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奥さまはモンバス姉さん編

41 新婚旅行が思ったよりも… その1

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 結婚式&披露宴の当日は思ったよりずっといろいろなハプニングが起こりました。
 今までの人生で最大クラスのハプニングがいくつも起こりました。

 それを説明しだしたら、きりがないので今回は省きますが、最終的にはとてもいいことがあり、安心してお嫁に行くことができたのです。
 え?婿をもらった?…なにをおっしゃるやら。嫁ですから、よ・め!!

 え?光ちゃんまで婿とか言ってますが??!!

 ……それはそれとして、現在は着替えて、新婚旅行に出発したところです。
 コンパクトカー仕様の反重力式エアカー(モンスターバスター装備)を光ちゃんが運転してくれています。

 地上十数メートルに浮かび上がって(その気になればもっと高度も上げられますが)巡航速度時速五〇〇キロで飛行しております。

 今回は時間が限られていることもあり、新婚旅行は北海道を巡ることにしました。
 それゆえにエアカー移動にしたのです。

 なんと、今晩の宿泊先も行った先で飛び込もうというものすごい『行き当たりバッチリ』なスケジュールです。
 最悪の場合は車に泊まって温泉に浸かればいいのです♪
 高速移動が可能だからこそ、できる荒業を使えることで、普段の旅行よりずっとわくわくしております。

 結婚式が朝一から始まり、披露宴が3時に終わったので、新婚旅行への出発は4時になりました。
 現在東北地方の山地をぶっ飛ばして、そろそろ1時間くらい経っています。
 「運転代わろうよ♪」
 光ちゃんに運転手交代を促します。

 自動操縦で八割くらいコンピューターに任せているので、どちらが運転してもあまり変わらないかもしれませんが、北海道に上陸してからどう動けば有意義な旅行になるかを『正義の直観』で決めようというわけです。

 「せやな♪じゃあ、一度停車して運転手交代やね。」
 少し開けた場所で光ちゃんが車を止めてくれ、二人でいったん車を降ります。
 現在地は盛岡近辺でしょうか?

 山の中なので、関東と比べると少し肌寒いですが、上着を羽織って……なんだかお腹が空いてきました。
 結婚披露宴と言うのは新郎、新婦は接客に忙しくてほとんど物を食べられない…そう聞いていたのは本当でした。

 それを見計らって巧さんがおむすびを二人に握ってくれていたので、せっかくなのでいま食べることにします。
 二人並んで岩の上に腰かけて、ふもとの集落を眺めながらのんびりとおむすびを手に取ります。

 シンプルなご飯とお塩だけの小ぶりなおむすびですが、これがとてもおいしいのです。
 ご飯はこだわりのお米とお塩はオーストラリアの天日干し塩らしいです。

 よくばって頬張っていると、一つ落っことしてしまいます。
 おっとっともったいないことを!!

 転がっていったおむすびは穴の中に落ちてそのまま転がっていったようです。
 んん?今おむすびがすごく不自然な転がり方をしたような…。

 「「「おむすびころころすっころりん♪♪」」」
 なぜか、子供たちの唄うような声が穴の奥から聞こえてきます。
 私たち二人は顔を見合わせます。

 超常事件です!!モンバス姉さんの出番です!!
 …まあ、ぜんぜん害はないような気はしますが、念のために少し調べてみることにします。

 ためしにもう一つおむすびを投げ込んでみます。
 「「「おむすびころころすっころりん♪♪」」」
 やはり、先ほどと同じような声が聞こえてきます。

 決定です!!突入します!!童話の『おむすびころりん』と同じような展開ですが、ここは童話の世界ではありません。
 似て非なる相手がいることは間違いありません。

 車を『4次元収納』に収めて、私と光ちゃんはじりじりと穴に近づきます。
 そして、二人が穴を覗きこんだとき、私たちは穴に吸い込まれてしまいます!!

 おおっと、これは謎の魔法の力が働いたようです!!



 中では…ねずみみたいな耳と尻尾の付いた獣人のような人たちが10人くらいいました。
 私たちの半分くらいのサイズでしょうか?

 みなさん私たちを興味深そうに見ています。普通ならネズミの妖精(妖怪)の里…と思うところです。内部が地球防衛軍の指令室みたいな感じで、皆様の服装が宇宙服もどきでなければ…。

 「あの、あなたたちが先ほどのおいしい食べ物を差し入れて下さった方たちなのでチュね?」
 リーダーらしい女性が私たちに声を掛けてきます。
 三〇半ばくらいに見えるしっかりした美人系のお姉さんです。
 後ろの人達は10代から30代くらいに見える線の細い感じの男女(ネズミ系)で、皆さん、ちょっと怖いけど、興味がそれを上回る…くらいの雰囲気で私たちと向かい合っています。

 「ええ、最初の一個は偶然だけれども、次はそうした方がいいと感じたから。
 もしかして、あなたたちは他の星からここにこられたのですか?」

 「そうなのでチュ。宇宙船が事故を起こしてここに不時着してしまったのでチュ。船内の人工合成食料ばかりでげっそりしていたところをすごくおいしいご馳走を頂いて助かりました。」
 「それは大変だったわね。ところで、不時着後、修理や救出の見込みはありそうなのかしら?」
 「そ、それが、メインの動力炉がやられていて、修理の目途が立たないのです。さらに超空間通信も装置が壊れて使えなくなっているのです。
 食料や生活のエネルギーは宇宙船で自給自足できるのですが、帰る目処は全然立たなくて…。」
 ふうむ、皆さん困っておられるようですね…。
 それから、私が手にしているおむすびを皆様物欲しそうにご覧になってます…。

 「光ちゃん、直せそう?」
 「いやいや、いくらなんでも宇宙船の技術はわてではどうにもならへん。ドクターフランケンやアルテアはんでも宇宙船は…せや!!ザップマンはんならこの人らの故郷の連絡が取れはるんやないやろか!!」

 「待ってください!ザップマンさんをご存じなんですか??!!」
 おや?リーダーさんがザップマンさんの名前に食いついて来たぞ?!

 「ええ、こう見えても二人ともザップマンさんとは顔見知りなんです。」
 私のセリフにみんなの顔がぱっと輝く。
 なんでも彼らぴかちゅう星人の間でもザップマンは宇宙をまたにかけたヒーローなのだそうです。 それなので、ザップマンが海の大怪獣ゴメラにぼこぼこにされた件は彼の名誉にかけて黙っておいてあげることにします

 そして、私がザップマンこと土御門(旧姓:北壁)誠也さんに連絡を取ると、約一時間後にはここに到着してくれるという話です。
 よっしゃ!これで問題は解決しそうです。

 誠也さんを待つ間何もしないのも何なので、私と光ちゃんが料理をすることにします。
 当然皆さんも大喜びです。

 私たちが料理を開始した時、ドンドンドンと、宇宙船の扉を思い切りたたく音がします。

 「大変だ!!またやつらが来たんだ!!」
 若いぴかちゅう星人のお兄さんがびくっとしながら扉を見つめます。

 私たちは料理の手を止めて扉の方に歩いていきます。

 「やつら…とは一体何者なの?」
 「ええ、『地上げ屋』なんです!!」
 えええ!!!意味がわかりません!!!!!


 続く
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