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しおりを挟む僕は何も言えなくなった。そんな顔をさせたいわけじゃない。
ただ、僕は寂しかったんだってわかって欲しかった。
僕たちは仲直りをして、この日は遅くまで遊んだ。
僕たちが遊ぶのはやっぱり雨の中。
僕はまた一つ気づいた。彼は「雨の日」に遊べるのではない。
単なる雨の日ではなく、梅雨なのだ。
――あぁ、そうか。
彼は「梅雨」そのもの。
梅雨が終わると僕は公園に行くのをやめた。公園に行ってしまうと来ないと分かっていてもつい彼を待ちたくなる。そんなときはまた来年、と小さく呟く。そうすれば少しは寂しさがほぐれた。
そんな僕も中学生になると部活が忙しく、公園には一度も行けずに梅雨が終わる事がしばしば。
それだけじゃない。僕は公園に行くことにためらうようになっていた。
中学生が遊ぶところじゃない。それでも時たま彼はどうしているだろうかと思った。
高校生になると部活に塾に友達付き合いで忙しさが増した。行ける範囲もぐんと広がって公園の前を通ることさえない。ふと思い出すこともなく、僕の中の彼の存在はほぼ消えていた。
高校を卒業後、上京して地元を離れた僕の中からは彼の姿は完全に消えていた。
「来るなら連絡しなさいっていつも言ってるでしょう」
何も連絡をせず、奥さんと息子を連れて帰省した僕に母は小言を漏らした。それでも孫に会えた事がうれしいのか終始微笑みっぱなしだ。
雨がしとしと降る窓の外を眺めて、先ほど傘を差して外に出かけて言った幼い息子の姿を思い出してふと思った。
――今は梅雨じゃないか
「母さん。俺、小さいときに雨の日に遊びに行ってたよね」
「そうよ。大雨なのに遊びに行くんだって聞かなくて」
そうだ。丁度今の息子と同じくらいだった。
僕は久々に思い出したのだ。
雨の中遊びに行った公園を。
そこで出会った傘を持たない男の子を
その子が来るのをひたすら待った台風の日を。
会えなくて行き場のない寂しさを彼にぶつけてしまったあの日を。
遊ぶのが楽しくて仕方なかった梅雨の季節を。
彼はまだあの公園にいるだろうか。
もし、いるのであれば遊びに出かけた僕の息子も彼に会うかもしれない。
会うことが出来ていたら、遊んでいたら今度は僕も雨の中一緒にあの公園に行こう。
久しぶりだね、と言ったら彼はまた微笑んでくれるかな?
もしかしたら遊びに行かなくなった僕を怒るかもしれない。
彼の優しい笑顔を思い出す。雨の中一緒に駆けずり回ったことを思い出す。
僕はいくつも変わったところがあるけれど彼はどうだろう。
分からないけれど何も変わっていないんじゃないかなと何となく思う。
彼はきっと怒らないさ。
きっとまたあの優しい笑顔で僕を迎えてくれるのだ。
end
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