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第33話 願っていたもの
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イヴァシグスが何か魔力を用いているのか、腕の方から暖かいものが流れ込む。それはゆっくりと慎重に、リュシェラの腕に染み込んでいく。
それに伴いズキズキと主張していた痛みが、ゆっくりと消えていった。途端に痛みで強ばっていた、身体から力が抜けてしまう。
「……温かい」
それはまるで触れ合った人肌から、移り込む体温のようで。久しぶりに感じる、柔らかい温もりに、思わずリュシェラの唇から、そんな言葉が零れ落ちた。
無意識に零れた言葉に、リュシェラ自身驚いてしまう。だけど、それ以上になぜかイヴァシグスが驚いた表情を、リュシェラの方へ向けていた。
「この魔力を感じるのか?」
「あっ……はい……すごく温かくて、気持ちいいです……」
何かマズいことを言っただろうか。イヴァシグスの表情を伺いながら、リュシェラは失礼にならなさそうな、素直な感想を告げてみる。
「……リュシェラは感知能力が、だいぶ高いようだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。そんなお前だから、呪いの発動も感知できるのだろう」
魔石の事を告げられないため、リュシェラはその呪いという言葉に曖昧に頷いた。
「不調はないか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「そうか、良かった」
ホッと息を吐いたイヴァシグスは、リュシェラの言葉に本気で安堵したように見えていた。それは、まるで心の底から案じていたような、そんな姿で。リュシェラはどんどん戸惑いが深くなる。
(イヴァシグス様が、私を心配する訳がないのに……)
そう思いながらも、ゆっくりゆっくりと流れ込んでくる魔力は、万が一にでも傷付ける事を恐れているようなのだ。そして、ゆっくりながら確実に、リュシェラの身体を癒していた。
「……“良かった” のですか……?」
「……あぁ、もちろんだ」
だから気が付けば、リュシェラはそんな質問を、イヴァシグスへしてしまっていた。一方、質問されたイヴァシグスは、なぜそんな事を聞くのか、と怪訝な表情を向けてくる。
「……だって、イヴァシグス様は私をころ……」
殺したかった、はずでしょう。
最後まで言葉にする事が出来なかったのは、少し離れた位置に居る、子ども達を思ってだった。
自分達の王の慈悲深さを信じる子ども達。イヴァシグスが寄り添う姿に、だいぶ安心したのだろう。不安そうにしながらも、子どもらしい顔に戻った2人を見れば、万が一にでも、彼等の純粋な想いを穢しかねない言葉は、言えなかった。
「ちがう、そうではない! 私はそんな事は望んでいない!」
だが、飲み込んだ言葉を、リュシェラの視線や態度から酌み取ったイヴァシグスが、大きな声を張り上げた。突然の大きな音に、リュシェラの身体がビクッと跳ねる。
「す、すまない、驚かせて悪かった。だが、違うんだ」
威圧感は全くなく、必死さだけが声音からは伝わってきた。再び呆気に取られたリュシェラへ向いた、眉尻が下がったその顔は、何を思っての表情なのか。分からない。
「本当に、お前の死を、私は望んだりはしていない」
でも、思ってもいなかった言葉を告げるイヴァシグスは、ひどく苦しそうな様子だった。そして。
「どうか、話しを聞いて欲しい。それ以上は、お前に何かを求めたりはしない」
だから、どうかお願いだ……。
話しだけでも、せめて。
切実な声で、希う言葉を続けてくる。
死んで良い。そう思うほど、無価値で邪魔な存在へ、ここまで強く願うだろうか。まるで懺悔でもしているような様子に、リュシェラはただただ混乱するだけだった。
それに伴いズキズキと主張していた痛みが、ゆっくりと消えていった。途端に痛みで強ばっていた、身体から力が抜けてしまう。
「……温かい」
それはまるで触れ合った人肌から、移り込む体温のようで。久しぶりに感じる、柔らかい温もりに、思わずリュシェラの唇から、そんな言葉が零れ落ちた。
無意識に零れた言葉に、リュシェラ自身驚いてしまう。だけど、それ以上になぜかイヴァシグスが驚いた表情を、リュシェラの方へ向けていた。
「この魔力を感じるのか?」
「あっ……はい……すごく温かくて、気持ちいいです……」
何かマズいことを言っただろうか。イヴァシグスの表情を伺いながら、リュシェラは失礼にならなさそうな、素直な感想を告げてみる。
「……リュシェラは感知能力が、だいぶ高いようだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。そんなお前だから、呪いの発動も感知できるのだろう」
魔石の事を告げられないため、リュシェラはその呪いという言葉に曖昧に頷いた。
「不調はないか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「そうか、良かった」
ホッと息を吐いたイヴァシグスは、リュシェラの言葉に本気で安堵したように見えていた。それは、まるで心の底から案じていたような、そんな姿で。リュシェラはどんどん戸惑いが深くなる。
(イヴァシグス様が、私を心配する訳がないのに……)
そう思いながらも、ゆっくりゆっくりと流れ込んでくる魔力は、万が一にでも傷付ける事を恐れているようなのだ。そして、ゆっくりながら確実に、リュシェラの身体を癒していた。
「……“良かった” のですか……?」
「……あぁ、もちろんだ」
だから気が付けば、リュシェラはそんな質問を、イヴァシグスへしてしまっていた。一方、質問されたイヴァシグスは、なぜそんな事を聞くのか、と怪訝な表情を向けてくる。
「……だって、イヴァシグス様は私をころ……」
殺したかった、はずでしょう。
最後まで言葉にする事が出来なかったのは、少し離れた位置に居る、子ども達を思ってだった。
自分達の王の慈悲深さを信じる子ども達。イヴァシグスが寄り添う姿に、だいぶ安心したのだろう。不安そうにしながらも、子どもらしい顔に戻った2人を見れば、万が一にでも、彼等の純粋な想いを穢しかねない言葉は、言えなかった。
「ちがう、そうではない! 私はそんな事は望んでいない!」
だが、飲み込んだ言葉を、リュシェラの視線や態度から酌み取ったイヴァシグスが、大きな声を張り上げた。突然の大きな音に、リュシェラの身体がビクッと跳ねる。
「す、すまない、驚かせて悪かった。だが、違うんだ」
威圧感は全くなく、必死さだけが声音からは伝わってきた。再び呆気に取られたリュシェラへ向いた、眉尻が下がったその顔は、何を思っての表情なのか。分からない。
「本当に、お前の死を、私は望んだりはしていない」
でも、思ってもいなかった言葉を告げるイヴァシグスは、ひどく苦しそうな様子だった。そして。
「どうか、話しを聞いて欲しい。それ以上は、お前に何かを求めたりはしない」
だから、どうかお願いだ……。
話しだけでも、せめて。
切実な声で、希う言葉を続けてくる。
死んで良い。そう思うほど、無価値で邪魔な存在へ、ここまで強く願うだろうか。まるで懺悔でもしているような様子に、リュシェラはただただ混乱するだけだった。
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