47 / 53
タイムスリップ編
自分を勉強しかできないと言うやつは勉強すらできないやつをバカにしているのか
しおりを挟む
次の日の昼、液体窒素さんが公園へとやってきた。これは珍しいことだ。なにが珍しいって、何もやらかしてないのに彼女が自発的にやってくるというのが珍しい。これも、彼女の言うところの歩み寄りというやつなんだろうか。
「あんたはさ、こんなことして将来のこととか考えてる?」
こんなことが指すのは公園暮らしのことだろうか。多分、彼女にとって僕は不登校の家出少年とでも思われているんだろうな。
「まったく考えてないよ」
正直、そんなもん高校3年の冬あたり、というか大学卒業寸前まで考えなくて良いもんだと思っている。
「でも願望くらいはあるんじゃないの?」
願望かぁ。僕は内に秘める自分の欲に耳を傾けた。
「働きたくないなぁ」
彼女の方から、蔑んだ視線が頰にピリピリ刺さっているのが見なくてもわかった。
「参考になるかもって期待してた私がバカだった」
「参考って自分の将来の? まだ悩んでたんだ」
「そりゃあ、頑張ろうって決めたけど、それで何かが劇的に変わるわけでないでしょ。私はまだ何も出来てないままで、変わってなんかいない」
そんな彼女の話を聴いて、そういえば僕は彼女に訂正させたいことがあったと思い出した。
「嘘は良くない。君は勉強が出来るって言ってたじゃないか」
「本当に勉強だけだけどね」
「僕からしたらそれで十分な気もするけどな。勉強ができるなら、それが活かせることをすればいいんじゃないか。だけだなんて、そんなこと言わないでくれよ。」
勉強だけだなどと言ったら、勉強もできてないのに将来に何も悩んでない楽観的な自分があまりに惨めに見えてくるじゃないか。
「勉強ができるってすごいことなんだよ。じゃなきゃ、みんなテストで100点取れるはずじゃないか。だから、君はすごいんだよ。」
「それは、そうかもしれないけど。でも、勉強ができたって役に立つのは入試とかだけで、社会に出たら無意味なものでしょ」
「それは勉強をやりたくない人の言い訳だよ。僕もテストの点数が悪かった時よく心の中でそう愚痴ってるな」
「あんたって本当に……」
彼女はその先を言わなかったが、代わりに吐いたため息から察するに、褒めるような言葉は続かなかったろう。
「勉強ができるって言うのは、一つの長所であるべきだよ。役に立つ立たないは、進む道によると思うし。」
「勉強が役に立つ仕事って例えばなに? 塾とか、家庭教師とか?」
「そうだよ! 特に……」
特に教師。今言えば、彼女に教師を目指させることができるかもしれないと、そう打算してしまう自分が嫌になった。
今、目の前にいる彼女と向き合いたいだとか思っていたはずの自分が、目先の利益に飛びついてしまったのだ。
「なに?」
「……いや。ほら、サッカーができるやつが、みんなサッカー選手を目指すかっていうとそうでもないから、可能性の一つとして考えるのは良いんじゃないかな」
少し悩んで、僕はそう答えた。
「そうなのかな」
それでも彼女はまだ不安そうだった。
「……多分、世の中には三種類の人がいるんだ。得意なことを仕事にすると人と、好きなことを仕事にする人と、好きでも得意でもないけどとりあえずお金の為に働く人」
多分、僕は最後になるんだろう。働くまでなにも考えずに、働いてからも、多分なにも考えず、惰性に身を任せて人生を送るんだろう。
「なんか、ぽいね。……多分、私は最後かな。」
彼女は寂しそうに笑った。
「選ぶかどうかは別にして、勉強っていう得意分野がある君は、得意なことを仕事にするって選択肢があると思うけどね」
「そう……かな。」
「そうだよ」
疑問に僕がそう返すと、彼女は目をつむって黙り込んだ。そして、ゆっくりと白い息を吐く。
「……まだ実感とかは湧いてないけど、勉強ができるってことも、長所の一つって思ってみることに……してみる。思いつくだけでも、勉強を商売にしてる職業って結構あるしね」
目をつむっている間、まぶたの裏でどんな考えを巡らせて、そんな答えを出すに至ったかは、当然僕には分からない。
でもその答えを聴いて、彼女が彼女自身のことを少しずつ好きになっていってるように感じて、顔がにやけそうになる。
けれど、僕はなんだか照れるから、必死で平然を装い、
「そっか」
とだけ返した。多分ポーカーフェイスを保てていたと思う。というか、思いたい。
彼女も僕の返事に短く、
「うん」
とだけ返した。
彼女が本当に勉強だけしかできない人間だったなら、小学生達はあんなに懐かなかっただろうし、僕も彼女の力になろうとはしなかっただろう。
これから彼女が彼女自身のもっと多くの魅力に気づいていけたらいいのに。
「まぁその、じゃあ私そろそろ帰るから」
と、別れを告げたはずの彼女がその場を動く気配がない。
腹でも痛いんだろうか。心配になって声をかけようとしたところ、彼女の口がモゴモゴと動いていることに気がついた。
なにか言いたいことがあるらしい。しばらく待っつと、ようやく口が開いた。
「あのさ。得意ってだけじゃなくて、教師とかになって、あんたみたいなクズを矯正するのは、ちょっと楽しいかもって思えた。だからあんたに相談してよかったよ。ありがとう」
彼女は照れ臭そうにはにかんだ
「お、おう」
彼女の突然のお礼に対して、そう返事した僕は、今度はポーカーフェイスを保てた自信が欠けらもなかった。
役に立てたのは嬉しいんだけど、将来君の生徒になる予定の僕に怖いことを言わないで欲しい。
「あと高校生で進路が白紙なのは流石にヤバいと思うから、頑張りなよ」
最後に要らぬ捨て台詞を吐いて彼女は帰った。
「あんたはさ、こんなことして将来のこととか考えてる?」
こんなことが指すのは公園暮らしのことだろうか。多分、彼女にとって僕は不登校の家出少年とでも思われているんだろうな。
「まったく考えてないよ」
正直、そんなもん高校3年の冬あたり、というか大学卒業寸前まで考えなくて良いもんだと思っている。
「でも願望くらいはあるんじゃないの?」
願望かぁ。僕は内に秘める自分の欲に耳を傾けた。
「働きたくないなぁ」
彼女の方から、蔑んだ視線が頰にピリピリ刺さっているのが見なくてもわかった。
「参考になるかもって期待してた私がバカだった」
「参考って自分の将来の? まだ悩んでたんだ」
「そりゃあ、頑張ろうって決めたけど、それで何かが劇的に変わるわけでないでしょ。私はまだ何も出来てないままで、変わってなんかいない」
そんな彼女の話を聴いて、そういえば僕は彼女に訂正させたいことがあったと思い出した。
「嘘は良くない。君は勉強が出来るって言ってたじゃないか」
「本当に勉強だけだけどね」
「僕からしたらそれで十分な気もするけどな。勉強ができるなら、それが活かせることをすればいいんじゃないか。だけだなんて、そんなこと言わないでくれよ。」
勉強だけだなどと言ったら、勉強もできてないのに将来に何も悩んでない楽観的な自分があまりに惨めに見えてくるじゃないか。
「勉強ができるってすごいことなんだよ。じゃなきゃ、みんなテストで100点取れるはずじゃないか。だから、君はすごいんだよ。」
「それは、そうかもしれないけど。でも、勉強ができたって役に立つのは入試とかだけで、社会に出たら無意味なものでしょ」
「それは勉強をやりたくない人の言い訳だよ。僕もテストの点数が悪かった時よく心の中でそう愚痴ってるな」
「あんたって本当に……」
彼女はその先を言わなかったが、代わりに吐いたため息から察するに、褒めるような言葉は続かなかったろう。
「勉強ができるって言うのは、一つの長所であるべきだよ。役に立つ立たないは、進む道によると思うし。」
「勉強が役に立つ仕事って例えばなに? 塾とか、家庭教師とか?」
「そうだよ! 特に……」
特に教師。今言えば、彼女に教師を目指させることができるかもしれないと、そう打算してしまう自分が嫌になった。
今、目の前にいる彼女と向き合いたいだとか思っていたはずの自分が、目先の利益に飛びついてしまったのだ。
「なに?」
「……いや。ほら、サッカーができるやつが、みんなサッカー選手を目指すかっていうとそうでもないから、可能性の一つとして考えるのは良いんじゃないかな」
少し悩んで、僕はそう答えた。
「そうなのかな」
それでも彼女はまだ不安そうだった。
「……多分、世の中には三種類の人がいるんだ。得意なことを仕事にすると人と、好きなことを仕事にする人と、好きでも得意でもないけどとりあえずお金の為に働く人」
多分、僕は最後になるんだろう。働くまでなにも考えずに、働いてからも、多分なにも考えず、惰性に身を任せて人生を送るんだろう。
「なんか、ぽいね。……多分、私は最後かな。」
彼女は寂しそうに笑った。
「選ぶかどうかは別にして、勉強っていう得意分野がある君は、得意なことを仕事にするって選択肢があると思うけどね」
「そう……かな。」
「そうだよ」
疑問に僕がそう返すと、彼女は目をつむって黙り込んだ。そして、ゆっくりと白い息を吐く。
「……まだ実感とかは湧いてないけど、勉強ができるってことも、長所の一つって思ってみることに……してみる。思いつくだけでも、勉強を商売にしてる職業って結構あるしね」
目をつむっている間、まぶたの裏でどんな考えを巡らせて、そんな答えを出すに至ったかは、当然僕には分からない。
でもその答えを聴いて、彼女が彼女自身のことを少しずつ好きになっていってるように感じて、顔がにやけそうになる。
けれど、僕はなんだか照れるから、必死で平然を装い、
「そっか」
とだけ返した。多分ポーカーフェイスを保てていたと思う。というか、思いたい。
彼女も僕の返事に短く、
「うん」
とだけ返した。
彼女が本当に勉強だけしかできない人間だったなら、小学生達はあんなに懐かなかっただろうし、僕も彼女の力になろうとはしなかっただろう。
これから彼女が彼女自身のもっと多くの魅力に気づいていけたらいいのに。
「まぁその、じゃあ私そろそろ帰るから」
と、別れを告げたはずの彼女がその場を動く気配がない。
腹でも痛いんだろうか。心配になって声をかけようとしたところ、彼女の口がモゴモゴと動いていることに気がついた。
なにか言いたいことがあるらしい。しばらく待っつと、ようやく口が開いた。
「あのさ。得意ってだけじゃなくて、教師とかになって、あんたみたいなクズを矯正するのは、ちょっと楽しいかもって思えた。だからあんたに相談してよかったよ。ありがとう」
彼女は照れ臭そうにはにかんだ
「お、おう」
彼女の突然のお礼に対して、そう返事した僕は、今度はポーカーフェイスを保てた自信が欠けらもなかった。
役に立てたのは嬉しいんだけど、将来君の生徒になる予定の僕に怖いことを言わないで欲しい。
「あと高校生で進路が白紙なのは流石にヤバいと思うから、頑張りなよ」
最後に要らぬ捨て台詞を吐いて彼女は帰った。
0
あなたにおすすめの小説
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる