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第7章 レインの不可思議な行動
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“第3治療室“と書かれた部屋の中には、男性がひとり、座っていた。
ハパドアは入室すると、すぐにその男性をユミルに紹介した。
怪我人はウィリアム・アンバーという魔法騎士だった。
金髪碧眼で見目麗しいその姿は高貴さを感じさせて王子様ルックなのに、平民らしい。
前腕に傷があるようで、今も包帯から血が滲んでいるのが見える。
治療のためか、上は薄いシャツを1枚しか着ていないので、男性慣れしていないユミルはそれだけでドキドキしてしまう。
「よろしくお願いします。」
ウィリアムは人好きのするような笑顔を浮かべた。
眩しすぎて、ユミルは顔が赤くなる。
(レイン様も美人だけれど、また違った美しさ…!)
「ユミル・アッシャーです、よろしくお願いします。」
ユミルは緊張と照れから消えそうな声で言うと、ウィリアムの前に座った。
「では、ユミル氏、始めてください。直す前の状態は既に記録済みです。」
「わかりました。」
ユミルは震える手でウィリアムの包帯に手をかけてするするとほどいていく。
「わ…痛そう…。」
思っていたよりも深い傷跡が、前腕に長く走っている。
流血は多少収まっているようだが、今もどんどん血が滲んできている。
痛々しい傷跡に、ユミルは顔を顰めた。
「よくある怪我だから、気にしないでください。」
ウィリアムは全く痛みを感じさせない穏やかな声音で言った。
ユミルが思わずウィリアムに再度視線を合わせると、ウィリアムは先ほどと同じ綺麗な表情でにっこりと笑った。
(あ…、この表情は内面を隠しているんだ…。)
ユミルは先ほどよりも落ち着いた気持ちでウィリアムの顔を見ることができたので、気づいてしまった。確かにきれいな笑顔だが、目が笑っていないような気がしたのだ。
「このくらい傷が大きいと、私では治すのに時間がかかってしまいます。魔法局の優秀な治癒魔法士にお願いするべきです。そうじゃないと…痛いのが長引いてしまいます。」
きっと痛いのを我慢しているのだろう、そう思ったユミルはハパドアの方を向いて訴えた。
ユミルの治癒魔法を確認するだけなら、もっと軽傷でも良いだろう。
一方で、ウィリアムは笑顔を崩して、驚いたように目を丸くしていた。
「だそうですが、ウィリアム氏、どうしましょう?」
「以前から、ハパドアさんの研究を手伝う約束をしていましたから、僕は構いませんよ。」
(まぁ、本人が良いって言うなら…。)
ユミルは未だに納得をしていない表情をしながらも、早速治療に取り掛かった。
ユミルが治癒魔法をかけている間、室内に沈黙が流れる。ずっと注がれているウィリアムとハパドアの視線も辛い。
「あの…、不躾なお願いで申し訳ないのですが…、何か話してくれませんか?」
「良いですけれど…集中がそがれませんか?」
「じっと見られていると、逆にやりづらいのです。」
「わかりました。」
ウィリアムはそう答えると、ユミルの邪魔にならない程度にぽつりぽつりと話し出した。
まずは、先日のユミルが同行した討伐の話しだった。ウィリアムは別の討伐に参加していたようで、あのときはいなかったが、ユミルの話は聞いていたらしい。
その話が終わってしまうと、話題の主な内容は、王都で有名な衣服やアクセサリー、香水のお店の話になった。
(アンバー様はとってもモテそうね…。)
随分と女性慣れしているのだろう、ユミルは自覚ではなかったが、変な顔をしてしまったらしい。ウィリアムはユミルの顔を窺うと、「面白くなかったですか?」と声をかけた。
「すみません…。とても良く、女性の好きそうなお店のことを御存じなので…。」
「あぁ、男が、おかしいですよね。」
「いえ、おかしいわけではないのですが、すごいなぁと。私の知らない世界です。」
「では、何がお好きですか?」
「う~ん…王都のお店なら、食べ物が良いです。しょっぱいものから甘いものまで、何でも好きです。あ、お値段はお手ごろな価格でお願いします。」
(今日これが終わったら、エイディーと一緒に寄って帰ろう。)
ユミルが傷口から視線を外さずに言うと、ウィリアムが肩を揺らして小さく笑い声をあげた気配がした。
「…昔から、食い意地が張っているので。」
「笑ってすみません。僕も食べることは好きです。僕のおすすめを教えましょう。」
そうしてウィリアムがいくつか食べ物のお店の話をするのをBGMに、ユミルはじっくりゆっくりと治癒魔法をかけ続けた。
ハパドアは入室すると、すぐにその男性をユミルに紹介した。
怪我人はウィリアム・アンバーという魔法騎士だった。
金髪碧眼で見目麗しいその姿は高貴さを感じさせて王子様ルックなのに、平民らしい。
前腕に傷があるようで、今も包帯から血が滲んでいるのが見える。
治療のためか、上は薄いシャツを1枚しか着ていないので、男性慣れしていないユミルはそれだけでドキドキしてしまう。
「よろしくお願いします。」
ウィリアムは人好きのするような笑顔を浮かべた。
眩しすぎて、ユミルは顔が赤くなる。
(レイン様も美人だけれど、また違った美しさ…!)
「ユミル・アッシャーです、よろしくお願いします。」
ユミルは緊張と照れから消えそうな声で言うと、ウィリアムの前に座った。
「では、ユミル氏、始めてください。直す前の状態は既に記録済みです。」
「わかりました。」
ユミルは震える手でウィリアムの包帯に手をかけてするするとほどいていく。
「わ…痛そう…。」
思っていたよりも深い傷跡が、前腕に長く走っている。
流血は多少収まっているようだが、今もどんどん血が滲んできている。
痛々しい傷跡に、ユミルは顔を顰めた。
「よくある怪我だから、気にしないでください。」
ウィリアムは全く痛みを感じさせない穏やかな声音で言った。
ユミルが思わずウィリアムに再度視線を合わせると、ウィリアムは先ほどと同じ綺麗な表情でにっこりと笑った。
(あ…、この表情は内面を隠しているんだ…。)
ユミルは先ほどよりも落ち着いた気持ちでウィリアムの顔を見ることができたので、気づいてしまった。確かにきれいな笑顔だが、目が笑っていないような気がしたのだ。
「このくらい傷が大きいと、私では治すのに時間がかかってしまいます。魔法局の優秀な治癒魔法士にお願いするべきです。そうじゃないと…痛いのが長引いてしまいます。」
きっと痛いのを我慢しているのだろう、そう思ったユミルはハパドアの方を向いて訴えた。
ユミルの治癒魔法を確認するだけなら、もっと軽傷でも良いだろう。
一方で、ウィリアムは笑顔を崩して、驚いたように目を丸くしていた。
「だそうですが、ウィリアム氏、どうしましょう?」
「以前から、ハパドアさんの研究を手伝う約束をしていましたから、僕は構いませんよ。」
(まぁ、本人が良いって言うなら…。)
ユミルは未だに納得をしていない表情をしながらも、早速治療に取り掛かった。
ユミルが治癒魔法をかけている間、室内に沈黙が流れる。ずっと注がれているウィリアムとハパドアの視線も辛い。
「あの…、不躾なお願いで申し訳ないのですが…、何か話してくれませんか?」
「良いですけれど…集中がそがれませんか?」
「じっと見られていると、逆にやりづらいのです。」
「わかりました。」
ウィリアムはそう答えると、ユミルの邪魔にならない程度にぽつりぽつりと話し出した。
まずは、先日のユミルが同行した討伐の話しだった。ウィリアムは別の討伐に参加していたようで、あのときはいなかったが、ユミルの話は聞いていたらしい。
その話が終わってしまうと、話題の主な内容は、王都で有名な衣服やアクセサリー、香水のお店の話になった。
(アンバー様はとってもモテそうね…。)
随分と女性慣れしているのだろう、ユミルは自覚ではなかったが、変な顔をしてしまったらしい。ウィリアムはユミルの顔を窺うと、「面白くなかったですか?」と声をかけた。
「すみません…。とても良く、女性の好きそうなお店のことを御存じなので…。」
「あぁ、男が、おかしいですよね。」
「いえ、おかしいわけではないのですが、すごいなぁと。私の知らない世界です。」
「では、何がお好きですか?」
「う~ん…王都のお店なら、食べ物が良いです。しょっぱいものから甘いものまで、何でも好きです。あ、お値段はお手ごろな価格でお願いします。」
(今日これが終わったら、エイディーと一緒に寄って帰ろう。)
ユミルが傷口から視線を外さずに言うと、ウィリアムが肩を揺らして小さく笑い声をあげた気配がした。
「…昔から、食い意地が張っているので。」
「笑ってすみません。僕も食べることは好きです。僕のおすすめを教えましょう。」
そうしてウィリアムがいくつか食べ物のお店の話をするのをBGMに、ユミルはじっくりゆっくりと治癒魔法をかけ続けた。
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