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第一章:神術学園
第九話:暴風と雷電・その2
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突然、俺に勝負を挑んできた女子生徒……しかしその直後、彼女の頭をもう一人の女子生徒が引っぱたいた。
あまりの速さに〝スパーン〟という小気味の良い音が鳴り響く。
「────ってぇなぁオイ!いきなり何しやがんだ〝雷〟!」
「いきなりは姉さんの方でしょ?急に〝オレと勝負しろ〟だなんて言われたって〝はい、そうですか〟って言う人は居ないよ」
「そんなん分からねぇだろ!」
「いや分かるでしょ?彼の表情を見れば特に」
会話から察するに二人はどうやら姉妹のようだ。
俺に勝負を挑んできた方が姉で、眠そうな目をしたウルフカットの方が妹……気性の激しい姉に対して妹は終始冷静といった様子であった。
するといつの間にか俺の側まで来ていた操々璃からそっと耳打ちされる。
「お二人は学園では有名な双子の姉妹ですわ。姉の方は〝荒覇吐嵐〟、妹の方は〝荒覇吐雷〟ですわね」
双子の割にはそれぞれ対照的ではあるが、それよりも俺は〝学園では有名〟という点が気になった。
「有名?」
「まぁ、悪い意味でですわよ。特に姉の方……荒覇吐嵐はあのような性格でしょう?初等部の頃から目をつけた相手に勝負を挑んでおりましたわ」
「血気盛んな奴なんだな」
「まぁ、その頃から負け知らずでしたから誰も注意すら出来ないんですの。ちなみに私も勝負を挑まれましたわ。興味が無いので華麗に無視して差し上げましたけれど」
まぁ操々璃はそんな感じだよな。
それにしても手当り次第勝負を挑んでいたとは……俺もその内の一人になってしまったのだから他人事では無いな。
「ちなみに、そんな私闘ってのは許可されてんのか?」
「されてませんわよ。そんな事が認められれば今頃、この学園は混沌と化してますわよ」
(それもそうだよなぁ……ん?そうなるとさっきの出来事は色々とヤバいんじゃないか?)
「つまりさっき水望が俺に攻撃してきたのもある意味ヤバい事だったって事だよな?」
「うぐっ……そ、それについては反省している……」
図星を突かれて苦い顔をする水望。
もし先程の件がバレていたならば今頃大目玉だったのだろう。
まぁ俺については正当防衛として許されるかもしれんが……。
「つーかお前とやり取りしてる場合じゃねぇっつーの!それでお前、どうすんだ?オレとやるのか?それともやらねぇのか?」
これで〝やる〟と言ったら最後、今すぐにでもおっ始めできそうな剣幕の荒覇吐嵐。
俺としては別にどちらでも良いが、休憩時間はもう間もなく終わる……つまり勝負をしている時間は無いという事だ。
なので俺の返答はある意味決まっているようなものだった。
「やだよめんどくせー。それにそろそろ休憩時間終わる頃だろうからさっさと席に戻れよ」
「へっ!テメー、ビビってんのか?まぁこのオレが相手だってんだからビビっちまうのも無理ねぇか」
「何を勘違いしてんのか知らんが、お前と勝負した所で俺に何の得もねぇからやらねぇって言ったんだよ。それともお前と勝負をする事で俺に何か利益があるってんなら是非とも教えて欲しいところだ」
「オレに勝ったって自慢出来るぜ?」
「それが何の自慢になるんだよ?〝喧嘩で勝ちました~〟なんて将来の何の役にも立たねぇぞ?馬の糞の方がまだ役に立つな」
「んだとテメー?オレがその馬の糞に劣るってーのか!」
「お~、話が早くて助かるよ」
「テメー殺すぞ?」
「喧嘩で負け無しって割には三下みてぇな事を言うんだな?」
「殺す……こいつマジで殺す……」
「〝殺す〟って言う奴ほど実行した試しがねぇんだよな」
「いいよ殺ってやるよ!死に晒せチキン野郎が!」
キレたのか拳を振り上げて俺に殴りかかろうとしてくる嵐……しかしその腕は振り下ろされることなくその場で止まる。
その腕には黒い紐のようなものが何本も絡みついていた。
「血気盛んで何よりですが、許可無き私闘は見過ごせませんね」
「げっ……」
声の主に気付いた嵐が苦虫を噛み潰したような表情となる。
先程休憩時間終了を告げるチャイムが鳴っていたのに気が付かなかったのか?
まぁ気が付いてたら今頃こうして鴉羽先生に拘束されてねぇわな。
「天城くんも不用意な煽りをしないように。減点対象ですよ」
「以後気をつけます」
「ふむ……荒覇吐さんの様子から察するにこのままでは気が収まらないでしょう。分かりました、予定よりも前倒しとなりますが〝決闘試合〟についての説明を行いましょう」
「決闘試合?」
再び黒板に文字を書いてゆく鴉羽先生。
そして彼女はチョークを置いた後、こちらに向き直って〝決闘試合〟についての話を始めた。
「決闘試合とは生徒同士で行われる神威を用いた試合の事です。許可条件としては高等部以上の生徒に限られます」
「高等部以上という点に何か理由があるんスか?」
「はい。一限目に高等部から本格的に将来に向けての授業が行われると説明しましたね?この決闘試合もまた実践的訓練の課程として組み込まれているのです。貴方達の中には神威犯罪者を相手する事になるでしょうから」
あぁ、なるほど……つまり将来、神威犯罪者を相手する際に上手く対処出来るよう設けられたものだって事か。
「まぁ、もう一つの理由としましては生徒間での潰し合いを阻止する為でもありますけど」
「潰し合い?」
「はい。かつてこの学園が設立された当時はとても荒れていた時期でもありました。生徒達の間で〝どちらが上か〟についての諍いが耐えませんでしたから。故に初代学園長はそれを阻止する為にこの決闘試合を設けたのです」
「設けた割には、好き勝手喧嘩してる奴がいるようですけど?」
そう言いながら荒覇吐嵐へと視線を向ける。
嵐もまた自分の事を指しているのだと理解したのか、俺の方へと顔を向けて睨み付けてきた。
「そうですね。それは非常に残念な事ですが、その事を大目に見られるのは中等部までです。高等部からは厳しく処罰するつもりですので、その事を念頭に置いてください」
そう言って嵐に冷たい視線を送る鴉羽先生。
それに対し嵐は面白くなさそうに〝チッ〟と舌打ちをしていた。
「まぁ、ちょうどやる気に満ち溢れている生徒もいるようですから、折角なので実際に行って貰いましょう。本来ならば一週間前に申請書を提出しなければなりませんが、今回は特別に許可する事にします」
「え?決闘試合をする事が確定してんスか?」
「貴方は乗り気ではないでしょうが、荒覇吐さんについては気が収まらないようなので。後で勝手に始められても困りますからね」
「さいですか……」
どうやら決闘試合をする以外に選択肢は無いようだ。
仕方ない……ここは素直に決闘試合を受けることにしよう。
「楽しみだな?これで心置き無くテメーをぶちのめせるぜ」
「そうなるといいな?」
「チッ……スカした態度してられんのも今のうちだ」
「それでは闘技場へ移動する事にしましょう」
こうして俺達は鴉羽先生の案内の元、〝闘技場〟という施設へ移動することになった。
その道中にて……。
「大、丈夫?空洞、くん」
「大丈夫って……何が?」
「あの人、達……強、そう、だから……」
「心配すんな。さっさと終わらせてくるからよ」
などと天鞠とそんな会話をしていると嵐にまた睨み付けられてしまった。
まったく……聞き流しときゃ良いものを、気の短い奴だ。
そうして闘技場に到着した俺達……鴉羽先生はこちらへと身体を向けると、闘技場についての説明を始めた。
「こちらが闘技場となります。この施設には強力な結界が張られている為、どんなに激しい術を用いたとしても観客席には影響はありません。ですので存分に闘って貰っても結構です」
「はんっ、そいつはありがてぇ話だな。つまり遠慮なくコイツをぶっ飛ばせるってことだ?」
「まぁ、そうですね」
〝存分に闘って良い〟と言われた嵐は俺に目を向けながら不敵な笑みを浮かべる。
その横では雷が興味無さげにスマホをいじり始めていた。
「雷、オメーはどうするよ?」
「だる……姉さん一人で十分でしょ?」
「そうか?俺としては別に二人同時でも構わねぇよ」
「はぁ?あんた、もしかして姉さんの事を見くびってんの?言っておくけど、姉さんはウチより強いよ?」
「そうは言ってもなぁ……後になって〝二人だと勝てた~〟とか言われると面倒だしなぁ」
「おい、何テメーが勝つ前提で話進めてんだ。殺すぞ?」
いや、俺としてはあくまでも〝勝った後の話〟をしているだけで、別に勝った気でいる訳では無いのだが……しかし嵐としてはその言葉が気に障ったようで、その青筋を更に増やしていた。
「まぁ別にコイツとタイマンでも良いか。コイツに勝ったら必然的にお前にも勝つって事だしな」
「はぁ?」
この時、ようやく雷が真っ直ぐに俺へと視線を向けてきた。
なかなか挑発に乗らないものだから、てっきりこの発言にも反応無しだと思ったんだがな。
「だってそうだろ?お前曰く姉はお前より強い……もしその姉に勝ったら俺はお前よりも強いという証明になるわけだ?」
俺の横では天鞠が〝確かに〟という表情を浮かべ、操々璃と水望が呆れたような表情を浮かべていた。
いや待て、なんで二人は呆れてんだ?
それまでスマホを弄っていた雷はそれをポケットへとしまうと、嵐の隣に立って同じように俺を睨みつけてきた。
「姉さん、ウチも参戦するわ。こいつすっごく腹立つ」
「おう!二人でこいつボコしてやろうぜ!」
二人は既にやる気……いや、殺る気満々といった様子。
それを見ていた鴉羽先生は小さなため息を零してから俺へと顔を向ける。
「二対一というのは学園史上初ではありますが、天城くんは大丈夫ですか?」
「問題ねぇっス。逆に手間省けるんで」
「そうですか……それでは他の方達は観客席へと移動しましょう。三人はそれぞれ中央に移動するように。くれぐれも勝手に始めないで下さいね」
そうして鴉羽先生を先頭に俺と嵐、雷の三人以外の奴らはぞろぞろと観客席へと移動して行った。
残された俺は言われた通りに闘技場の中央で同じく移動してきた姉妹と対面する。
「オレ達に生意気言ったこと後悔させてやんよ!」
「ウチらを怒らせたあんたが悪いんだかんね?」
「あ~そういうの良いから。いくら聞かされても何も得られんからな」
「「コロス……」」
「それでは双方、構えて下さい」
鴉羽先生の言葉に嵐と雷はそれぞれ構える。
俺は決まった構えはせずにいつでも動けるよう僅かに脱力をした。
「やる気のねぇ構えだな」
「ポケットに片手突っ込んでるし」
「これが俺的には理にかなってる構えなんだよ」
「はぁ……それでは、始め!」
鴉羽先生の合図と共に嵐が俺に向かって飛び出してくる。
こうした対人戦闘というのはある意味初の体験……この姉妹がどの程度の奴らなのかは未だ分からないが、俺はこの決闘試合を楽しもうと思うのだった。
───────────────────
《次回予告》
遂に始まった決闘試合……姉妹ならではのコンビネーションを仕掛けてくる嵐と雷の二人に、果たして空洞はどう立ち回るのか?
次回、〝暴風と雷電・その3〟
あまりの速さに〝スパーン〟という小気味の良い音が鳴り響く。
「────ってぇなぁオイ!いきなり何しやがんだ〝雷〟!」
「いきなりは姉さんの方でしょ?急に〝オレと勝負しろ〟だなんて言われたって〝はい、そうですか〟って言う人は居ないよ」
「そんなん分からねぇだろ!」
「いや分かるでしょ?彼の表情を見れば特に」
会話から察するに二人はどうやら姉妹のようだ。
俺に勝負を挑んできた方が姉で、眠そうな目をしたウルフカットの方が妹……気性の激しい姉に対して妹は終始冷静といった様子であった。
するといつの間にか俺の側まで来ていた操々璃からそっと耳打ちされる。
「お二人は学園では有名な双子の姉妹ですわ。姉の方は〝荒覇吐嵐〟、妹の方は〝荒覇吐雷〟ですわね」
双子の割にはそれぞれ対照的ではあるが、それよりも俺は〝学園では有名〟という点が気になった。
「有名?」
「まぁ、悪い意味でですわよ。特に姉の方……荒覇吐嵐はあのような性格でしょう?初等部の頃から目をつけた相手に勝負を挑んでおりましたわ」
「血気盛んな奴なんだな」
「まぁ、その頃から負け知らずでしたから誰も注意すら出来ないんですの。ちなみに私も勝負を挑まれましたわ。興味が無いので華麗に無視して差し上げましたけれど」
まぁ操々璃はそんな感じだよな。
それにしても手当り次第勝負を挑んでいたとは……俺もその内の一人になってしまったのだから他人事では無いな。
「ちなみに、そんな私闘ってのは許可されてんのか?」
「されてませんわよ。そんな事が認められれば今頃、この学園は混沌と化してますわよ」
(それもそうだよなぁ……ん?そうなるとさっきの出来事は色々とヤバいんじゃないか?)
「つまりさっき水望が俺に攻撃してきたのもある意味ヤバい事だったって事だよな?」
「うぐっ……そ、それについては反省している……」
図星を突かれて苦い顔をする水望。
もし先程の件がバレていたならば今頃大目玉だったのだろう。
まぁ俺については正当防衛として許されるかもしれんが……。
「つーかお前とやり取りしてる場合じゃねぇっつーの!それでお前、どうすんだ?オレとやるのか?それともやらねぇのか?」
これで〝やる〟と言ったら最後、今すぐにでもおっ始めできそうな剣幕の荒覇吐嵐。
俺としては別にどちらでも良いが、休憩時間はもう間もなく終わる……つまり勝負をしている時間は無いという事だ。
なので俺の返答はある意味決まっているようなものだった。
「やだよめんどくせー。それにそろそろ休憩時間終わる頃だろうからさっさと席に戻れよ」
「へっ!テメー、ビビってんのか?まぁこのオレが相手だってんだからビビっちまうのも無理ねぇか」
「何を勘違いしてんのか知らんが、お前と勝負した所で俺に何の得もねぇからやらねぇって言ったんだよ。それともお前と勝負をする事で俺に何か利益があるってんなら是非とも教えて欲しいところだ」
「オレに勝ったって自慢出来るぜ?」
「それが何の自慢になるんだよ?〝喧嘩で勝ちました~〟なんて将来の何の役にも立たねぇぞ?馬の糞の方がまだ役に立つな」
「んだとテメー?オレがその馬の糞に劣るってーのか!」
「お~、話が早くて助かるよ」
「テメー殺すぞ?」
「喧嘩で負け無しって割には三下みてぇな事を言うんだな?」
「殺す……こいつマジで殺す……」
「〝殺す〟って言う奴ほど実行した試しがねぇんだよな」
「いいよ殺ってやるよ!死に晒せチキン野郎が!」
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その腕には黒い紐のようなものが何本も絡みついていた。
「血気盛んで何よりですが、許可無き私闘は見過ごせませんね」
「げっ……」
声の主に気付いた嵐が苦虫を噛み潰したような表情となる。
先程休憩時間終了を告げるチャイムが鳴っていたのに気が付かなかったのか?
まぁ気が付いてたら今頃こうして鴉羽先生に拘束されてねぇわな。
「天城くんも不用意な煽りをしないように。減点対象ですよ」
「以後気をつけます」
「ふむ……荒覇吐さんの様子から察するにこのままでは気が収まらないでしょう。分かりました、予定よりも前倒しとなりますが〝決闘試合〟についての説明を行いましょう」
「決闘試合?」
再び黒板に文字を書いてゆく鴉羽先生。
そして彼女はチョークを置いた後、こちらに向き直って〝決闘試合〟についての話を始めた。
「決闘試合とは生徒同士で行われる神威を用いた試合の事です。許可条件としては高等部以上の生徒に限られます」
「高等部以上という点に何か理由があるんスか?」
「はい。一限目に高等部から本格的に将来に向けての授業が行われると説明しましたね?この決闘試合もまた実践的訓練の課程として組み込まれているのです。貴方達の中には神威犯罪者を相手する事になるでしょうから」
あぁ、なるほど……つまり将来、神威犯罪者を相手する際に上手く対処出来るよう設けられたものだって事か。
「まぁ、もう一つの理由としましては生徒間での潰し合いを阻止する為でもありますけど」
「潰し合い?」
「はい。かつてこの学園が設立された当時はとても荒れていた時期でもありました。生徒達の間で〝どちらが上か〟についての諍いが耐えませんでしたから。故に初代学園長はそれを阻止する為にこの決闘試合を設けたのです」
「設けた割には、好き勝手喧嘩してる奴がいるようですけど?」
そう言いながら荒覇吐嵐へと視線を向ける。
嵐もまた自分の事を指しているのだと理解したのか、俺の方へと顔を向けて睨み付けてきた。
「そうですね。それは非常に残念な事ですが、その事を大目に見られるのは中等部までです。高等部からは厳しく処罰するつもりですので、その事を念頭に置いてください」
そう言って嵐に冷たい視線を送る鴉羽先生。
それに対し嵐は面白くなさそうに〝チッ〟と舌打ちをしていた。
「まぁ、ちょうどやる気に満ち溢れている生徒もいるようですから、折角なので実際に行って貰いましょう。本来ならば一週間前に申請書を提出しなければなりませんが、今回は特別に許可する事にします」
「え?決闘試合をする事が確定してんスか?」
「貴方は乗り気ではないでしょうが、荒覇吐さんについては気が収まらないようなので。後で勝手に始められても困りますからね」
「さいですか……」
どうやら決闘試合をする以外に選択肢は無いようだ。
仕方ない……ここは素直に決闘試合を受けることにしよう。
「楽しみだな?これで心置き無くテメーをぶちのめせるぜ」
「そうなるといいな?」
「チッ……スカした態度してられんのも今のうちだ」
「それでは闘技場へ移動する事にしましょう」
こうして俺達は鴉羽先生の案内の元、〝闘技場〟という施設へ移動することになった。
その道中にて……。
「大、丈夫?空洞、くん」
「大丈夫って……何が?」
「あの人、達……強、そう、だから……」
「心配すんな。さっさと終わらせてくるからよ」
などと天鞠とそんな会話をしていると嵐にまた睨み付けられてしまった。
まったく……聞き流しときゃ良いものを、気の短い奴だ。
そうして闘技場に到着した俺達……鴉羽先生はこちらへと身体を向けると、闘技場についての説明を始めた。
「こちらが闘技場となります。この施設には強力な結界が張られている為、どんなに激しい術を用いたとしても観客席には影響はありません。ですので存分に闘って貰っても結構です」
「はんっ、そいつはありがてぇ話だな。つまり遠慮なくコイツをぶっ飛ばせるってことだ?」
「まぁ、そうですね」
〝存分に闘って良い〟と言われた嵐は俺に目を向けながら不敵な笑みを浮かべる。
その横では雷が興味無さげにスマホをいじり始めていた。
「雷、オメーはどうするよ?」
「だる……姉さん一人で十分でしょ?」
「そうか?俺としては別に二人同時でも構わねぇよ」
「はぁ?あんた、もしかして姉さんの事を見くびってんの?言っておくけど、姉さんはウチより強いよ?」
「そうは言ってもなぁ……後になって〝二人だと勝てた~〟とか言われると面倒だしなぁ」
「おい、何テメーが勝つ前提で話進めてんだ。殺すぞ?」
いや、俺としてはあくまでも〝勝った後の話〟をしているだけで、別に勝った気でいる訳では無いのだが……しかし嵐としてはその言葉が気に障ったようで、その青筋を更に増やしていた。
「まぁ別にコイツとタイマンでも良いか。コイツに勝ったら必然的にお前にも勝つって事だしな」
「はぁ?」
この時、ようやく雷が真っ直ぐに俺へと視線を向けてきた。
なかなか挑発に乗らないものだから、てっきりこの発言にも反応無しだと思ったんだがな。
「だってそうだろ?お前曰く姉はお前より強い……もしその姉に勝ったら俺はお前よりも強いという証明になるわけだ?」
俺の横では天鞠が〝確かに〟という表情を浮かべ、操々璃と水望が呆れたような表情を浮かべていた。
いや待て、なんで二人は呆れてんだ?
それまでスマホを弄っていた雷はそれをポケットへとしまうと、嵐の隣に立って同じように俺を睨みつけてきた。
「姉さん、ウチも参戦するわ。こいつすっごく腹立つ」
「おう!二人でこいつボコしてやろうぜ!」
二人は既にやる気……いや、殺る気満々といった様子。
それを見ていた鴉羽先生は小さなため息を零してから俺へと顔を向ける。
「二対一というのは学園史上初ではありますが、天城くんは大丈夫ですか?」
「問題ねぇっス。逆に手間省けるんで」
「そうですか……それでは他の方達は観客席へと移動しましょう。三人はそれぞれ中央に移動するように。くれぐれも勝手に始めないで下さいね」
そうして鴉羽先生を先頭に俺と嵐、雷の三人以外の奴らはぞろぞろと観客席へと移動して行った。
残された俺は言われた通りに闘技場の中央で同じく移動してきた姉妹と対面する。
「オレ達に生意気言ったこと後悔させてやんよ!」
「ウチらを怒らせたあんたが悪いんだかんね?」
「あ~そういうの良いから。いくら聞かされても何も得られんからな」
「「コロス……」」
「それでは双方、構えて下さい」
鴉羽先生の言葉に嵐と雷はそれぞれ構える。
俺は決まった構えはせずにいつでも動けるよう僅かに脱力をした。
「やる気のねぇ構えだな」
「ポケットに片手突っ込んでるし」
「これが俺的には理にかなってる構えなんだよ」
「はぁ……それでは、始め!」
鴉羽先生の合図と共に嵐が俺に向かって飛び出してくる。
こうした対人戦闘というのはある意味初の体験……この姉妹がどの程度の奴らなのかは未だ分からないが、俺はこの決闘試合を楽しもうと思うのだった。
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