ある日世界がタイムループしてることに気づいて歓喜したのだが、なんか思ってたのと違う

ジェロニモ

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タイムスリップ編

人生勝ち組ルートの構築

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 あれから学校を去り近くのコンビニへと走った僕は、新聞の日付を確認するも、そこには当然のように2011年と記載されていた。
 更に弁当の賞味期限を片っ端から調べるも、こちらも2011年表記のものしか存在しなかった。こうして現在が2019年でなく2011年であることがほぼ確定したのだった。

 僕はまたあの遊具がブランコしかない寂れた公園へと来ていた。一夜を過ごしたベンチに腰掛ける。
 この公園は過去に来る前とほとんど風景が変わらず、8年前だろうと相変わらず寂れている。この公園も2019年と比べて何か足りないような気がするのだが、なんだったか。 
 まぁこんなクソみたい公園のことなどどうでも良いのだ。
 僕は過去に来たんだぞ過去に。タイムスリップだぞ。
 
 しかしなにがきっかけで過去に来てしまったんだろうか。
 昨日? の記憶を辿ると、星野先生や自転車が消えて僕がパニクっていた時には、もうタイムスリップしていたのだろう。その直前に何かあっただろうか。

……強いて挙げるのならば、星野先生にパイタッチしたことくらいか? もしくはその後のビンタとか。
 いやそんな理由でタイムスリップ出来てしまったら、物理法則が少しかわいそうな気もしてくる。
 理由はともかく、僕が8年前に来てしまったということだけは確かな事実だった。

 それにしてもタイムスリップか。最初はなんのこっちゃと戸惑ったものの、案外悪くないのではと思いはじめた。なにせ何もしなくても8年間待つだけで元の時間軸に戻れるのだ。なんと楽か。時間がちゃんと流れるって素晴らしい。

 今なら昔の僕に色々教え込んでかつての黒歴史達を無かったことにできるし、未来の情報で億万長者になるのも楽々だ。
 
 未来に戻る方法を探すとしても、まずは過去の僕に未来の宝くじの当選番号とか、8年後に有名になる会社とか教えまくっておいてもバチは当たらんだろう。
 そうすれば過去の僕がなんやかんや頑張ってくれて、2019年の僕は労せずして人生勝ち組になれるわけだ。しかし僕の人生を勝ち組ルートに改変する為には一つ問題があることに気づいた。
 
    これは僕の家に知らない人が住んでいた理由でもあるのだが、僕は高校に上がると同時に諸事情で他県からこの街に引っ越してきた。
 つまり2011年時点の僕はまだ小学二年生で、家は他県にあり、おまけにこの街からは物凄く遠いのだ。

 初めてこの街に来た時は、新幹線で半日も拘束され暇で暇で仕方なかったのを覚えている。
 バスでも行けないことはないのだろうけど、どちらにせよ結構な金がかかるということに変わりはない。そう、問題なのは金である。
 そして肝心の僕の財布は鞄と共に遥か未来に置き去りにして来てしまった。つまり今の僕は一文無し……いや、まてよ。

 僕はあることを思い出してタイムスリップする前の財布の行方を回想してみた。 確かカラオケ終わりに会計を払ったあと、僕は財布を鞄ではなく、ポケットにしまいやしなかったか。

 ほのかな可能性を信じ、僕は恐る恐る手を自分のポケットに伸ばす。そこには、確かな長方形の出っ張りが感じられた。財布はあったのだ。 何という幸運か。
 どんなに離れていても新幹線でひとっ飛び。待ってろ過去の僕。そして君に未来の知識を授けよう。僕を人生勝ち組にしてくれ。

 希望に満ち溢れ、僕は財布を開く。しかし中に入っていたのは絶望だった。

……僕は最近、毎週加藤菜々子にカラオケへ誘われていた。それは毎週、金に羽が生えて飛んでいっていたということで。

 僕は手のひらに財布の中身を全て出した。1、2、3とコインの枚数を数える。そんなはずないと何回も数える。しかし結果は変わらず。……悲報、所持金216円。

 追い討ちをかけるように腹がグゥと鳴って、昨日の夜から何も食べていなかったことを僕に思い出させてきた。
 もう昼だ。つまり僕は昨日の晩飯と今日の朝飯を抜いていることになる。
 自分が空腹だということを認識した途端、余計に腹が減った気がしてきて、また腹が鳴った。
 これは未来の知識を利用して早急に金儲けを……あっ。

 僕は新たな最悪な事実に気づいてしまった。よくよく考えてみたら、僕は新聞なんて読まないし、ニュースも見ない。テレビもアニメか映画くらいしか観ないという筋金入りの情弱だった。
 更に宝くじを買う奴らを見ては心の中で「金の無駄乙ですざまぁ馬鹿ども」と嘲笑していた僕は、突然当選番号などを知るよしもなく。ぼろ儲けできる知識なんて僕は何一つも持ってなかったのだ。人生勝ち組の夢は儚く散った。 

 何もしなくたって8年経てば2019年に戻れるって? それは間違いないだろう。しかし、果たして僕は8年間生き抜くことができるのだろうか。
 やはり今回もこの異常事態の原因を探して、問題を解決すべく頑張らなければいけなくなるのだろうか……。
 
 希望と期待に満ち溢れていた心から一転し憂鬱な気分で項垂れていた僕の耳に、突如としてギィギィと悪魔の断末魔のごとく不快な音が響いてきた。
 
 何事かと顔を上げると、どうやら気付かぬうちに何者かがブランコをゆらゆら漕いでいたようだ。悲鳴の出所は座板を吊るす鎖だったらしい。寂れているとはいえ流石に公園なだけあって、人も全く来ないわけではないらしい。 
 まるで秘密基地に知らない人に侵入されたような気分になった。  
 僕だけの拠点気分だった公園が公共の場だったことを思い出し、更に憂鬱さが増した。
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