21 / 53
学校は燃えているか作戦
しおりを挟む
僕はせっせと化学室で破壊工作に勤しんでいた。ハンカチで指紋が付かないよう、全てのガスの元栓を開いた。そして一つを除いてそのほかのガスバーナーと元栓を繋ぐチューブを本体から取り外す。ガス漏れ放題である。
チューブを外さなかったガスバーナーで火を出した。出した火を窓にかかっている暗幕に当てる。
香ばしい香りが鼻をつく。……焦げ臭い匂いを嗅ぐと、これで僕も放火魔の仲間入りかぁという嫌な実感が湧いてきた。
そうこうしているうちに暗幕に火が燃え移る。以前から暗幕って燃えやすそうだなぁと思っていたのだが、まさか実際に試すことになるとは。
どんどん火が大きくなっていくのを見てこれなら簡単に消えやしないだろうと判断した僕は急いで化学室の外に出た。そして、外側から鍵を閉める。
化学室付近に人が来ることはないのはもう何度もループを繰り返して確認済みだ。目撃されることはない。一応偽装工作として、人気のない化学室手前のトイレで手を濡らし、ハンカチで手を拭う仕草をしながら教室に戻った。僕トイレ行ってましたアピールである。
この間5分。何度も失敗してやり直しては効率化を繰り返しただけのことはある。
僕が平然と自分の席で寝たふりに勤しんでいると、「アレ?なんか向かいの教室燃えてね?」と廊下から声が聴こえてきた。どうやら成功したらしい。
「は? マジ?」とクラスの皆も気になったようで、ぽつぽつと廊下に出ていきだした。
僕もその流れに乗って人でわちゃわちゃした廊下に出る。
「マジじゃん!」「うわめっちゃ燃えてる。」「火事になってんじゃん!」「せ、先生呼ばないと!」と廊下では生徒達や数人の先生達が大慌てになっていた。
そんなざわめきと共に火災警報機が鳴り響き、大音量だらけで耳がとても痛い。背伸びをしたり左右に動いたりして、どうにか窓に群がる生徒の隙間から火災の様子を確認すると、そこには予想以上に背の高い火がごうごうと燃え盛っていた。そして次の瞬間、轟音とともに爆発が起きた。熱気が中庭を挟んでこちらにも伝わってくる。火が漏れたガスに引火したんだろうか。
周りの生徒たちはけたましい悲鳴をあげて、廊下を走って我先にと外への通路を走っていく。かの有名な災害時の鉄則「おはし」、いわゆる押さない、走らない、静かにのどれ一つとして守れていなかった。
心臓がバクバクと音をたてる。自分のしでかした事が取り返しのつかないことになるかもしれないという恐怖からか急に手が冷たくなって、ピリピリと痺れ出した。額からは腹から込み上げてきたどろっとした冷や汗がふつふつと滲み出てくる。
いや落ち着け、大丈夫だと自分に言い聞かせる。あそこには誰も来ることはない。何度も何度も確かめた。だから人は死んでいない……筈だ。大丈夫大丈夫大丈夫なんとかなる。
心の中でそう唱えて平穏を装う。とりあえずこれで確実に合唱練習は中止になるはず。息を震えさせながら、深い深呼吸をする。
もうすぐ十分。僕はみんなが逃げ惑う中で立ち止まって、正確に十分間を測れるようになった体内時計にしたがってカウントを始めた。
3、2、1ーーー
目を開けたら時が正常に流れていて欲しい、けれど自分が引き起こした事件がなかった事になるのなら、時間が巻き戻っていて欲しい。相反した願いで思考をぐちゃぐちゃににしながら、僕は眼をギュっと瞑って最後のカウントをする。
0―――
そして意を決して目を開けた視界には、星野先生が古典の授業を行なっている景色が飛び込んできた。
「はあぁぁぁ~~」
張りつめていた全身が弛緩し、僕は情けない声を漏らしながら机にへたり込んだ。腐る程見たその光景に、僕は心の底からホッとしていた。マジで死ぬほど怖かったぁぁぁぁ。
正真正銘、死ぬかと思ったからな。僕じゃなくて、他の誰かが。
チューブを外さなかったガスバーナーで火を出した。出した火を窓にかかっている暗幕に当てる。
香ばしい香りが鼻をつく。……焦げ臭い匂いを嗅ぐと、これで僕も放火魔の仲間入りかぁという嫌な実感が湧いてきた。
そうこうしているうちに暗幕に火が燃え移る。以前から暗幕って燃えやすそうだなぁと思っていたのだが、まさか実際に試すことになるとは。
どんどん火が大きくなっていくのを見てこれなら簡単に消えやしないだろうと判断した僕は急いで化学室の外に出た。そして、外側から鍵を閉める。
化学室付近に人が来ることはないのはもう何度もループを繰り返して確認済みだ。目撃されることはない。一応偽装工作として、人気のない化学室手前のトイレで手を濡らし、ハンカチで手を拭う仕草をしながら教室に戻った。僕トイレ行ってましたアピールである。
この間5分。何度も失敗してやり直しては効率化を繰り返しただけのことはある。
僕が平然と自分の席で寝たふりに勤しんでいると、「アレ?なんか向かいの教室燃えてね?」と廊下から声が聴こえてきた。どうやら成功したらしい。
「は? マジ?」とクラスの皆も気になったようで、ぽつぽつと廊下に出ていきだした。
僕もその流れに乗って人でわちゃわちゃした廊下に出る。
「マジじゃん!」「うわめっちゃ燃えてる。」「火事になってんじゃん!」「せ、先生呼ばないと!」と廊下では生徒達や数人の先生達が大慌てになっていた。
そんなざわめきと共に火災警報機が鳴り響き、大音量だらけで耳がとても痛い。背伸びをしたり左右に動いたりして、どうにか窓に群がる生徒の隙間から火災の様子を確認すると、そこには予想以上に背の高い火がごうごうと燃え盛っていた。そして次の瞬間、轟音とともに爆発が起きた。熱気が中庭を挟んでこちらにも伝わってくる。火が漏れたガスに引火したんだろうか。
周りの生徒たちはけたましい悲鳴をあげて、廊下を走って我先にと外への通路を走っていく。かの有名な災害時の鉄則「おはし」、いわゆる押さない、走らない、静かにのどれ一つとして守れていなかった。
心臓がバクバクと音をたてる。自分のしでかした事が取り返しのつかないことになるかもしれないという恐怖からか急に手が冷たくなって、ピリピリと痺れ出した。額からは腹から込み上げてきたどろっとした冷や汗がふつふつと滲み出てくる。
いや落ち着け、大丈夫だと自分に言い聞かせる。あそこには誰も来ることはない。何度も何度も確かめた。だから人は死んでいない……筈だ。大丈夫大丈夫大丈夫なんとかなる。
心の中でそう唱えて平穏を装う。とりあえずこれで確実に合唱練習は中止になるはず。息を震えさせながら、深い深呼吸をする。
もうすぐ十分。僕はみんなが逃げ惑う中で立ち止まって、正確に十分間を測れるようになった体内時計にしたがってカウントを始めた。
3、2、1ーーー
目を開けたら時が正常に流れていて欲しい、けれど自分が引き起こした事件がなかった事になるのなら、時間が巻き戻っていて欲しい。相反した願いで思考をぐちゃぐちゃににしながら、僕は眼をギュっと瞑って最後のカウントをする。
0―――
そして意を決して目を開けた視界には、星野先生が古典の授業を行なっている景色が飛び込んできた。
「はあぁぁぁ~~」
張りつめていた全身が弛緩し、僕は情けない声を漏らしながら机にへたり込んだ。腐る程見たその光景に、僕は心の底からホッとしていた。マジで死ぬほど怖かったぁぁぁぁ。
正真正銘、死ぬかと思ったからな。僕じゃなくて、他の誰かが。
1
あなたにおすすめの小説
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる