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しおりを挟む6月が終わり、7月、8月、夏になると空はカラッと晴れて少しの雨も降る気配がない。テレビの天気予報でおひさまマークが輝くのを見ては、僕はガックリと肩落とす。雨が降らず、もう彼には1ヶ月近くあっていない。どうしているかな。僕の事を忘れていないかなと心配になってしまう。
そんなある日、僕はいつものように天気予報を見て絶叫した。
『台風が上陸します』
雨だ!雨が降るぞ!それもとびっきりの大雨だ!
次第に空が黒くて分厚い雲に覆われていく。それを見て僕の胸は躍った。
ぽつぽつと雨が地面を濡らした。僕は大急ぎで合羽を着て長靴を履いた。
「危ないから駄目よ」というお母さんの声を背に僕はかまわず家を飛び出る。
もうすぐ彼に会える。
台風の中、公園に向かって走り続けた。
途中、風に飛ばされた新聞紙に足をとられながらも走る。
公園に着いたけれど、彼の姿はまだなかった。僕は山の形をした中が空洞になっている遊具の中に入った。まるで雪で作るかまくらのようなそれは雨風をしのぐのにぴったりだ。
大きな風にざぁっと唸るように木が揺れる。小さな僕にはその音が少し怖く感じて心細くなる。それでも彼に会えると思えば自然と怖くなくなった。
しかし、何時間待っても彼は来なかった。
たまたま来なかったのかもしれない、と僕は思った。台風だもの。僕だって家を出ることをお母さんに止められたじゃないか。
僕は台風の日は行かないことにした。でも、そうすると雨の日にならない。やがて夏が終わり、秋が来た。数回、雨の日があり、僕はそのたび公園に走って行った。しかし彼は現れない。
おかしいな。雨の日に会えるはずなのに。
そして冬になった。冬には雨の変わりに雪が降る。まさかそれはないよね、と思いつつも僕は公園に向かった。やっぱり彼は来なかった。
彼は引っ越したのかもしれないと僕は思うようになった。もうあの公園には来られないほど遠い町に引っ越してしまったんだ。
お正月が終わってまた6月。雨ばかり降り、むし暑い時期がやって来た。
雨の中、たまたま公園の前を通った僕は目を疑った。黄色い傘をさした男の子が一人で砂場にしゃがんでいたのだ。あの黄色い傘は確かに僕があの子にあげたもの。
片隅に追いやられた記憶が鮮明によみがえる。僕は拳をぐっと握った。
僕は待っていたんだよ。ずっと、君を待ってた。
引っ越したのかもしれない、しょうがないよねと思っていても心のどこかで彼に怒っていた。何で何も言ってくれなかったんだろう。いつも黙ってばっかりで!僕は何日も公園に来ては遅くまで待っていたのに!
僕だけが楽しみだったのかと思うと悲しくなる。
僕は彼へと駆け出して、大きな声で怒った。
「どこに行ってたの!」
僕の大声にビクっと肩を揺らし、振り返った彼。直ぐに立ち上がって笑顔になった。でも、僕は笑顔になんてなれるはずがなかった。だって僕は彼に怒っているのだから。僕のしかめ面がほぐれない事に彼はたじろぐ。
それから眉を八の字にして少し寂しそうな顔で微笑んだ。
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