雨音

れお

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夏になる寸前、雨ばかり降るこの時期。

僕にはこの時にしか会えない友達がいた。

 

    保育園を卒業し、小学生になった僕におばあちゃんが新しい合羽を買ってくれた。
    緑色でカエルがモチーフのその合羽は、フードがカエルの顔になっていて、目が付いている。動物がモチーフのパーカーでいえば、ちょうど耳が付いている具合に。
    お母さんは僕に傘と長靴を買ってくれた。これは普通のどこにでも売っている黄色い傘と長靴。
それでも僕は新しいものがうれしくてすぐさま着た。そして雨がザーザー降る外に駆け出した。

   

   ドッドッと強めの雨が僕の新品の傘を叩く。僕は傘をくるくると回してそれをはじき返しながら歩いた。
    大きな水溜りにわざと入り、ジャブジャブと水面を揺らす。
    泥と砂利がかき混ぜられて水溜りが茶色になった。
    夢中になって遊んでいると、いつの間にか公園の前に来ていた。
    いつもは子供たちの遊ぶ声がひびき渡るのに、今日は誰も居ない。雨なのだから当然かもしれないけれど。
    僕は公園の真ん中に駆けていった。
    今日は僕しかいない。みんなでじゅんばんこに使うぶらんこも、少し上のお兄ちゃんたちが一番上立って、ふんぞり返っているジャングルジムにも誰もいない。この広い公園は僕だけのものになっている。

    僕はうれしくて駆け出した。水がばしゃばしゃとはねるのも気にしない。
今僕を怒る人なんていないのだもの。
   僕はぴたりと足を止めた。大きな声で叫びたくなったのだ。いつもは子供たちの声で騒がしいこの公園も今は僕の声しかないのだから!
    僕はスーっと大きく息を吸い込んだ。そりかえる背中。胸を張って、たくさんの空気を吸い込む。
    その空気を声に出そうとした時だった。




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