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Take4【青息吐息】
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「ふぅ、ふぅ……」
「めぐ大丈夫ー? ねぇ、少し休もうよ~」
当然、数百メートルの山とて頂上を目指せば疲労する。まこも山登りに慣れているというわけでもないため、めぐりを気遣いつつ何度目かの休憩を言い出した。
男達3人にとっては、それなりではあるがもう少し減らしても問題ないという具合だろう。
「仕方ないか」
「しかし、これだと天気が崩れる前に撮影が終わらないぞ」
仙台の中心を見通せるところで撮影したかったが、女優達が力尽きては元も子もない。むつみは諦めて休憩を飲んだ。
しかし、もりやの言う通り時間も差し迫っているのだって確かだ。
そこで、一声を発したのはみずやである。
「すみませんが、カメラの調子が良くないようなので」
「は?」
とんでもない発言に、まこがいの一番で反応した。
流石に大事件ということもないので、直ぐにみずやが訂正を入れる。
「少し接触が悪い程度です。どうしても画に異常があるようなら、編集でなんとかしますんで」
「そうか。大丈夫そうなら良いが」
「本当に大丈夫なの?」
むつみとまことの温度差はこの通りである。少なくとも、むつみは部員達の実力を信用していた。まこやめぐりは女優であって、編集などに携わることがないので仕方ないのかもしれないが。
しかし、問題は重なるもので、畳み掛けてくる。
「あッ」
疲れの所為で、めぐりの震える足は岩の地面を踏み外した。傾いていく体をなんとか支えるも、力強く踏み込んだ細足はその勢いに絶えられなかった。
小さな段差だったのが幸いである。
「ッッ!」
悲鳴と苦悶の間の声がめぐりの喉からもれた。捻挫だ。
「めぐッ! だ、大丈夫ッ!?」
まこが慌てて駆け寄るも、その様子は到底大丈夫などと言える様子ではなかった。
「おいおい、後もう少しだっていうのに。折れてはなさそうだけどよ」
「ふむ。素人判断で山登りさせるのはできかねるな」
呆れるもりやの声を遮るように、むつみが即決で断念の判断をした。既に、時間的に間に合わないということを悟っていたからだった。
決断に合わせて、ポツリ、ポツリと空から落ちる雫が石畳を濡らす。
「雨……」
みずやが、いつの間にか灰色に染まっていた空を見上げて呟いた。呆けてはいられず、直ぐにリュックから取り出したビニールカバーでカメラを包み始めた。もりやもそれに続く。
合わせて安物の雨合羽を取り出し皆に配っていく。
「歩けるか? 無理そうか」
むつみはこれからのことを思案しつつ、めぐりに容態を確認するも首を横に振るのを見て断念した。
「仕方ない。麓に下りて医者を呼んでこよう」
むつみの思考は間違っていない。
「背負ってじゃ駄目?」
そうやってまこが心配するも、天気の変化が早すぎてむつみも首を横に振るしかなかった。
「足元が滑るから、人を背負って下山するのは危ない。俺達の装備なんて、ちょっとハイキングに来る程度の代物だからな」
「そうだな。とりあえず、部長と笹香で下りてくれ。俺達は機材を見てなくちゃいけないからな」
むつみは安全に下山する手段を模索し、もりやは副部長としての任を務めようとした。しかし、それを否定、拒否する者もいる。
「ヤダ。私が残るわ」
「私も、まこが……」
「めぐ……」
示し合せたようにも思えるが、ただただ本心から二人で残りたいと思っているのだ。
まこは単純に好いているだけだろう。めぐりは、男性に少しばかりの嫌悪を抱いている所為か。
「しかし……いや、仕方ないか」
無理に自身の案を推し進めてもめぐりを混乱させるだけと考え、むつみはまことめぐりの願いを飲んだ。
「じゃあ、荷物を頼んだ。できるだけ身軽な方が良いしな」
「大事な機材なので、どうか」「さっさと行きなさいって!」
もりやとみずやがもたもたとカメラなどを預けていると、まこが急かした。めぐりの容態が少し悪いことに気づいたからである。
「ほら、急がないと足がッ」
腫れているなどの症状は見られないまでもかなり痛みを感じている様子で、まこは不安を押し殺して3人の背中を押した。
そのため、むつみ達も滑らない程度に急いで下山していく。
「大丈夫だから。直ぐ、お医者さんがくるからさ」
そうやってめぐりを励まして30分ほど経ったが、さらに状況は悪くなっていく。
まずは、空が時折光りゴロゴロと大きな音を立て始める。続いて、強くなり始めた雨で疲労した体が冷やされためぐりの呼吸が荒くなっていく。
次の瞬間、稲光が瞬き轟音が頭上で鳴り響いた。
「きゃぁッ!」
「めぐッ!」
弱っていても、唐突に破裂する雷には悲鳴を抑えられなかったようだ。なんとか平気なまこは寄り添うも、めぐりの震えを止めることはできなかった。
痛みか、寒さか、恐怖か。
いつどこに雷が落ちるかもわからず、さらには――僅かな知識で――低体温症の恐れも考えておかなければならない。時間がないと思ったまこは、むつみ達が戻ってくるのを諦める。
「よし……めぐ、私の肩を掴んで。マイクはお願い」
カメラを掴み、もう片方の腕でめぐりを支え、覚悟を決めたまこは下山を開始した。
「めぐ大丈夫ー? ねぇ、少し休もうよ~」
当然、数百メートルの山とて頂上を目指せば疲労する。まこも山登りに慣れているというわけでもないため、めぐりを気遣いつつ何度目かの休憩を言い出した。
男達3人にとっては、それなりではあるがもう少し減らしても問題ないという具合だろう。
「仕方ないか」
「しかし、これだと天気が崩れる前に撮影が終わらないぞ」
仙台の中心を見通せるところで撮影したかったが、女優達が力尽きては元も子もない。むつみは諦めて休憩を飲んだ。
しかし、もりやの言う通り時間も差し迫っているのだって確かだ。
そこで、一声を発したのはみずやである。
「すみませんが、カメラの調子が良くないようなので」
「は?」
とんでもない発言に、まこがいの一番で反応した。
流石に大事件ということもないので、直ぐにみずやが訂正を入れる。
「少し接触が悪い程度です。どうしても画に異常があるようなら、編集でなんとかしますんで」
「そうか。大丈夫そうなら良いが」
「本当に大丈夫なの?」
むつみとまことの温度差はこの通りである。少なくとも、むつみは部員達の実力を信用していた。まこやめぐりは女優であって、編集などに携わることがないので仕方ないのかもしれないが。
しかし、問題は重なるもので、畳み掛けてくる。
「あッ」
疲れの所為で、めぐりの震える足は岩の地面を踏み外した。傾いていく体をなんとか支えるも、力強く踏み込んだ細足はその勢いに絶えられなかった。
小さな段差だったのが幸いである。
「ッッ!」
悲鳴と苦悶の間の声がめぐりの喉からもれた。捻挫だ。
「めぐッ! だ、大丈夫ッ!?」
まこが慌てて駆け寄るも、その様子は到底大丈夫などと言える様子ではなかった。
「おいおい、後もう少しだっていうのに。折れてはなさそうだけどよ」
「ふむ。素人判断で山登りさせるのはできかねるな」
呆れるもりやの声を遮るように、むつみが即決で断念の判断をした。既に、時間的に間に合わないということを悟っていたからだった。
決断に合わせて、ポツリ、ポツリと空から落ちる雫が石畳を濡らす。
「雨……」
みずやが、いつの間にか灰色に染まっていた空を見上げて呟いた。呆けてはいられず、直ぐにリュックから取り出したビニールカバーでカメラを包み始めた。もりやもそれに続く。
合わせて安物の雨合羽を取り出し皆に配っていく。
「歩けるか? 無理そうか」
むつみはこれからのことを思案しつつ、めぐりに容態を確認するも首を横に振るのを見て断念した。
「仕方ない。麓に下りて医者を呼んでこよう」
むつみの思考は間違っていない。
「背負ってじゃ駄目?」
そうやってまこが心配するも、天気の変化が早すぎてむつみも首を横に振るしかなかった。
「足元が滑るから、人を背負って下山するのは危ない。俺達の装備なんて、ちょっとハイキングに来る程度の代物だからな」
「そうだな。とりあえず、部長と笹香で下りてくれ。俺達は機材を見てなくちゃいけないからな」
むつみは安全に下山する手段を模索し、もりやは副部長としての任を務めようとした。しかし、それを否定、拒否する者もいる。
「ヤダ。私が残るわ」
「私も、まこが……」
「めぐ……」
示し合せたようにも思えるが、ただただ本心から二人で残りたいと思っているのだ。
まこは単純に好いているだけだろう。めぐりは、男性に少しばかりの嫌悪を抱いている所為か。
「しかし……いや、仕方ないか」
無理に自身の案を推し進めてもめぐりを混乱させるだけと考え、むつみはまことめぐりの願いを飲んだ。
「じゃあ、荷物を頼んだ。できるだけ身軽な方が良いしな」
「大事な機材なので、どうか」「さっさと行きなさいって!」
もりやとみずやがもたもたとカメラなどを預けていると、まこが急かした。めぐりの容態が少し悪いことに気づいたからである。
「ほら、急がないと足がッ」
腫れているなどの症状は見られないまでもかなり痛みを感じている様子で、まこは不安を押し殺して3人の背中を押した。
そのため、むつみ達も滑らない程度に急いで下山していく。
「大丈夫だから。直ぐ、お医者さんがくるからさ」
そうやってめぐりを励まして30分ほど経ったが、さらに状況は悪くなっていく。
まずは、空が時折光りゴロゴロと大きな音を立て始める。続いて、強くなり始めた雨で疲労した体が冷やされためぐりの呼吸が荒くなっていく。
次の瞬間、稲光が瞬き轟音が頭上で鳴り響いた。
「きゃぁッ!」
「めぐッ!」
弱っていても、唐突に破裂する雷には悲鳴を抑えられなかったようだ。なんとか平気なまこは寄り添うも、めぐりの震えを止めることはできなかった。
痛みか、寒さか、恐怖か。
いつどこに雷が落ちるかもわからず、さらには――僅かな知識で――低体温症の恐れも考えておかなければならない。時間がないと思ったまこは、むつみ達が戻ってくるのを諦める。
「よし……めぐ、私の肩を掴んで。マイクはお願い」
カメラを掴み、もう片方の腕でめぐりを支え、覚悟を決めたまこは下山を開始した。
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