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駆の章
ヒーローインタビュー
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《空山隆之介》
若き帝王マテウスのヒーローインタビューがモニターに流れていた。
(今日の八人抜きは凄かったですね)
(狙っていたからね)
(狙っていたんですか?)
(そうだよ。ジャパンのソラヤマだっけ、スペインに対して凄いパフォーマンスを見せたでしょ。あれが刺激になったよ。是非、戦いたいね)
ロシア戦の事では無く、俺の事を言っている。
正直、震えた。世界一の一人であるマテウスが俺を意識してるんだから。
山田太郎が宇垣悠里に指示をする。
ここへ放送が切り替わるらしい。
(おーい、悠里ちゃん、今の聞いた?あのマテウスが空山選手に刺激をもらったって。凄く興奮してるよ)
「宇垣です。凄いですよね。じゃあ、今のブラジル戦についてメッシー選手にも聞いてみたいとおもいます。どうですか、マテウス選手のプレーは?」
「そうだね。マテウスは個人技で二得点を叩き出した。さすがと言うしかない。ただ、僕にも同じ事はできるよ。それに、ロシア皇帝のマネもね」
「なるほど、要するに凄いけど驚く程では無いと」
(おい、悠里ちゃん、鋭く言い過ぎ)
「あ、すみません」
「いや、その通りだから。でも、ソラヤマの最後のシュートはマネが出来ない」
「あのロングシュートですか?」
「そうだね。そこでソラヤマに一つ聞きたいんだけど、あのシュートはまぐれかい?」
マイクが俺に向けられた。
「どうですかね」
「まあ、良い。これからの試合で証明されていくだろうから」
「大居さん、放送時間が無くなってきましたので、スタジオに返します。日本は明後日にナイジェリアと戦います。絶対に勝ちます」
(悠里ちゃん、ありがとう。今日は凄いゲストと凄い主役が揃った放送だったな。そろそろ、時間です。負けられない試合が続きます。皆で応援しよう)
山田太郎が立ち上がって親指を立てる。
「皆さん、お疲れ様でした」
スタッフ達が撤収準備を始めている中を通って俺達はスタジアムの関係者出口に向かった。
俺は里帆を見ると目が合う。どうしても、駆の許嫁という言葉が浮かぶ。
「ごめん、今からメッシーさんとビジネスの話がある」
「俺の専属じゃないのかよ」
里帆が少し嬉しそうな表情をしたように見えた。
「ごめん」
駐車場に着くと背の大きな男が待っていた。
濱本麟太郎だ。
里帆とメッシーをリムジンへ案内していく。
いかにもできる男の様に見えた。
最後に濱本が挨拶にきた。
「空山隆之介、ぐだぐだしていると俺がお嬢様を頂く」
「俺には関係ない」
「そうか」
濱本は振り向き、リムジンの助手席に座るとリムジンは走り出して街の方へ消えて行った。
何だかムカムカする。
駆の許嫁だ。駆は俺の生涯の親友なんだ。
「空山さん、ご飯でも食べに行こうか」
声の主を見る為に背後を振り向くと笑顔の宇垣悠里がいた。
なんだか、少し救われた感じがした。
《宇垣悠里》
空山隆之介の背中が少し悲しそうに見えた。
一緒に街を歩き、一軒のスペイン料理店に入った。
二階の窓際の席に案内された。
「ここね、学生時代の友達からのお勧めなんです」
パエリヤと鶏肉の煮込み料理、そして、ワインを注文した。
私は何故だか放送事故の事や学生時代の失敗などを食事をしながら、しゃべっていた。
それを笑顔で頷きながら聞いてくれる空山隆之介。
しまった。なんだか、私、しゃべり過ぎてる。
目が合う。
胸のドキドキが止まらない。
「もう、空山さんは聞き上手やけん、私、しゃべり過ぎてしまうと」
あ、いけない。思わず、方言が出てしまったばい。
空山隆之介の目が点になっとる。
「博多弁、始めて聞いた」
「ごめん、少し酔って思わず方言がでちゃった」
ニコリと笑う隆之介がいた。
「博多弁、可愛いと思うよ」
「本当?」
「本当」
「私、好いとぉーとょ」
「え?」
「何でもないけん」
少しして二人でお店を出た。
「私のホテル近いから歩いて帰るよけんね」
「送るよ」
「え、えーと?」
「もちろん」
二人で並んで歩くと、わかった事がある。空山隆之介は背が大きい。
そして、私の目線に合わすように屈みこんで話を聞いてくれる。
それが私の鼓動を早くする。
短すぎる。
あと、百メートル程で私の泊まるホテルの前まで来てしまう。
手が触れあう。
えーい、私は思わず空山隆之介の手を握った。
「宇垣さん、とても楽しかった。そして、救われた」
宇垣さんの言い方がとても寂しい。
桐谷里帆には里帆と呼んでいたのに。
「ねぇ、隆ちゃんって呼んでも良かと?」
「ええとよ」
私は思わず吹き出した。
「変な博多弁」
「悪かったな」
「悠里って呼んでも良かとよ」
「えっ」
恥ずかしい。
自分から要求したみたい。
もう、ホテルの前。
手を離して隆之介に向いた。
「私、応援がんばるけんね」
「ああ、頼むよ。悠里」
悠里って呼んだ。
一気に鼓動が速くなっていくよう。
「バイバイ」
「じゃあな」
手を降って隆之介は歩きだした。
私は姿が見え無くなるまで、見送っていた。
若き帝王マテウスのヒーローインタビューがモニターに流れていた。
(今日の八人抜きは凄かったですね)
(狙っていたからね)
(狙っていたんですか?)
(そうだよ。ジャパンのソラヤマだっけ、スペインに対して凄いパフォーマンスを見せたでしょ。あれが刺激になったよ。是非、戦いたいね)
ロシア戦の事では無く、俺の事を言っている。
正直、震えた。世界一の一人であるマテウスが俺を意識してるんだから。
山田太郎が宇垣悠里に指示をする。
ここへ放送が切り替わるらしい。
(おーい、悠里ちゃん、今の聞いた?あのマテウスが空山選手に刺激をもらったって。凄く興奮してるよ)
「宇垣です。凄いですよね。じゃあ、今のブラジル戦についてメッシー選手にも聞いてみたいとおもいます。どうですか、マテウス選手のプレーは?」
「そうだね。マテウスは個人技で二得点を叩き出した。さすがと言うしかない。ただ、僕にも同じ事はできるよ。それに、ロシア皇帝のマネもね」
「なるほど、要するに凄いけど驚く程では無いと」
(おい、悠里ちゃん、鋭く言い過ぎ)
「あ、すみません」
「いや、その通りだから。でも、ソラヤマの最後のシュートはマネが出来ない」
「あのロングシュートですか?」
「そうだね。そこでソラヤマに一つ聞きたいんだけど、あのシュートはまぐれかい?」
マイクが俺に向けられた。
「どうですかね」
「まあ、良い。これからの試合で証明されていくだろうから」
「大居さん、放送時間が無くなってきましたので、スタジオに返します。日本は明後日にナイジェリアと戦います。絶対に勝ちます」
(悠里ちゃん、ありがとう。今日は凄いゲストと凄い主役が揃った放送だったな。そろそろ、時間です。負けられない試合が続きます。皆で応援しよう)
山田太郎が立ち上がって親指を立てる。
「皆さん、お疲れ様でした」
スタッフ達が撤収準備を始めている中を通って俺達はスタジアムの関係者出口に向かった。
俺は里帆を見ると目が合う。どうしても、駆の許嫁という言葉が浮かぶ。
「ごめん、今からメッシーさんとビジネスの話がある」
「俺の専属じゃないのかよ」
里帆が少し嬉しそうな表情をしたように見えた。
「ごめん」
駐車場に着くと背の大きな男が待っていた。
濱本麟太郎だ。
里帆とメッシーをリムジンへ案内していく。
いかにもできる男の様に見えた。
最後に濱本が挨拶にきた。
「空山隆之介、ぐだぐだしていると俺がお嬢様を頂く」
「俺には関係ない」
「そうか」
濱本は振り向き、リムジンの助手席に座るとリムジンは走り出して街の方へ消えて行った。
何だかムカムカする。
駆の許嫁だ。駆は俺の生涯の親友なんだ。
「空山さん、ご飯でも食べに行こうか」
声の主を見る為に背後を振り向くと笑顔の宇垣悠里がいた。
なんだか、少し救われた感じがした。
《宇垣悠里》
空山隆之介の背中が少し悲しそうに見えた。
一緒に街を歩き、一軒のスペイン料理店に入った。
二階の窓際の席に案内された。
「ここね、学生時代の友達からのお勧めなんです」
パエリヤと鶏肉の煮込み料理、そして、ワインを注文した。
私は何故だか放送事故の事や学生時代の失敗などを食事をしながら、しゃべっていた。
それを笑顔で頷きながら聞いてくれる空山隆之介。
しまった。なんだか、私、しゃべり過ぎてる。
目が合う。
胸のドキドキが止まらない。
「もう、空山さんは聞き上手やけん、私、しゃべり過ぎてしまうと」
あ、いけない。思わず、方言が出てしまったばい。
空山隆之介の目が点になっとる。
「博多弁、始めて聞いた」
「ごめん、少し酔って思わず方言がでちゃった」
ニコリと笑う隆之介がいた。
「博多弁、可愛いと思うよ」
「本当?」
「本当」
「私、好いとぉーとょ」
「え?」
「何でもないけん」
少しして二人でお店を出た。
「私のホテル近いから歩いて帰るよけんね」
「送るよ」
「え、えーと?」
「もちろん」
二人で並んで歩くと、わかった事がある。空山隆之介は背が大きい。
そして、私の目線に合わすように屈みこんで話を聞いてくれる。
それが私の鼓動を早くする。
短すぎる。
あと、百メートル程で私の泊まるホテルの前まで来てしまう。
手が触れあう。
えーい、私は思わず空山隆之介の手を握った。
「宇垣さん、とても楽しかった。そして、救われた」
宇垣さんの言い方がとても寂しい。
桐谷里帆には里帆と呼んでいたのに。
「ねぇ、隆ちゃんって呼んでも良かと?」
「ええとよ」
私は思わず吹き出した。
「変な博多弁」
「悪かったな」
「悠里って呼んでも良かとよ」
「えっ」
恥ずかしい。
自分から要求したみたい。
もう、ホテルの前。
手を離して隆之介に向いた。
「私、応援がんばるけんね」
「ああ、頼むよ。悠里」
悠里って呼んだ。
一気に鼓動が速くなっていくよう。
「バイバイ」
「じゃあな」
手を降って隆之介は歩きだした。
私は姿が見え無くなるまで、見送っていた。
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