貴方の杖、直します。ただし、有料です。

椎茸

文字の大きさ
47 / 69
第6章 おでかけ

47

しおりを挟む
先ほどの興奮から間もなくして、魔法局長が入ってくると、周りは水を打ったように静かになった。

ユミルも、新聞で何度も見たことのある魔法局長が目の前にいると思うと、先ほどのことを忘れて緊張してしまう。魔法使いのエリート集団を束ねる長の貫禄なのか、オーラが違う。

「魔法局長を務めているアビウス・グレイです。」

アビウスは厳つい顔を皺くちゃにして笑み浮かべてくれたが、それすら恐ろしい、とユミルは唾をごくりと呑む。

「は、じめまして…。ユミル・アッシャーでございます。」
「そう緊張しないでほしい。では始めよう。」

ユミルは周りの職員に指示されるがまま定位置に立ち、アビウスから感謝状を受け取ると、その受け取った格好のまま、新聞記者から念写を撮られる。

(新聞でも、よく見るやつ。)

それを今自分が撮られているなんて、ユミルは信じられない気持ちだったが、何とか笑みを浮かべて耐える。

その後は少しの時間、アビウスと対談した後、新聞記者からの質問にいくつか答えて終了になった。
対談も、質疑も、レインがうまく誘導してくれたおかげで、ユミルはおかしな態度をとることなく、無事終えることができて、ほっと息を吐く。

「フォローありがとうございました。」
「別に、気にすることはない。」
「やはり、オズモンド様は慣れているのですね。」
「君はこんな堅苦しいことに慣れる必要ない。…それから、呼び方だが、」
「大丈夫です!お家へ伺う際にはちゃんとします。」

そのことはちゃんと覚えています、とばかりにユミルが笑うと、レインは口をもごもごと動かす。

「私の家の使用人たちはみな、私をレインと呼ぶ。君も普段からそうすると良い。」
「良いのですか?気に障るかと思って。」
「構わない。私はオズモンドの家を継がない者だ。そちらの方が落ち着く。」

ユミルはレインとの距離がまた少し縮まったような気がして、笑顔を浮かべた。
レインも僅かに微笑み返す。

「では、次の場所へ行こう。丁度昼時になると思っていたから、ランチを用意させている。」
「えっ!?そうなのですね…マナーが不安です。」
「遠征先で見ていたが、君のマナーは問題なかった。」
「そう言っていただけると嬉しいですが…。」

レインはお世辞を言うような人ではないことを理解しているが、それでも平民と貴族には山のように高い壁がある。

「そもそも、私の家は良くも悪くも魔法第一主義。優秀な魔法使いであれば大抵許される。」
「…魔法使いとしてもドベに近いです。」
「それは学園での成績の話だろう。実際に使えるかどうかは成績で測るものじゃない。」

レインはユミルの心情を全く理解してくれていないのではないかと思うほど淡々と話すが、今はレインの言葉に縋るしかない。
ユミルはぐっと気合を入れてレインの後を追った。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

処理中です...