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タイムスリップ編
平日の昼間だというのに公園にいる高校生は事案
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夕方、約束通り給食の残り物の入ったビニール袋を持って小学生の橘恵美はやってきた。
今日のメニューは牛乳、白飯、そして大量の酢の物だった。人気ないよね酢の物。奇跡が起きてデザート物が余ったりしないだろうか。いや、余ってもどうせじゃんけんで取り合いになるから余る可能性がないのは分かっているけども。
「うまい棒食べる?」
ベンチに置かれたうまい棒を指すと、彼女はうーんと可愛らしい唸り声を上げながら眉間に皺を寄せた。今彼女の周りには「こんな怪しい奴にお菓子をもらっちゃダメよ!」と彼女を戒める天使と、「お菓子が好きだろう?」と彼女をそそのかす悪魔が飛び回っているのかもしれない。
「……一本だけ」
少しして、彼女は少し遠慮がちに人差し指を立てた。どうやら悪魔が勝利したらしい。
そうだ。本来はこれくらいの葛藤があるべきなのだ。お菓子が欲しいからと言ってノータイムで首を縦に振ることなどあってはならない。さらに言うなら人に物をねだる時に図々しい態度を取るなど以ての外だ。
「……君、友達は選んだ方が良いと思うよ」
今朝の小学生、藤崎瑠璃子の人間性があんまりにあんまりだったもので、ついハリーポッターに初めて出会った時のドラコマルフォイみたいなことを言ってしまった。
「あの、友達がすみませんでした」
どうやら藤崎瑠璃子が今朝僕からうまい棒をカツアゲまがいの方法で奪ったことはご存知らしい。情報を漏らしてしまった罪悪感もあるのか、彼女は僕に対する態度としては珍しく、申し訳無さげに頭を下げた。
「でも根は良い子だし、私の大切な友達だから……」
根がいいなら地表に出てる部分も良くしてくれ。そう思うが口には出さない。
「いや、まぁどんな人間と交流するかは個人の自由だと思うし、つい口に出ちゃっただけだから気にしないで」
「あともう一つ謝らないといけなくて……。」
彼女は言いづらそうに上目遣いで眉を八の字に曲げながら僕を見た。
「どうしたの?」
「その、瑠璃子ちゃんがクラスでうまい棒貰ったって喋っちゃって。もしかしたらうまい棒に飢えた子達がここに来る、かもしれません」
そう言われて、また頭を下げられた。
ついに僕はタダでうまい棒くれる人になってしまったらしい。まぁこの子が悪いわけじゃあ……いや、藤崎瑠璃子に僕のことを教えたのはこの子な訳だから、少しは責任があるのだろうか。しかし伝えられた情報を歪めに歪めて、僕をうまい棒の人にしたのはきっと藤崎瑠璃子でファイナルアンサー。
なぜ人がそろそろ星野先生をしっかり星野先生にしなければなーと考え始めたりした途端、面倒ごとが飛び込んでくるのか。そんなに僕の頭をパンクさせたいのだろうか。
「広がったのもわざとじゃないだろうし、気にしなくて良いよ。小学生がわんさか来ても、うまい棒をあげたくないならあげなきゃ良いだけの話だしさ」
僕は高校生、いくら束になって来られようと小学生などという頭も体もちんちくりんな奴らに屈するわけがない。そこは問題ない。しかし学ランを着ているいかにも学生です、という風貌の男子が昼間っから公園に居るという噂が広がるのは普通に事案だ。
「ねぇ、僕のことってどんな感じで噂流れてるの? 」
「この公園にうまい棒をくれる男の人がいるって言う噂が流れちゃってます」
「なるほど」
どうやらまだ高校生という部分は辛うじてバレてないらしい。
そこで僕は考えた。最悪高校生ということを隠しきれれば、ホームレスだと誤魔化せないものかと。ホームレスなら平日にウロウロしていても、住所がないのも自然である。なんて天才的な考えなのか。これからはホームレスムーブをすることにした。
「私、習い事があるからそろそろ帰ります。あの、本当にごめんなさい。それじゃあ」
「へー。何習ってるの?」
「ぴ……あなたには教えません」
僕に対する罪悪感で警戒心が薄れていたのか、彼女は盛大に口を滑らせた。「ピ」か。ピアノかなぁ。
「あー。それがダメなら、じゃあ近くにある安い服屋知らないかな」
罪悪感につけこむなら今しか無いなと追加で聴いてみた。彼女は眉間にしわを寄せ、不審者に情報を与えるべきか否かを悩んでいるようだったが、結局近場にある古着屋の場所を教えてくれた。
学生だとバレない為にも、学ランはしばし封印せざる得ない。つまり新しい服が必要なのだ。
早速教えてもらった道順を辿り古着屋に向かう中、僕は漠然と何かを忘れているような、悶々とした感覚に苛まれた。
こういう時はしっかり思い出さないと気持ち悪くて仕方がない。一体何を忘れているのか、スッキリする為僕は足を止めて考え込む。
「あ。そっか」
そして思い出した。自分が空腹のあまり持ち金全部をうまい棒に変換してしまっていたことを。
忘れていたことは思い出したが、スッキリするどころか余計にモヤモヤが増した。
今日のメニューは牛乳、白飯、そして大量の酢の物だった。人気ないよね酢の物。奇跡が起きてデザート物が余ったりしないだろうか。いや、余ってもどうせじゃんけんで取り合いになるから余る可能性がないのは分かっているけども。
「うまい棒食べる?」
ベンチに置かれたうまい棒を指すと、彼女はうーんと可愛らしい唸り声を上げながら眉間に皺を寄せた。今彼女の周りには「こんな怪しい奴にお菓子をもらっちゃダメよ!」と彼女を戒める天使と、「お菓子が好きだろう?」と彼女をそそのかす悪魔が飛び回っているのかもしれない。
「……一本だけ」
少しして、彼女は少し遠慮がちに人差し指を立てた。どうやら悪魔が勝利したらしい。
そうだ。本来はこれくらいの葛藤があるべきなのだ。お菓子が欲しいからと言ってノータイムで首を縦に振ることなどあってはならない。さらに言うなら人に物をねだる時に図々しい態度を取るなど以ての外だ。
「……君、友達は選んだ方が良いと思うよ」
今朝の小学生、藤崎瑠璃子の人間性があんまりにあんまりだったもので、ついハリーポッターに初めて出会った時のドラコマルフォイみたいなことを言ってしまった。
「あの、友達がすみませんでした」
どうやら藤崎瑠璃子が今朝僕からうまい棒をカツアゲまがいの方法で奪ったことはご存知らしい。情報を漏らしてしまった罪悪感もあるのか、彼女は僕に対する態度としては珍しく、申し訳無さげに頭を下げた。
「でも根は良い子だし、私の大切な友達だから……」
根がいいなら地表に出てる部分も良くしてくれ。そう思うが口には出さない。
「いや、まぁどんな人間と交流するかは個人の自由だと思うし、つい口に出ちゃっただけだから気にしないで」
「あともう一つ謝らないといけなくて……。」
彼女は言いづらそうに上目遣いで眉を八の字に曲げながら僕を見た。
「どうしたの?」
「その、瑠璃子ちゃんがクラスでうまい棒貰ったって喋っちゃって。もしかしたらうまい棒に飢えた子達がここに来る、かもしれません」
そう言われて、また頭を下げられた。
ついに僕はタダでうまい棒くれる人になってしまったらしい。まぁこの子が悪いわけじゃあ……いや、藤崎瑠璃子に僕のことを教えたのはこの子な訳だから、少しは責任があるのだろうか。しかし伝えられた情報を歪めに歪めて、僕をうまい棒の人にしたのはきっと藤崎瑠璃子でファイナルアンサー。
なぜ人がそろそろ星野先生をしっかり星野先生にしなければなーと考え始めたりした途端、面倒ごとが飛び込んでくるのか。そんなに僕の頭をパンクさせたいのだろうか。
「広がったのもわざとじゃないだろうし、気にしなくて良いよ。小学生がわんさか来ても、うまい棒をあげたくないならあげなきゃ良いだけの話だしさ」
僕は高校生、いくら束になって来られようと小学生などという頭も体もちんちくりんな奴らに屈するわけがない。そこは問題ない。しかし学ランを着ているいかにも学生です、という風貌の男子が昼間っから公園に居るという噂が広がるのは普通に事案だ。
「ねぇ、僕のことってどんな感じで噂流れてるの? 」
「この公園にうまい棒をくれる男の人がいるって言う噂が流れちゃってます」
「なるほど」
どうやらまだ高校生という部分は辛うじてバレてないらしい。
そこで僕は考えた。最悪高校生ということを隠しきれれば、ホームレスだと誤魔化せないものかと。ホームレスなら平日にウロウロしていても、住所がないのも自然である。なんて天才的な考えなのか。これからはホームレスムーブをすることにした。
「私、習い事があるからそろそろ帰ります。あの、本当にごめんなさい。それじゃあ」
「へー。何習ってるの?」
「ぴ……あなたには教えません」
僕に対する罪悪感で警戒心が薄れていたのか、彼女は盛大に口を滑らせた。「ピ」か。ピアノかなぁ。
「あー。それがダメなら、じゃあ近くにある安い服屋知らないかな」
罪悪感につけこむなら今しか無いなと追加で聴いてみた。彼女は眉間にしわを寄せ、不審者に情報を与えるべきか否かを悩んでいるようだったが、結局近場にある古着屋の場所を教えてくれた。
学生だとバレない為にも、学ランはしばし封印せざる得ない。つまり新しい服が必要なのだ。
早速教えてもらった道順を辿り古着屋に向かう中、僕は漠然と何かを忘れているような、悶々とした感覚に苛まれた。
こういう時はしっかり思い出さないと気持ち悪くて仕方がない。一体何を忘れているのか、スッキリする為僕は足を止めて考え込む。
「あ。そっか」
そして思い出した。自分が空腹のあまり持ち金全部をうまい棒に変換してしまっていたことを。
忘れていたことは思い出したが、スッキリするどころか余計にモヤモヤが増した。
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