モンスターバスター in 大江戸

はなぶさ 源ちゃん

文字の大きさ
25 / 47
シルクロード編

2 ヘタレその1

しおりを挟む
 僕たちの前に現れていた観音様は『地上に下ろした分身』なのだそうで、霊力(法力?)が持つ一定時間しか地上に出てこれないらしい。

 中国を含めた『三千世界』を救うために「三蔵真経」を取りに行く旅が始まったのだが、まもなく夕方になるので近くの町に宿泊することになった。
 カイザスさん、ナースチャが『モンスターバスター携帯アイテム』の宿泊用テントも持ってはいるのだが、ベッドがあったり、飲食のことも考えると、宿屋の方がよかろうということになった。


 たどり着いた町は…なんだかひどく閑散とした雰囲気で、人々の雰囲気も暗い。

 「何があったのです?」
 「あなたたちは……?」
 桜姫が住人の一人のおじさんに声を掛けると沈んだ顔で僕たちを見たのだが…。
 「我々は『三蔵法師一行』だ。天竺までお経を取りに行くところなのだが、道中の人々の苦しみも取り除くのが我らの役目。さあ、みなさまがどうして沈んでいるのか教えていただけないでしょうか?」
 カイザスさんが歯をキラッと光らせて言う。
それを聞いたおじさんは急に顔を輝かせた。

 「なんと!ありがたいお経を取りに行かれるえらい法師様のご一行なのですね!
 わかりました!すぐに町長宅にいらしてください!!」

 そして商業を生業としているという大きな家に行くと、恰幅のいい町長と、その家族が酷く怯えていた。
 なんでも『恐ろしい豚の妖怪』が現れて、ここの一人娘を嫁に寄越せと言うのだそうだ。

 その話を聞いて、僕と桜姫は顔を見合わせた。
 それって…猪八戒が三蔵法師の仲間になる時の話だよね?!


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 その日の晩、『きれいに着飾った女性』を伴って、僕たちは郊外の指定された場所に近づいていった。
 女性は声も出さずに黙って僕たちと一緒に歩いている。
 僕たちは空き家の前で女性と別れると、町の方に戻っていった。
 そして、空き家から500メートル位離れた木の陰に身を隠すと、小屋の様子を伺う。
 同時に桜姫が懐から水晶球を取り出すと、小屋の中の様子を映し出した。
 女性が床の上に座っているのが見える。
 お経の勉強をすることで、こういう術も使えるようになったのだ。
さすがは桜姫!

 ちなみにこの世界はなんと、最初に飛ばされた世界と同じ世界で、桜姫にとっては過去の中国にいることになる。
 そんなわけで…カイザスさんは以前つかえた『水芸の魔法』と『効果エフェクトの魔法』、『自分や他人の歯をキラッと光らせる魔法』しか使えないそうだ…。
 ためしに僕の歯を光らせてくれた時には……ナースチャと桜姫に死ぬほど笑われました。

 少し待つと、小屋の戸を開けて『僕が着ているのとほぼ同じ衣装』を着た男が入ってきた。ようし、どうやら罠にかかってくれたようだ…。


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 男は警戒しながら小屋の中に入ってきた。
なんとなく嫌な予感がしたのだ。
 前回別の町で同じことをしたとき、きれいな女性だと思って喜んで声を掛けたらなんと…変装した孫悟空だったのだ!!
 半人半猿の精悍な男に凄まれて、思わず『ちびり』そうになった。
 しかも、孫悟空の武勇伝は聞かされていたから、相手が孫悟空だとわかった時は速攻逃げ出そうとした。
 もちろん、すぐに孫悟空に首根っこを押さえられて『無理やり天竺行きの仲間』にさせられてしまった。
 その仲間も『例の事件』で…。

 思考が逸れそうになって、その女性を見ると……暗いのではっきりとはしていないが今度は体型といい、表情といい、きれいな女性に間違いない!!
 よだれを垂らしながら近づいていって、男は若干違和感を覚える。
 非常に整った顔立ちのようではあるが、思っていたより背が高く、かわいい系だと思っていたけど『美人系』のような……?

 「いやいや、約束通りに来てくれたのだから、もちろん村には手を出したりしないさ。
 君のきれいな顔をもっとよく見せておくれ♪」
 男がさらに近づくと、女性は口を開いた。

 「もしかして、『猪八戒』さんですよね?」
 「え?どうしてその名前を知ってるの?」
 「それは……観音様から聞いたからね!!」
 言うが早いか女性の姿は消えうせ、気が付くと猪八戒の首筋には刀が突きつけられていた。
 背中から感じる『闘気』は孫悟空かそれ以上だ!!
 猪八戒は震え上がって、あっさり降参した。

 「すみません!!降参しますから命ばかりはお助け!!」
 「了解した。ところで、どういう経緯で『御一行様』が敵前逃亡したのか教えてくれるよね?!」
 アナスタシアの言葉にもちろん猪八戒は震えながらうなずいた。


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 カイザスさんが『怪物を退治』した報告に町長宅に戻っている間に、僕たちは例の小屋でナースチャが縛り上げた猪八戒を尋問することになった。


名前:猪八戒 ○○歳 妖怪(本来は天界人) 男
レベル:111
格闘家
スキル:棒術(LV29)体術(LV10)魔術(LV25)他
 魔法:変化の術(LV15)風術(LV25)水術 (LV20) 
装備: 釘鈀(ていは)。九本の歯を持つ熊手を思わせる馬鍬(まぐわ)風の武器
称号 元天界の将軍 元三蔵法師一行 
善良度:☆☆☆☆ (悪人ではないが、欲が深く、ヘタレ)
特記事項 半人半豚の妖怪。耳と尻尾を隠せば、見た目はちょっと太った気弱げなおじさん(30代くらい)に見える。 現在『逃亡中』


 「で、どうして『敵前逃亡』したのかな?」
 ナースチャがにっこりと笑って猪八戒にやさしく語りかける。
 目が全然笑っておらず、『大魔王ベヒモス』をさっくりやった時同様のオーラを纏っているので、仲間の僕らすら見ていて全身から震えが来そうなくらい怖い。

 …いやいや、観音様まで怖がられてどうするんですか?!!

 「…いえ、最初は勢ぞろいして、みんなで旅に出たんです。
 そして、何体か妖怪も退治したんです。ところが…。」

 ある日目を覚ました三蔵法師と孫悟空がガタガタ震えていたのだ。
 何があったかを聞いても恐怖に震えるばかりで部屋から出ようとしなかった。

 沙悟浄と一緒にどうしたものかと思っていると、気が付くと二人の部屋とももぬけの殻になっていて『探さないで下さい』と書いた手紙が残されていたのだ。

 任務の遂行が不可能になったので、途方に暮れた沙悟浄とともに出奔することにしたのだという。
 沙悟浄とは別行動を取ったので、沙悟浄もどこにいるのかはわからないのだとか。


 「なるほど。……ところで、解散後は『悪事は行っていない』よね♪」
 ナースチャがにっこりと猪八戒に語りかける。もちろん、『圧倒的なオーラ』は健在なままだ。
 「してません!!……ちょと盗み食いとか、ちょと女の子に手を出したとか、それくらいです……。あ、もちろん、『合意の上』です……。」

 「……観音様。無罪放免までは行かなくても『情状酌量の余地』が多々ありそうだよ。
 そちらで引き取ってもらえる?」
 ナースチャの問いに観音様が渋い顔をする。
 「えーと、みなさまと旅に同行してもらうわけにはいきませんか?」

 「無理です!!三蔵法師様やあの孫悟空の兄貴すら逃げるような旅には怖くていけません!!それに……『孫悟空の兄貴より怖い女性』と同行とかありえません!!」

 「なんだってーー!!」
 「なんてことを言うんです!!!」
 ナースチャと桜姫に睨まれて、猪八戒がさらに縮こまる。

 「はっはっは、なにをおかしなことを言っているのだね。
 ナースチャが孫悟空より怖い?そんな生易しいものではないわ!!
 悪人サイドから見たナースチャはこうだ!!」
 そう言って、いつの間にか戻っていたカイザスさんが懐から本を取り出す。

 「この本は『ダークサイド紳士録・アイボンの書』だ。
 さまざまな著名な悪人とともにその『トップクラスの天敵』のことにもページを裂いてある。ちなみにモンスターバスター一〇星全員載っている。」

 僕たちが恐る恐るページをめくるとパザロヴァ姉妹のところにたどり着く。

◎『不死の騎士ことパザロヴァ姉妹』と本には書いてある。

 曰く、魔法で作り上げた最強の剣と鎧を操って、さまざまな魔王や怪人・怪物と戦い続ける戦闘狂。
 絶大な力を誇る吸血鬼の真祖や大怪獣すら嬲り殺しにする血も涙もない怪物。
 残忍で敵対者に一かけらの情けも見せない姉のアナスタシアと、司令塔として冷酷なさまざまな作戦を立案するエレーナは容貌は美しいだけに、その恐怖の視線に睨まれたものは恐ろしさのあまり発狂するものも多いという。

※ 規格外のモンスターバスター一〇星の中でも最強最悪のコンビ。出逢ったら『可能な限り気づかれないうちに』即逃げること。美少女の見かけに絶対に騙されないように注意すること!!


 読んでいたナースチャが卒倒しました。
 「カイザスさん!なんて本を渡すんですか!!」
 桜姫が怒って、僕の手に本を渡す。
 そして、僕の目に作者の名前が止まる。『著者:邪神ニャントロホテップ』……。

 「カイザスさん!!この本の著者はカイザスさんの守護神じゃないですか!!!
 なんてことをしてくれるんですか!!!」

 『すまない、まさかこんなことになるとは思ってなかった…。』
 ニャントロホテップさんが謝ってるよ?!


 そして、怖いもの見たさでこの本を手にした猪八戒も…卒倒しました。

 僕たちの旅はスタートから波乱万丈のようです…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...