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レイド・ダンジョン編
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なんとか港から客船へと乗り込んだ。各国の船がずらりと並ぶのは壮観で、ドックの中には軍艦もあると見ていいわね。観光船も面白そう。
港町という目新しさに、ここまで来ても目移りしてしまう。
「お兄さん、遅かったようだけど何かあったの?」
「いや、少し道に迷っていただけだ」
船尾から水平線に向いていた視線をマストの方へとやれば、兄弟で話していた。2人の目がこちらを見た気がするけど、気のせいよ気のせい。
当然、問題はそれ以上起きずに目的の場所へとたどり着いた。
それは王国のある大陸から南下した海に並ぶ各島々、これがプリキュバー諸島共和国である。
「おー、あれが噂の力場ですか。ホント、一列に囲う感じになってますね」
指定の船着き場へと回り込む間に、私は遠目に見えるダンジョンを見て感想を述べた。
ほんのりと黄色っぽく光っているのが見えるだけなので、それ以上のものは出てこない。
ダンジョンって感じではないかもしれないけど、一応は限定された範囲を攻略するという意味ではそれに当たる。大自然の要害に阻まれた島国は、天然のダンジョンと言って差し支えはない。
「"ジャンゴド密林"から"キラヴェア山"に向けてか。あまりプレイヤーも踏み入らない場所だな」
「そうそう。遠い割に時給が安いので狩場に適さないんですよね。広いというのも原因ですか」
一時間あたり獲得経験点が低いので、結構皆してウンウンって頷いてくれた。
「そろそろおしゃべりは終わりだね。共和国と王国で依頼を受けたメンバーも来てるし、降りたら直ぐに進入するよ」
駄弁っていたらセルシュさんから声が掛かった。
船着き場の浜を見やれば、いくつもの船とプレイヤーの姿が見える。なんとなく見覚えのある顔もあるので、多分彼らのことだろう。
あ、ほとんど会話ぐらいでお付き合いもないから紹介はできないわ。
下船の準備をしている間に舟寄せが終わり、桟橋に降り立ったかと思えば直ぐに渡りきった先の砂浜へと足を踏み入れる。熱々の砂をブーツ越しに感じ、これが海水浴とかバカンスならどれほど良かっただろうなんて思ったわ。
その考えは、ワイワイとハイキング気分で密林へと入ったところで実感として湧き上がることとなった。
「……5本足以上は生物じゃない」
そうボソッと呟いた辺りで、私の意識は飛びかけていたわ。なぜなら、この森は至るところに奴らがいたのだから……ガッデム!
というか、森に入って少ししたところから記憶がないから思考回路ショートしてたんでしょうね。だから、約三十分後に皆から聞いた話を総合したものになるのであしからず。
「【賦活陣形】! チームSは突破しろ!」
続々と虫、蟲、インセクトの襲撃が開始され、グレイザさんの太刀を振り正面に構えると戦闘スキルを展開した。
将軍神官の指揮は、陣形によってステータスを平均化してさらに一定割合の強化を施せる。ある程度のレベルになると、さらに対象を任意に選択できるのだとか。
要は、今はモンスターの群れを突破しなければならないセルシュさんのチームに限定して指揮しているわけ。
「【格闘自砲】!」
その『ホワイト・デューク』は白い手甲を、襲いくる巨大な蛾に叩き込んだ。放出される戦闘スキルは、格闘と同時に自動的に銃撃を行うもの。ただただ拳や脚甲での蹴りを繰り出しているだけで、打撃と射撃で殲滅していけるのだから強い。
一匹倒せばまた一匹湧き、鎌首をもたげて立ちはだかった巨大百足が素早くも正確な鋭い噛みつきを繰り出す。
セルシュさんは無駄だと言わんばかりに避けることなく、キックの2連撃をもって迎え撃つ。
「ハァッ!」
脚甲に仕込まれた爆薬が分厚い頭部と、外殻を打ち抜きそして砕いて地面に沈めた。
もはや、戦車が敵兵を蹂躙していく勢いでモンスターの壁に穴を開けて突き進んでいく。
どうやら探し人を連れて行く必要があり、そのため広いジャングルを探索しなければならなくなったらしい。そこで、12人ずつに別れて進むことにした。
「引きつけつつ第2ルートへ後退! 【釣逃】! 【防御陣形】!」
セルシュさんのチームが予定のルートに入ったところで、グレイザさんの指示で敵を引き寄せるように後退を開始した。
バラバラのように見せて挑発し、防御に特化した並びでダメージを受けながらも別の道へと誘導する。
当然、意識がほとんどなくて動きの遅れた私が敵に狙われるのはありえること。
「メリー! クッ!」
グレイザさんが走った。
珍しく名前を呼んだとか、そういうのは周囲の人達による単なる気のせいだと思う。
そんな事よりも、人間大になったゴキ……漆黒の地球外生命体だなんて見たくない! いくら某ネバーランドな海賊っぽいマスコットにデフォルメ化していてもトラウマになるわよ?
きっと、咄嗟のことで動けないと思ってくれたんだろうけどね。
「【雷走】!」
光の速さというのは過言ながら、高速で疾走して私とモンスターの間に割り込んだ。身体強化の戦闘スキルの一つで、珍しくもないけれどグレイザさんが使えば意味は違ってくる。
港町という目新しさに、ここまで来ても目移りしてしまう。
「お兄さん、遅かったようだけど何かあったの?」
「いや、少し道に迷っていただけだ」
船尾から水平線に向いていた視線をマストの方へとやれば、兄弟で話していた。2人の目がこちらを見た気がするけど、気のせいよ気のせい。
当然、問題はそれ以上起きずに目的の場所へとたどり着いた。
それは王国のある大陸から南下した海に並ぶ各島々、これがプリキュバー諸島共和国である。
「おー、あれが噂の力場ですか。ホント、一列に囲う感じになってますね」
指定の船着き場へと回り込む間に、私は遠目に見えるダンジョンを見て感想を述べた。
ほんのりと黄色っぽく光っているのが見えるだけなので、それ以上のものは出てこない。
ダンジョンって感じではないかもしれないけど、一応は限定された範囲を攻略するという意味ではそれに当たる。大自然の要害に阻まれた島国は、天然のダンジョンと言って差し支えはない。
「"ジャンゴド密林"から"キラヴェア山"に向けてか。あまりプレイヤーも踏み入らない場所だな」
「そうそう。遠い割に時給が安いので狩場に適さないんですよね。広いというのも原因ですか」
一時間あたり獲得経験点が低いので、結構皆してウンウンって頷いてくれた。
「そろそろおしゃべりは終わりだね。共和国と王国で依頼を受けたメンバーも来てるし、降りたら直ぐに進入するよ」
駄弁っていたらセルシュさんから声が掛かった。
船着き場の浜を見やれば、いくつもの船とプレイヤーの姿が見える。なんとなく見覚えのある顔もあるので、多分彼らのことだろう。
あ、ほとんど会話ぐらいでお付き合いもないから紹介はできないわ。
下船の準備をしている間に舟寄せが終わり、桟橋に降り立ったかと思えば直ぐに渡りきった先の砂浜へと足を踏み入れる。熱々の砂をブーツ越しに感じ、これが海水浴とかバカンスならどれほど良かっただろうなんて思ったわ。
その考えは、ワイワイとハイキング気分で密林へと入ったところで実感として湧き上がることとなった。
「……5本足以上は生物じゃない」
そうボソッと呟いた辺りで、私の意識は飛びかけていたわ。なぜなら、この森は至るところに奴らがいたのだから……ガッデム!
というか、森に入って少ししたところから記憶がないから思考回路ショートしてたんでしょうね。だから、約三十分後に皆から聞いた話を総合したものになるのであしからず。
「【賦活陣形】! チームSは突破しろ!」
続々と虫、蟲、インセクトの襲撃が開始され、グレイザさんの太刀を振り正面に構えると戦闘スキルを展開した。
将軍神官の指揮は、陣形によってステータスを平均化してさらに一定割合の強化を施せる。ある程度のレベルになると、さらに対象を任意に選択できるのだとか。
要は、今はモンスターの群れを突破しなければならないセルシュさんのチームに限定して指揮しているわけ。
「【格闘自砲】!」
その『ホワイト・デューク』は白い手甲を、襲いくる巨大な蛾に叩き込んだ。放出される戦闘スキルは、格闘と同時に自動的に銃撃を行うもの。ただただ拳や脚甲での蹴りを繰り出しているだけで、打撃と射撃で殲滅していけるのだから強い。
一匹倒せばまた一匹湧き、鎌首をもたげて立ちはだかった巨大百足が素早くも正確な鋭い噛みつきを繰り出す。
セルシュさんは無駄だと言わんばかりに避けることなく、キックの2連撃をもって迎え撃つ。
「ハァッ!」
脚甲に仕込まれた爆薬が分厚い頭部と、外殻を打ち抜きそして砕いて地面に沈めた。
もはや、戦車が敵兵を蹂躙していく勢いでモンスターの壁に穴を開けて突き進んでいく。
どうやら探し人を連れて行く必要があり、そのため広いジャングルを探索しなければならなくなったらしい。そこで、12人ずつに別れて進むことにした。
「引きつけつつ第2ルートへ後退! 【釣逃】! 【防御陣形】!」
セルシュさんのチームが予定のルートに入ったところで、グレイザさんの指示で敵を引き寄せるように後退を開始した。
バラバラのように見せて挑発し、防御に特化した並びでダメージを受けながらも別の道へと誘導する。
当然、意識がほとんどなくて動きの遅れた私が敵に狙われるのはありえること。
「メリー! クッ!」
グレイザさんが走った。
珍しく名前を呼んだとか、そういうのは周囲の人達による単なる気のせいだと思う。
そんな事よりも、人間大になったゴキ……漆黒の地球外生命体だなんて見たくない! いくら某ネバーランドな海賊っぽいマスコットにデフォルメ化していてもトラウマになるわよ?
きっと、咄嗟のことで動けないと思ってくれたんだろうけどね。
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