異国の作家との日常

方舟と道化師

文字の大きさ
上 下
1 / 1

外国人の少年と使用人の少女

しおりを挟む
「すみませーん!!どなたかいらっしゃいませんか?」
トントン、と続けさまに玄関の扉を叩いてみたが全くもって反応がない。
(どうしよう・・・)
三日前、父親からここの家に住みついた外国人が古くからの友人の息子だとかで、そこで歳も近い私に日本に不慣れな彼の手助けをするように言われたのだ。
父親から、その外国人の名前と簡単な性格は聞いていた。名前は籠目かごめと言うらしく、どうして外国人なのに日本人みたいな名前なの?、と父に聞いたところ「偽名だ」とだけ言われた。そして、性格は『優しくて親切ないわゆるお人好し』と言われた。それが三日前の出来事である。
と言っても・・・。
(玄関が開かなかったら何もやりようがないんだけど・・・)
はあ、と小さなため息をつく。その時、ふとある考えが脳裏に浮かんだ。
(玄関の鍵かかってなかったりして・・・)
そんな事あるはずない、がものは試しというもので玄関に手をかけたところ・・・。ガラッ、と独特な音を立ててあっけなく玄関が開いてしまった。
「開いちゃった・・・」
驚きが隠せず口をポカンと開けてしまう。ここの家に住んでいる外国人は『鍵』というものを知らないのだろうか。まあ、そんな事は無い・・・と思いたい。
まるで盗人のように周りをキョロキョロ見回してから私は家の中へ入った。中は思ったよりも広く、部屋へと続く襖などが張り巡らされていた。
「すみませーん!!どなたかいらっしゃいませんか?」
再び玄関口で言った言葉を繰り返す。だが、やっぱり返事は無い。
考えた末、すぐ右手にあった部屋に入りその部屋にある机の上へ、持っていた荷物を降ろすことにした。その机には少し埃が被っていて、荷物を置いた際にそれが舞い上がり少しむせてしまった。
(掃除してない?)
何だか父から聞いた性格とはとても欠け違えた外国人なんじゃないか、と段々と自分の中で思ってきた。性格は『掃除が嫌いな我儘な人』というのが私の結論だ。
その時。いきなり入ってきたふすまから1人の男性いや、少年が入ってきた。外国人としては珍しい私達日本人のような黒髪とガラス玉のような外国人の特徴でもある綺麗な青い瞳を持った人だった。顔立ちも整っていてとても綺麗な顔をしている。少し私が見とれていると彼は私に声をかけてきた。
「Hello.pretty girl.」
「え・・・」
へロー?プリンカール?・・・今のはどういう意味なのだろうか。日本語以外の言語なんて知らない私にとっては理解など出来ない。
「あ・・・あの・・・」
「How are you?」
「え・・・あの・・・カゴメ・・・さん?」
分からない言葉に戸惑いながらも父に教えてもらった彼の名前を口にしてみると、いきなり彼は口に手を添えて笑い始めました。
(なんなのこの人・・・)
「ははっ、すみませんっお嬢さん」
「へ・・・」
「慌てている姿がとても可愛くてついっふふ」
「もしかして・・・」
「ああ。はい、日本語話せますよ僕」
そう言った彼の顔は、まるで幼い男の子のような可愛らしい笑顔でした。
(楽しい生活になりそう・・・)
浜早苗はまさなと言います。これからお世話になります、籠目先生」
これからの新しい生活の始めとして、まずは最初の1歩を。
『続』
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...