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第二章 フィアンセとバーテンダー
055 ナンナの憂鬱
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カフェに入ると、空いている席はあるのにナンナは座ろうとせず、案内されるまま廊下をそのまま突き進む。
何人かの客は彼女に釘付けになっていた。あれだけの美人だ。サングラスをかけていても目立ちすぎる。
「個室なんですか?」
「私ね、お茶をするのがとっても大好きなの。でも個室でないと嫌。たまには外でのんびりしたいわ」
「はあ…………」
「ほら、早く座って。何がいい?」
「ハーブティーと、何がおすすめですか?」
「うふ、なら私が好きなものを頼むわね。さっきたくさん踊ったし、お腹が空いちゃったわ」
大きなサングラスを外すと、これまた大きな目が現れる。
身近なフランス人といえばルイで、いかに彼がゆっくり丁寧に話してくれていたか身に染みる。時折フランス語で交じるナンナの質問に、答えるのがやっとだ。しかも早い。ルイに会いたい。ルイをここに連れてきたい。
ワゴンで運ばれたスイーツの数々に、俺は言葉を失った。タルトが食べたいと言っていた気がするが、量がまずおかしい。一口サイズのタルトが敷きつめられ、焼き菓子やメレンゲ菓子も並ぶ。マリー・アントワネットになった気分だ。
「南フランスはハーブも有名ですよね」
「ええ、そうよ。コーヒーも好きだけれど、お肌のことを考えるとハーブティーをよく飲むの。さあ、食べて。どれも美味しいわ」
「ありがとうございます。夕食もあるので、少し頂きます」
「少しだけ? 小食なのね」
あえて選んだのか、テーブルに並ぶスイーツは重みのあるものばかりだ。
タルトは甘く、バターがしっかりと利いている。砂糖の入れていないハーブティーと飲むとちょうどいい。
彼女はとにかく良く食べた。美味しい美味しいと言いながら、本当に美味しそうに食べるものだから、スイーツを作ったパティシエも感無量だろう。俺だったら泣いて喜ぶ。
「あなたは今、大学生かしら?」
「そうです。よく分かりましたね。今年で就職先を決めなきゃいけないんですけど、悩んでます」
「それなら、フランスにいらっしゃい。美味しいものもあるし風景もとっても素敵よ。フランス語の音も綺麗でしょう? 私、世界で一番美しい言語だと思うの」
「俺もフランス語は好きです。就職先は海外って手もあるのか」
「そうよ。私みたいにいろんな国を渡るのも楽しいわ」
「アルバイト先で就職も考えてるんです。考えておいてほしいって言われて。恵まれすぎてます」
「あなたは優秀なのね。羨ましいわ」
「優秀なんてものじゃないですよ。人手が足りないみたいで」
美味しくて、けれどもう一つタルトを食べたら夕食が入らない。なるべく軽そうなフィナンシェに手を伸ばした。
「けれど、あなたがいなくなったらフィアンセの方は悲しむわ」
「うーん……自信がないです。さっきも触れましたけど、人質みたいな関係性なので」
「あなたはとても優しくて気が利いて、とっても残酷なのね」
残酷と言われた。どういう意味だろう。
「優しくてハンサムで、隣を歩いていて誇らしくなるくらい。人を好きにさせる天才よ。本当よ? 今日初めて会ったのに、私はあなたを好きになったもの」
「光栄です。でも、残酷って、」
「人を好きにさせておいて、簡単に置いて去っていく。罪深い人」
ナンナは大きな目を伏せ、フランス語で何か呟いた。
「私は置いていかれるのは嫌よ。好きな人は側にいてほしい。なのに、私が好きな人はみんな私の元から離れていく。旦那も、息子たちも。成長と呼べるわね。でも私は、側にいてほしいの。理屈じゃないの」
「ナンナは、寂しがり屋なんですね」
「そうかしら? 私は私よ? みんな口に出さないだけで、実際はそう思っているでしょう?」
確かにそうだ。祖母が亡くなったときも、離れていく彼女を思い、悔しくて寂しくて何度も泣いた。
「あなたのフィアンセも、あなたが離れていくと知ったらきっと寂しがるわ。物分かりのいい良い子ちゃんだから、また会いましょうですんなり身を引くんでしょうけど。私はそんなの嫌よ。だからみんなが離れていく前に、私が離れるの。そうすれば、気は紛れるわ」
考え方が女王様だ。でも彼女の気持ちも分かる。俺が一人暮らしをずっと希望して都会に出たがったのは、今思うとこういう理由もあったからかもしれない。姉も結婚すれば離れていくし、子供もできればますます構ってもらえなくなる。
彼女に対し寂しがり屋と言ったが、人間のあるべき感情だ。
「お願いがあるの」
「はい、なんでしょう」
「シキのフィアンセが寂しいと言ったら、できるだけ側にいてあげて。遠くにいたら、すぐにでも近くに寄り添ってあげて。私にはできないから」
「分かりました。約束します。必ず力になります」
いつの間にか、残りはタルト一つだけだ。小さな身体に入る胃袋はどんな大きさなのだろう。
食べて下さいと告げると、遠慮なく美味しそうにかじりついた。チョコレートがふんだんに使われたタルトだ。
あっという間に皿が綺麗になり、俺はごちそうさまと手を合わせる。またもや新しいおもちゃを発見したと、ナンナも同じ仕草をしては、どんな意味があるのか、いつもするのか、など質問の波が押し寄せた。波を避けるより、サーファーになったつもりで受けた方が彼女との会話はうまくいく。
お茶代は彼女がカードで支払ってくれた。
「次は俺が払います」
「ええ、お願いね。あなたとはまた会えるから」
「また会える?」
「会えるわ。私の勘は当たるもの」
帰りはなぜかフロアを通らず、裏口から出た。外に出る前に彼女はまたもや大きなサングラスをかけ、鼻歌を歌いながら上機嫌にスキップをする。
「うふふ、今の私はね、とっても機嫌がいいの。天気もいいし、お菓子も食べたし、ハーブティーも美味しかったわ。だからあなたにキスしてあげる」
「え?」
ナンナは俺を抱きしめ、頬に軽く生暖かいものが触れる。
リップ音が聞こえ、どう反応していいのか分からず固まるしかった。
「あなたにお出迎えが来ているわ」
ナンナの視線の先には、SPが助手席から降りてくるところだった。
「またね、シキ。好きよ」
「あ、はい。俺もです」
「ふふ……残酷な人。でも好き」
別れ際に何度も好きだと連呼し、今度は反対側の頬にキスをしてくる。俺もしようかと思ったが、彼女がそれを望んでいるようではなかったので、止めておいた。男性が女性にするのは御法度のような気がした。
ハニーブロンドの髪が揺れ、甘い香水の香りが漂う。彼女もまた香水に強いこだわりがある。
「どちらでお知り合いに?」
「森の湖です」
「ああ……あそこで」
今までは日本語で話していたのに、今は英語でのやりとりだ。俺の腕を受け入れて話していると信じ、少しは自信を持っていいだろう。
ゆっくりとした運転で外の風景を楽しみつつ、ドルヴィエ家に戻ってきた。
「ディミトリ様は執務室です」
「分かりました」
一度部屋に戻り、荷物を取りにいってから執務室へ行き、扉をノックした。返事の後にドアノブに手をかけると、未だスーツ姿のまま資料を眺めているディミトリ氏がいた。
「こんにちは! 志樹です。チケットありがとうございました。今日からお世話になります」
「久しぶりだな。状況はどうだ?」
力のこもった渾身のフランス語に、さらっとフランス語で返ってきた。
「これ、お土産です。日本の空港で買ったものですけど」
「頂戴しよう。状況は?」
「ベルナデットさんのことは話しましたよね? 今は日本にいます」
「それで?」
「遺産ですけど、とりあえずブレスレットは見つけました。というより、持っている人から接触をしてきたんですけど」
「なんだと?」
「後で返してくれるそうです。いろいろ協力してほしいとは言われました」
「金はいくら必要だ?」
「いやいや、お金で動く組織じゃないですって! 国を守る警察です。遺産を持っている悪い組織を戦おうとしているんです」
「お前の次の任務は、ベルナデットと接触をすること。警察の取り調べは受けているだろうが、お前にしか話さないこともあるだろう」
「俺、彼女とほぼ面識ゼロなんですけど……」
「ルイよりはお前が適任だ」
果たして何をもって適任と言えるのか。
「お前はルイの能力を買っているようだが、私からすればお前の方がはるかに非凡な才を持っている」
「よく暴走癖があるって言われるし……」
「だろうな。暴走の結果、まさか婚約を結ぼうとは思わなかった」
ディミトリ氏とこれほど長い会話をしたのは初めてだった。内容がちょっと骨肉の争いめいたものだけれど。
「ベルナデットは殻に閉じこもっている。それは昔から変わらない。彼女の心を開くのは、ルイでは無理だ。昔から相性が悪かった」
「相性が悪くて、許婚として選んだんですか」
「ああ、そうだ」
何か問題でも、と実に事務的な言い方だ。
「相性で言えば君たちの方がよほど良いと見える」
「その件なんですけど、」
タイミングが悪すぎる。背後の扉からノックが聞こえ、夕食を告げる声がした。
「続きは夕食のときにでも」
「あまり楽しい話じゃないと思いますけど。悩み相談ですし」
「お前の思う楽しい話とは?」
「テストで百点取ったとか、褒めてほしいとか?」
「百点程度当然の点数だろう。そんなものが嬉しいのか?」
心底呆れたと顔に書いてある。嬉しいものは嬉しい。テストをルイに見せたときの目を細めた顔は、何度見たって幸せになれる。
「俺、ディミトリさんと話しているのも楽しいですよ」
「早く来い」
ディミトリ氏は少し早いフランス語で投げかけると、優雅とは言えない足取りでさっさと出ていってしまった。
何人かの客は彼女に釘付けになっていた。あれだけの美人だ。サングラスをかけていても目立ちすぎる。
「個室なんですか?」
「私ね、お茶をするのがとっても大好きなの。でも個室でないと嫌。たまには外でのんびりしたいわ」
「はあ…………」
「ほら、早く座って。何がいい?」
「ハーブティーと、何がおすすめですか?」
「うふ、なら私が好きなものを頼むわね。さっきたくさん踊ったし、お腹が空いちゃったわ」
大きなサングラスを外すと、これまた大きな目が現れる。
身近なフランス人といえばルイで、いかに彼がゆっくり丁寧に話してくれていたか身に染みる。時折フランス語で交じるナンナの質問に、答えるのがやっとだ。しかも早い。ルイに会いたい。ルイをここに連れてきたい。
ワゴンで運ばれたスイーツの数々に、俺は言葉を失った。タルトが食べたいと言っていた気がするが、量がまずおかしい。一口サイズのタルトが敷きつめられ、焼き菓子やメレンゲ菓子も並ぶ。マリー・アントワネットになった気分だ。
「南フランスはハーブも有名ですよね」
「ええ、そうよ。コーヒーも好きだけれど、お肌のことを考えるとハーブティーをよく飲むの。さあ、食べて。どれも美味しいわ」
「ありがとうございます。夕食もあるので、少し頂きます」
「少しだけ? 小食なのね」
あえて選んだのか、テーブルに並ぶスイーツは重みのあるものばかりだ。
タルトは甘く、バターがしっかりと利いている。砂糖の入れていないハーブティーと飲むとちょうどいい。
彼女はとにかく良く食べた。美味しい美味しいと言いながら、本当に美味しそうに食べるものだから、スイーツを作ったパティシエも感無量だろう。俺だったら泣いて喜ぶ。
「あなたは今、大学生かしら?」
「そうです。よく分かりましたね。今年で就職先を決めなきゃいけないんですけど、悩んでます」
「それなら、フランスにいらっしゃい。美味しいものもあるし風景もとっても素敵よ。フランス語の音も綺麗でしょう? 私、世界で一番美しい言語だと思うの」
「俺もフランス語は好きです。就職先は海外って手もあるのか」
「そうよ。私みたいにいろんな国を渡るのも楽しいわ」
「アルバイト先で就職も考えてるんです。考えておいてほしいって言われて。恵まれすぎてます」
「あなたは優秀なのね。羨ましいわ」
「優秀なんてものじゃないですよ。人手が足りないみたいで」
美味しくて、けれどもう一つタルトを食べたら夕食が入らない。なるべく軽そうなフィナンシェに手を伸ばした。
「けれど、あなたがいなくなったらフィアンセの方は悲しむわ」
「うーん……自信がないです。さっきも触れましたけど、人質みたいな関係性なので」
「あなたはとても優しくて気が利いて、とっても残酷なのね」
残酷と言われた。どういう意味だろう。
「優しくてハンサムで、隣を歩いていて誇らしくなるくらい。人を好きにさせる天才よ。本当よ? 今日初めて会ったのに、私はあなたを好きになったもの」
「光栄です。でも、残酷って、」
「人を好きにさせておいて、簡単に置いて去っていく。罪深い人」
ナンナは大きな目を伏せ、フランス語で何か呟いた。
「私は置いていかれるのは嫌よ。好きな人は側にいてほしい。なのに、私が好きな人はみんな私の元から離れていく。旦那も、息子たちも。成長と呼べるわね。でも私は、側にいてほしいの。理屈じゃないの」
「ナンナは、寂しがり屋なんですね」
「そうかしら? 私は私よ? みんな口に出さないだけで、実際はそう思っているでしょう?」
確かにそうだ。祖母が亡くなったときも、離れていく彼女を思い、悔しくて寂しくて何度も泣いた。
「あなたのフィアンセも、あなたが離れていくと知ったらきっと寂しがるわ。物分かりのいい良い子ちゃんだから、また会いましょうですんなり身を引くんでしょうけど。私はそんなの嫌よ。だからみんなが離れていく前に、私が離れるの。そうすれば、気は紛れるわ」
考え方が女王様だ。でも彼女の気持ちも分かる。俺が一人暮らしをずっと希望して都会に出たがったのは、今思うとこういう理由もあったからかもしれない。姉も結婚すれば離れていくし、子供もできればますます構ってもらえなくなる。
彼女に対し寂しがり屋と言ったが、人間のあるべき感情だ。
「お願いがあるの」
「はい、なんでしょう」
「シキのフィアンセが寂しいと言ったら、できるだけ側にいてあげて。遠くにいたら、すぐにでも近くに寄り添ってあげて。私にはできないから」
「分かりました。約束します。必ず力になります」
いつの間にか、残りはタルト一つだけだ。小さな身体に入る胃袋はどんな大きさなのだろう。
食べて下さいと告げると、遠慮なく美味しそうにかじりついた。チョコレートがふんだんに使われたタルトだ。
あっという間に皿が綺麗になり、俺はごちそうさまと手を合わせる。またもや新しいおもちゃを発見したと、ナンナも同じ仕草をしては、どんな意味があるのか、いつもするのか、など質問の波が押し寄せた。波を避けるより、サーファーになったつもりで受けた方が彼女との会話はうまくいく。
お茶代は彼女がカードで支払ってくれた。
「次は俺が払います」
「ええ、お願いね。あなたとはまた会えるから」
「また会える?」
「会えるわ。私の勘は当たるもの」
帰りはなぜかフロアを通らず、裏口から出た。外に出る前に彼女はまたもや大きなサングラスをかけ、鼻歌を歌いながら上機嫌にスキップをする。
「うふふ、今の私はね、とっても機嫌がいいの。天気もいいし、お菓子も食べたし、ハーブティーも美味しかったわ。だからあなたにキスしてあげる」
「え?」
ナンナは俺を抱きしめ、頬に軽く生暖かいものが触れる。
リップ音が聞こえ、どう反応していいのか分からず固まるしかった。
「あなたにお出迎えが来ているわ」
ナンナの視線の先には、SPが助手席から降りてくるところだった。
「またね、シキ。好きよ」
「あ、はい。俺もです」
「ふふ……残酷な人。でも好き」
別れ際に何度も好きだと連呼し、今度は反対側の頬にキスをしてくる。俺もしようかと思ったが、彼女がそれを望んでいるようではなかったので、止めておいた。男性が女性にするのは御法度のような気がした。
ハニーブロンドの髪が揺れ、甘い香水の香りが漂う。彼女もまた香水に強いこだわりがある。
「どちらでお知り合いに?」
「森の湖です」
「ああ……あそこで」
今までは日本語で話していたのに、今は英語でのやりとりだ。俺の腕を受け入れて話していると信じ、少しは自信を持っていいだろう。
ゆっくりとした運転で外の風景を楽しみつつ、ドルヴィエ家に戻ってきた。
「ディミトリ様は執務室です」
「分かりました」
一度部屋に戻り、荷物を取りにいってから執務室へ行き、扉をノックした。返事の後にドアノブに手をかけると、未だスーツ姿のまま資料を眺めているディミトリ氏がいた。
「こんにちは! 志樹です。チケットありがとうございました。今日からお世話になります」
「久しぶりだな。状況はどうだ?」
力のこもった渾身のフランス語に、さらっとフランス語で返ってきた。
「これ、お土産です。日本の空港で買ったものですけど」
「頂戴しよう。状況は?」
「ベルナデットさんのことは話しましたよね? 今は日本にいます」
「それで?」
「遺産ですけど、とりあえずブレスレットは見つけました。というより、持っている人から接触をしてきたんですけど」
「なんだと?」
「後で返してくれるそうです。いろいろ協力してほしいとは言われました」
「金はいくら必要だ?」
「いやいや、お金で動く組織じゃないですって! 国を守る警察です。遺産を持っている悪い組織を戦おうとしているんです」
「お前の次の任務は、ベルナデットと接触をすること。警察の取り調べは受けているだろうが、お前にしか話さないこともあるだろう」
「俺、彼女とほぼ面識ゼロなんですけど……」
「ルイよりはお前が適任だ」
果たして何をもって適任と言えるのか。
「お前はルイの能力を買っているようだが、私からすればお前の方がはるかに非凡な才を持っている」
「よく暴走癖があるって言われるし……」
「だろうな。暴走の結果、まさか婚約を結ぼうとは思わなかった」
ディミトリ氏とこれほど長い会話をしたのは初めてだった。内容がちょっと骨肉の争いめいたものだけれど。
「ベルナデットは殻に閉じこもっている。それは昔から変わらない。彼女の心を開くのは、ルイでは無理だ。昔から相性が悪かった」
「相性が悪くて、許婚として選んだんですか」
「ああ、そうだ」
何か問題でも、と実に事務的な言い方だ。
「相性で言えば君たちの方がよほど良いと見える」
「その件なんですけど、」
タイミングが悪すぎる。背後の扉からノックが聞こえ、夕食を告げる声がした。
「続きは夕食のときにでも」
「あまり楽しい話じゃないと思いますけど。悩み相談ですし」
「お前の思う楽しい話とは?」
「テストで百点取ったとか、褒めてほしいとか?」
「百点程度当然の点数だろう。そんなものが嬉しいのか?」
心底呆れたと顔に書いてある。嬉しいものは嬉しい。テストをルイに見せたときの目を細めた顔は、何度見たって幸せになれる。
「俺、ディミトリさんと話しているのも楽しいですよ」
「早く来い」
ディミトリ氏は少し早いフランス語で投げかけると、優雅とは言えない足取りでさっさと出ていってしまった。
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