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Take3【十人十色】
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翌日、午前9時ごろに5人は青葉区にある自然公園へと集合した。
「おはよう。まこ」
「うん、おはよう。めぐ」
少し遅れてきたまこがほとんど同時ぐらいに到着しためぐりに挨拶して、それにロングヘアーが揺れて答えた。
先にきていたむつみ部長達への反応はというと。
「3人ともおはよう」
めぐりがひとまとめに挨拶するぐらいで、まこなどさっさと公園の奥へと行こうとしていた。確かに女優2人はともに、むつみ達からお願いされて幽霊部員として所属しているだけだ。敬意など大して抱いていないのも仕方ない。
むつみ達は大人の対応で、撮影をするため公園を進んでいく。ぞろぞろと歩いている間に、まこが疑問をぶつける。
「それにしてもさ、なんで青葉山公園なの? もっと良い観光場所はあるでしょ?」
いくら山に登る予定――必要性はしらない――があると知っていても、誰もが感じる疑問だった。
「有名どころを宣伝するだけというのもな。それに、仙台の隅々まで知って貰いたいわけだ」
むつみが答えた。
「それに、政宗公の石像がある時点で十分に仙台の名所ですよ」
さらにみずやが答えた。
「四季折々の自然はキレイだしな」
無骨な感じのもりやまでフォローした。
色々と言い返されて、まこも少しタジタジといった様子。
「そりゃ、まぁ……。その、食べ物とか体験系の方が受けが良いと思ったのよ」
「フフッ。長く住んでると、やっぱり感じ方が違ってくるんだよね」
めぐりが隣を歩きながらまこにフォローを入れて、皆で苦笑を浮かべつつ進んでいった。日曜日ということもあってそれなりに人気はあるが、部分的にはまこの言った通りといった具合だ。青葉城址という仙台の中心でそれというのも寂しいものがあるが。
それでも、そのまばらさは撮影向きと言えた。なので、ことは順調で予定通りに進む。
初夏の公園を散歩するまことめぐりに、他は伊達政宗の石像の周りで他愛のない会話をして笑うだけの画。それらぐらいだが、周囲に理解が得られないとなかなかに難しいのだ。
「カーットッ!」
人目を引くかのようにむつみの声が響き、デートシーンの撮影が終わったことを知らせた。
当然、まことめぐりのデートだ。傍から見れば、東京から引っ越してきた友達に仙台を案内している程度に見えるだろう。
「おつかれー」
「お疲れ様。って、まだこんな時間なんだ」
一息入れたところで、まだ正午にも差し掛かっていないことに気づいためぐり。
「これから移動して鎌倉山に登るから。あー、服装大丈夫かな?」
みずやが答えるも、不意に気づいてしまいむつみ達へ確認をとった。観光向きの山とは言え、標高はそれなりにあるため軽装では不安だったのだ。
「うーん、早い目の判断をしていくとしよう。高くは登らないし、無理そうなら撮影を諦めるのも致し方ない」
「一応、天気が急に変わったときのために雨合羽は人数分用意してきたぞ」
むつみは部長として安全を優先した判断を下す。副部長のもりやは、少し不満を露わにしながらも完全に否定はしなかった。
話はそこで一旦終わり5人は移動を始め、一時間もしないうちに鎌倉山の側へとやってくる。見る方向によって動物のゴリラの顔に似ていることで有名だ。撮影に選んだのもそんなインパクトがあってのことである。
説明を聞いためぐりの反応はというと。
「そんなにゴリラに見える?」
である。
「えーと、あの辺りが鼻で……」
「そう……」
純粋に問われると、皆は「多分」くらいにしか答えられなかった。まこの説明を聞いて、人の持つ想像力とは無限大だということを知っためぐりだった。
多分、そんなことを気にするのは近隣に住んでいる者たちぐらいだろう。
さておき、名物の撮影も兼ねて牛タンなど食べて腹ごしらえをした後、5人は山登りへと挑むのだった。東京住まいが長いめぐりとしては、初めてとも言える経験だった。
「おはよう。まこ」
「うん、おはよう。めぐ」
少し遅れてきたまこがほとんど同時ぐらいに到着しためぐりに挨拶して、それにロングヘアーが揺れて答えた。
先にきていたむつみ部長達への反応はというと。
「3人ともおはよう」
めぐりがひとまとめに挨拶するぐらいで、まこなどさっさと公園の奥へと行こうとしていた。確かに女優2人はともに、むつみ達からお願いされて幽霊部員として所属しているだけだ。敬意など大して抱いていないのも仕方ない。
むつみ達は大人の対応で、撮影をするため公園を進んでいく。ぞろぞろと歩いている間に、まこが疑問をぶつける。
「それにしてもさ、なんで青葉山公園なの? もっと良い観光場所はあるでしょ?」
いくら山に登る予定――必要性はしらない――があると知っていても、誰もが感じる疑問だった。
「有名どころを宣伝するだけというのもな。それに、仙台の隅々まで知って貰いたいわけだ」
むつみが答えた。
「それに、政宗公の石像がある時点で十分に仙台の名所ですよ」
さらにみずやが答えた。
「四季折々の自然はキレイだしな」
無骨な感じのもりやまでフォローした。
色々と言い返されて、まこも少しタジタジといった様子。
「そりゃ、まぁ……。その、食べ物とか体験系の方が受けが良いと思ったのよ」
「フフッ。長く住んでると、やっぱり感じ方が違ってくるんだよね」
めぐりが隣を歩きながらまこにフォローを入れて、皆で苦笑を浮かべつつ進んでいった。日曜日ということもあってそれなりに人気はあるが、部分的にはまこの言った通りといった具合だ。青葉城址という仙台の中心でそれというのも寂しいものがあるが。
それでも、そのまばらさは撮影向きと言えた。なので、ことは順調で予定通りに進む。
初夏の公園を散歩するまことめぐりに、他は伊達政宗の石像の周りで他愛のない会話をして笑うだけの画。それらぐらいだが、周囲に理解が得られないとなかなかに難しいのだ。
「カーットッ!」
人目を引くかのようにむつみの声が響き、デートシーンの撮影が終わったことを知らせた。
当然、まことめぐりのデートだ。傍から見れば、東京から引っ越してきた友達に仙台を案内している程度に見えるだろう。
「おつかれー」
「お疲れ様。って、まだこんな時間なんだ」
一息入れたところで、まだ正午にも差し掛かっていないことに気づいためぐり。
「これから移動して鎌倉山に登るから。あー、服装大丈夫かな?」
みずやが答えるも、不意に気づいてしまいむつみ達へ確認をとった。観光向きの山とは言え、標高はそれなりにあるため軽装では不安だったのだ。
「うーん、早い目の判断をしていくとしよう。高くは登らないし、無理そうなら撮影を諦めるのも致し方ない」
「一応、天気が急に変わったときのために雨合羽は人数分用意してきたぞ」
むつみは部長として安全を優先した判断を下す。副部長のもりやは、少し不満を露わにしながらも完全に否定はしなかった。
話はそこで一旦終わり5人は移動を始め、一時間もしないうちに鎌倉山の側へとやってくる。見る方向によって動物のゴリラの顔に似ていることで有名だ。撮影に選んだのもそんなインパクトがあってのことである。
説明を聞いためぐりの反応はというと。
「そんなにゴリラに見える?」
である。
「えーと、あの辺りが鼻で……」
「そう……」
純粋に問われると、皆は「多分」くらいにしか答えられなかった。まこの説明を聞いて、人の持つ想像力とは無限大だということを知っためぐりだった。
多分、そんなことを気にするのは近隣に住んでいる者たちぐらいだろう。
さておき、名物の撮影も兼ねて牛タンなど食べて腹ごしらえをした後、5人は山登りへと挑むのだった。東京住まいが長いめぐりとしては、初めてとも言える経験だった。
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