偽物聖女と渡鴉〜聖痕を奪われ追放された元聖女は渡鴉の冒険者と出会う〜

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第一章:元聖女と渡鴉旅団

精霊神ユグドラシア

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 色々な事があった翌朝────シャルロットに会いに来たエルナとロンは、彼女の隣に座る女性を見て言葉を失っていた。

 ロンは女性の形容し難い程の美しさに見蕩れているのかポーっとした表情を浮かべており、対してエルナはありえないものを見たと言わんばかりに……正に〝開いた口が塞がらない〟といった表情をしていた。


「あの……お二人共、大丈夫ですか?」


 大丈夫では無いと理解しつつもシャルロットは恐る恐る二人にそう尋ねた。

 すると二人は弾かれたかのように我に返り、そして勢いよくシャルロットに駆け寄るとそのままドアの方へと連れてゆく。


「おいおいおい!誰なんだよあの美人さんは?!」
「ちょっとシャル!何でここにあの方がいるのよ?!」

「お、落ち着いて下さい二人共……ちゃんと説明致しますから……」


 それぞれ違った質問だったが、とりあえずは女性について求めているということでシャルロットは二人を落ち着かせようとする。

 しかしどちらもかなり興奮しており、今直ぐ教えろと言わんばかりに顔を近付けてきた。

 その事にシャルロットがほとほと困り果てていると、二人の背後からその頭にそれぞれ平手と拳骨が落とされる。


「朝っぱらから騒がしいぞ二人共。それとシャルはまだ病み上がりってのを考えろ」

「でもよシド……」
「シド!そんな事を言ってる場合じゃないのよ!」


 狼狽えるロンと、かなりの剣幕で反論してくるエルナ。

 しかしシドは至って冷静に二人を押し退けると、その視界の先にいた女性を見て僅かに目を見開いた。


「こいつは驚いた……」


 シドはそれだけを言うと、あとは動揺する事もなくシャルロットに話しかける。


「ここにいるってことはシャルの関係者って事で良いよな?」

「えぇっと……はい、そんな感じですね」

「それならせっかくだからついでに紹介して貰うとしよう。これからシャルの事について話す事があるしな」

「はい、分かりました」

「二人も今は落ち着いて椅子に座れ。あとあんたはそのまま座ってていいからよ」

『はい。お言葉に甘え、そうさせて頂きますわ』


 女性の言葉は四人の頭の中に響くように聞こえてきた。

 シャルロットとエルナは女性の正体を知っているからか驚く事は無く、シドは何やら納得した表情を浮かべていた。

 たった一人、ロンだけは激しく動揺していたが、再びシドに拳骨を落とされたことで多少落ち着きを取り戻した。


「それで……声が頭の中に響いてきたって事は、あんたは精霊って事だよな?それに、精霊を見る事が出来ない俺とロンにまで見えてるところから察するに、かなり高位の精霊だと判断するが?」

『貴方は聡い方ですわね?お陰で話が早く済みそうですわ。なにせ、今こうして姿を現している時間にも限りがありますもの』


 それを聞いてシドは何かしらの理由でその行動範囲に制限があるのだろうと理解したが、今はそこを言及する必要は無いと判断し女性精霊に話の続きを促す。


『初めまして皆様。私、樹の精霊神で、名をユグドラシアと申しますわ。本来はアトランシア王国にある世界樹に宿っておりますの』


 シドが真偽を確かめるようにシャルロットとエルナに顔を向けると、二人は揃って大きく頷きそれを肯定した。


「なんたってその世界樹の精霊神がこんな所に?」

『それは当然、シャルロットの様子を見に来たまでですわ』

「シャルを?それはシャルが聖女だった事と関係するのか?」

『厳密に言えばシャルロットはまだ聖女なのですけれど……まぁ、その力を使えない今となっては、確かに今のシャルロットは聖女では無いとも言えますわね』

「……まぁ、シャルロットが聖女かそうじゃないかって話はとりあえず置いとこう。ちなみに精霊神ユグドラシアについては俺もおおよそのことは知っている。確か宿り木となる世界樹が無ければ移動すらもままならないと記憶していたが?」

『それは人が勝手にそう言っているだけですわ。まぁ確かに……世界樹が無ければ無期限に存在出来るわけではありませんが、それでも期限さえ設ければ移動することくらいは簡単なので御座いますのよ?』

「それで今回来た理由は何なんだ?」

『おや、私とした事が……レティシア以外の者達とこうして会話出来るのは久しぶりなものでしたから、ついつい話が逸れてしまいましたわ』


 ユグドラシアは〝ほほほ〟と笑うと、改めてシャルロット達の前に現れた目的を話し始めた。


『シャルロットの様子を見に来たというのは本当ですわ。なにせ神々から愛されし聖女なんですもの。彼女が追放されたと知った神々はそれはそれは大層お怒りになられておりました。そして国を追われたシャルロットの無事を確認するため、こうして馳せ参じたのですわ』


 ユグドラシアはそう話すと、シャルロットへと視線を向けてまた優しげな笑みを浮かべる。


『精霊達の報告により、どうにか助かったとは聞いておりましたが……シャルロットを助けて下さった方がこんなに良き者達であったことに安堵しておりますわ』

「別に人として当然の事をしたまでだ」

『クスッ……シャルロットを救って下さった方がどのような方なのか見に来て正解でしたわ。けれど、まさか〝戦争の子〟だったとは驚きでしたけれど』

「戦争……?」


 ユグドラシアが口にした物騒な言葉にシャルロットは身を強ばらせる。

 するとそれに気付いたのかユグドラシアは手を振ってシャルロットの緊張を解きほぐした。


『あっ、勘違いさせてしまったみたいですわね。別にシャルロットが思っているようなものではありません事よ?』

「それじゃあ俺の事を〝戦争の子〟と言ったのはどういう了見だ?」


 自分の事をそう呼んだユグドラシアにシドは怪訝そうな表情でそう尋ねる。

 するとユグドラシアは〝このくらいは話しても良さそうですわね〟と言って、自身の発言の意味を四人に説明するのであった。
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