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第6章 おでかけ

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翌日、ユミルは十分には眠れないまま朝を迎えた。
朝食もそこそこに、部屋に運び込まれた今日の衣服を広げると、ユミルは今日の憂鬱な気持ちを忘れるほど目を輝かせた。

ノースリーブのワンピースは、紺色に近い黒の落ち着いた光沢のある生地に、黒色のキラキラとした糸で刺繍が施されている。スカートはタイトなボックスプリーツで脹脛の真ん中あたりまで丈がある、上品な形だ。中に着るように用意された長袖の真っ白なブラウスも、スカートとお揃いの詰襟のジャケットも全てが美しく、ユミルは目を奪われた。

ユミルは自分のために使うお金を制限しているので、あまり余所行きの服は持っていないし、普段の身なりにもお金もそれほどかけていない。
しかし、素敵な服に憧れがないわけではなかった。

他にも、黒革のショートブーツと、ゴールドの揃いのネックレスとイヤリングが用意されている。

ユミルはいつもよりも念入りに化粧をしてから、服を身につけていったが、すべてがユミルのために誂えたかのようにぴったりだった。
髪の毛もセットして、アクセサリーも身に着けると、ユミルは部屋に置いてあった姿見の前でくるりとまわってみる。

(すっごい上品だけど、魔女っぽくて可愛い。)

魔法局の制服が黒色のため、世間一般で魔法使いと言えば、黒色のイメージだ。
今日は魔法局への用事だから、浮かないように色味を合わせたのだろうか、とユミルはしげしげと鏡越しに服を眺める。
普段は身につけないような服を着ているためか、鏡の向こうに別人がいるような気持ちになる。

「ねぇ、フク、似合ってる?」
『うん。』
「本当に?いつもと違うから落ち着かないな。」
『馬子にも衣裳って感じ。』
「…褒めてくれてるのか、けなされているのかわからないけれど…、オズモンド様の隣に並ぶのだから、良かった。」

―コン、コン。

ユミルの準備が終わってからほどなくして、扉をノックする音が聞こえたので、ユミルは急いで扉を開けた。

「準備はできたか?」
「はい、素敵な服をありがとうございます。」

ユミルが満面の笑みでお礼を言うと、レインはユミルの全身を見てから、ほんの少しだけ口角を上げた。

「よく似合っている。」

ユミルは心臓が止まるかと思った。
「ぎゅん」と痛くなるほどに鳴る胸に、ユミルははくはくと音にならない声を出す。

レインはいつもの魔法局の制服を纏っているが、相変わらずの美しさだ。
レインはユミルの反応を見て満足そうに頷くと、「行くぞ。」と声をかけて歩いて行ってしまった。
どうやら今日は転移魔法ではなく、馬車で移動するらしい。

(今日、私の心臓は持つのかな…。)

レインと今日ほど長く一緒にいるのは初めてだ。
最初はエイドリアンがいると思っていたのに、エイドリアンもいない。

ユミルは暴れる心臓を服の上から抑えながら、レインを追いかけた。
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