17 / 90
第2章 過去のふたり
17
しおりを挟む
冬が過ぎ、春が来ると、ユリウスは王立学園へと去っていった。
ユリウスは、病気で勉強が遅れていたにもかかわらず、トップの成績で試験を通過したらしい。
ユリウスは王立学園の勉強と、公爵家の領地経営の勉強が忙しいらしくシラー領に訪れることはなかったが、約束のとおり、ルフェルニアにたくさんの手紙を書いた。
手紙には季節により様々な植物の種と、王都で購入した可愛らしいお菓子や小物が必ず添えられていた。
ユリウスが王立学園高等部の最終学年である3年生になったころ、ユリウスの父、サイラスから手紙が届いた。
ヴィアサル病の薬が、国から正式に認可されたのだ。
ユリウスが服用したデータがあったからか、予想よりも早く認可に至ったらしい。
それに伴い、ルフェルニアが発見した、植物の交配の規則性及び土壌への魔力供給が植物に与える効果が世間に公表されることになった。
手紙には成果公表に当たっては、ルフェルニアも連名になること、及び、ひと月後に王宮で本件に強く貢献した研究者への名誉賞授与式があるのでルフェルニアにも参加してほしいことが記されていた。
ルフェルニアはサイラスの手紙を読んで、受賞は辞退しようと考えていたが、その考えを読むようにユリウスから追って手紙が届いた。
『ルフェはきっと、自身の貢献は大したことがなかったと、受賞を辞退しようと考えていることでしょう。僕は今、王立学園の先生の紹介で、植物局の所管する薬草学研究所で少しお手伝いをさせてもらっています。この研究が花開いたのは確かにこの研究所での取り組みがあったからだと感じられるほど、研究者の皆さんはとても熱心です。ただ、そのきっかけをもたらしたのは間違いなくルフェだ。研究者の皆さんも口を揃えて君を称え、今度の受賞式で君に会えることを楽しみにしています。もちろん僕も、久しぶりに君に会えることを楽しみにしているよ。ぜひ僕に王都を案内させてほしい。』
(王都に行けば、ユリウスに会える。…動機が不純かしら。もちろん引け目は感じるけれど、薬草学研究所のみなさんともお話ししてみたいわ!)
王都行きを決めたルフェルニアは、早速父オットマーと母トルメアに相談すると、サイラスから事前に話しを聞いていたのか、アルウィンも連れて家族全員で王都にあるミネルウァ公爵家の邸宅に泊まらせてもらうことになっていた。
「お父様、もう準備が整っているなんて。私が行かないと言ったら、どうするつもりだったの?」
「サイラス様から、ユリウス様がルフェに手紙を送ったと聞いて、間違いなくルフェはユリウス様に会いに王都に行くと思ったからさ。」
(もう!ユリウスに会いに行くためだけじゃないもの!)
図星を突かれて二の句を告げられなくなったルフェルニアは心の中で悪態をつく。
ともあれ、王都行きまでひと月。王都ではユリウスといったいどんな話をしようと、ルフェルニアはそわそわしながら毎日を過ごした。
ユリウスは、病気で勉強が遅れていたにもかかわらず、トップの成績で試験を通過したらしい。
ユリウスは王立学園の勉強と、公爵家の領地経営の勉強が忙しいらしくシラー領に訪れることはなかったが、約束のとおり、ルフェルニアにたくさんの手紙を書いた。
手紙には季節により様々な植物の種と、王都で購入した可愛らしいお菓子や小物が必ず添えられていた。
ユリウスが王立学園高等部の最終学年である3年生になったころ、ユリウスの父、サイラスから手紙が届いた。
ヴィアサル病の薬が、国から正式に認可されたのだ。
ユリウスが服用したデータがあったからか、予想よりも早く認可に至ったらしい。
それに伴い、ルフェルニアが発見した、植物の交配の規則性及び土壌への魔力供給が植物に与える効果が世間に公表されることになった。
手紙には成果公表に当たっては、ルフェルニアも連名になること、及び、ひと月後に王宮で本件に強く貢献した研究者への名誉賞授与式があるのでルフェルニアにも参加してほしいことが記されていた。
ルフェルニアはサイラスの手紙を読んで、受賞は辞退しようと考えていたが、その考えを読むようにユリウスから追って手紙が届いた。
『ルフェはきっと、自身の貢献は大したことがなかったと、受賞を辞退しようと考えていることでしょう。僕は今、王立学園の先生の紹介で、植物局の所管する薬草学研究所で少しお手伝いをさせてもらっています。この研究が花開いたのは確かにこの研究所での取り組みがあったからだと感じられるほど、研究者の皆さんはとても熱心です。ただ、そのきっかけをもたらしたのは間違いなくルフェだ。研究者の皆さんも口を揃えて君を称え、今度の受賞式で君に会えることを楽しみにしています。もちろん僕も、久しぶりに君に会えることを楽しみにしているよ。ぜひ僕に王都を案内させてほしい。』
(王都に行けば、ユリウスに会える。…動機が不純かしら。もちろん引け目は感じるけれど、薬草学研究所のみなさんともお話ししてみたいわ!)
王都行きを決めたルフェルニアは、早速父オットマーと母トルメアに相談すると、サイラスから事前に話しを聞いていたのか、アルウィンも連れて家族全員で王都にあるミネルウァ公爵家の邸宅に泊まらせてもらうことになっていた。
「お父様、もう準備が整っているなんて。私が行かないと言ったら、どうするつもりだったの?」
「サイラス様から、ユリウス様がルフェに手紙を送ったと聞いて、間違いなくルフェはユリウス様に会いに王都に行くと思ったからさ。」
(もう!ユリウスに会いに行くためだけじゃないもの!)
図星を突かれて二の句を告げられなくなったルフェルニアは心の中で悪態をつく。
ともあれ、王都行きまでひと月。王都ではユリウスといったいどんな話をしようと、ルフェルニアはそわそわしながら毎日を過ごした。
356
あなたにおすすめの小説
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
記憶にありませんが、責任は取りましょう
楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。
目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。
「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」
さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。
アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。
「これは、焼却処分が妥当ですわね」
だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。
あなたの幸せを、心からお祈りしています
たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」
宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。
傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。
「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」
革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。
才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。
一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる