愛する仙台娘

AAKI

文字の大きさ
4 / 6

Take3【十人十色】

しおりを挟む
 翌日、午前9時ごろに5人は青葉区にある自然公園へと集合した。

「おはよう。まこ」

「うん、おはよう。めぐ」

 少し遅れてきたまこがほとんど同時ぐらいに到着しためぐりに挨拶して、それにロングヘアーが揺れて答えた。

 先にきていたむつみ部長達への反応はというと。

「3人ともおはよう」

 めぐりがひとまとめに挨拶するぐらいで、まこなどさっさと公園の奥へと行こうとしていた。確かに女優2人はともに、むつみ達からお願いされて幽霊部員として所属しているだけだ。敬意など大して抱いていないのも仕方ない。

 むつみ達は大人の対応で、撮影をするため公園を進んでいく。ぞろぞろと歩いている間に、まこが疑問をぶつける。

「それにしてもさ、なんで青葉山公園なの? もっと良い観光場所はあるでしょ?」

 いくら山に登る予定――必要性はしらない――があると知っていても、誰もが感じる疑問だった。

「有名どころを宣伝するだけというのもな。それに、仙台の隅々まで知って貰いたいわけだ」

 むつみが答えた。

「それに、政宗公の石像がある時点で十分に仙台の名所ですよ」

 さらにみずやが答えた。

「四季折々の自然はキレイだしな」

 無骨な感じのもりやまでフォローした。

 色々と言い返されて、まこも少しタジタジといった様子。

「そりゃ、まぁ……。その、食べ物とか体験系の方が受けが良いと思ったのよ」

「フフッ。長く住んでると、やっぱり感じ方が違ってくるんだよね」

 めぐりが隣を歩きながらまこにフォローを入れて、皆で苦笑を浮かべつつ進んでいった。日曜日ということもあってそれなりに人気はあるが、部分的にはまこの言った通りといった具合だ。青葉城址あおばじょうしという仙台の中心でそれというのも寂しいものがあるが。

 それでも、そのまばらさは撮影向きと言えた。なので、ことは順調で予定通りに進む。

 初夏の公園を散歩するまことめぐりに、他は伊達政宗の石像の周りで他愛のない会話をして笑うだけの。それらぐらいだが、周囲に理解が得られないとなかなかに難しいのだ。

「カーットッ!」

 人目を引くかのようにむつみの声が響き、デートシーンの撮影が終わったことを知らせた。

 当然、まことめぐりのデートだ。傍から見れば、東京から引っ越してきた友達に仙台を案内している程度に見えるだろう。

「おつかれー」

「お疲れ様。って、まだこんな時間なんだ」

 一息入れたところで、まだ正午にも差し掛かっていないことに気づいためぐり。

「これから移動して鎌倉山に登るから。あー、服装大丈夫かな?」

 みずやが答えるも、不意に気づいてしまいむつみ達へ確認をとった。観光向きの山とは言え、標高はそれなりにあるため軽装では不安だったのだ。

「うーん、早い目の判断をしていくとしよう。高くは登らないし、無理そうなら撮影を諦めるのも致し方ない」

「一応、天気が急に変わったときのために雨合羽は人数分用意してきたぞ」

 むつみは部長として安全を優先した判断を下す。副部長のもりやは、少し不満を露わにしながらも完全に否定はしなかった。

 話はそこで一旦終わり5人は移動を始め、一時間もしないうちに鎌倉山の側へとやってくる。見る方向によって動物のゴリラの顔に似ていることで有名だ。撮影に選んだのもそんなインパクトがあってのことである。

 説明を聞いためぐりの反応はというと。

「そんなにゴリラに見える?」

 である。

「えーと、あの辺りが鼻で……」

「そう……」

 純粋に問われると、皆は「多分」くらいにしか答えられなかった。まこの説明を聞いて、人の持つ想像力とは無限大だということを知っためぐりだった。

 多分、そんなことを気にするのは近隣に住んでいる者たちぐらいだろう。

 さておき、名物の撮影も兼ねて牛タンなど食べて腹ごしらえをした後、5人は山登りへと挑むのだった。東京住まいが長いめぐりとしては、初めてとも言える経験だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...