奥さまはモンスターバスター 時々 異世界召喚勇者

はなぶさ 源ちゃん

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その後…とは限らない番外編

番外編2 魔王退治の勇者と幼馴染 その1

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 「また無謀な喧嘩をして…。」
 怪我の手当てをしながらまたあいつに言われた。

 「うるせー!余計なおせっかいをするんじゃねえ!
 だいたい、喧嘩には何とか勝ったんだぞ!」
 本当は手当をして貰って、しかも心配してもらえるのが嬉しいのだが、そんなことはプライドにかけて口が裂けても言えやしない。

 「両方ともボロボロになって、痛み分けみたいなもんじゃない。
 どうせ、喧嘩をするなら『もっとクレバーに』立ち回らないと…。
例えば、『落とし穴を掘る』とか、『胡椒爆弾』を使うとか。」
「何を言ってんの?!」
いつもながらこいつの言動にはびっくりさせられる。

「話し合いで済めばそれに越したことはないんだけど、あんた、喧嘩するときも必ず筋を通したうえで、喧嘩するからね。
 だったら、馬鹿正直に正面からぶつかるだけでなくて、ちゃんと頭をつかわなくっちゃ。」

 二つしか違わなかったのに、あいつはいつも姉さんぶっていた。いや、あいつはすごくしっかりしていてとても大人びていたから、今考えれば弟扱いされても仕方ないと思う。
 だからこそ、男として見られていないのが悔しくて、あいつの前ではせいいっぱい強がっていたんだ。
 だから、あいつが引っ越していくときも憎まれ口しか叩くことができなかった。
 それでもあいつはせいいっぱい笑顔を見せて「健ちゃんが大きくなってまた会えるのを楽しみにしているよ!」と手を振りながら車に乗って去っていった。
 俺は思った。
 いつかあいつにふさわしいくらい立派な男になってやる。そうしたら…。


 
 「ごめんなさい。魔王は倒れたのだから、本当は健人を約束通り元の世界に帰してあげなきゃいけないんだけど。」
 俺を召喚した神官にして魔術師のエイムスがすまなそうに俯く。
 ここフラムス王国では、王と王太子が魔王軍との戦闘で重傷を負った後、王女でもあるエイムスが国の旗頭となったのだ。
 そして最後の手段として『禁忌の魔法・異世界からの勇者召喚』に踏み切ったのだった。
 
 俺は如月 健人きさらぎ けんと。二年前まではただの高校生だった。
 二年前にここ異世界ファンタズマにエイムスから勇者として召喚されてから、仲間たちとともに邪悪な魔王軍と戦ってきた。
 召喚された際にチート能力が開眼したものの、最初は実戦不足もあって苦戦ばかりしていた。
 しかし、旅に着いて来てくれたエイムスともう一人の仲間の協力もあり、徐々に力を付けることができ、半月前、ついに諸悪の根源の魔王を打ち取ることができた。
 しかし、魔王軍のすべてが瓦解したわけではなく、未だに世界情勢は猶予を許さなかった。
 
 魔王軍六将のうち半分が残り、今までのように大規模侵攻をするのではなく、ゲリラ戦のような形で人類(エルフや獣人族など含む)側の国々にちょっかいを掛けてきているのだ。
 俺たちは一旦王都に戻って、残りの六将討伐のための情報収集に努めていた。


 その晩、俺は王都内に潜んでいた魔族のスパイと思われる存在を俺は察知し、急遽魔族のいる場所に駆けつけた。
 勇者専用の魔法には身体能力や索敵能力を大きく上げたり、気配を消すなどの隠密行動ができるようになる魔法まであるのだ。

 スラムに近い路地裏にそいつはいた。
 細身ながらもしっかりと筋肉の付いた漆黒の体に背中に蝙蝠のような翼を持った人影。
 『魔界の盗賊』と言われる奴らの一体だ。
 そいつの足元にローブをまとった人影が横たわっているのが目に入った。 
 魔族はあたりを見回しながら、その人影を足蹴にしていた。
 
 くそ!!俺は怒りで頭に血が上ると、素早く聖剣を引き抜いて、魔族を一刀両断した。
 本来なら魔族を制圧だけして情報を吐かせるべきだったかもしれないが、奴らのいつも通りの非道さに俺は我慢が出来なかった。

 「大丈夫か?!」
 俺はローブの人影に駆け寄り、抱え起こす。
 うめき声から若い女性のようだ。
 
 「私は一体…。」
 女性の状態を見るためにローブをはぐった俺は思わず叫んだ。
 「○○○?!!!!」
 
 俺の言葉にはっとなった女性は俺を見て、愕然としている。
 「健人?!健人なの?!!」
 少しやつれているが、その顔を俺が間違うわけがない!!なにより、俺を一目見て健人だと認識している。でも、どうしてここに?!
 
 「そうだ、俺だ!健人だ!でも、どうしてこんなところに?!…それより、怪我はないか?」
 「…大丈夫だと思う。だけど…腰が抜けて力が入らないの。立つのを手伝ってくれる?」
 安心した顔になった彼女を抱え起こそうとした時、背筋に寒気が走ると同時に俺の右わき腹に鋭い痛みが走った。
 いつの間にか彼女の右手には漆黒のナイフが握られていて、俺の腹に突き立っていたのだ。

 俺は彼女を突き飛ばして叫ぶ。
「どういうつもりだ!!」
 さっきまでと違って、彼女は俺を冷たい目で見ている。
 そして、言いながら俺の体からだんだんと力が抜けていくのがわかる。
 ナイフに凄まじい闇の魔力が込められていてどんどん俺の体を蝕んでいるんだ。

 めまいがしながらも、不意に俺は召喚途中で出会った女神様の言われたことを思い出す。
 「あなたがどうしようもない窮地に陥った時にこの腕輪を使ってください。
 ただ、あなた一人だけしか助けることはできません。
 だから、ここぞという時にだけ思い出すように腕輪に魔法をかけておきますね。
 その時が来たら『思い出す』から躊躇なく使ってくださいね。」
 今、ぼんやりとだが、女神様と会った時のことが頭に浮かんできた。
 ということは、今がそれを使う時だ!
 
  俺は躊躇なく、その時教わった言葉を何とか口に出す。
 「バロス。」
 …趣味の悪い女神様だな…そう思いながら俺は周りの風景がぼやけるのを見ながら意識を失った。



 「あ、やっと気が付いたようです。」
 気が付くと、若い女性の声がする。
 目を開けると、ブレザーのような服を着た日本人形のような可愛らしい女の子が俺を覗きこんでいる。
 おれはベッドに寝かされている。
 天井の蛍光灯や周りの風景からここは病院のようだが…。
 俺の前にいる女の子は十代半ばくらい…高校に入るかどうか…くらいの年齢だろうか?
 俺を召喚したエイムス王女も規格外の美人だったが、この女の子もかわいい系とはいえ、相当なレベルだな…とか取り留めもないことを思った。

 「よかったわ。相当消耗しているみたいだったから、意識を取り戻すのにもっと時間がかかるかと思ったんだけど。」
 言いながら近づいてくる女性を見て、俺は固まった。
 服は違えど、意識を失う前に『俺にナイフを突き立てた』はずの女がそこにいたのだ!

 「どういうつもりだ!!さっきはどうしてあんなことをした?!!」
 俺は思わず起き上がって叫んだ。

 「え?さっきもなにも、私たちは初対面ですよ?」
 きょとんとした顔で女性は首をひねる。

 「え?そうなのか?!」
 俺はまじまじとその女性を見つめる。
さっき俺を刺したやつれ果てていた『あいつ』と違い、表情も明るく、ビジネススーツを着たとても 健康的な雰囲気の女性だ。
 この女性の方があいつがそのまま成長したらこんな感じになりそうな雰囲気なのだが…。

 「では、よく似た女性に酷い目に合わされた…ということなのですね。」
 日本人形のような女の子が俺をまじまじと見つめながら言う。

 よく似た女性…そうなのか?それでは俺は『あいつ』に刺された後、あいつによく似た女性とに介抱されたということなのか?まさか、そんな奇跡のような…。

 「でも、銀髪の瀬利亜さんによく似た女性…外人さんなんでしょうね。」
 女の子との言葉に俺の思考が止まる。
 ちょっと待て!せりあ…て…。

 「あ、あんたの名前はなんて言うんだ?!」
 俺は思わず銀髪の女性に詰め寄っていく。

 「石川瀬利亜と言いますが、なにか?」
 女性はビックリしながらも『あいつと同じ名前』を口にする。

 「待て、お前本当に瀬利亜か?!俺だ!健人だ!如月健人だ!!」
 瀬利亜はしばし、目を瞬かせていたが、間もなく笑い出した。

 「またまた、御冗談を♪健人はこんなに小さいんですから♪」
 瀬利亜は自分の膝くらいに右手をかざしながらニコニコしながら言う。
 いやいや俺どんだけ小さかったの?!!

 「あれから何年たったと思ってんの!!いつまでもそんなに小さいわけないだろ!!」
 俺が叫ぶと瀬利亜ははっと気づいたようだった。

 「確かに!!あれから四年たつからそこまで成長してもおかしくないわね?!!
 こ~んなに小さかった健人がまさか私より背が高くなるとは?!!
 お姉さんびっくりだわ!」
 相変わらず自分の膝のあたりに右手をかざしながら瀬利亜が言う。
 いや、確かに俺は中一までは背が低かったけど、そこまで低くはなかったよね?!!

 「すごいです~♪まさか偶然瀬利亜さんのお友達を助けられるなんて、本当に良かったです。」
 日本人形のような女の子が目をキラキラさせながら喜んでいる。
 うん、瀬利亜はいつも女の子にものすごくモテモテだったよな。
 この子も『瀬利亜さん大好きオーラ』みたいなのを出しているよね。

 「でも、健人が怪我をしてここにいるんだったら、行方知れずになっているわけだから、ご家族が心配されているでしょうね。
 おばさまの携帯に電話をするわね。」
 なに?!瀬利亜は母さんの携帯番号を知っていたのか?!…今の状況を詳しく聞いておかないと。
 そして、瀬利亜がスマホを取り出した時、急にあたりを光が包んだかと思うと、足元に見覚えのある魔方陣が浮かんできた。
 これは、俺が最初に召喚された時も現れたやつだ!ということは…。
 視界が光で全く見えなくなり、俺は意識を失った。



 「健人、健人!大丈夫なのね!!」
 聞きなれた声が俺の意識を呼び覚ましていった。
 目を開けると俺にすがりついたエイムスが涙を流しながら安どの表情を浮かべていた。
 エイムスは二年近い旅の間も俺がピンチになったり怪我をするたびに心配してくれていたよな。
 『大切な仲間として』…いや、エイムスはどうも俺に好意を寄せてくれているみたいだな。でも、俺は…。

 「今、どういう状況なんだ?」
 「あなたがパトロールに出ていってから帰らないので、心配になって探知の魔法を使って探した。でも、あなたの反応が無くて、聖剣だけが探知できたので、必死で聖剣のある場所へ行ったのよ!
 そしたら、斬られた魔族の死体と、聖剣が落ちていて…そして、『異界の門』が開いた濃厚な魔術的な痕跡が残っていたのよ。
 だから、異界の門の痕跡とあなたと聖なる盾の存在をたどって、ここからあなたを召喚したのよ。」

 そうだ、ここは俺が最初に呼び出された城の地下の召喚の間だ。
 エイムスの後ろに俺たちの旅の仲間のデフォルドや、フォルト大司教、さらに騎士団長たちの姿もある。
 二年前同様、さっき瀬利亜に介抱されていたのは元の世界からエイムスは俺を再び異世界に召喚したわけだ。召喚魔法を使うと文字通り術者の命を削るくらい負担が大きいというのに、エイムスは躊躇なく召喚魔法を使ったようだ。
 そして、俺は気付く。背中に背負っていた勇者の盾はどこに行ったのかと。
 
 「そうだ!聖なる盾は?」
 魔王を倒すのに魔族に対して絶大な威力を誇る『聖剣』と、同じく魔法や邪悪な攻撃に魔術的な防御能力を持つ『聖なる盾』の存在は必須だった。
 あれが無ければ魔王軍残党との戦いはかなり苦戦を強いられることになりそうだが…。
 
 「はい、これでしょ。聖なる盾は。」
 そう言いながら聖なる盾を俺に渡してくれたのは……。
 「ええええええ?!!!なんでここにいるわけ?!!!」
 少し困ったような顔をした瀬利亜だった。

(続く)
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