幻想球 ~ユニーク・スキルは一国守護の要です~

AAKI

文字の大きさ
19 / 31
レイド・ダンジョン編

2-4

しおりを挟む
 少しばかり私が迷子になってしまったわけだけど、少ししてグレイザさんに見つけて貰った。

「ハァ、ハァ……。たす、かった……」

 色々と駆け回った後で、無事に合流することが出来て安堵する。

 べ、別に、心細かったわけじゃないし! 最悪、"クランチャット・インク"で場所を伝えれば良かったわけだからね!

 強がってみたところで、次に飛び出してくるであろう「本当に、何をやってるんだ」ぐらいのセリフを覚悟する。

「問題なさそうでよかった」

「は?」

 しかし、飛び出してきたセリフは意外なものだった。私はまたしても拍子抜けしてしまった。

 当然、グレイザさんは訝しげな表情をする。

「なんだ……?」

「いえ、こういうとき貴方の方が、気をつけろって目尻を上げて怒るところかと。角だして鬼の形相で、ほら」

「ほら、じゃねぇっ。お前なぁ、俺を何だと思ってるんだ?」

 質問に答えるも、なんだかお気に召さない様子だ。

 何って聞かれても……。もしかして、思いの外評価が低いことを気にしているの?

「えーと、ブラックな会社の御曹司プリンス?」

 もっと良さそうな名称を考えたところで、思いついたのはグレイザさんの異名だ。ちょっと上手くない? ねぇ、上手いでしょ?

 これならグレイザさんも満足してくださると思って、少しばかりドヤってみた。

 しかし、これもお気に召さなかったらしい。

「あのなぁぁぁぁ!」

 私の両頬が抓まれ、モッチモチと両側に引き逃された。

フワワッうわわっナヒッ何ッ? ホホハヒギレフ頬がちぎれる!」

「俺を不当に貶めるのはこの口かぁッ?」

 私の珠のような顔になんてことしてくれるの!

 いえ、私が悪かったです。ごめんなさい……。

「ゴ、ゴヘンッテごめんって!」

「ったく。はぁ……」

 私も素直に謝って、なんとか許してもらおうとした。グレイザさんも言うほど怒っていないようで、頬から手を離してくれた。

 小さなため息だが、とても悲しそうな響きがあった。

 うッ、流石に傷つけたかしら?

 流石の私も言い過ぎたと反省した。

「お前からは目が離せそうにないな……」

「あ、あれは事故でっ……あぁ、もう良いです!」

 これ以上は喧嘩しても始まらないため、私は引き下がることにした。こういうのは大人な対応をした方が勝ちなのよ。

 なんだか、冷ややかな視線がある気がするけど気にせいよね?

「とりあえず、ゆっくりもしていられないから冒険者の店に行くぞ」

「あ、そうでしたね」

 グレイザさんも口論は止め、要件を終わらせにいくため移動を始めた。

 どう言い繕ったところで、私もAGIは1しかなくて遅いのだ。もたもたしていてもセルシュさん達を待たせてしまうことになる。

 さっさと必要な手続きを終わらせるべく冒険者の店へとやってくる。

「ふーん、ここはなんとなく雰囲気が違うんですね」

 その間も私は、グレイザさんの側について周囲に気を配っておいた。

 口にした通り、冒険者の店と言っても町や村によって違いが出てくるのよ。まぁ、大抵は古臭い木造の酒場みたいな感じね。なんというか、中世中後期の宿屋とかにありそうな芸のないアレ。

 建造物の見た目で優劣をつけるつもりはないけれど、色々と趣向は凝らして良いと思うの。

「大抵はイメージの伝わりやすさを重視するからな」

 グレイザさんの言った通り、既存のファンタジーゲームに似通うのは仕方ない話。

 ここのように、アクアリウムを模した作りにするなんてそうそうないわよね。ブロックの波止場の下を空洞にして、お店を地下に置くなんてとんでもない建築だわ。

 ガラス張りの壁も、良い素材を使ってるようね。

「うん? 今、"マーメイド"が泳いでいった気がしたんだが?」

 私の見ていなかったところで、グレイザさんが何かを目撃したらしい。モンスターが人間を見てて襲ってこないなんて馬鹿なことがあるわけない。

 良くて"召喚術者サモナー・メイジ"が呼び出した魔物ぐらいね。

「どうしたんです? 何もいないじゃないですか」

「では、これで手続き終了ですね。ご健闘を祈っております」

 ほら、受付の人も何ら反応しない。

「いやいや! あんたも絶対見ただろ!? ってNPCかよ!」

 自分の味方がいなくて、グレイザさんは悔しいみたい。NPCは流石に、常識外の反応はしてくれないものね。

 とりあえず、依頼の内容や受注者のサイン、他注意事項が書かれたA4用紙を授受し合ったのでオッケー。ソロで活動しているプレイヤーを覗けば、続々と依頼を受けて店を出ていく。急がないと。

「さぁ、出遅れないように」

 ハプニングはあれどもこうして無事に用事を終えたのだから、グレイザさんを急かして港へと向かった。

 まだ納得していない様子だったけど、切り替えが早いのはもしかしたら似た者同士なのかも。

 街への入り口から伸びた大通りから、冒険者の店少し手前で三叉路となる。『山』型の道の北――西を向いて移動しているので右の一辺――を進む。

 まだまだ見るべき観光地があるのだろうけど、今は余所見はしていられない。

「みんなー!」

「あ、きたぞ」

「おーい」

「こっちよー!」

 私が呼びかければ、声に気づいて初心者で後輩の3人が気づいてくれた。上手く船を借りられたようね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

処理中です...