしまう。執務室で見る日頃の冷静沈着で的確に状況を判断する姿からは、そんな風には見えなかった。
「えぇ。もちろん仕事は別ですわ。ただそれ以外だとそんな感じね」
「そうなんですか……?」
「そうよ。それだけレナを懸命に探していて、今は失わないよう必死ってことでしょうね」
リオネル様はなにも心配しなくて良い、と言ってくれていた。だけど私の状況が変わったわけでは、本当はないのだ。そのために手を尽くしてくれているのかもしれない。
「……私のために、嬉しいです…」
私をどうしてそんなに思ってくれるのか、分からなかった。
それでも、リオネル様のその想いに応えたかった。
「リオネルへも直接言ってあげてちょうだい」
「はい」
もう一度フフッと笑ったマエリス様へ私は笑い返しながら、また目の奥が少しだけ熱くなっていた。
こうやって色々な物を惜しげもなく買って頂くのはとても気が引けてしまう。だけど今回ばかりは遠慮も難しい状態だった。
「王太后様はこの色がお好きなので、差し色に使いましょう」
そう言ってジェードグリーンの布を指差したマエリス様の言葉に私は今から緊張してしまう。
「王都も始めての私が、王太后様とお茶会なんて大丈夫でしょうか……?」
「大丈夫よ、王太后様からのご招待とは言っても公式なものではございませんもの」
日頃から懇意にされている王太后様へ久しぶりのご挨拶がメインだと聞いてはいた。あとはリオネル様との婚約の報告をかねるらしい。だから私も一緒に参加をするように言われている状況だった。
リオネル様からどうやって私の存在を知ったのか話を聞くまでは、人頭帳へ自分の存在が登録されているとは思っていなかった。
だからリオネル様にプロポーズをされた時も心配だった。私の存在はこの世に認められていないのだ。そんな幽霊のような私が結婚することが出来るのか不安だった。
だからこうやって、リオネル様の婚約者と紹介してもらえることは嬉しい。恥をかかせてしまわないように、精一杯頑張りたいとは思っている。でも、経験がどうしても足りない私には心配ごとが多かった。
「大丈夫よ、いつものレナでいなさい。きっと王太后様にも気に入られるわ」
そう言い切ってニッコリと微笑まれるマエリス様を見ていると、なんだか本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だった。
「少し疲れたわね。そろそろリオネルも来る頃でしょうから、サロンで休んで待っていましょう」
執務室で私にアクセサリーを贈った後に、リオネル様は大切な用があると言って出かけられたままなのだ。でもこの後にリオネル様の衣装も新しく誂えると言っていた。
私たちは近くにあったサロンの中でお茶を飲みながら、リオネル様を待つことにした。
「リオネルの衣装を誂えたら、私は他の手配の用がありますから先に屋敷へ戻りますわ。レナはリオネルと一緒に戻っていらっしゃい」
「はい、分かりました。でも本当にお手伝いは必要ありませんか?」
「大丈夫ですよ。それに私ばかりがレナを独り占めしてしまうと、あの子に怒られてしまいますからね。せっかくですから、リオネルと2人で街を散策してから帰ってらっしゃい」
その言葉に私はとっさに言葉が出なかった。
「ありがとう、ございます…」
顔が熱くなるのを感じながら、しどろもどろに私はお礼を言った。
「そのドレスもアクセサリーもよくレナの雰囲気に似合っているわ。あの子が見立てた贈り物ということにはビックリしましたけど」
「でも、マエリス様が仰るほど女性の方に疎いようには見えないのですが……」
「そうね、確かにそれは私の認識が間違っていたのかもしれないわね」
お茶を一口飲みながらマエリス様がフフッと柔らかく笑っていた。
「あの子は朴念仁というよりは、周りを見ていない感じかしら…?」
「リオネル様がですか?」
私はその言葉に驚いてしまう。執務室で見る日頃の冷静沈着で的確に状況を判断する姿からは、そんな風には見えなかった。
「えぇ。もちろん仕事は別ですわ。ただそれ以外だとそんな感じね」
「そうなんですか……?」
「そうよ。それだけレナを懸命に探していて、今は失わないよう必死ってことでしょうね」
リオネル様はなにも心配しなくて良い、と言ってくれていた。だけど私の状況が変わったわけでは、本当はないのだ。そのために手を尽くしてくれているのかもしれない。
「……私のために、嬉しいです…」
私をどうしてそんなに思ってくれるのか、分からなかった。
それでも、リオネル様のその想いに応えたかった。
「リオネルへも直接言ってあげてちょうだい」
「はい」
もう一度フフッと笑ったマエリス様へ私は笑い返しながら、また目の奥が少しだけ熱くなっていた。
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