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直江の煩悶
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梅雨の晴れ間、外の五月晴れとは相反し、部屋の主はどんよりとしていた。
いまにも一転にわかにかけ曇り、雷雨というか暴風雨にでもなりそうな心境だった。
何も手につかない直江は深々とため息を吐いく。
青髭大公とも鬼元帥ともいわれ、敵に畏怖された姿はそこにない。
”まさか、あそこまでなにも知らなかったとは・・“
直江の脳裏には衝撃の初夜が蘇ったのだった・・・
いつもなら面倒なと億劫な気分で迎えていた婚姻の儀が、なぜだか今回に限って、直江は面倒だと思わなかった。
それは婚儀を挙げる相手が淡雪だからだろうか。
淡雪は深窓の令息らしくない、予測不可能な行動でいつの間にか大公家の家人達を味方につけた。
直江も淡雪の控えめだが負けず嫌いで、真っ直ぐな気性が、一緒に過ごしているうちに気に入っていた。
“こちらの想定外の事をする淡雪を見ていることも楽しい。まぁ、たまに頭痛を覚えることもあるがな・・・”
いままでに来た3人のときは、どうやって婚儀を回避するかしか直江は考えなかった。
「体調がすぐれない」と、幼子のずる休みの言い訳のような台詞を発したこともあるし、遠乗りに出かけ、直江はわざと大遅刻したこともある。
“不思議な事だ・・・”
侍女達に婚礼衣装を着せられ、静謐な空気に包まれた祭壇の前に立ち、直江は淡雪を待った。
付き人に手を引かれ婚礼衣装を身に着けた淡雪が聖堂に現れると、列席者が息を呑み、続いてざわめいた。
一瞬にして直江は淡雪の姿に目を奪われた。
金糸銀糸で縁取られた極薄い藤色の袍から覗く真っ白な繻子織りの衣、胸元下の濃い紫の帯を締めた淡雪は優美な婉容さと儚さの中に高貴さを漂わせるその凛とした姿は何者にも犯し難い印象を与えた。
直江の配偶者として送り込まれた者たちも皆、一際容姿が整っていたが、淡雪のそれは圧倒的で他を寄せ付けない。
直江は素直を美しいと感じた。
式を終え、宴席に移る間も直江は淡雪が気になる己の感情が不思議だった。
淡雪を見た誰をも息を呑み、憧憬と欲の孕んだ目を向けるのをみるにつけ、淡雪を隠したい、見せつけたいと相反する感情を抱えたのまま、直江は宴席に就いた。
“この厄介な感情が、甘美に思えるのも悪くないのかもしれない”
誰と居ても何をするにしても面倒で全ての事に冷めていた自分が・・・と直江は苦笑した。
ふと、視線に気づくと、じっと淡雪が直江を見ていた。
「なにか?」
「別に」
一言そういって淡雪は視線を外した。
淡雪にすれば、朝から窮屈な婚礼衣装を着せ付けられ、重い髪がさりにうんざりとしているのに、直江は女性達の耳目を集めて、平然と座っているだけ。
つい、恨みがましく見てしまっただけなのだ。
だが、直江にとっては、黒曜石のような瞳はその者の本性を暴くような錯覚をさせる。
直江は心の中を見透かされたようで、覚えた気恥ずかしさを隠すように酒杯を煽った。
祝宴は続き、夜も更けたころ、直江も淡雪と夜を過ごすため退席した。
流れてくる華やか曲とざわめきを背後に回廊を歩く直江の足取りはいつになく軽かった。
扉を開け、中へ入る。
仄かな灯りに浮かび上がっているのは牀榻の上で微かに震えている白衣の塊だった。
“緊張に震えているのか”
と、直江は思っていたが、淡雪が震えていたのは、俎板を持つ光顕と巨大マグロをぶら下げた忠勝を従えた直江を妄想し、突っ伏して爆笑していたからであり、決して緊張に震えていたわけではない。
時々、令息にあるまじき行動をするが、初夜を迎える緊張で震える淡雪の初々しさと直江は捉えた。
色気を振り撒き、手練手管を用いて、あわよくば自分を閨へ誘い込もうとしていた輩を相手にしてきただけに、この淡雪の恥じらいは直江の好感度を上げまくった。
淡雪はというと、ひとりで妄想笑いをしているヤバい奴と思われ、刀で切られるのを回避しようと焦っていた。
なんとか絞り出して、
「幾久しくよろしくお願いします」
と三つ指をついて挨拶した淡雪に言い表せない感情が直江を突き動かした。
淡雪の顎を指で掬い唇を塞いだ。
直江は淡雪が抵抗しないのをいいことに歯列を割り、舌を淡雪の舌に絡ませるように動いた。
淡雪はというと、突然のことで身体は動かない、
息をしようにも唇を塞がれ息をするどころではない。
窒息死寸前で身体から力が抜けていき、ガクリっと直江の腕の中に倒れ込んだのだ。
直江は慌てて淡雪の頬を軽く叩くと、ぜぇぜぇと荒い息を繰り返した淡雪は開口一番、
「溺れてもいないのに、なんで人工呼吸なんかするんだよ、しかも空気送り込まないで舌を絡ませてくるなんて!」
という。
「はぁっ?」
“息のしかたがわからないだと?い、いや、何故、この状況で人工呼吸といいきるのか・・・初めてにしてもおかしくないか・・・”
直江は一抹の不安を覚えた。
直江の不安は的中する。
「初夜に新郎新婦が二人でマグロの解体ショーやるんじゃないの、大公家では。やるならさっさとやろうよ。その後も作物の受粉作業があるんだろう?」
淡雪の口から信じられない台詞が飛び出した。
淡雪の説明を聞いているうちに直江の意識が一瞬飛んだ。
“な、なんといった?マグロの解体ショー?作物の受粉作業?。”
気が遠くなるのを必死で我慢し、淡雪の言葉を反芻する。
直江は顳かみがヒクヒクと痙攣し、酷い頭痛に苛まれながらも淡雪の言葉にツッコミをいれた。
“どこの世界に新婚初夜にマグロの解体ショーをする新郎新婦がいるんだ。受粉作業は作物ではなくて新郎が新婦にするものだろうが!”
直江は顳かみを揉みながら淡雪に尋ねる。
「やるか、そんなこと。反対に聞きたい。なぜ。そうなるんだ?」
「晴と都筑が・・・」
淡雪の説明を聞くにつれ、直江の目は見開かれ、顔色も段々と青くなっていく。
いまにも息が止まりそうだった。
直江は説明を聞き終えて愕然としたが、悪夢を振り払うように頭を左右に振ると、淡雪の両腕を掴んだ。
「いいか、よく聞け!初夜の寝室でマグロの解体ショーなぞ西蓮寺家、いやどこの家でも演らん。作物の受粉作業も同様だ」
「じゃあ、なにするんだよ。寝室で運動会?まさか牀榻の陣取り勝負か?」
「なぜ、そうなる⁉」
「なんとなく?」
「な、なんとなく!?添臥はどうした?」
「添臥って?」
こいつ添臥も知らないのか、侯爵家の教育はどうなっているんだと、直江は呆れを通り越し、驚愕した。
「成人を迎える頃、夜に添臥役が来たろうが」
「?・・・そういえば、小さな子どもじゃあるまいし、なぜ子守がいるのかとなぁ・・・あれがそうなの?」
直江は徐ろに頷き
「添臥に教わっただろうが」
「ごめん。自慢じゃないけど、枕に頭を付けたら即寝ちゃうんだよ、アハハハ」
「寝ちゃうんだよって・・・朝までぐっすりか?」
「朝までぐっすり」
「・・・」
“添臥、職務怠慢だろうが。叩き起こしてでも教えなくてどうする!!我が家なら即、放逐だぞ”と直江は心の中で悪態をついた。
「じゃあさ、直江が教えてよ」
淡雪があっけらかんと爆弾を落とした。
「はぁっ!?私がか?」
「そう」
”ちょっと待て。よく考えれば、新郎新婦がこれからイタそうするなら、相手が閨の事を知っていようが知っていまいが関係なくないか。知らないなら実地で教えればいいことだ・・・“
直江は自らを鼓舞するごとく気を取り直した。
真っ白な身体に自分を刻むと思うと、身も心も高揚してくるのだから男というものは始末に負えない生き物だ。
「解った。実地で教えよう」
直江はすんと表情を改めると、もともと美丈夫だったせいもあり、一気に男の艶が増した。
これまでに送り込まれていた人物達がいまの直江を見たら喜んで脚を開いただろう。
しかし、相手は淡雪である。
きょとんとして動く気配もない。
それどころか不審者を見るがごく直江をじっと見ているため、やり辛いことこの上もない。
直江は淡雪の顎に手を掛けて顔を近づけ、あと少しというところで
「質問!」
と淡雪からストップがかかった。
「実施ってことは、座学もあるってこと?」
さあ、これからというところで止められた直江は半ば苛立ち、舌打ちをした。
「普通だと実地の前に座学を学ぶがな」
「なら、座学から教えてよ」
「お、お前はここまできて・・・」
「お願い。晴や都筑が含みのある言い方をしてたんだけど聞けなかったんだ、実は。だからさ、教えてください」
淡雪が手を合わせて懇願する。
しかも、上目遣いのその仕草がめちゃくちゃ可愛らしい。
”くう~っ、この状況でそれは反則だろうが・・・“
直江は恨みがましい目をすると、ため息をつき、がっくりと肩を落とした。
「・・・いいか、よく聞け。受粉作業といっていたものは、われわれなら受精行為ということになり、雌しべに花粉を付ける代わりに我々は受精行為をする」
「受精行為って?」
「孕ませる者が孕む者に子種を着けることだ。つまり、孕ませる側のモノを孕む者の中に挿入し、射精することだ」
「!!??%☆♂♀♂♂」
直江の性教育に淡雪は冷や汗が出ると同時におのが無知に青ざめた。
知れば知るほど衝撃的な内容で、淡雪は今にも気絶しそうになった。
息をするもの苦しく、そのせいか喘ぎとも悲鳴ともつかない声をあげる。
直江はというと、何の因果か、新婚初夜に新婦相手に閨の講義をしなければならならない我が身の情けなさに切ない思いをしたのだった。
いまにも一転にわかにかけ曇り、雷雨というか暴風雨にでもなりそうな心境だった。
何も手につかない直江は深々とため息を吐いく。
青髭大公とも鬼元帥ともいわれ、敵に畏怖された姿はそこにない。
”まさか、あそこまでなにも知らなかったとは・・“
直江の脳裏には衝撃の初夜が蘇ったのだった・・・
いつもなら面倒なと億劫な気分で迎えていた婚姻の儀が、なぜだか今回に限って、直江は面倒だと思わなかった。
それは婚儀を挙げる相手が淡雪だからだろうか。
淡雪は深窓の令息らしくない、予測不可能な行動でいつの間にか大公家の家人達を味方につけた。
直江も淡雪の控えめだが負けず嫌いで、真っ直ぐな気性が、一緒に過ごしているうちに気に入っていた。
“こちらの想定外の事をする淡雪を見ていることも楽しい。まぁ、たまに頭痛を覚えることもあるがな・・・”
いままでに来た3人のときは、どうやって婚儀を回避するかしか直江は考えなかった。
「体調がすぐれない」と、幼子のずる休みの言い訳のような台詞を発したこともあるし、遠乗りに出かけ、直江はわざと大遅刻したこともある。
“不思議な事だ・・・”
侍女達に婚礼衣装を着せられ、静謐な空気に包まれた祭壇の前に立ち、直江は淡雪を待った。
付き人に手を引かれ婚礼衣装を身に着けた淡雪が聖堂に現れると、列席者が息を呑み、続いてざわめいた。
一瞬にして直江は淡雪の姿に目を奪われた。
金糸銀糸で縁取られた極薄い藤色の袍から覗く真っ白な繻子織りの衣、胸元下の濃い紫の帯を締めた淡雪は優美な婉容さと儚さの中に高貴さを漂わせるその凛とした姿は何者にも犯し難い印象を与えた。
直江の配偶者として送り込まれた者たちも皆、一際容姿が整っていたが、淡雪のそれは圧倒的で他を寄せ付けない。
直江は素直を美しいと感じた。
式を終え、宴席に移る間も直江は淡雪が気になる己の感情が不思議だった。
淡雪を見た誰をも息を呑み、憧憬と欲の孕んだ目を向けるのをみるにつけ、淡雪を隠したい、見せつけたいと相反する感情を抱えたのまま、直江は宴席に就いた。
“この厄介な感情が、甘美に思えるのも悪くないのかもしれない”
誰と居ても何をするにしても面倒で全ての事に冷めていた自分が・・・と直江は苦笑した。
ふと、視線に気づくと、じっと淡雪が直江を見ていた。
「なにか?」
「別に」
一言そういって淡雪は視線を外した。
淡雪にすれば、朝から窮屈な婚礼衣装を着せ付けられ、重い髪がさりにうんざりとしているのに、直江は女性達の耳目を集めて、平然と座っているだけ。
つい、恨みがましく見てしまっただけなのだ。
だが、直江にとっては、黒曜石のような瞳はその者の本性を暴くような錯覚をさせる。
直江は心の中を見透かされたようで、覚えた気恥ずかしさを隠すように酒杯を煽った。
祝宴は続き、夜も更けたころ、直江も淡雪と夜を過ごすため退席した。
流れてくる華やか曲とざわめきを背後に回廊を歩く直江の足取りはいつになく軽かった。
扉を開け、中へ入る。
仄かな灯りに浮かび上がっているのは牀榻の上で微かに震えている白衣の塊だった。
“緊張に震えているのか”
と、直江は思っていたが、淡雪が震えていたのは、俎板を持つ光顕と巨大マグロをぶら下げた忠勝を従えた直江を妄想し、突っ伏して爆笑していたからであり、決して緊張に震えていたわけではない。
時々、令息にあるまじき行動をするが、初夜を迎える緊張で震える淡雪の初々しさと直江は捉えた。
色気を振り撒き、手練手管を用いて、あわよくば自分を閨へ誘い込もうとしていた輩を相手にしてきただけに、この淡雪の恥じらいは直江の好感度を上げまくった。
淡雪はというと、ひとりで妄想笑いをしているヤバい奴と思われ、刀で切られるのを回避しようと焦っていた。
なんとか絞り出して、
「幾久しくよろしくお願いします」
と三つ指をついて挨拶した淡雪に言い表せない感情が直江を突き動かした。
淡雪の顎を指で掬い唇を塞いだ。
直江は淡雪が抵抗しないのをいいことに歯列を割り、舌を淡雪の舌に絡ませるように動いた。
淡雪はというと、突然のことで身体は動かない、
息をしようにも唇を塞がれ息をするどころではない。
窒息死寸前で身体から力が抜けていき、ガクリっと直江の腕の中に倒れ込んだのだ。
直江は慌てて淡雪の頬を軽く叩くと、ぜぇぜぇと荒い息を繰り返した淡雪は開口一番、
「溺れてもいないのに、なんで人工呼吸なんかするんだよ、しかも空気送り込まないで舌を絡ませてくるなんて!」
という。
「はぁっ?」
“息のしかたがわからないだと?い、いや、何故、この状況で人工呼吸といいきるのか・・・初めてにしてもおかしくないか・・・”
直江は一抹の不安を覚えた。
直江の不安は的中する。
「初夜に新郎新婦が二人でマグロの解体ショーやるんじゃないの、大公家では。やるならさっさとやろうよ。その後も作物の受粉作業があるんだろう?」
淡雪の口から信じられない台詞が飛び出した。
淡雪の説明を聞いているうちに直江の意識が一瞬飛んだ。
“な、なんといった?マグロの解体ショー?作物の受粉作業?。”
気が遠くなるのを必死で我慢し、淡雪の言葉を反芻する。
直江は顳かみがヒクヒクと痙攣し、酷い頭痛に苛まれながらも淡雪の言葉にツッコミをいれた。
“どこの世界に新婚初夜にマグロの解体ショーをする新郎新婦がいるんだ。受粉作業は作物ではなくて新郎が新婦にするものだろうが!”
直江は顳かみを揉みながら淡雪に尋ねる。
「やるか、そんなこと。反対に聞きたい。なぜ。そうなるんだ?」
「晴と都筑が・・・」
淡雪の説明を聞くにつれ、直江の目は見開かれ、顔色も段々と青くなっていく。
いまにも息が止まりそうだった。
直江は説明を聞き終えて愕然としたが、悪夢を振り払うように頭を左右に振ると、淡雪の両腕を掴んだ。
「いいか、よく聞け!初夜の寝室でマグロの解体ショーなぞ西蓮寺家、いやどこの家でも演らん。作物の受粉作業も同様だ」
「じゃあ、なにするんだよ。寝室で運動会?まさか牀榻の陣取り勝負か?」
「なぜ、そうなる⁉」
「なんとなく?」
「な、なんとなく!?添臥はどうした?」
「添臥って?」
こいつ添臥も知らないのか、侯爵家の教育はどうなっているんだと、直江は呆れを通り越し、驚愕した。
「成人を迎える頃、夜に添臥役が来たろうが」
「?・・・そういえば、小さな子どもじゃあるまいし、なぜ子守がいるのかとなぁ・・・あれがそうなの?」
直江は徐ろに頷き
「添臥に教わっただろうが」
「ごめん。自慢じゃないけど、枕に頭を付けたら即寝ちゃうんだよ、アハハハ」
「寝ちゃうんだよって・・・朝までぐっすりか?」
「朝までぐっすり」
「・・・」
“添臥、職務怠慢だろうが。叩き起こしてでも教えなくてどうする!!我が家なら即、放逐だぞ”と直江は心の中で悪態をついた。
「じゃあさ、直江が教えてよ」
淡雪があっけらかんと爆弾を落とした。
「はぁっ!?私がか?」
「そう」
”ちょっと待て。よく考えれば、新郎新婦がこれからイタそうするなら、相手が閨の事を知っていようが知っていまいが関係なくないか。知らないなら実地で教えればいいことだ・・・“
直江は自らを鼓舞するごとく気を取り直した。
真っ白な身体に自分を刻むと思うと、身も心も高揚してくるのだから男というものは始末に負えない生き物だ。
「解った。実地で教えよう」
直江はすんと表情を改めると、もともと美丈夫だったせいもあり、一気に男の艶が増した。
これまでに送り込まれていた人物達がいまの直江を見たら喜んで脚を開いただろう。
しかし、相手は淡雪である。
きょとんとして動く気配もない。
それどころか不審者を見るがごく直江をじっと見ているため、やり辛いことこの上もない。
直江は淡雪の顎に手を掛けて顔を近づけ、あと少しというところで
「質問!」
と淡雪からストップがかかった。
「実施ってことは、座学もあるってこと?」
さあ、これからというところで止められた直江は半ば苛立ち、舌打ちをした。
「普通だと実地の前に座学を学ぶがな」
「なら、座学から教えてよ」
「お、お前はここまできて・・・」
「お願い。晴や都筑が含みのある言い方をしてたんだけど聞けなかったんだ、実は。だからさ、教えてください」
淡雪が手を合わせて懇願する。
しかも、上目遣いのその仕草がめちゃくちゃ可愛らしい。
”くう~っ、この状況でそれは反則だろうが・・・“
直江は恨みがましい目をすると、ため息をつき、がっくりと肩を落とした。
「・・・いいか、よく聞け。受粉作業といっていたものは、われわれなら受精行為ということになり、雌しべに花粉を付ける代わりに我々は受精行為をする」
「受精行為って?」
「孕ませる者が孕む者に子種を着けることだ。つまり、孕ませる側のモノを孕む者の中に挿入し、射精することだ」
「!!??%☆♂♀♂♂」
直江の性教育に淡雪は冷や汗が出ると同時におのが無知に青ざめた。
知れば知るほど衝撃的な内容で、淡雪は今にも気絶しそうになった。
息をするもの苦しく、そのせいか喘ぎとも悲鳴ともつかない声をあげる。
直江はというと、何の因果か、新婚初夜に新婦相手に閨の講義をしなければならならない我が身の情けなさに切ない思いをしたのだった。
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