ある日世界がタイムループしてることに気づいて歓喜したのだが、なんか思ってたのと違う

ジェロニモ

文字の大きさ
23 / 53

大丈夫だ問題ない

しおりを挟む
「なんか顔色悪くなぁい? 保険室行けば?」

 僕がきょとんとしていると、何故か下から聴こえてきた声に目線を向けると、床にしゃがみこんで、下から椅子に座っている僕の顔を覗き込んでいる加賀恵がいた。あまりの距離感の近さに思わずドキっとして、仰け反って椅子から転げ落ちそうになった。
 彼女が貢物と顔で男を選ぶ中々に恐怖の女だということを知らなければころっと恋に落ちてしまっていたかもしれない。

 さて、僕の肩をくいくいと引っ張ったのはどちらか。
 これが加賀恵なら、彼女はボディタッチとか平気でしてきそうな、勘違い男大量生産マシーンなところがあるようなのでまだわかるのだけど。

 しかし意外なことに実際に僕の肩をつまんでいたのは、加藤菜々子の方だった。
 逆ギレして僕に怒りを向けている顔しかあまり見てこなかったので、その行動は僕から見るとなんだかものすごい違和感であった。
 きっと僕は今、いわゆる鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているだろう。彼女から怒り以外の感情を向けられている。ただそれだけのことなのに、これまでとのギャップに、なんだかおかしくて笑いが込み上げてきた。

「ぶふぅ」
「なっ、おまえ何笑ってんだバカにしてんのか! 人がせっかく心、心配してやってたっていうのによぉ! 」

 思わず漏れた笑い声に、加藤菜々子は額に血管を浮き上がらせて立ち上がった。

「まぁまぁ。ステ~イステ~イ」

 こちらにガニ股で向かって来ようとする彼女を加賀恵が諌める。彼女たちのやり取りを見るのも随分と久しぶりな気がする。なんというかこう、上手く言えないけどホッとする。

「私はおまえのペットか! 」

 見るからに飼い主とペットっぽい。もしくは子供とお気に入りのおもちゃ。僕は加藤菜々子のツッコミに心の中で同意を示した。

「あー。ごめんごめん。いっつも怒ってるみたいな顔の加藤さんがそわそわと心配そうな顔をするもんだから、なんだかおかしくなって。」
「ぶはははははっ」

 僕の発言に加賀恵は爆笑である。多分彼女の前世は笑い袋か何かだと思う。そうでもなければいくらなんでも笑いのツボが浅すぎる。こんなに笑って鍛え上げられる彼女の腹筋はきっとシックスパックだ。お腹とはいえ素肌を見るほど親密にでもなれなければ真相は謎だけども。

「なっ。お、おまえぇぇっ。何言って、つーか恵も何笑ってんじゃねぇっ」
「あー腹痛ぁ~。」

 加藤菜々子は僕に怒鳴って、笑い転げる相方にも怒鳴ってと大忙しだ。

「おまえらぁっ……!」

 彼女は顔を真っ赤にして握りしめた拳をプルプルと震わせた。

「いやぁありがとう。笑ったら体の調子も良くなってきたよ。」
「わー。ほんとだ。血色良くなってる。まー菜々子程じゃないけどねー。」

 加賀恵がぐいっと下から近づいてきて、上目遣いで顔を覗いてきた。加藤菜々子の場合は血行が良いというより血が逆流してるって感じだろうか。今にも噴火しそうである。が、ループの最中にいくらおちょくっても彼女に殴られたことがないので特に恐怖はない。
 きっと今回もなんだかんだで実際に手を出されることはないだろう。むしろいつも通りの彼女に安心感すら湧いてきた。

……うん、大丈夫だ。暗示のごとく何度も何度も繰り返し呟いても信じきれなかったその言葉を、今は何故だかすんなりと信じることができた。
 それが誰のおかげかなんていうのは、わかりきっているけども。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...