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奥さまはモンバス姉さん編

40 体育教師襲来! 婚約破棄編 その後 その3

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 春日更紗です。掘ったばかりの油田を巡って、隣のトナリ町を牛耳るならず者集団からイチャモンを付けられてしまったのです。
 そして、シスターマリアが売られた喧嘩を買って、トナリ町のアール・カポーネ団が召喚した勇者と兜先生が決闘をすることになってしまいました。

 決闘場所はカイタク村の中央通りです。
 双方背中を合わせて審判の数える数字に合わせて一〇歩前進し、一〇数え終わった後に両者引き金を引くそうです。
 降参するか、相手が死ぬか…ええええ!!!そんな決闘なんですか?!

 しかし、私と如月君、平岡君はこわばった顔をしてますが、石川さんと兜先生は涼しい顔をしておられます。
 よほど自信がおありなのでしょうか?
 あれ、北川さんの姿が見えないのですが…。

 ちなみにマリアさんと村長は前回一人で騎馬部隊を壊滅させたあの北川さんを差し置いて、兜先生が自信たっぷりに出てきたので、北川さん以上の猛者が出たに違いないと確信されているようで、自信満々です。

 審判も相手の構成員のようなのですが、どうして皆さん、平気な顔をされているのでしょうか?
 さらに如月君の鑑定では兜先生は『銃関連の技能が無かった』ようなのですが…。

 「…石川さん、兜先生には銃の技能がないようだけど、大丈夫なんですよね?」
 一緒に見守る中、石川さんに小声で聞いてみます。

 「ええ、如月君が鑑定したのでしょ?兜先生には銃の技能はないですが、曲がりなりにもモンスターバスター達のトップメンバーですから。最後に立っていればいいわけなので、なんとかなるでしょう。」
 ええと、確かにヒットポイントは怪獣並にありましたから、それでなんとかなるのでしょうか?


 ちなみに如月君が鑑定した相手勇者です。

タリ―・ザ・キッド(田中二郎) 18歳 男(日本人)
レベル 66 
HP 660 

(中略)

【技能】拳銃LV22 格闘LV12 その他
【称号】異世界勇者 早撃ちタリー


 顔の彫が深いから鑑定してから気付いたけど、この人、日本人だよ!!
 長身で気取っていて、茶髪とカラコンで外人ぽくしているようです。
 レベルは如月君より低いので、拳銃での決闘でなければ如月君でも勝てたのではないでしょうか?


兜鋼児(本名マルク・シャガール) 男 マッスル星人 45歳

レベル 1211
HP  786312

(中略)

【技能】格闘LV403 サバイバルLV112 ポージングLV108
【称号】異世界勇者 完璧な筋肉パーフェクトマッスル モンスターバスター一二星 

 本名のマルク・シャガールが痛すぎます。格闘がチート過ぎです。確かにこれなら勝てるような気がします。
 …ところで、サバイバルはまだしも、ポージングが決闘に何か役に立つのでしょうか?


 「それでは数を数える。1 2 3 …… 10!」
 審判が数えると同時に、二人は振り向き、双方拳銃を…えええ!!気が付くとタリーの両手にはいつの間にか一丁ずつ拳銃が装備されているじゃないですか?!!

 ガンガンガンガン!!!
 立て続けに銃撃音がして、兜先生は炎に包まれている。
 ええええっ??!!!どうして銃で撃たれて炎に包まれるの?!!

「はっはっはっは!!タリーは隠ぺいの技能があるんでな!!油断しやがったな!」
 アール・カポーネとタリーが笑っている。
 どうやら炎はタリーの隠された技能によるものらしい。

 後で北川さんが鑑定した結果、タリーの本当のレベルは166で、拳銃の技能もずっと高く、魔法もかなりの技能があったのでした。

 「だっはっはっは!さて、火だるまになったそこの大男も……。」
 アールの言葉はそこで止まった。火が消えた時、着ていたものが焦げてしまって、上半身裸の兜先生が涼しい顔で立っていたのだ。

 「では、今度はこちらから行くぞ!!ふんぬ!!!」
 兜先生は拳銃を抜くとそのままタリーに投げつけたんですが?!!

 兜先生の投げた拳銃はタリーに辛くも躱されましたが、そのまま遠方に飛んでいき、村はずれにあった岩塊を粉々に吹き飛ばしました!!ええええ??!!!

 「ふむ、もう少しコントロールをつけるよう練習した方がいいな。
 瀬利亜嬢、拳銃を貸してくれんかね?」
 いやいや?!!拳銃は投げるものではないですよね??!!

 「何を言っているの?!!なんで拳銃を投げているの?!モンスターバスター用の拳銃は高価なんだから、投擲なんかに使わないでちょうだい!!
 投げるのなら、その辺の石を使ってちょうだい!あるいは素直にぶん殴りなさい!!」
 「なに?!殴っていいのか?!」
 「決闘には普通は銃を使うけれど『素手ではダメ』というルールはなかったわよ。存分にあなたの拳の威力を見せ付けてあげなさい!!」
 「わかった!この筋肉マッスルを存分に活用しよう!!」
 兜先生はポージングをしながら叫んだ。
 こんな時にポージングですか??!!

 「く、化け物め!!」
 タリーはさらに拳銃を構えると何やら呪文を唱えた。
 「喰らえ!!対戦車徹甲弾!!」
 後で如月君が教えてくれたのですが、戦車の装甲すら撃ち抜く強度・破壊力を拳銃の弾丸に与える魔法を唱えたのだそうです。
 タリーの撃った弾丸は残らず、正確に兜先生に命中しました。

 「き…きかぬ。きかぬのだ!!
 この筋肉マッスルをそんな『気合の入らぬ銃弾』ごときで撃ち抜けると思ったか?!」

 兜先生はポージングをした後、右手を思い切り振りかぶって、タリーに向かって突進します。
 「喰らえ!地震拳アースクエイクパンチ!!」
 上から振りかぶった兜先生のパンチをタリーは辛うじて躱した。
 兜先生の拳はそのまま、地面に突き刺さると、轟音と共に大地を数十メートルにわたって大きく割った。

 飛び退ったタリーはすでに真っ青な顔でぶるぶる震えている。

 「はっはっはっは!よくぞ躱した。だが、逃げてばかりでは勝機はないぞ!さあ、魂のこもった一撃を私に喰らわせてみたまえ!!」
 高笑いする兜先生に石川さんがいずこから取り出した巨大ハリセンで大きな音を立てながらはたいた。

 「なんつう戦い方をしてるの??!!方角が悪かったら村人に被害がでたり、せっかく作った石油採掘システムが壊れちゃうじゃない!!もう少し戦い方を考えなさい!!」
 「う、すまん。では、地面を殴らない戦い方をしよう。」

 兜さんが再び右手を振りかぶると、タリーはさらに顔色が悪くなり、ぶるぶる震えながら「こ、降参…」と言いかけた。

 「おおっと!待ってもらおう!!お前さん方が口に出した『石油採掘システム』がどうなってもいいのかな?」
 ええ??アール・カポーネが冷や汗をかきながらも笑いながら話している。
 村はずれの石油採掘施設の前に…ああ!!ごろつきたち三人が松明を持って笑っている!!

 「あの松明で石油施設を燃やして…。」
 アール・カポーネがそこまで言った時、三人の持っていた松明が斬れて、ぼとりと地面に落ちた。
 ぎょっとした三人があっという間に吹っ飛ばされて、そのまま気絶した。

 「瀬利亜先輩!おっしゃっておられたように見張っておいて正解でしたね。まあ、この施設は燃やされてもすぐに復旧できましたけど。」
 気配を消していた北川さんが右手に光る剣を持って現れました。
 ええ??!!あれって某映画にも出た『ライトセイ◎ー』というやつですか??!!

 それを見てアール・カポーネはパニックになった。
 「ちきしょう!こいつを殺されたくなかったらみんな大人しくしろ!!」
 ええと、アール・カポーネはよりによって石川さんに拳銃を突きつけています。
 みんなは別の意味で呆然としています。
 石川さんは…涼しい顔をしています。

 「で、大人しくしたら何をどうしようというのかしら?」
 涼しい顔のまま石川さんはアール・カポーネに尋ねた。

 「俺たちはこの小娘を連れて逃げる。だから、決して後を追おうなどと…。」
 アールがそこまで言った時、石川さんはアールの持っていたはずの拳銃をいつの間にか掌の中に収めていた。
 そして、そのまま両手でにぎにぎすると、拳銃だったものはほぼ完全に球体になり、石川さんはそれをアールの右手に渡した。

 「で?大人しくしたら、何をどうしようと?」
 石川さんがちょっと意地悪く笑うと、アールは卒倒した。



 勇者対決にボロ負けしたアール・カポーネ団は求心力を失い、団員は散り散りになり、あっさり解散しました。

 タリーこと、田中二郎氏は実は私たちと同じ世界から召喚されたことが判明し、送還までの間に兜先生に鍛え上げられることになりました。
 なぜか『もてたい』平岡君まで特訓に参加しています。

 『貧弱な僕が特訓でこんなにムキムキに♪』を目指したいらしいのですが、馬鹿力の狼男がこれ以上肉体派になってどうしようというのでしょうか?

 三日後、アルテア先生が迎えに来てくれて、さらに石油施設に永続化の魔法を掛けてくれました。
 今回は残念ながら石油施設以外の村おこしはいい物が見つからなかったのですが、一応村人が無理なく石油を売れる段階まではお手伝いできたので、良しとしましょう。


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 「今日も転入生やで♪みんな、仲ようしてや♪」
 生徒会元会長たちとのトリップから二日後、ホームルームで光ちゃんが、ニコニコしながら宣言してます。
 うん、嫌な予感しかしないのですが…。

 「田中二郎です。よろしくお願いします。タリーと呼んでいただければ、ありがたいです!」
 望海ちゃんと顔を見合わせた後、気合で涼しい顔をします。

 幸いなことに兜教師(マルク)によって、根性を鍛え直されたおかげでオーラがまともになっています。まあ、そうでなかったら転入なんかできないでしょうが…。

 「はい、質問です!!」
 おおっと、お調子者認定の橋本君が手を挙げている。

 「田中君はどんな『異世界勇者』なんでしょうか?」
 橋本君の質問に教室がざわめく。例の二回の異世界召喚のおかげで、クラスのほとんど全員が『潜在能力に目覚めて』しまい、ほぼ全員が田中君が『ただものではない』ことをオーラから感じ取っていたので、その質問はみんなにとっても渡りに船だったのです。

 「ええと…俺は『早撃ちの異世界勇者』なんだ…。」
 私と望海ちゃんをちらっと見て、少し恥ずかしそうに田中君が告げる。

 「そうか、俺はな…。」
 「橋本君は『ツッコミの異世界勇者』でしょ♪」
 『リアル悪役令嬢』にして『雪女の姫』の氷室さんが楽しげに口をはさむ。

 「氷室!ちげーよ!『食べ物チート勇者』だ♪」
 「……えーと、確かに『食べ物チート』を提案した回数は間違いなくクラスでトップなんだけど、使えないアイデアの方が圧倒的に多数だったんじゃないかと…。」
 「石川も冷静に突っこまないでくれ!!!!!!!」

 『ムードメイカー勇者』橋本君のおかげで、田中君は思ったより早くクラスに溶け込めそうですね♪


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