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第一章:元聖女と渡鴉旅団
幕間・アトランシア王国元老院
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シャルロットが去ったアトランシア王国では精霊達がいなくなった事で混乱の渦中にあった。
それまでは精霊達の加護により与えられし恵みを享受してきた王国は一気に衰退の一途を辿り、地方では魔物による被害率が増加し、土地が痩せ細ったせいで農作物も育たず、家畜達も餓死するといった事例まで出てくる始末。
当然、辺境の村は飢餓に苦しむことになり、廃村となる所が増える一方で、街にも品物が入らず物価がどんどんと上がっていった。
また疫病も蔓延し始め、各領主達はその対応に追われていたが、王都の貴族達は自身の身を守ることしか専念せず、市民達の不満は徐々に募っていった。
これは不味いと思った王国政府はいち早い聖女リリアーナの派遣を要請したが、ガイウスやリリアーナ本人が〝まだ聖女教育を終えていない〟という理由でそれを拒み続け、政府はもちろん、市民達から疑惑の声が上がり始めていた。
その中で王国の中でも最も重鎮で、そして最も博識高いとされている者達の集まりである〝元老院〟では、五人の老人達が一堂に会して現在の王国について話し合っていた。
「さて……昨今の王国はかつての王国と比べ見るに堪えない状況にまで陥っておる。この事について意見がある者はおるか?」
五人の中で最も高齢である男性〝エイブラハム・アレス・ペンドラゴン〟が四人にそう尋ねると、そのうちの一人の少女〝チャイコスカヤ・ヘルメス・ラスプーチン〟が真っ先に口を開く。
「原因は見るも明らかであろう?この国から精霊達がいなくなってしもうたからじゃ」
その言葉にエイブラハムを含めた四人が同意するように頷く。
「その精霊達が消えた理由について……理由が分かる者はおらぬか?」
エイブラハムがそう尋ねると、今度はチャイコスカヤの隣に座っていた〝ダイモス・ユピテル・アドルフ〟が手を挙げてこう述べた。
「私の調べでは、この国から精霊達が消えた日と、〝偽聖女〟と呼ばれたシャルロットがこの国を追放された日は全く同じというのが分かりました」
「ふむ……やはりそうか……」
ダイモスの言葉にエイブラハムはもちろん、他の者達まで眉間に皺を寄せた。
「陛下が他国へ訪れていた際、ワシらも地方へ視察にへと出ておった……その間に起きた追放事件────それを知らされた時、ワシは我が耳を疑ってしまった」
「アルスよ、それはこの婆も同じじゃて。しかし何故、シャルロットは聖女ではなくなってしもうたのかのぅ」
「それについて我が国の精霊神であらせられる〝ユグドラシア〟様に尋ねてみては?」
そう発言したのはダイモスの隣に座る女性〝エレイネシア・ヴィナス・ヒルデガルト〟である。
彼女は名案とばかりにそう発言したのだが、エイブラハムは首を横に振ってそれを否定した。
「実は五日も前から我が孫娘のレティ……〝レティシア〟が何度も尋ねてみているのだが、未だ何の反応も無いそうだ」
その言葉に一同がざわめき始める。
「エイブラハム、お主……それは本気で言っておるのか?」
「本気かつ真面目に言っているのだよチャイコスカヤ。お陰でレティが一向に食事も睡眠も取ろうとしないと、息子夫婦が嘆いておった」
深いため息を吐きながら頭を抱えるエイブラハム。
「そうなると少々……いや、かなり不味い状況でありますぞ?もしや、ユグドラシア様までこの国からいなくなってしまわれたのでは?」
そう話すのは元老院の最後の一人〝ロムルス・サトゥルヌス・アルトゥム〟である。
彼の言葉にエイブラハムは〝そこは安心して良い〟と言い切った。
「レティの話では存在は感じられるそうだ。しかし返事をする様子は無い……どうやら無視をされておるそうだ」
「そこまで腹に据えかねえおるということか?」
「ユグドラシア様がそのような態度を示されるということは、つまり……」
エレイネシアは言い切らなかったものの、その先の言葉はここにいる誰しもが予想出来ている事であった。
それを代弁するようにエイブラハムが断言する。
「やはり真の聖女はシャルロットであった。これは精霊達やユグドラシア様の様子から見て間違いは無いだろう」
「そうなるとこの国は……」
「うむ、見放されたと判断して良いであろうよ」
「あの馬鹿王子め────なんということをしてくれたのだ!」
「よすのですユピテル……それはあの場にいなかった事で彼女を守れなかった我々も同じですよ」
「ヴィナスの言う通りですぞ。こうなってしまっては、我々も覚悟を決めた方が宜しいでしょうな」
元老院の議事堂内に重苦しい空気が流れる。
そんな中、エイブラハムは悲痛な表情で四人にこう述べた。
「我々はもう歳だ……今更、どう足掻こうとこの世から去る日は近い。しかし、罪無き者も巻き込まれてしまうのは辛いのだ」
「レティシア嬢の事ですな?」
レティシア────〝レティシア・ユグドラ・フィオレ・ペンドラゴン〟はエイブラハムの孫娘である。
彼女はこの国を守護しているとされる精霊神ユグドラシアという、世界樹の最高位樹精霊に仕える巫女であった。
それ故に国から〝ユグドラ〟の名を授かり、今日までユグドラシアの巫女として勤めていた。
そしてレティシアはこの国で誰よりもシャルロットの事を慕っており、祖父と共に視察から帰ってきた際にシャルロットが追放されたと知った時は三日三晩泣き続けたという。
そんなレティシアがこの国と共に沈んでいくことを酷に感じたエイブラハムは四人にこんな提案をする。
「レティだけでもこの国から逃がせんものか……」
「確かに……しかしレティシア嬢だけでは危険でしょう」
「しかし騎士や兵士を護衛につけようとも、今のあ奴らは信用ならぬぞ」
「せめて聖女シャルロットの今の所在さえ掴めたのなら……」
「生きておるかも分からぬのにか?」
「ユピテルお主!滅多な事を言うでないわ!」
「しかし生死さえ分からんのは事実だろう!それとも淡い希望にすがれと申すか!」
「よさんか二人共!今は身内割れをしている場合ではなかろうが!」
あわや一触即発となりそうなチャイコスカヤとダイモスをエイブラハムは一喝する。
それによって二人は渋々ながらもその矛先を納めた。
「でしたら……」
押し潰されそうな程の空気の中、エレイネシアが静かに口を開く。
「我々は身を退くという形を取り、それに伴ってレティシア様も巫女の座を退きこの国を出るというのはどうでしょう?」
「ヴィナス、いきなり何を言うておるか?!」
「そうですぞ!我々はともかく、レティシア嬢を巫女の座から降ろすなど!」
「あまりの現実に正気を失ったか?!」
「ふむ……詳しく聞かせよヴィナス」
「アレス?!」
とんでもない提案をするエレイネシアにチャイコスカヤ、ダイモス、そしてロムルスが非難を浴びせるが、エイブラハムだけは静かにその話の詳細を尋ねる。
詳細を求められたエレイネシアは一つ頷いてから四人に説明を始めた。
「確かにレティシア様を巫女の座から退かせると聞けば誰でも反論するのは承知の上でございます。ですが、これはあくまでも〝形式上は〟の話ですので」
エイブラハムに習い不満がありながらも耳を傾けていた三人は、エレイネシアの〝形式上〟という言葉に反応する。
「形式上とは……つまり見せかけだけ、そうさせるということか?」
「その通りですヘルメス。事実上レティシア様がユグドラシア様の巫女であるという事は変わりません。なにせ彼女はユグドラシア様が直々に巫女にと指名された方ですから」
「仮にそうするとして、それをユグドラシア様がお許しになるかどうか……逆に更に怒らせてしまう事になるのではないか?」
「その不安はもっともです。ですので、ユグドラシア様にもご協力して頂こうかと」
「どういうことですかな?」
「どうやらユグドラシア様はシャルロット様の件に関してかなりご立腹されているご様子……ならばレティシア様がこの国を離れた場合、必然的にユグドラシア様もこの地を離れるでしょう」
「精霊界に帰るという事か?しかしそうなればユグドラシア様は二度とこの世界に来ることはなくなってしまうだろう。あの方が宿る世界樹は世界中でこの国にしか無い。しかしこの国から世界中に祝福を与えて下さっているのだ。最悪……この国どころか世界が滅びかねんぞ?」
「でしたらその世界樹の一部を持って国を出たらどうでしょうか?」
『────!!!』
エレイネシアの言葉に一同が目を大きく見開く。
それを見てエレイネシアはクスッとほくそ笑んで更にこう続けた。
「今ある世界樹が寿命を迎えてしまった場合に備えて苗木が保管されておりますでしょう?それを持って国を出れば良いのです。苗木さえあれば、何処へ行こうと世界樹を……ユグドラシア様の宿り木を確保出来るのですから」
「そういえばお主は苗木の守護者であったな?」
チャイコスカヤの問いをエレイネシアは笑みで返した。
エレイネシアはその特徴的な長い耳からご存知の通りエルフ────その中でも最上位に君臨する〝古代エルフ〟である。
それ故に世界樹の苗木を守護するという役目を担っていた。
「それもこれも、私が先代の巫女であったお陰です。アレスが決断するならば、私も苗木を手に貴方と共に行きましょう」
「ヴィナスよ、それは妾達とて同じじゃ」
「私もです!」
「吾輩もだ!」
四人の注目を受けてエイブラハムは心の中でこの国を出ることを決意した。
もはやこの国に残る義理は無い。
エイブラハムはその場に立ち上がると、四人に向けてこう宣言した。
「我、エイブラハム・アレス・ペンドラゴンはこの場にてこの国を出ることを宣言する!当然、ワシの家族も一緒だ!このワシの宣言に賛同し、共に行くと思う者は起立せよ!」
返事は無い……ただ無言で立ち上がる四人にエイブラハムは満足そうに頷いていた。
(アトランシア王国第一王子ガイウスよ……貴様は我々元老院をも敵にした。国が滅びゆく中、己が愚行を恥じ、後悔しながら地獄へと堕ちるが良い!)
エイブラハムは心の中でガイウスに向けてそう吐き捨てると、他の四人と共に王国脱出の計画を練り始めるのであった。
それまでは精霊達の加護により与えられし恵みを享受してきた王国は一気に衰退の一途を辿り、地方では魔物による被害率が増加し、土地が痩せ細ったせいで農作物も育たず、家畜達も餓死するといった事例まで出てくる始末。
当然、辺境の村は飢餓に苦しむことになり、廃村となる所が増える一方で、街にも品物が入らず物価がどんどんと上がっていった。
また疫病も蔓延し始め、各領主達はその対応に追われていたが、王都の貴族達は自身の身を守ることしか専念せず、市民達の不満は徐々に募っていった。
これは不味いと思った王国政府はいち早い聖女リリアーナの派遣を要請したが、ガイウスやリリアーナ本人が〝まだ聖女教育を終えていない〟という理由でそれを拒み続け、政府はもちろん、市民達から疑惑の声が上がり始めていた。
その中で王国の中でも最も重鎮で、そして最も博識高いとされている者達の集まりである〝元老院〟では、五人の老人達が一堂に会して現在の王国について話し合っていた。
「さて……昨今の王国はかつての王国と比べ見るに堪えない状況にまで陥っておる。この事について意見がある者はおるか?」
五人の中で最も高齢である男性〝エイブラハム・アレス・ペンドラゴン〟が四人にそう尋ねると、そのうちの一人の少女〝チャイコスカヤ・ヘルメス・ラスプーチン〟が真っ先に口を開く。
「原因は見るも明らかであろう?この国から精霊達がいなくなってしもうたからじゃ」
その言葉にエイブラハムを含めた四人が同意するように頷く。
「その精霊達が消えた理由について……理由が分かる者はおらぬか?」
エイブラハムがそう尋ねると、今度はチャイコスカヤの隣に座っていた〝ダイモス・ユピテル・アドルフ〟が手を挙げてこう述べた。
「私の調べでは、この国から精霊達が消えた日と、〝偽聖女〟と呼ばれたシャルロットがこの国を追放された日は全く同じというのが分かりました」
「ふむ……やはりそうか……」
ダイモスの言葉にエイブラハムはもちろん、他の者達まで眉間に皺を寄せた。
「陛下が他国へ訪れていた際、ワシらも地方へ視察にへと出ておった……その間に起きた追放事件────それを知らされた時、ワシは我が耳を疑ってしまった」
「アルスよ、それはこの婆も同じじゃて。しかし何故、シャルロットは聖女ではなくなってしもうたのかのぅ」
「それについて我が国の精霊神であらせられる〝ユグドラシア〟様に尋ねてみては?」
そう発言したのはダイモスの隣に座る女性〝エレイネシア・ヴィナス・ヒルデガルト〟である。
彼女は名案とばかりにそう発言したのだが、エイブラハムは首を横に振ってそれを否定した。
「実は五日も前から我が孫娘のレティ……〝レティシア〟が何度も尋ねてみているのだが、未だ何の反応も無いそうだ」
その言葉に一同がざわめき始める。
「エイブラハム、お主……それは本気で言っておるのか?」
「本気かつ真面目に言っているのだよチャイコスカヤ。お陰でレティが一向に食事も睡眠も取ろうとしないと、息子夫婦が嘆いておった」
深いため息を吐きながら頭を抱えるエイブラハム。
「そうなると少々……いや、かなり不味い状況でありますぞ?もしや、ユグドラシア様までこの国からいなくなってしまわれたのでは?」
そう話すのは元老院の最後の一人〝ロムルス・サトゥルヌス・アルトゥム〟である。
彼の言葉にエイブラハムは〝そこは安心して良い〟と言い切った。
「レティの話では存在は感じられるそうだ。しかし返事をする様子は無い……どうやら無視をされておるそうだ」
「そこまで腹に据えかねえおるということか?」
「ユグドラシア様がそのような態度を示されるということは、つまり……」
エレイネシアは言い切らなかったものの、その先の言葉はここにいる誰しもが予想出来ている事であった。
それを代弁するようにエイブラハムが断言する。
「やはり真の聖女はシャルロットであった。これは精霊達やユグドラシア様の様子から見て間違いは無いだろう」
「そうなるとこの国は……」
「うむ、見放されたと判断して良いであろうよ」
「あの馬鹿王子め────なんということをしてくれたのだ!」
「よすのですユピテル……それはあの場にいなかった事で彼女を守れなかった我々も同じですよ」
「ヴィナスの言う通りですぞ。こうなってしまっては、我々も覚悟を決めた方が宜しいでしょうな」
元老院の議事堂内に重苦しい空気が流れる。
そんな中、エイブラハムは悲痛な表情で四人にこう述べた。
「我々はもう歳だ……今更、どう足掻こうとこの世から去る日は近い。しかし、罪無き者も巻き込まれてしまうのは辛いのだ」
「レティシア嬢の事ですな?」
レティシア────〝レティシア・ユグドラ・フィオレ・ペンドラゴン〟はエイブラハムの孫娘である。
彼女はこの国を守護しているとされる精霊神ユグドラシアという、世界樹の最高位樹精霊に仕える巫女であった。
それ故に国から〝ユグドラ〟の名を授かり、今日までユグドラシアの巫女として勤めていた。
そしてレティシアはこの国で誰よりもシャルロットの事を慕っており、祖父と共に視察から帰ってきた際にシャルロットが追放されたと知った時は三日三晩泣き続けたという。
そんなレティシアがこの国と共に沈んでいくことを酷に感じたエイブラハムは四人にこんな提案をする。
「レティだけでもこの国から逃がせんものか……」
「確かに……しかしレティシア嬢だけでは危険でしょう」
「しかし騎士や兵士を護衛につけようとも、今のあ奴らは信用ならぬぞ」
「せめて聖女シャルロットの今の所在さえ掴めたのなら……」
「生きておるかも分からぬのにか?」
「ユピテルお主!滅多な事を言うでないわ!」
「しかし生死さえ分からんのは事実だろう!それとも淡い希望にすがれと申すか!」
「よさんか二人共!今は身内割れをしている場合ではなかろうが!」
あわや一触即発となりそうなチャイコスカヤとダイモスをエイブラハムは一喝する。
それによって二人は渋々ながらもその矛先を納めた。
「でしたら……」
押し潰されそうな程の空気の中、エレイネシアが静かに口を開く。
「我々は身を退くという形を取り、それに伴ってレティシア様も巫女の座を退きこの国を出るというのはどうでしょう?」
「ヴィナス、いきなり何を言うておるか?!」
「そうですぞ!我々はともかく、レティシア嬢を巫女の座から降ろすなど!」
「あまりの現実に正気を失ったか?!」
「ふむ……詳しく聞かせよヴィナス」
「アレス?!」
とんでもない提案をするエレイネシアにチャイコスカヤ、ダイモス、そしてロムルスが非難を浴びせるが、エイブラハムだけは静かにその話の詳細を尋ねる。
詳細を求められたエレイネシアは一つ頷いてから四人に説明を始めた。
「確かにレティシア様を巫女の座から退かせると聞けば誰でも反論するのは承知の上でございます。ですが、これはあくまでも〝形式上は〟の話ですので」
エイブラハムに習い不満がありながらも耳を傾けていた三人は、エレイネシアの〝形式上〟という言葉に反応する。
「形式上とは……つまり見せかけだけ、そうさせるということか?」
「その通りですヘルメス。事実上レティシア様がユグドラシア様の巫女であるという事は変わりません。なにせ彼女はユグドラシア様が直々に巫女にと指名された方ですから」
「仮にそうするとして、それをユグドラシア様がお許しになるかどうか……逆に更に怒らせてしまう事になるのではないか?」
「その不安はもっともです。ですので、ユグドラシア様にもご協力して頂こうかと」
「どういうことですかな?」
「どうやらユグドラシア様はシャルロット様の件に関してかなりご立腹されているご様子……ならばレティシア様がこの国を離れた場合、必然的にユグドラシア様もこの地を離れるでしょう」
「精霊界に帰るという事か?しかしそうなればユグドラシア様は二度とこの世界に来ることはなくなってしまうだろう。あの方が宿る世界樹は世界中でこの国にしか無い。しかしこの国から世界中に祝福を与えて下さっているのだ。最悪……この国どころか世界が滅びかねんぞ?」
「でしたらその世界樹の一部を持って国を出たらどうでしょうか?」
『────!!!』
エレイネシアの言葉に一同が目を大きく見開く。
それを見てエレイネシアはクスッとほくそ笑んで更にこう続けた。
「今ある世界樹が寿命を迎えてしまった場合に備えて苗木が保管されておりますでしょう?それを持って国を出れば良いのです。苗木さえあれば、何処へ行こうと世界樹を……ユグドラシア様の宿り木を確保出来るのですから」
「そういえばお主は苗木の守護者であったな?」
チャイコスカヤの問いをエレイネシアは笑みで返した。
エレイネシアはその特徴的な長い耳からご存知の通りエルフ────その中でも最上位に君臨する〝古代エルフ〟である。
それ故に世界樹の苗木を守護するという役目を担っていた。
「それもこれも、私が先代の巫女であったお陰です。アレスが決断するならば、私も苗木を手に貴方と共に行きましょう」
「ヴィナスよ、それは妾達とて同じじゃ」
「私もです!」
「吾輩もだ!」
四人の注目を受けてエイブラハムは心の中でこの国を出ることを決意した。
もはやこの国に残る義理は無い。
エイブラハムはその場に立ち上がると、四人に向けてこう宣言した。
「我、エイブラハム・アレス・ペンドラゴンはこの場にてこの国を出ることを宣言する!当然、ワシの家族も一緒だ!このワシの宣言に賛同し、共に行くと思う者は起立せよ!」
返事は無い……ただ無言で立ち上がる四人にエイブラハムは満足そうに頷いていた。
(アトランシア王国第一王子ガイウスよ……貴様は我々元老院をも敵にした。国が滅びゆく中、己が愚行を恥じ、後悔しながら地獄へと堕ちるが良い!)
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