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第7章 レインの不可思議な行動
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あれからというもの、ユミルの宝物は増えるばかり。
要するに、レインがどんどん物を贈ってくるのだ。
まず、毎晩高級なお菓子をくれる。フクの太ってしまうのも時間の問題だ。
(フクだけに、“ふく”よかってね。…実際は全然笑えないけど。そんなつもりでつけた名前じゃないけど。)
次に、身の回りのものを、ことあるごとにくれる。
例えば、ユミルが杖を持ち運ぶときに使っている鞄だとか、万年筆だとか、綺麗なキラキラがたくさん付いたコンパクトミラーだとか、実際に使いそうなものを贈ってくれるのだ。
気づけば、身の回りにあるものはレインが選んでくれたもので溢れている。
とてもセンスが良いので、ユミルはどれも喜んで使っている。
もちろん、ユミルはそれを断ろうとした。
しかし、レインは「この前の修復の臨時の代わりだ」とか「君が貰わなければゴミ箱行きだ」とか言うので、ユミルは最終的にいつもそれを貰ってしまう。
確かに、最近はユミルの杖修復の際の“強化”について検証するために、レイン以外の杖をメンテナンスしたり修復したりすることがある。
しかし、それもレインが量を考えて持ってくるので、丁度いい暇つぶしになる程度だ。
ユミルは贈り物をされることについて、満更でもないと思っている自分が怖かった。
(この生活に慣れてしまっては…ダメ!!)
心の底から自分を叱咤するものの、毎晩レインと顔を合わせてしまうと、ついついそのことを忘れてしまうのだ。
「ユミル、少し良いか?」
「はい、何でしょう?」
毎晩のメンテナンスの後、ユミルはレインに声をかけられると、2人で応接用のソファに腰をかけた。
「先日言っていた、君の杖の修復についてだが、やはり、杖が強化されていた。」
「そうだったんですね!でも、どうやってわかってのですか?」
「魔法道具を使って、修復前と後の杖の強度を数値化したんだ。
修復前の杖の状態にもよるが、1回の修復で、高い場合で2倍、少なくとも1.5倍の強度になる。
私のように毎晩メンテナンスをしている場合はその効果が薄まるが、毎回徐々に強度を増しているらしい。」
以前オズモンド家で話しを聞いたときは、強化されてもおまけ程度の効果だと思っていたので、ユミルは想像以上の数値に目を丸くする。
「そんな…びっくりしました。」
「私も、最初は君の修復は残痕が残らないことが良いと思っていたが、予想外の効果だ。
そこで、魔法局の研究員が、君の修復魔法をかけている様子を見たいと言っているのだが、良いだろうか?」
「学園で習ったこと以上のことはしていないつもりなのですが…、お役に立てるのなら喜んで。」
「ありがとう。それでは、明後日にこちらに来るから、」
「え?私が行くんじゃないんですか?」
ユミルは先日の証人喚問と同じく、当然ユミルの方が行くのだと思っていたので、驚いて思わず途中で口を挟んでしまう。
「今回は大した役職も付いていない研究員が相手だ。あちらに来させる。」
「いやいやいやいや…。」
(大した役職もついていないって…貴方から見たら、大したことある役職の方が少ないでしょうが…!そもそも、魔法局に勤めているだけで、エリート魔法使いでしょ!)
「私が行きます。私は時間を持て余していますし、研究員さんもお忙しいでしょう。」
「危険だからダメだ。」
「…首都内でしかも魔法局までの道は特に安全です。エイディーもいます。」
「…君は随分とエイドリアンを信用しているんだな。」
レインがつまらなそうに言うので、ユミルは目を瞬いてしまう。
「だって、レイン様が連れて来たのだから、当然ではありませんか。」
ユミルは本心からきょとんとした表情のままそう言うと、レインは顔を覆って俯いた。
「君、本当に、そういうとこだぞ。」
「…え?」
要するに、レインがどんどん物を贈ってくるのだ。
まず、毎晩高級なお菓子をくれる。フクの太ってしまうのも時間の問題だ。
(フクだけに、“ふく”よかってね。…実際は全然笑えないけど。そんなつもりでつけた名前じゃないけど。)
次に、身の回りのものを、ことあるごとにくれる。
例えば、ユミルが杖を持ち運ぶときに使っている鞄だとか、万年筆だとか、綺麗なキラキラがたくさん付いたコンパクトミラーだとか、実際に使いそうなものを贈ってくれるのだ。
気づけば、身の回りにあるものはレインが選んでくれたもので溢れている。
とてもセンスが良いので、ユミルはどれも喜んで使っている。
もちろん、ユミルはそれを断ろうとした。
しかし、レインは「この前の修復の臨時の代わりだ」とか「君が貰わなければゴミ箱行きだ」とか言うので、ユミルは最終的にいつもそれを貰ってしまう。
確かに、最近はユミルの杖修復の際の“強化”について検証するために、レイン以外の杖をメンテナンスしたり修復したりすることがある。
しかし、それもレインが量を考えて持ってくるので、丁度いい暇つぶしになる程度だ。
ユミルは贈り物をされることについて、満更でもないと思っている自分が怖かった。
(この生活に慣れてしまっては…ダメ!!)
心の底から自分を叱咤するものの、毎晩レインと顔を合わせてしまうと、ついついそのことを忘れてしまうのだ。
「ユミル、少し良いか?」
「はい、何でしょう?」
毎晩のメンテナンスの後、ユミルはレインに声をかけられると、2人で応接用のソファに腰をかけた。
「先日言っていた、君の杖の修復についてだが、やはり、杖が強化されていた。」
「そうだったんですね!でも、どうやってわかってのですか?」
「魔法道具を使って、修復前と後の杖の強度を数値化したんだ。
修復前の杖の状態にもよるが、1回の修復で、高い場合で2倍、少なくとも1.5倍の強度になる。
私のように毎晩メンテナンスをしている場合はその効果が薄まるが、毎回徐々に強度を増しているらしい。」
以前オズモンド家で話しを聞いたときは、強化されてもおまけ程度の効果だと思っていたので、ユミルは想像以上の数値に目を丸くする。
「そんな…びっくりしました。」
「私も、最初は君の修復は残痕が残らないことが良いと思っていたが、予想外の効果だ。
そこで、魔法局の研究員が、君の修復魔法をかけている様子を見たいと言っているのだが、良いだろうか?」
「学園で習ったこと以上のことはしていないつもりなのですが…、お役に立てるのなら喜んで。」
「ありがとう。それでは、明後日にこちらに来るから、」
「え?私が行くんじゃないんですか?」
ユミルは先日の証人喚問と同じく、当然ユミルの方が行くのだと思っていたので、驚いて思わず途中で口を挟んでしまう。
「今回は大した役職も付いていない研究員が相手だ。あちらに来させる。」
「いやいやいやいや…。」
(大した役職もついていないって…貴方から見たら、大したことある役職の方が少ないでしょうが…!そもそも、魔法局に勤めているだけで、エリート魔法使いでしょ!)
「私が行きます。私は時間を持て余していますし、研究員さんもお忙しいでしょう。」
「危険だからダメだ。」
「…首都内でしかも魔法局までの道は特に安全です。エイディーもいます。」
「…君は随分とエイドリアンを信用しているんだな。」
レインがつまらなそうに言うので、ユミルは目を瞬いてしまう。
「だって、レイン様が連れて来たのだから、当然ではありませんか。」
ユミルは本心からきょとんとした表情のままそう言うと、レインは顔を覆って俯いた。
「君、本当に、そういうとこだぞ。」
「…え?」
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