【完結】能力が低いフリをして騎士団に入団してしまいました

ゆきりんご

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※笑いごと

 ノルからプロポーズをされたのは、付き合い始めてすぐのことだった。息が止まるくらい嬉しくて、涙が止まらなかった。でも大変だったのはそこからで、結婚にこぎつけるのは少し骨がおれた。互いの家に挨拶をするにも、僕の存在を認めていない両親のもとへ行くのには時間がかかった。兄さんに取り次いでもらうことでようやく話し合いの席が整ったのだ。男爵の位を与えられ、より忙しくなった兄さんに頼るのは気が引けたけど、兄さんは気にするな、と言って結局何から何まで兄さんに力を借りることになってしまった。兄さん自身は、仕事が忙しいからと、まだ結婚をしていないのに、僕に時間を割いてもらうのが本当に申し訳なかった。両親も後継ぎはまだかと少し焦っているようだった。

 家庭を持ったことで、僕たちは騎士団の寮を出て、王都に家を買った。お互いの実家に比べれば小さなものだけど、それでも十分立派な家だ。
 朝、目が覚めると、ノルの顔が目に飛び込む。

「おはよう、マティ」

ノルはそう言って、大切な宝物を包み込むような優しいハグをする。毎日のことだけれど、未だに慣れない。恥ずかしさで、顔が火照るのが分かる。

「今日も可愛いなあ、マティは」

言い終わるや否や、近かった顔がさらに近づき、その距離はゼロになる。

「んっ、は……」

口づけを交わしながら、ノルが僕の腰に手を回す。昨夜のことを思い出してしまい、厭らしい気分になってしまう。さらに、ノルは容赦なく舌を絡ませる。僕の口内を貪るようにした後、ようやく顔が離れる。でも、その目はぎらぎらとしていた。

「の、ノル、朝だからそろそろ……」

寮での生活の癖が抜けずまだ朝早いが、休みの今日だってやるべきことはあるのだ。

「まだ足りない」

そろそろやめさせようとしたが、不貞腐れたようにノルは答える。

「あと少しだけ。ほら、マティの少し勃ってるよ」

目をその部分にやると、恥ずかしながらノルの言う通りだった。

「こ、これは朝だから」

慌てて言い訳をする。

「昨夜、あんなに楽しんだのに?」

ノルが悪戯っぽく笑って言う。

「うっ、それは……」
「きついでしょ、出しなよ。擦るから」

するりと、下着の下にノルの手が侵入してくる。

「あっ、んんっ」

昨日、さんざん触れられていたそこは、いつもよりも敏感に反応してしまう。それなのに、ノルは執拗に良い部分を擦る。

「気持ちいい?」
「ん、すっごく……良い」

そう答えると、ノルの手は少し早くなる。でも、達するには少し刺激が足りなくて、もどかしい。あと少しなのに。

「ノル、もっと……」
「もっと、どうして欲しい?」

分かってるはずなのに、ノルはわざと聞いてくる。しかも弱い耳元で聞いてくるから、余計に性質が悪い。

「も、もっと強くっ……して」
「ああ、マティは可愛いくて厭らしいね。最高だよ」

ぴちゃぴちゃと、部屋に卑猥な音が響く。カーテンの隙間からさす朝の光を見ると、少しばかりの罪悪感が芽生える。

「イきそう?」
「うん、もう出ちゃっ……」
「出して」
「あぅっ、あぁ~っ」

そうして僕は、朝から果ててしまった。
あれからも何やかんやあり、やっとのことでノルから解放され、キッチンで朝ご飯の用意をしていると、ドタドタと音をたてて階段を下りてくる音が耳に入る。朝から元気だなあと思いながら、おはようと声をかける。

「おはよう、お母様! 聞いて、新しい魔法が使えるようになったんだ!」
「お母様、私だって!」

ルシアとサシャ。二人が勢いよく飛びついてくる。どちらも愛らしい僕たちの子供だ。

 魔法の研究が進んだ今でも、どうしてたって生物学的に子供をこの身に授かることはできない。それでも、と僕とノルで話し合った結果、孤児院から二人の子供を引き取った。僕のように、理不尽な扱いを受けた子供の心を少しでも癒す手伝いができたら、という思いもあった。最初は二人とも警戒心をむき出しにして、なついてくれるまでには少し時間がかかったけれど、今は普通に話してくれるようになった。ノルと二人で愛情を注いだ賜物だ。

「僕ね、大きくなったら魔導士になって、お母様とお父様みたいな立派な騎士団員になるんだよ!」
「ふふっ、それはいいね」

目をきらきらと輝かせながら、将来に思いを馳せる我が子を見ると、自然に笑みがこぼれる。

「知ってるか、ルシア」

そこに、ノルが加わる。

「マティは、騎士団に入団するための試験でわざと手を抜いていたんだよ」
「えー、そうなの?」
「ちょっとノル、そんな話しなくていいでしょ」

そういえば、そんなこともあったと、恥ずかしくなる。なんてことを子供に話してくれているんだ。

「本当なの、お母様」

ルシアが聞いてくる。全く、子供にだけは知られたくなかったのに。

「そんなこともあったね」

しぶしぶと答えると、ノルが笑い出す。つられて、ルシアとサシャもつられて笑い出す。僕も思わず苦笑いだ。朝のキッチンに笑いの輪が広がる。

 僕は、能力が低いフリをして騎士団に入団してしまった。そのことに心を悩ます時期もあった。それでも、団長さんも副団長さんも咎めることなく、僕の話を聞いてくれた。今となっては笑いごとだ。
 僕の大好きなノルと、愛する二人の子供。朝の優しい光がさすキッチンで、僕はこのうえない幸福に包まれていた。
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